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表題作極東追憶博物館

グレゴリー,ヤスオの手に恋をする
ヤスオ,戦争により極東の地で博物館の入場気券係をする日本人

同時収録作品ギャンブラー大竹

大竹.定職についていないギャンブラー
斎木,会社員で大竹の同級生

同時収録作品シュミジエ

フェリックス・グランベール,百貨店の経営者,37才
クロード,オーダーメイドのシャツを作る職人

同時収録作品役に立たない人

車のエンジン開発が本職だが営業をしている男
N,広場の管理人

同時収録作品恋蜘蛛

君嶋,受様の借金を肩代わりした帝国軍人 
沼田雪也,攻様に囲われて過ごす 

同時収録作品ウルトラマリンブルーシティ/アクアマリンブルーウォーター

(仮)深海 藍二(ふかみ あいじ)
(仮)魚丸 泳(さかなまる えい)、人魚

同時収録作品楽しい俳句教室一 春麗ら/楽しい俳句教室二 夏来る

加賀美,広告代理店に勤める会社員
忍田,加賀美に俳句を教える若手俳人で大学院生

あらすじ

祖国を離れ小さな博物館の雑用係として働く青年と、彼の美しい手に恋した留学生。実らないかに見えたその恋は!?珠玉の短編集。
(出版社より)

作品情報

作品名
極東追憶博物館
著者
ARUKU  
媒体
漫画(コミック)
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
ルチルコレクション
シリーズ
極東追憶博物館
発売日
ISBN
9784344818026
4

(67)

(34)

萌々

(12)

(15)

中立

(3)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
20
得点
266
評価数
67
平均
4 / 5
神率
50.7%

レビュー投稿数20

人魚の話の世界観がすごい・・・!

全部で7作品が収録された短編集です。

いつか読む気ではいましたが、絵柄のせいでなかなか食指が動かなかった本作、なんと『明日屋商い繁盛』に収録されている「俳句の先生x生徒のリーマン」が描かれた短編の前作が収録されていると知り、俄然読む気になりました。
確かに本作を読まないと、あの『楽しい俳句教室』を正しく理解することはできませんでした。
どの作品も素晴らしかったです。

2009年発売なので 顔が果てしなく長く、普段なら絶対読まない絵柄ですが、ARUKUさんはほんっとに例外(現在は綺麗です)。
しかも人魚の一コマがびっくりするぐらいめっちゃくちゃイケメンでした(拝む)。

しっかし、魂の伴侶とその相方はもともと一つの魂だった、という説(ツインソウル)までご存じだったとは、いやはや脱帽、毎回ARUKUさんには驚かされます。

特に琴線に触れたのはやはり表題作:日本人男性の手だけ見て恋に落ちるロシア人の話。
手だけなのに!そこまで好きになるー?!という冷静なツッコミを入れる自分とは裏腹に、心臓の方はぎゅんぎゅん来ました。
公園の話もすごくイイ・・・!
感謝されたら、感謝してくれたことに対してありがとうって言いたくなりますよね・・・すごいわかる。

短編なので、「ヲイヲイ展開早くね?!」と思わないでもない作品も中にはありますが、やっぱり大好きな作家さんです。
えrは話によりますがゼロ~標準的。
出血シーンが少しと(両想いですが)無理やり描写1か所だけあるので苦手な人は注意。

0

表題作がすばらしい

他の短編はどれも個人的にピンとこなかったのですが、表題作がとても良くて何度も読み返しました。
表題作のみに単行本一冊のお金を払っていいくらいです。

欲を言えば、この二人がこの後どうなるのか、とか、もっと長い物語で読みたかったのですが、この長さだからこそ、物語が引き締まっていて心惹かれるのかもしれません。

0

やはり大好きです!

