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表題作プルメリアのころ。

新垣 一(カズイ)
21歳,二飛曹→一飛曹,九九式艦上爆撃機偵察員で千歳のペア
鷹居 千歳
20歳,少尉,九九式艦上爆撃機操縦員

その他の収録作品

  • 白い花の帰還
  • 千歳威厳計画デラックス
  • ちーちゃんせんせい
  • 明日をあなたに
  • あとがき

あらすじ

戦時BLの金字塔≪1945シリーズ≫第4弾!! 書き下ろし番外編収録。

作品情報

作品名
プルメリアのころ。
著者
尾上与一 
イラスト
 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
シリーズ
1945シリーズ
発売日
電子発売日
ISBN
9784199011412
4.6

(32)

(22)

萌々

(8)

(2)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
8
得点
148
評価数
32
平均
4.6 / 5
神率
68.8%

レビュー投稿数8

シリーズで1番コメディっぽい

面白コメディっぽいところから始まって、クライマックスで泣かされ最後清々しく晴れやかな気分にさせてくれるお話でシリーズ第一期完結に相応しかったです。

1945シリーズどれも違ったペアの違ったお話で面白いです。今回の2人は前作のSSでチョロっと話題に出ていた問題児のいるペアだったのでどんな話か気になってました。

航空機に乗るのが必然な部隊にいるのに乗りたくないと駄々こねる少尉ってどんなの??
軍人さんって国を守る為に頑張る!とか自分のプライドにかけて戦うってストイックな人を思い浮かべてしまうけど、今回の2人は違います。
敵に爆弾を投下する為の二人乗り航空機、九九式艦上爆撃機を操縦する方の鷹居千歳は、怖がりで争いが嫌いで無理やり操縦席に乗せられて出撃。飛んでる最中も乗り物酔いなのかストレスなのか吐きながら操縦、戻ってきても吐いてる様な有様。
訳アリな出生と気弱な性格、見た目の軟弱さ、世間知らずな発言など色々相まって孤立しがちな千歳。
厄介者扱いされている千歳はペアで乗る相手から断り続けられてたところに正直モノな新垣一(カズイ)があてがわれる。

カズイは、現代的な考えの青年。家が貧乏だから現地で成果上げてとっとと内地に帰って褒美を貰おうって魂胆。お国の為なんて大義名分は全くない。
だから、成績優秀なパートナーと組みたいと思ってたのにへなちょこな千歳と組まされてお先真っ暗ってとこからの。

千歳は泣きながら天才的な能力を発揮するタイプなのです。やりたくない乗りたくないと言いながら的確に爆弾を目的地に投下、誰よりも早く基地に戻ってくるんです。本人の言い分としては怖いからさっさとやる事やって帰りたいって理由らしいのですが、実際にできてしまうところが凄いところ。
この手のキャラってよくいるけど、鬼と戦う大ヒット少年マンガの黄色い髪の毛で気絶してる間に敵を倒す泣き虫な子を思い浮かべてしまいました。
嫌だ嫌だと言いながらも能力が高いギャップキャラってみんな好きなヤツ。千歳いい味出してます。

そんな千歳に惚れてしまったカズイは懐のデカい男だよ。大雑把なのかもしれないけどそんな2人がとってもピッタリで幸せになってくれてよかった。

表題作はカズイ視点です。
その後に過去から現在に至るまでの千歳視点が描かれています。千歳の寂しさ境遇を知ってカズイがどれだけかけがえの無い存在なのか思い知らされました。好きになった人とのお話が胸が苦しかった。

前作[碧のかたみ]の琴平厚谷ペアが出てくるのがよかったです。ぜんぜん違う性格なのに琴平が千歳を認めているところが意外でもあり、飛行機が好きだからテクニックをリスペクトしてるからなのかなと思わされました。
厄介なパートナーのお世話係な厚谷とカズイの困った嫁自慢な会話も面白かったです。

今回再リリースしてくれたお陰で名作に出会えてよかったです。1945シリーズ第二期も楽しみにしています。

1

「俺は絶対堕ちません」

高いところが苦手で怖がりな千歳とペアになってしまったカズイ。
居場所がなくて愛されたいのに、欲しない。そんな千歳に精一杯向き合うカズイ。
神様から欲しかったものは全てカズイがくれた。ずっとカズイの無事を祈り続け、絶対堕ちないと強い決意を持つ千歳は弱虫なんかじゃないんですよね。
月光ペアとの絡みも微笑ましいです。
ただの「千歳」として過ごす日々が幸せでありますように。

