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表題作COLD FEVER(新装版)

高久透,記憶が戻った男 
藤島啓志,透を見守る男

同時収録作品花咲く花散る花開く

黒川祐一 公務員
谷口雅之 カメラマン

その他の収録作品

  • LAST FEVER 四季
  • 花咲く花散る花開く
  • あとがき

あらすじ

ある朝目覚めた時、透の時間は六年の月日が経っていた──。事故でなくした記憶を取り戻したものの、周囲に愛されていた“もう一人の自分”の影に苦しみ、さらに誰よりも憎んでいた男・藤島と同居していたことに驚愕する。藤島に見守られ、失くしかけた夢と歳月を取り戻そうとする透だが、藤島の裏切りが明らかになり──! シリーズ新装版、ついに最終巻。同人誌発表作に大幅加筆し、「同窓会」シリーズも連動して同時完結!
出版社より

作品情報

作品名
COLD FEVER(新装版)
著者
木原音瀬 
イラスト
祭河ななを 
媒体
小説
出版社
リブレ
レーベル
ビーボーイノベルズ
シリーズ
COLD SLEEP
発売日
ISBN
9784862635501
4.5

(171)

(137)

萌々

(14)

(10)

中立

(3)

趣味じゃない

(7)

レビュー数
34
得点
774
評価数
171
平均
4.5 / 5
神率
80.1%

レビュー投稿数34

どうしていいかわからなくなる

木原先生の作品はすべて読ませていただいておりますが、本作が1番心に残っています。

この作品を読んだ多くの読者さんは「痛い」とおっしゃいます。
私も心が痛かったです。ですが、痛みよりも「どうしていいかわからない恐怖」をより強く感じました。
暴風吹き荒れる台風の最中、外に出されたような気持ちです。
透や藤島さんと一緒に嵐の中に放り込まれてぐるぐる回されたような、もう何が何だかわからないという感じです。
感情をこんなに上下に揺さぶられる作品は読んだことありませんし、今後も出会えないかもと思っております。
唯一無二の作品です。木原先生を心の底から尊敬しております。

0

「愛してます」の終点

『COLD SLEEP』: 淡々とした展開、

『COLD LIGHT』:2人の過去を明らかにした。
 両想いで付き合って、幸せそうになりましたが、

『COLD FEVER』:ついに痛くなった!精神と肉体も痛いです!

以下は、COLDシリーズ3冊を読んだ後、『COLD FEVER』を中心とした個人的な読後感です。

「6年間」を忘れた透。

藤島にとって、
愛している人に好きだと言われて、愛されて、大切にしてもらって、蜜月のような「6年間」。
そして、すべて忘れられて、
それ以上のない幸せな日々を一瞬で無くし、
しかも、乱暴で理不尽で、藤島のことを嫌っている透に戻った。

透より藤島のほうが100倍も苦しいと思います。

藤島は、どっちの透も愛している。

「6年間」の透は、恋愛対象として愛している。

記憶が戻った透にも愛している。
それに、罪悪感を抱えて、罪を償うため今度こそ守らなければならないという責任感を持たれている。
頼りになる人がいなかった藤島にとって、
小学生の透と心を交わした時間はかけがえない宝物であり、
透は唯一自分で選んだ「もの」だし、
透に対して恋々の情を懐いている。

だから透から逃げない、
暴力を振るわれても、無理なセックスさせても耐えられた。

記憶が戻った透に嫌われている藤島が、
透に嫌な思いをさせたくないから、
恋愛対象として受け入れることができない。

藤島のすべての行動は、
透へ愛の表現だと思います。

ずっと一人だった透は、
一人は嫌で、誰かに構ってほしい。
帰る場所が欲しい。
昔も今も透に優しくしてる人間は藤島しかいない。
藤島は透の帰る場所となっている。

透は本当は藤島のことが嫌いではなく、
ただ信じてたら、裏切られるかもと不安していただけ。
「6年間」の自分が藤島と仲良くしていたことを嫉妬したり、
藤島がいなくなった時、気が狂うなるほど不安となったり、
実は藤島に執着し頼りきりになったほど好きだ。
藤島に対する暴力、暴言、強引なセックスもただ自己防衛、逃避だと思います。