10年前に出版された本です。
ARUKUさんらしいお話達でした。

とにかく無表情?な顔、なんとなく固くて動きがぎごちなく見える体の線に、あぁARUKUさんだと安心します。

表題作
このお話まではまだ主人公が貧乏で孤独じゃなくてホッとしてました。
しかしやはりさすが表題作です。
主人公の青年はおそらく戦争で敵国の領土に取り残された男の人なのでしょうか。日本の家族に届かない手紙を何通も出して。少ないお給料からお金も同封して。
家族はもう生きていないのでしょうか。

そして青年の手に惚れ込む学生。前途有望そうで見目も良く。青年を女性と勘違いして情熱的に口説いてきます。

青年は決して言葉を口にせず、正体も明かさず、早く忘れてほしいと願うのですが。
学生は青年の正体を知ってもさらに熱心に愛を囁きます。青年はもうやめてほしい…。

ラストが青年らしい覚悟と心遣い。いや国に届かない手紙と自分の手を愛する学生に思うところがあったのでしょう。
なんと自分の手を切り取って学生にあげようします。

そして学生は…。

ほろ苦さも含むけど美しいお話でした。
やはり作者さんが大好きです!

1

唯一無二の感性

◆シュミジエ
 BLとしての萌えが一番大きかったというか、最後の強引なキスシーンに思わずときめいてしまった作品でした。人間の中身に興味がなく、職業柄サイズのことばかり思い浮かべてしまうテーラーのクロード。彼の店を訪れるようになったフェリックスはとてもイイ男なんだけれど、クロードのそういった性格のおかげで恋が始まりそうな気配はなく。でも、最後にフェリックスが唐突にキスを噛ますんです。短編集でもなかなか見なかった展開かも。そこで初めて生きている人間の熱を感じ驚くばかりだったクロードが、恋できるようになったらいいなと思いました。

◆極東追憶博物館(表題作)
 全体を通してのストーリーが一番好きなのは、やはりこちらの表題作。相手の手しか見たことがないのに、その綺麗な手にどうしようもなく惚れてしまうグレゴリー。手に恋をするという導入が素敵過ぎました。自分が日本人且つ男であることから、グレゴリーの求愛には応えられないと冷たく返すしかないヤスオの姿が辛くて。外国人や同性愛者に対する風当たりって、その時代と場所によってはとても強い場合もあるから、きっと今の私達からは想像できないほどヤスオは思い詰めたんでしょうね。自分がグレゴリーのためにできることは、もはや自分の手を切り落としてあげることだ、とまで考えたヤスオにこちらまで苦しくなりました。しかし、手はあくまできっかけであり、グレゴリーはもうその先にいる人間に恋をしている。最終的にはヤスオを連れ去ってくれたので、心から嬉しかったです。

◆役に立たない人
 がらんとした広場に、ただいることが仕事のNさん。名前も皆からすぐ忘れられてしまうので、ずっとイニシャルなのが印象的でした。人の役に立つことを夢見ているNさんが、唯一関わるようになった営業職の男性。この2人のやりとりは不思議で、でも少し温かくて、人は自分の存在意義がないとこんなにも虚しくなってしまうのかなぁと寂しさもある物語でした。最後にNさんに存在意義を与えた男性の言葉は、今のご時世だと少し傲慢にも聞こえるけれど、この世界の中でNさんにとってはこれ以上ないほど心の満たされる言葉だったでしょうから、突っ込むのは野暮かもしれませんね。

0

大人の女性に捧げられる「メルヘン」

ARUKUさんの作品をこの週末に10冊ほど一気買いして、ずっと読み耽っていました。
どれもこれも読み応えがすごすぎて、2日間ARUKUワールドに取り込まれっぱなし!
1冊ずつゆっくり読むつもりだったのに止まんなかったです。
買うきっかけをくれた幻冬舎セールありがとう!

このコミックに限らず、ARUKUさんの作品のレビューには「おとぎ話」とか「童話」といった形容が頻繁に使われていますが、読むと納得します。
ARUKUさんの創るお話は「創作メルヘン(創作童話)」なんだと思う。
アンデルセン童話のような手法で描かれる作品は、空想的でありながらもリアリスティックに大人の心を揺さぶってきます。
良い意味で、BLという括りを取っ払っても成り立つようなお話を描かれる作家様だと思いました。

一気に読んじゃったのでさてどれからレビューしようかと迷いましたが、まずは個人的に「入口」として一番良いんじゃないかと感じたこちらの短編集から。
7つのお話が入っています。
どれもハッピーエンドなので安心して読めますし、ARUKUさんがどんな作風の作家さんなのか分かりやすい1冊だと思います。