1

本の構成が違っていたら

キャラ文庫で復刊されている1945シリーズ4冊目。
本ごとにCPが異なります。本作のCPは、3冊目「碧のかたみ」と同様に複座の航空機のペア。操縦士と偵察員ですが、「碧のかたみ」とはだいぶ様相が異なります。
偵察員のカズイは最前線のラバウル基地に配属になり、操縦士である千歳と組むように命令される。だが高所恐怖症で怖がりで脆弱な千歳は、飛行のたびに恐怖に叫び喚き嘔吐を繰り返し、身体が弱すぎて訓練も満足にできない。あまりの軟弱ぶりに失望したカズイはペアを解消しようとする、というお話。
尾上先生の語り口は的確で時に叙情的で、ぐいぐい読ませる筆力はさすがの一言です。
4冊目ともなるとこの世界観にもどっぷりで、もう3組も見たのに、まだ違う角度からのお話を読めるのか、と驚くばかりです。まるで飽きませんし、毎回唸るばかりです。

表題作「プルメリアのころ。」:カズイ視点、本の6分の4
「白い花の帰還」:千歳視点 本の6分の1
 残りの6分の1に以下の3作
「千歳威厳計画デラックス」:六郎視点
「ちーちゃんせんせい」:千歳視点
「明日をあなたに」:千歳視点、書き下ろし
ということで、5本収録している本になります。

上記のとおり表題作の「プルメリアのころ。」が分量が多いので先頭になっていますが、ただ、今回はちょっと構成的には「白い花の帰還」が先の方がよかったかもしれないと思いました。
というのは、カズイは当時の一般的な(という言い方が適切かどうか)思考を持ち、性格も生い立ちもまっすぐであり、読んでいても普通に寄り添いやすいのですが、対する千歳の方は、生い立ちも性格も過去エピソードも、そもそも基地での立ち位置、飛行中・飛行後の言動も、とにかく規格外です。
もちろんすべてに理由があるのですが、それは読者の当て推量だけでは補えないほどの内容でした。
私も表題作を読みながら、志願兵の中でも選ばれた人であるはずの(当初)飛行機乗りなのに、飛行が怖い、叫ぶ、吐く、ということがここまでの反応であるからには、相当な何か(ペアだった片方が戦死したとか)があったのだろうと想像したものの、カズイ視点である以上、そこが明らかになるには相当ページをめくる必要がありましたし、当然肝心なところ(=初恋だったとか)までは描かれません。それは千歳視点ではないと分からない話だからです。
「白い花の帰還」は新情報が多すぎて、種明かしや裏打ち以上の内容と感じました。
この内容を先に知ったうえで「プルメリアのころ。」を読めていたら、千歳の振る舞いをもっと違う風に受け止めただろうと思いました。また、二人のことについてももっと焦れる思いを感じたかもしれない、とも感じました。

「碧のかたみ」の琴平・厚谷ペアが登場したのが嬉しかったです。
琴平恒は、皆が嘲笑したり無視したりする千歳に対してとても優しかったし、航空技術を認めているのも良かった。
考えてみたら恒はおとなしい弟の希を殊の外可愛がっていたのでした。この手のタイプは、希を思わせるのかもしれない。
千歳と二人並んで話している図は、挿絵もありましたけれどとても和みました。

カズイの真価が発揮されるのは、むしろ戦後のお話の方かなと思いました。
コミュ力をいかしてどんどん仕事につなげていくのは大変頼もしく、戦後復興の力強さをも思わせます。
千歳を虐めていた華族の兄たちの末路とは対照的です。
「ちーちゃんせんせい」で千歳は黙っていましたが、おそらくカズイは知っていた(直接連絡があったり?)のかなとも思いました。

この本で第1期の復刊は一段落。冬に同シリーズの他の本の復刊がスタートするようで、とても楽しみです。

4

こわい

1945シリーズ4冊目。空中戦を見たような心地になるお話で、予想の斜め上に受けが可愛かったのですが、キャラとして極萌~というほどではなかったので萌にしました。本編220P弱+受け視点の本編を補足する小編60Pほど+別カプとの小編10P超+小編2編。戦時中の異色の艦爆乗りが気になる方でしたら。

