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なんて素敵なお話なのでしょうか。
ほろほろと口どけの良い砂糖菓子のような、甘くて心地の良い柔らかな雰囲気が漂います。
流れるように「ああ、なんだか良いな」が続いていくのです。
静かな夜にぴったりの1冊だと思います。
ゆったりとしたテンポで綴られる優しいお話でした。
タイトルの千夜一夜から連想するものといえば、やはり千夜一夜物語ことアラビアン・ナイト。
下働きのアーシェが語る御伽話のような創作の物語の数々は、人知れずストレスを抱えていた国王・ラシードを始め、多くの人々の心を癒し、優しくするすると解いていく魔法のよう。
そこにいるだけであたりをパッと明るく照らすような朗らかさのある、働き者のアーシェに非常に好感が持てるんです。
身分の低い者が身分の高い者からの寵愛を受け、周囲の人々からも愛されていく…それは決して珍しくはないシンデレラストーリーの定番だと思うのです。
ただ、定番の中にはなぜこんなにも好かれるのか?なんて思ってしまうこともしばしば。
しかしながら、今作の主人公・アーシェという人は愛さずにはいられなくなる魅力があります。
周囲の人々から可愛がられ、愛されていることに対してなんの疑問も湧かないんですよ。
読み手の自分もアーシェのことをどんどん好きになっていってしまっているものですから。
今作の中で好みだったのが、ラシードがアーシェをすぐに見初めて側に置いたわけではないところ。
39歳の美丈夫が夜毎癒されながら寝かしつけをされている図にはたまらないものがありました。
アーシェと過ごす安らぐ時間の中で、気付けばありのままのアーシェを自然と愛していた…ここがすごく好きでしたね。
ほのぼのとしていて甘くかわいらしい雰囲気の2人です。
2人の間で交わされる掛け合いがまたどれも良いもので、終始楽しみながら読みました。
サブキャラクターも魅力的なのですが、中でも女性キャラクターのマアディンが素敵。
ラシードとアーシェのこのお話も、きっとこれから何年も語り継がれる物語のひとつになっていったのかなと思える締め方でこちらもとっても素敵でした。
疲れ切った王様と天涯孤独な下働き
賢王と名高いラシード王(攻め)の後宮で下働きをしているアーシェ(受け)は政務に疲れゆっくり寝たい王によって伽に呼ばれます。
寝入るまで得意の物語りを語って王をゆっくり休ませることに成功したアーシェは次の日も次の日も呼ばれることになってしまいます。お互い惹かれ合うようになるのですが‥
アーシェは幼い頃家族を大火でなくし、使いっ走りをしてなんとか生きてきました。耳がよく、そのため火事の中でも生き残ることができたのですが、その特技を使って芝居小屋などの物語りを聞き、自分でアレンジして人に語ることを得意としています。
後宮でも寵姫たちの癒しとなり皆に大事にされるのです。
ラシードは、四十路を前にして未だ子がいません。本人よりも周りが焦っていて、最終的には多産の庶民の家から身売りのように連れてこられた寵姫まで次々と寵姫が増えていってうんざり。
掟で、誰かと共寝をしなければならない夜に嫌気がさして、戯れにアーシェを呼ぶことにするのです。初めてゆっくり寝られることに味を占め毎日呼ぶようになるのです。
とても面白かったです。
後宮の話だったので、女性たちと王を共有しないといけない話なら読むのをやめようと思いながら読み始めました。王なので後継を作らねばならず、過去は毎日励んでいたようですが、今はすっかり嫌になってしまっているので、女性はいますが、途中で解散してしまい、話が始まってからはアーシェ一筋なので安心しました。
アーシェは初めてラシードを見た時は「うわわわ」とか「はわはわ」とか意味不明なことを言ってしまうお馬鹿っぽい言動がありましたが、すぐにいつもの調子を取り戻し明るく周りを照らす太陽のような存在として、ラシードだけでなく皆を癒す存在になるのを楽しく読みました。
ラシードを狙う輩に代わりに誘拐されてしまったりピンチにも遭遇しますが、得意の物語りで敵地でもアーシェらしく突破する様子はハラハラしました。
後半の書き下ろし「愛妾の贈り物」は贈り物の意味にハッとさせられました。
自分を顧みて、見習おうと思いました。
「2人が末長く幸せに暮らした」と軽いラストの一節は御伽噺の終わりのような終了の仕方に、千夜一夜物語を読んだ気持ちになりました。
そして、お話もさることながら、Ciel先生の挿絵が素晴らしい。
ため息が出るほどの美しさでした。
面白過ぎて先生にファンレターを書いてしまったほど。
会話のテンポが良く、何回読んでも好きなシーンなどがあり、思わず笑みがこぼれてしまいます。
文章って楽しいな、と素直に思えた作品です。
アラブものとして読まなくても良いので、もし苦手意識がある方でも読まれてみるといいと思います。
攻が受いぞっこんになっていく様が本当に楽しいです。
他の方のレビューがとても良くて期待値を上げすぎたんでしょうか。
素敵なイラストとタイトルから幻想的でロマンチックなラブストーリーを想像しており、しかし受けの中身が子供っぽすぎてアレレ?と。外見が幼くて可愛いのは大歓迎ですが、「あわわわ」とか「うひゃ」とか変な奇声を上げるのはどうなんだろう。実際は子供じゃないんですよね。
攻めの年齢にも思ってたより歳入っててびっくり。おじさん×ショタにしか見えず。どうにもハマれない組み合わせでした。
あと後宮が舞台なので仕方がないのですが女性の登場が多い・・・。直接絡むシーンがなくても、女性とのあれこれを連想させられ気持ちが萎えてしまいました。
寵姫達があっさり受けと攻めの関係を受け入れちゃうところもなんだかなぁという感じです。
雑誌で読んだ時に、本になったら絶対に買う!と決めていた一冊。
なんといっても、受けのアーシェがかわいい。
働きもので、素直で、表情がくるくる変わってとても生き生きとしている。
そんな彼が語るお話に、後宮のお姫様たちも、そして攻めのラシードさえも虜になってしまうんですね。
一番いいなと思ったところが、敵に拉致されて絶望的な状況に陥りながらも明るいお話を聞かせるシーン。
ただ可愛いだけではなく、すごい胆力の持ち主というんでしょうか。
あんな状況でも、聞いてる人を笑わせることができるアーシェの「語り」の力の凄さ。
そして機転も利かせて切り抜けようとする姿。
後半の書き下ろし部分も良かったですね。
せっせと芋を剥くアーシェも確かに可愛いけど、それだけではダメだと説くマアディン。
このマアディン様もとても素敵な女性でした。
最後の数行も素敵。
わたし、こういう締めくくりが大好きなんですね。
なので、書き下ろし部分も大満足です。
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似たような締めくくりの作品。
・貫井ひつじさん「狼殿下と身代わりの黒猫恋妻」
・月東湊さん「呪われた黒獅子王の小さな花嫁」