中でも私の一番お気に入りは、
「ウルトラマリンブルーシティ」「アクアマリンブルーウォーター」
仕事で日々を忙殺されるサラリーマン〔深海〕と、彼の30歳の誕生日に突然現れた人魚のお話です。
童話的でありながらもシュールさの付き纏うトーンが面白くって、なのにラストはどちらのお話もすごくロマンティックでグッとくる。
海の青と空の青。海と空の境目で一つを二つに分けられた魂。羽根の生えた人魚。
境界線は無理に引かなくていいのだと教えてくれているような、とても素敵なARUKU童話です。

他の6作品も読み終わった後しっかりと残るお話揃いで、とても満足度の高い短編集でした。
最後に入っている「楽しい俳句教室」は、秋編・冬編が『明日屋商い繁盛』1巻で読めますよ。

6

この、隔靴掻痒感が後を引く

ARUKUさんの初期短編集。
日常的なようで、唐突にファンタジーだったり、繊細でリリカルなようで、突然愛欲が沸騰してみたり。
もうちょっと先が知りたいような、このラストシーンのために全てがあったと思えるような、微妙なもどかしさが後を引く。

ARUKUさんの作品を読むといつも思うのが、情景が絵になって展開するような小説を読んだかのような読後感のあるマンガ。
なんだかややこしい言い方だけど、普段から小説を読んでいても内容を情景でイメージしている私としては、ARUKUさん作品は、物語そのものが持つ力が充分すぎるほど強いので、物語自身が勝手に脳内でイメージを展開し出して、絵は後から付いてくる感じ。
賛否あるこの絵も、この絵だからこそいいとも言えるし、もういっそ絵なしでもいいとも言える。
本音を言えばARUKUさんの作品は小説でよみたい。
絵はキーになるカットを扉に1点、最後に1点で充分なのにな。

3

恋にならないギリギリの距離とむずがゆさで

唯一無二のストーリーテラーARUKU(遥々アルク)先生の短編作品集。

「ギャンブラー大竹」
大竹と斉木って(シテイーボーイズ?)高校の同級生?の関係で、自堕落な大竹の身の回りのお世話をしに斉木がたまに来るという間柄。大竹は斉木が好きらしいよ。短編のせいか何の説明もなく、ニュアンス系で。でもこういうの好きです!

「シュミジエ」
フランス?のオーダーシャツ専門店の若き職人クロード。人間の中身に興味がなく、ただ体のサイズ・数値のみで認識している。そこに現れた完璧ボディサイズの新進実業家。採寸時に突然キスされ、生身の人間の血潮を知る。
「知らなくて…生きてる人間ってあんなに…」アタフタして泣いちゃうクロードがかわゆい。

「極東追憶博物館」
ロシアの街に一人ぼっちで暮らす日本人ヤスオ。彼は街の小さな博物館の入場券係。ある日、券の差出口で男に手を握られ「手に一目惚れしてしまった」とラブレターをもらう。どうやら女性と勘違いしているらしいと思い、断りの手紙を出すヤスオ。だがロシア男グレゴリーは諦めない。
日本に出す手紙が送り返されて自分には失うものはない、と自覚するヤスオ。モスクワに帰るというグレゴリーに自分の手首を捧げようと考える!
「あなたごともらっていけばいいんだ」ヤスオをさらってゆくグレゴリー。帰る場所のないヤスオの居場所になってくれるといいな。、

「役に立たない人」
切ない…何が切ないって、自分の存在が世の中の何物にも全く意味のない存在と思い知る事。営業マンの男が、広場の管理係優しい心のNさんと出逢う。ある朝鳴っていたことに気付く音楽のように。惹かれ合う心…
(しかしここで唐突にHシーン。Hはなくても素敵な話だと思うのに)

「恋蜘蛛」
親しくもない身分違いの同級生が親の借金を肩代わり。代わりに男妾になる雪也(肉体関係はない)。ある雪の夜、遂に躰を重ねてくる君嶋。「好きだ」とは言ってくれない。「本日満州に赴任するように命令が下った」「連れてってくれなきゃやだよ…」すがる雪也。本当は甘かった二人。軍服の君嶋と赤い振袖の雪也の対比が美しいです。