出世を!と意気込んでいたものの、ようやく宛がわれたペアは飛行直後は出すものが何もないのにげえげえ吐いていて、「ちょっと、飛行が怖くてね、敵機が苦手なだけなんだ」と上官に言われる鷹居で・・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
受け父(伯爵)、碧のかたみのペア、その他名もなき上官やら戦友少々ぐらい。

++攻め受けについて

攻めは大家族で育った逞しい男子。最初は腑抜けな千歳を見て「こりゃダメだ」と思っていたのですが、千歳の神がかった爆撃をみて絆されて・・・という感じです。正直、千歳と体をつなげるところ、気持ちの動きがちょっと分からなくて???でした。BLじゃなくって普通のペアのお話でもええやんか・・・と思う気持ちの方が、今でも強いかな。まあ千歳のことを大切にしてるからいいけど。戦時中、追い込まれた閉鎖空間のなせる業なのか。

受けはお貴族様。伯爵の父と侯爵の母(要は浮気)の間の子で、しょうがなく伯爵家で引き取っては見たものの、伯爵家には既に男子二人いて、千歳は行き場のない感じで育ちます。愛情に飢えてるんですよね。だからペアと認めてくれた攻めのことをとても大切に考え、カズイが生きて内地に戻れるようにと、後半は超超超超ど健気。捨てるものが、執着するものが無い人間ってほんと強いです。

そんな攻め受けが頑張るラバウル戦記です。飛行機乗りがお好きな方にはたまらんとは思うのですが、その「たた たん」と撃っているもの一粒で死ぬんだよ?と、改めて戦争の恐ろしさを思い起こした一冊でした。平和が一番っす。

1

毛色が異なる雰囲気には惹かれたけれど

新装版として連続刊行されていた1945シリーズ。
戦時下という激動の時代を背景に、時に激しく、時に苦しく、時に切なく、時に愛おしい青年たちの生き様を夢中になって追いかけた数ヶ月でした。
こちらのプリメリアのころ。でひとまず一区切りとのことですが、どのお話も非常に印象深い作品ばかりだったように思います。
同じ時代背景・同じ題材なのだけれど、人生や生き様にかぶりがないというのかな。
人の一生において1番濃厚に凝縮された部分を切り取って魅力的に描くのが本当に上手い作家さまですよね。

第1期最終巻となるこちらの作品。
結論から申しますと、既刊3作よりも強く惹かれるものはなかったのです。
というのも、既刊とは毛色が少々異なるものなんですね。
千歳のバックボーンが切ないものではあるのですが、あまり戦争を背景に描いた作品には普段感じないやさしさや希望。
そしてまろやかさをなぜか強く感じた作品でした。
この雰囲気は決して嫌いではないですし、中盤から後半にかけての気持ちの高まりや千歳視点のお話も好き。
ただ、神評価にはならなかったです。

先述の通り、中盤〜の流れと千歳のバックボーンがわかる短編は、自分よりもお互いを強く想う気持ちの流れはすごく良かった。
でも、こと恋愛面に関してはやや疑問に思うところもあり…
うーん…こちらのシリーズにおいて私が1番魅力的に感じるキーワードがペア制度なのです。
このペアになるための行為がどうにも刺さらなかった。
あっという間に始まってしまい性急すぎたというか、突然そんな関係になってしまったがゆえに入り込めませんでした。
これは恋愛感情なのか?はたまた違うのか?と、分類ができないくらいの特大級のどでかい感情があふれてからだったのなら、爆発的な萌えが降ってきていたのになあと惜しいです。

未来や希望を感じる話運びは穏やかでやさしく、戦争ものでこういう味付けもあるのだなと、2人の青年のラバウルでの日々を追いかけながら、既刊3作にはない味付けをじっくり味わえました。
しかしながら、ペアの熱量でいうのなら、過酷な環境化で育まれる激しく熱い感情をこれでもかと描いた「蒼穹のローレライ」「碧のかたみ」の雰囲気の方が好みだったのかもしれません。

5

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