公園で狂った透に
藤島が
「そばにいるから⋯」
「どこへも行かない」と伝えた。
透のために自分を犠牲しでも、一生愛を尽す覚悟をしたでしょう。

そして、
海で残った一枚「6年間」の写真を燃やしたのは、
開き直って記憶が戻った透と共に新しい未来へ歩き出すと決意をしただろうね。

藤島が優しい声で「透」を呼ぶたびに、
どんな想いで呼んでいるだろうかと考えて、
切なくなります。

最初から最後までどんな透でも、
温和な態度で彼を守り続けている藤島の姿に、
胸の中に温かい灯りが灯ったような気がしました。

本編の最後、
藤島の
「僕は君を置いて、もうどこへも行かない」
「行けないから」
という言葉

数年後、
透が谷口に自分にとって藤島は、
「体の一部みたいなもんだし」
と答えた。
2人は強く依存しているです。

『COLD SLEEP』に、
藤島が透に吐き出した
「愛してます」、
たどり着いた終点は、
お互いに必要とされ、
相手を失ったら、生きていけない、
切り離すことができない2人の愛です。

「同窓会」シリーズ
「僕は仕事より親よりも君が好きだ。君さえいたら何もいらない。君のそばにいられたらもう何もいらない」
黒川の病み付きになりそうな谷口への想い。
この2人も深くいつくしむことになり、
離れることはできないですね。
同棲して幸せになって良かったです。

痛くて、少し狂ったけど、
2組のカップルのハッピーエンドに感動しました。

0

『愛の本質』とは何か?その答えがこの本にある。

以前、ちるちるのYouTubeで木原音瀬先生の特集したとき、アンリ54世さんがこちらのCOLDシリーズを激推ししていたことをきっかけに、作品を知り、読みました。

これまで、木原音瀬先生の作品は何冊か読んでいました。その中でも、(自分にとっての)殿堂入りの傑作があったりするぐらい、木原音瀬先生は私にとって特別な作家さんなのです。……が、だからこそ、読む前から期待は高いし、ハードルもぶち上がっていたのですが、また……超えてきました。あぁ、もう、やられちゃいました。すごかったです。本当に。木原先生、本当にありがとうございます。

ラスト3行、特に一番最後の藤島の台詞『行けないから』に、この作品の全てが詰め込まれているように感じました。愛って何だろう?その答えがこの台詞に凝縮されている気がします。

一言では言い表せない、決して綺麗でも美しくもない、ずるくて、醜くて、子供くさくて、筋道が全然通っていなくて、でも、手放せなくて……3巻の透は、見ていて痛々しいと感じると同時に、すごく人間臭いなぁ、と。ずるかったり、矛盾したり、思っていることを素直に言えない。終盤、公園で、いきなり子供に戻ったみたいに、魂をむき出しにしながら慟哭するシーンが、とても印象的。もう、いろんなものが限界だったのだなぁ、と。

逆に、6年間の過去がバレてから、透から容赦なく降り注がれる暴力に、藤島はただひたすら耐えます。普通だったら逃げ出すよ、ってぐらいひどい暴力にあてられて、でも必ず透のそばにいる藤島。かつての幼い透にいけないいたずらをしたり、自分の心の弱さのせいで助けてやれなかった罪滅ぼし的な感情もあるのでしょうか……?いつか、記憶喪失の透が過去を思い出すかもしれない、それでも彼のそばにいる、と覚悟を決めたときにはもう、ある意味で、二人の行く末は決まっていたのかもしれません。

また私にとって特別な一冊と出会ってしまいました。出会えてよかった。これを読まずに人生が終わらなくてよかった、と、本気で思います。

そして、これからもたくさん木原音瀬先生の作品を読みます。木原先生、愛してます。

2

さぁここからは歯を食いしばって

シリーズ3作で、COLD SLEEPとLIGHTは透が記憶を無くした6年間なのでお話は繋がっていますが、このFEVERから読むのも面白いかもしれません。
前2作は「あれ…これは木原さんの中でも“痛くない、初心者オススメ”と言われるやつなのかな^^」なんて思いながら読む、ケーキやお花に囲まれた恋人のお話。
そこから透の記憶と共に暴力性を取り戻し大爆発、ツラ〜〜〜(涙)な展開に。