「ウルトラマリンブルーシテイー」
広告代理店のリーマン深海が地下鉄車内で人魚の男に会う。シュール!人魚は「お宝を返して」と深海に付きまとう。誰のことも好きになったことのない深海。それでも…「元がひとつの命であったなら もう離れては生きていけない気がするだけだ」

「アクアマリンブルーウォーター」
人魚続編。そして人魚脱皮!シュール!「ぬけがら」が粉々になるシーンの衝撃。愛なんて認めないけど、この気持ちはやっぱり愛。なんかこの二人、このまま日常生活送りそう。

「楽しい俳句教室一 春麗ら」
(また)広告代理店のリーマン加賀美。上司に情緒を学べと俳句教室に送り込まれる。講師は若き俳人忍田。女好きの加賀美だが、何故かかわゆい忍田が気になっちゃう。

「楽しい俳句教室二 夏来る」
はじめは反応が面白くてからかっていたのに、梅雨が明ける頃「俺はあれからずっと考えている 感情には何か名前をつけないと ダメなのかい」
加賀美さん、多分それを恋というんです。

8

ARUKUさんの漫画には露西亜似合うかもと思っていました。

よくよく考えたら、この一冊は皆ハッピーエンドじゃないですか?
状況や雰囲気の悲壮感はいつも通りですが、これは素晴らしい。

表題作、いいですねえ。
毎回読みながら、ARUKUさんの漫画には露西亜似合うかもと思っていたので、嬉しいです。

どの話も大人の童話という感じで、漫画というよりも小説の短編集を読んだ気分にさせられます。

最初絵が苦手だったのですが、この話にはこの絵じゃないと駄目でしょう。雑誌のインタビューで、漫画の原作もやってみたいと仰っていらしたと聞きますが、ARUKUさんの話はご本人の絵じゃないと味が出ない気がします。
本当、麻薬のよう。

6

短いけど映画のような物語

短いお話しが沢山入っていたけれど、どれも本当に美しかったです。
アルクさんの絵が癖になってしまって魅力的に感じますし、
切ない雰囲気と少し変わっているけど可愛いキャラクター達に胸がキュンとしました。

中でも表題作が一番好きでした。
『手』から始まる恋。
ほんの一言言葉を交わせば、すぐに終わる恋。
でも、終わらせることができなくて、最後に取った行動には驚かされましたが
とても綺麗にハッピーエンドにしてしまうアルクさんに脱帽でした。

『恋蜘蛛』も好きでした。
何でしょうかあの色気は。
昔は友人同士だったという関係もそそられました。
どれも終わらせてしまうのが勿体ないと思うお話ばかりで、とても満足です。
ぜひお勧めしたい作品です。

6

この方の単行本では一番エンタメ性が高いかも

短編集なので作品ごとに。

『ギャンブラー大竹』
割とコミカルタッチ。大竹くんの気持ちが最初から見え見えです(笑)横断歩道の会話辺りが面白いです。

『シュミジエ』
シャツ職人という職業もの。とりあえず設定萌えかなぁ。

『極東追憶博物館』
表題作。これが一番面白かったと思います。大戦後のウラジオストク?舞台や設定が好みでした。何となく小川洋子さんの短編(幻想博物館だっけ?それと薬指の標本)を思い出したのは私だけでしょうか。ハッピーエンドじゃなくても良かったな。

『役に立たない人』
ビルの谷間にある広場という舞台がいいなあと。あとは大福やレコードのエピソードが良いですが話は、それでいいのか?と思いました。

『恋蜘蛛』
男妾にはロマンがある…かどうかは分かりませんが、これBLじゃなくても良くないかな…と少し思ってしまったり。

『ウルトラマリンブルーシティ』
これは雑誌で前編だけ読みました。とにかく設定が面白いなあと思いました。これもおとぎ話モチーフなんだなあ。

『春麗ら』
俳句教室いいなあ…。軽いタッチで読みやすかったです。それにしてもまさかのワキ毛発言!

