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しっとりとした夜の空気が漂う作品でした。
綺麗な月夜が印象的なはずなのに、どことなく梅雨の湿度も感じるような大人の恋愛模様が本当に素敵な作品。
草間先生のカバーイラストも作品のイメージにぴったりでうれしい。
ずっとその目で見ていた、決して出逢ってはいけない人に声を掛けてしまった。
本来ならば許されない恋をしてしまった。
ただ淡々と一対象者である「16番」を監視する側だったはずが、なんの変化もない生活を送っていた彼がふいにこぼした涙の理由を知りたくなってしまった。
被疑者を監視をするだけの淡々とした日々を過ごしていた玖月の心臓が徐々に脈打っていく姿というのか、モニター越しに見ていた16番の「先生」こと戸明と接点を持ってしまって以来、止まらない彼の胸の高まりが読み手にどうしようもなく伝わって来るのです。
近付いてはいけない。これ以上はいけないと思いながらも、もっと会いたくなってしまう。
もっと相手のことが知りたくなってしまう。
1度走り出したら最後、流れるように落ちるとはこのことかなと、人が恋に落ちる姿の描き方が非常にドラマチックなんですよ。
2人の心の距離が近付けば近付くほど、玖月が言い出せない隠し事という後ろめたさと背徳感が効いていてもどかしく、その丁寧な心理描写に唸ってしまいます。
砂原先生は人間の感情の揺れの部分を描くのが本当にお上手ですよね。
それでいて、ストーリー展開も先が読みたくなる面白さなのだからもうすごいとしか。
予想が外れる面白さもあり、感情通りにはすんなりとは上手くいかない大人のままならない恋が堪能出来る読み応えのある1冊でした。
草間先生の表紙が素敵なちょい近未来もの!
何事にも動じない監視者×真面目堅物監視対象者
モニター越しで一方的に知るだけだったのに、関わり合ってはいけない2人なのに、知る程に惹かれ合う…
しっとり穏やかの中のドラマチックさにドキドキしました。
スーツと眼鏡で武装した人からこぼれる可愛さは格別すぎました!!
純なのに感じやすすぎるって反則!
優しくしたいと泣かせたいの押し方がすばらしい年下攻めで…
どんどん戸明さんに心惹かれてく様が胸熱でした!!!
あとがきよ草間先生の眼鏡受けを書いて欲しくて…に分かる~と、ありがとうございます!の気持ちでいっぱいです!
挿絵もピッタリ素敵でした!!
近未来SF。
麻薬所持容疑者の自宅の監視が任務の警察官攻めと監視対象者の弁護士受け。攻めは夜間の監視担当で受けの夜の様子が筒抜け。
攻めは感情の起伏が少なくて他人に関心がなく、容疑者達のプライベートを監視し続ける仕事に適正があるんだけど現実世界で受けとばったり出くわしてしまってから歯車が狂っていく様子が面白かった。職務を逸脱していると理性ではわかりながらも会いたい気持ちが抑えきれなくて苦しんでいる姿がいい。
受けも可愛らしい人で好き。攻めに恋をしてからの意地らしい様子が攻めには筒抜けで、その可愛らしさに攻めはノックダウンされちゃう。連絡先を交換した晩に、連絡する勇気は出ないけどアドレス帳のページをずっと眺めていたりとにかく健気。デートの前日に一生懸命洋服を選んでいた事もバレバレで攻めにちゃんと褒めて貰えて良かったね、と微笑ましい気持ちになる。
攻めの幼少期のエピソードに絡めた締めのセリフも好きだった。
作家買いをしたものの、正直、億劫でした……、読むのが。
というのも警察物も、近未来ファンタジーも得意じゃないので……。
2041年という近未来が舞台で、とある薬物を取り締まるために、警察が秘密の超権限を得ているという超監視社会。
受けは薬物所持疑惑の対象者なので、直径2mmの羽虫サイズのドローンカメラを室内に複数仕掛けられています。
(受けは監視されていることは知らないし、そういう監視システム自体も公にされていない)
自宅での一挙一動を、警察官である攻めの玖月がモニターで常時監視している。
なんていうか玖月自身、高性能なモニターカメラというか機械みたいなもんなんですよね。
監視対象の動向は何一つ見逃すことはないんだけど、そこに感情が伴うことはない。
対象がセックスしてようが何しようが動揺することもなく、彼の心のセンサーが反応するのはクロかシロかの判別だけ。
だから受けも最初は単なる監視対象者「16番」に過ぎなかった。
だけど犬の写真を見て泣いている姿を見て、ふと気になるように……。
やがて16番と、偶然街で出会って言葉を交わすようになり、「戸明依史」という名前を知ってしまい、戸明の事をもっと知りたくなってしまう。
そしてある日、モニター越しに戸明のオナニーを目撃した玖月は、彼がお人形ような16番ではなく地の通った一人の男であることを強烈に知り、ますます目が離せなくなる。
やがてその肌に触れたいと思うようになり……。
監視のプロである玖月の「見る」がどんどん変化していく、それによって玖月の内面の変化の描写が非常に鮮やかです。
近未来という遠いような近いような、イメージできるようなイメージできないような舞台の中で、「恋におちる」という過程の描写が非常にリアルで印象的でした。
それを読んで私は、ああいつの時代になっても、どんな仕事をしていようと、こうやって人間が人間である限り、相手に興味を抱くことから始まって恋をしていくんだろうなぁって、つくづく思ったんですよね。
この先、どんなにシステムが発達したとしても、「ふとしたきっかけで相手が気になって、どんどん惹かれていってしまう」という恋のシステムは変わらないんだろうなぁって。
あ、あと攻めが年下ということもあり、ですます調の言葉責めがたまらん!!でした。
凄く素敵なお話でした。砂原糖子先生の作品はハズレが無いので安心して読めますね。
こちらの作品も一気に世界観に引き込まれました。
もう玖月が戸明を気になって行く過程、そして偶然に街で見かけてからの咄嗟に取ってしまった行動からの展開にドキドキが止まらないんです。遠いようでいて近い未来って設定も凄く効いていたと思いました。
薬物所持被疑者で監視対象者である戸明との恋は上手く行くのかとか、本当に戸明は犯罪者なのかとか凄く先が気になってページを捲る手が止まらないんです。
更に上手いと思ったのは、戸明の父親の知り合いという人物の存在でした。彼が戸明にトラブルを運んで来ると思ってたんですが、最後の事件に繋がるまでの流れがとても見事でした。
表題作の雑誌掲載作と書き下ろしの「夜明けの月と僕」が収録されているんですが、特に書き下ろしでの戸明の後輩の伊塚を殴ってやりたくなりましたね。あんな鈍感で無神経なヤツの何処が良かったんだろうと…。
このお話が凄く良くて、玖月の所属してる課が凄く面白いんです。戸明は弁護士だし、この2人が関わる事件でシリーズ化してもらいたいです。