木原さんは読者の想像する安易な展開を用意してはくれません。
6年間藤島を恋人として接し、ケーキを作り、商店街の人気者だった透。同じ動作やものに触れる事で記憶が戻り、あの愛しい青年が戻ってくるのでは、とか。
記憶は戻らないけど、透が藤島をどれだけ愛したか、どれだけ藤島が記憶を取り戻した透の側で辛い思いをしたかを誰かが告げ口して改心するのではとか。
そんな、普段なら「はいはいベタベタ」と思うような優しい展開を心底望んでしまうくらい、読むのが辛かったです(彼女の作品は大体そうですが。)

6年間の自身を周りから求められ、今を否定された気分になる透もやり切れない。読者も2冊分6年間の透が好きですが、でも今の透が自分に妬んでしまうようなところも可愛いと思わせるところ、積み重ねた人生分の嘆き苦しみを子供のようにぶつけるしか出来ない不器用さが愛おしくなり、読んでいて凄く凄く面白い。

彼の中で藤島に対する印象が全て悪い方向で繋がってしまい、藤島の失態も多々あるのですがそれでも暴力過多。一番辛かったのは写真を捨てられたことです。もう戻らないもう一人の愛しい透の思い出が全て捨てられるなんて茫然自失でした。
最後まで読めば、全て捨てなければ今の透と真に向き合えなかったのだと思うのですが、それでも写真を捨てるのは余りに(略)

このお話は一人の人を何度も愛すること、その人という核とは、というのがテーマなのかなと思っています。それと共に、自分が知らないだけで周りの誰かはちゃんと愛していることもとても大切に描かれていると思いました。
恋人が居たらしいのにそいつは姿を現さない!と思っていれば「その人には会ってる。お前が気付かないだけで」と言われてしまう(もぉ〜〜藤島って事細かく教えてあげてよ…)自分が愛した人や物に全く感情が湧いてこないなんて、自暴自棄な透であれば更に辛いだろうと思いました。
生きてきた人生の積み重ねで様々なものに出会い付き合い人格を形成するのに、それらがすっかり無くなったらどうするのだろう。自分はどんな人間なんだろうと考えてしまいます。

そして巻末のお話を最後に一気に読みました。
黒川、自分と重ねる部分も多く純粋で重くて(笑)大好きです!
「今日は来てよかった。谷口とこんな風に話ができるなんて思いもしなかった。大人になってよかったなぁ」
「ずっと好きだった。ずっと好きでたまらなかった。高校を出てからも、何年たっても君のことが好きだった」
「あーあ、言ったよ。酒の力っていうのはすごいな」
「恥ずかしいな。恥ずかしいよ。死にたいぐらい恥ずかしいよ。明日になって全部忘れてるといいな。僕も君も」
捻りない言葉と融通の効かなさ、そして谷口と居るようになってどんどん世界が広がっていくのが最高でした。

3作通して、伏線の回収具合も筒が無く好きでした!

3

最高傑作…(拍手)

前の巻を幸せな気持ちで読み終え最終巻は記憶が戻ってしまうんだろうな~と思い読み始めた初っ端からそれで息が止まりました。

本来の攻めに戻ったのですがそのあまりの暴力性には悲鳴を上げそうになりました。
あまりに痛々しくて胸がズキズキして…しおりを挟む余裕なく本から手を離し距離を置いてしまったのは初めてです。
泣く時間が必要でした。

酷い部分を持つ攻めでもあるのですが彼を責めたり憎むことは決してできないんですよね。
彼の生い立ち、悲惨な過去…痛みを知り彼なりに自分を守る方法を見つけ…それでも彼自身苦しみながらも生きていくしかない姿を見ていると…言葉がつまるんですよね。

そんな彼と一緒にい続けた藤島さんのことを思うと…また泣きそうになります。
自分に懐いていた子ども時代の透…事故で記憶を失いまるで別人になった透…同一人物であれそんなかけがえのない人を二回なくしたようなものですよね。
それでも今、透と藤島さんの関係がまた別の愛で繋がり続けているのは嬉しいのですが…
藤島さん自身にその気はなくとも一読者としてはやっぱり比べたくなってしまうんですよね、記憶を失くした透との時間が一番幸せだったんじゃないかって。

今回は一気読みしてしまいましたがまた時間を置いてじっくり読み返したいです。
私の中で一番大好きな作品です。胸を張ってそう言えます。

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