やっぱりどうしても「絵が良ければ神なのに…」という思いが拭えなかったのでこの評価です。

2

手。

短編集。
すべてちょっとほろ苦テイストのおとぎ話だと思います。
結末を描かないことで、そこから先は読者の中で
そっと息づくような気がしました。

一番私が好きなお話は『極東追憶博物館』です。
極東に住む日本人康夫が町の博物館の入場券係りをしていて
小さな穴から、お金と切符のやりとりをしているのですが
その小さな穴から見える手に惹かれたグレゴリーに求愛されるというお話。

身体の大きな外国人からみたら日本人の康夫の手は
男の手に見えず女と間違えて求愛してしまうという
普通はここでコメディになってしまうのだろうけど
せつなくて甘いファンタジーな仕上がりでした。

しかしながら国が消失しているというすごい設定。
ちょっと近未来でありながらノスタルジックなんですよね。
作中にでてくる「先の戦争」というのは第三次世界大戦なのか
第二次世界大戦なのか・・・

2

何度でも読み返せる味わい深さ

萌か神かで迷ったんですが、この得がたい味わい深さゆえに神に。
正直皆さんが仰ってらっしゃるように絵自体は万人受けしにくい絵だと思われるのですが、読んでいるとものすごくかわいく魅力的に見えてくるこのミラクル具合。
特に表題作の『極東追憶博物館』は何度読んでもじんわり涙腺にくる名短編だと思います。
こんなに充実した短編集は少ないような気さえしてきます。
どのお話も大好きで、本当にアルクさんの魅力にすっかりはまりこんでしまいました。

6

あっさり風味

全体的にあっさりめです。引き算の美学と言うか。
足し算しまくり、ベタ甘好きの私にはやや物足りなかったかも。
印象としては、漫画というよりも童話とか小説のような雰囲気です。
独特な雰囲気をお持ちの作家さんのようですので、好みにピタリと合えばかなりはまるかも。
感情の表現も独特なので、いまいち共感できないところもありましたが、「シュミジエ」の初めての恋に震えて泣く主人公と、「楽しい俳句」のギャグは好みでした。
良い作品だとは思いますので、迷っている方は一読をお勧めします。

1

あえて結末を語らない形のハッピーエンド

程よい長さの短編が7編(9話)入っています。
どの作品をとっても
短編の歯切れの良さをうまく生かした絶妙のラストにうならされ
ますます遙々アルクさんの発想の自由さと
ストーリ構成やシナリオ運びのうまさを実感させられました。

その辺に落ちていそうな何気ない日常のひとコマのようなお話から
フランスのオーダーメイドシャツのお店のお話
さらには、人魚(でも足があるw)が登場するファンタジーなお話まで
バリエーション豊富なお話が楽しめますが
私が特に印象に残ったのは
表題作の「極東追憶博物館」と「役に立たない人」。

「極東追憶博物館」は
ある極東アジアの町の博物館の入場券係の男・ヤスオと
男の手に一目惚れしたと言って博物館に通ってくる男・グレゴリーのお話。
ヤスオの顔も声も知らないので
ヤスオのことを女性だと思って博物館に通って来ているグレゴリーに
申し訳なさから、グレゴリーに真実を告げないまま離れようとするが。。。
それぞれ別の機会に真実を知った二人の心の動きが切なくていい。
ちょっとドキッとする場面も用意されてて、とても印象に残りました。

「役に立たない人」は
誰も人の来ない市の公園で名ばかりの管理人をやっている男と
たまたまその公園にやってきた営業マンの男との
何気ない心の交流を描いた作品。
日がな一日、ありもしない公園でのイベントを妄想し続ける男の純真さに
営業マンの男はどんどん惹かれていくんだけど
ある日、その公園がなくなる、と聞かされて
本当に男の妄想の中のイベントを実現してあげて
さらに、この男が「役に立たない人」ではないことを
身を持って証明するんです。。。
それが、甘い甘いw
ラストの「役に立たない」人“だった”男がなんとも愛おしいですw

長くなりそうだったので、とりあえず2作品分だけ感想を書きましたが
他の作品もそれぞれ異なった印象を与えてくれて
1冊でかなりいろんな感情を感じさせて貰えました。

他の作品でも言ったかもしれませんが
絵が苦手敬遠しているけど、遙々さんの作品は気になる、って方に
入門編としてよい作品集だと思います。

6

お話の切り上げ方の上手さ

アルクさんの作品はじっくり読むべきだと思っているので、とっくに購入していたんですがゆっくり読める日が来るまで取っておいていました。
短編集でしたが、やっぱり良作揃いでした。

【ギャンブラー大竹】
思いっきりヘタレのカッコつけ男・大竹と、彼の気持ちを知りながら意識して知らんぷりをし告白してくれるのを待っている斉木のお話。
キスすらしない恋のお話っていいよね。

【シュミジエ】
人間に興味が無かったシャツ職人が理想の体形の男に惚れて、ただの男になっちゃったお話。
キスしかしないお話もいいよね。

【極東追憶博物館】
帰る国を無くして寂しい男と彼の「手」に惚れてしまった男のお話。
女性の手だと思って惚れこんで、将来の夢まで語るくらい好きになった「手」の持ち主が男であった場合、想像と違ったといって去っていくのが普通なんだろうと思いますが、「どんな姿でも愛せる」と言った告白を違えることなく愛しぬいたグレゴリーもすごいし、愛されることを嬉しく思い、手だけでも差し上げたいと切り落とそうとするヤスオもすごい。
痛いけどあったかいお話でした。

【役に立たない人】
世間の役に立たないのなら僕の嫁になっちゃいなよってお話?
いやいや、夢の世界を漂っていた人を現実に引き戻したお話じゃないでしょうか?

【恋蜘蛛】
これも嫁話。これは女性でも話が成り立つみたいですねぇ。

【ウルトラマリンブルーシティー】【アクアマリンブルーウォーター】
人魚と人魚の魂を半分分けてもらった男のお話。
恋というのとはちょっと違うような気もします。
運命の片割れといったところでしょうか。なぜか引き合い離れられない。
それは恋と等しいのでしょうか?それにしても、人魚が脱皮!するとは!

【楽しい俳句教室 春麗ら】【夏来る】
上司の命令で俳句を習うことになった男と、若き俳句の先生の、すっとぼけたお話。
それって、俳句って言うよりオヤジギャグですよね。

というわけで、ウルっとくるお話、ププッと吹くお話取り混ぜた短編集でした。
ここで終わっちゃうの?って思うような終わり方のお話がいっぱいでしたが、そこが上手いところだなぁと思いました。

6

短編なのがもったいない!

短編集なんですが、短編で終わらせてしまうのがもったいない作品ばかりでした。
不思議なお話だったり、切ないお話だったり、本当に今まで読んだことないようなお話を描いてくれる作家さんです!

「極東追憶博物館」表題作です。
言うなれば"手"フェチなお話。博物館のチケット売り場の男と、その手に惹かれる男。
"手"は確かに綺麗だと見惚れちゃいますよね。
遠くへ行ってしまう男に手を切り取ってあげようとするのは切なくもありました。

「恋蜘蛛」とても短いお話でした。軍人に囲われているだけで、そこに愛とか恋とかないようなのに、一度も口にしていないのに、確かにそこには何かがありました。こんな短いお話なのに沢山のものが詰め込まれていたような気がしました。

「ウルトラマリンブルーシティー」人魚のお話。
一番不思議なお話ですけど、(言い方が悪いですが…)一番軽く読めました(笑)

次の作品も本当に楽しみな作家さんです!

6

シリアス、ファンタジー、ラブコメ!!どれも秀逸の短編集

アルクさんは短編もいい!!良すぎて長編で読みたい、続きが気になる~、もっと膨らませて是非とも長編で読みたいよぅ、、そんな作品ばかりでした。
中でも表題作がツボに入りまくりで、短い話なのにウルっと。この話が好き過ぎるので神評価。

『極東追憶博物館』
博物館で働く天涯孤独な康夫の手に恋をしたグレゴリー。
グレゴリーに断りの手紙を書く康夫の気持ちが切ない。
一言自分が男だと言えばいいのに、手紙を書くのは、愛されたままで居たかったからなんでしょうね。
グレゴリーが愛を説けば説くほど、、康夫は苦しくて、、。
グレゴリーを愛してしまう康夫の孤独さに胸が切なくなりました。
そしてラスト、康夫はグレゴリーに、、。
ハラハラしたけどラストはハッピー。ああ、ホッとした、、。
寂れた博物館の設定が効いています。童謡を歌うシーンとか、、ハッとさせるシーンを描くよね~、アルクさんは。

『ギャンブラー大竹』
イケメンで頭もいいのに自堕落な生活を送る大竹。
大竹の世話を焼く友人。バレバレなのに好きだと言えない恋に純な大竹が可愛い~。

『シュミジエ』
恋がわからないテーラーのクロード。
初めての恋にテンパリまくり!頬染めて泣き崩れるクロードに鬼萌え~。

『役に立たない人』
役に立つって、、そんなあんた!って思ったけど、嫁にするなら良し!

『恋蜘蛛』
かつての旧友に妾にされた雪也。だが、男は2年も何もしなかったのに、突然雪也を抱き、、。二人の思いは通じたのかも知れないが、悲劇的な未来が待ち受けてそう。
しっとりと切ない雰囲気が素敵。

『ウルトラマリン~』、『アクアマリン~』
仕事人間の深海の前に人魚と名乗る青年が現れた!ファンタジーです。
いろいろびっくりです。謎が多いので長編でじっくり読みたいよ~!!
金魚と話す人魚がツボりました。
この二人はどうなっちゃうのでしょう?一つになって海へ還るのかな?

『楽しい俳句教室』
カワユイ俳句の先生とちょっとチャラいサラリーマンの話。ラブコメ。
先生のカワイコちゃんぶりにドキューン!

どの話も面白かった!やっぱりアルクさんが好きです!もう、好き過ぎな位好きだ~!!
まだまだ、書籍化されてない短編があるので、本にしてほしいよ~!!

10

まさに珠玉の短編集でした

シリアスからコメディまで、幅広く楽しめるお得な一冊です。
表紙の柔らかくどこか哀愁が漂う色合いが素敵だと思いました。
どの作品も私にとっては外れがなく面白かったのですが、
特に好きなのは表題作と『役に立たない人』『恋蜘蛛』です。

美しい「手」に恋をする男と、
その男に惹かれていく青年が描かれる表題作。
もう帰ることの出来ない祖国を思い、
寂しく暮らしていた青年の心を
温かく包んでくれた男の情熱。
物言わぬ手に熱く愛を語る男の姿は一途で胸を打たれます。

帰るべき場所がもうどこにもない。
これは絶望的な悲しさ、寂しさです。
そんな辛い思いを抱えてひっそりと生きてきた青年が、
声もかけることも、姿を現すこともかなわない、異国で落ちた恋。
相手に名乗れないという状況が切なくて。胸が苦しくなりました。
そして男の為に取った行動が……もう言葉には出来ません。
いいお話だったと思います。

どの作品も相変わらず膨大なネームなのですが。
どれもこれも詩的というか、抒情的。心に染み入る文章です。

「Nさんの部屋にはちゃんと暖房があればいい…そんなことを思った」
という『役に立たないひと』のモノローグがとても好き。
Nさんに対しての愛が溢れんばかりで、胸キュンでした。
あとキノドクなヒトが異国の歌(レコード)に耳を傾ける
エピソードにホロリとしました。

『恋蜘蛛』は二人のその後を考えると、
鬱展開しか思い浮かばなくて。
勝手に想像して、ひとりでダダ泣きしました(苦笑)
満月の夜に主人公が連れ去られる場面が印象に残り、とても好きです。

5

やっぱり遥々アルクはイイ!

今回の短編集はどれも切なさを少し含みながらも、人を思う気持ちを紙の上に堕ちた水滴が広がっていくように染みわたらせる、ちょっとしたデザートのような話の数々です。
本当に、心を描くのが上手いです!

表題作
戦後、ロシアに組み込まれたウラジオストクに住む康夫は本土にいる家族と離れ離れになり、帰れない。
そして宛先不明で帰ってくるのに手紙を書き続けているさびしい人だと思う。
小さな博物館で顔を見せず切符の販売窓口の仕事をしている彼の手に惚れたというグレゴリーからラブレターを貰う。
女性と勘違いしているのかと、断りの手紙を書き、失恋に打ちひしがれるグレゴリー。
モスクワに戻ると言うグレゴリーに、彼の好きだったという手をあげようと手首に包丁を入れる康夫。
激しい愛ではありませんが、そこまでする康夫の心に胸を打たれます。
結局切り落とすことはできませんでしたが、その後の二人にはきっと幸せが・・・

「恋蜘蛛」
学生の頃から何かと面倒を見てくれた今は軍人の君嶋に囲われている雪也。
でも体の関係はなく、満洲に出征するという前に彼を抱く。
もうこれでサヨナラという君嶋に、連れて行ってくれと願う雪也。
君嶋の深く悲しい想いと、投げやりなようでいて、深く思い合っていたんだなと思うこの話。
ハッピーエンドなはずなのに、何故か悲しみが込められている気が・・・

「役に立たない人」
ひょっとして”ビター&スイート”にあったクリーニング屋さんの悲しい話みたいだったらどうしよう!と心配しましたが、幸せが待っていてよかった!!
誰も来ない公園の管理人の新しい仕事先は会社員の”嫁”です♪

「ギャンブラー大竹」
ツンデレですね~wwこういう大竹のキャラ大好きですよ。

「シュミジエ」
シャツ作り一筋だったクロードが、その体型に惚れてキスされて、初めて人間に興味がわいたらその先はパニック!?

「ウルトラマリンシティーブルー」「アクアマリンブルーウォーター」
自分の前に現れた男の人魚は自分の半身!?
脱皮・変身にびっくりですが・・・いつか二人は一体になるのだろう。

「美しい俳句教室~春麗ら~・夏来る」
無自覚フェロモン垂れ流し先生、遊ばれてますがカワイイです!

バラエティに富んで、飽きない、また宝物になる作品です。

8

ファンタジーからコメディまで、いろんな作風が味わえます

遥々アルクさんの短編集です!

『シュミジエ』
老舗シャツ専門店のシュミジエ(シャツ職人)・クロードは、他人の外見や性格には興味がない。
興味があるのは、人のスタイルだけ。
そして理想の体型であるグランベールに出会い、彼は密かに初恋を知るのだが…?!
他人に無関心なクロードが初めて恋を知った反応が可愛すぎます!
間違いなく萌えます!

『極東追憶博物館』
戦争により、極東の地にやってきたヤスオは、そこで博物館の入場係として働くことになる。
顔を出さず手を出すだけで済む仕事なのですが、そんな彼の“手”に恋をした青年・グレゴリーが現れて…?!
グレゴリーの熱い想いにキュンとするのと、
自分のことを女と勘違いしているグレゴリーに戸惑いながらも、彼のまっすぐな想いに惹かれていくヤスオが切ないです。
旅立つグレゴリーのために、ヤスオが捧げようと思ったモノとは…?!
思わず「よかったね!」と言ってあげたくなるようなハッピーエンドです。
二人ともがすごく純粋で、ついつい応援してあげたくなっちゃいますね♪

『役に立たない人』
「ビター×スイート」収録の「cleaning」と同じような作風です。
公園の管理人である主人公ですが、掃除はロボットがしてくれるし、彼は何もすることのない“役に立たない人”でした。
働くことってなんだろう?生きていくってなんだろう?ということを考えつつ、
やっぱり私は「ありがとう」と言われることが、自分の仕事のやりがいにつながっているんだなーと思ってみたり。
そんな「役に立たない人」に会った青年が、彼に提示した「役に立つ仕事」とは…?!
正直なところ・・・「えーっ?!」と思いましたがw。BLなんだしコレもありかなーというラストでした。
まぁ、結局は二人が幸せならいいと思う。
見ていて恥ずかしいくらい、甘い。

『恋蜘蛛』
高校の同級生である君嶋に、借金のカタに妾にされた雪也。
妾にされて2年、はじめて身体を求めてきた君嶋は?!
お互いの関係ゆえに素直になれない二人。
友人であったときから、きっとお互い好きだったろうに…
でなきゃ、男を妾になんてするわけない。
一度素直になってしまえば、案外可愛い二人なのでした♪

『ギャンブラー大竹』
ギャンブラーな大竹と、彼を見守る友人。
意外に純情な大竹と、何でもお見通しな友人。

『ウルトラマリン~』『アクアマリン~』
人魚を拾った人間。
現代版・人魚姫?!

『楽しい俳句』
カワイコちゃんな俳句の先生と、軽い軽モテリーマン。
ラブコメです。

やはり切ない系&ファンタジーを描かせれば逸品ですね!
作り込まれた世界観と、ロマンチックなストーリー展開がたまりません。
短編集なんで、いろんな作品を楽しめますよ

10

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