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虫シリーズ3作目、実際に書かれた時系列としては2作目の作品です。
同人誌では二冊に別れて発刊され、今回の文庫でも後半は「続・~」となっているが、
事実上は一つの話の前半後半。(ということで、一つの話として扱って評価します。)
友人の影響でこの樋口先生の作品は実はコンプなのですが、正直好みとしては微妙…
なのですけれど、これを同人誌で読んだ時にはもう大号泣でした。
何故この力作を商業誌で出さない?!と思ったものですが、このたびめでたく文庫化。
噂で読みたいと思っていた人々にとっては、本当に嬉しい文庫化ではないでしょうか。
ということで、個人的には再読ということになります。
細部は忘れちゃっているのでハッキリは分からないのですが、多少修正しているのかな?
1作目で悪役だったタランチュラの陶也。
澄也を失った痛手は実は大きく、荒れて恵まれた日常に膿んでいる中出会った最も弱き存在。
色々と危なっかしい郁に、言い訳しながらも手を貸すうちに、
彼の素直でピュアな眼差しにどんどん惹かれていく…
郁は、未来を望むことも許されない自分の運命を受け入れて淡々と生きている。
そんな郁が出会った強くて何もかも持っているかのような陶也の孤独…
切ない恋は、悲劇を生み、そして。
*
樋口作品を読むといつも悔しくなる。
かなり極端な世界観は、実はステレオタイプな昔風で垢抜けないし、
薄幸の受けは、健気だけれど個人的にはイラッとして好きになれない。
しかも、結構毎度同じパターン。
それなのに、なんだか結局読まされてしまうのが樋口節なのか。
その上泣いてしまうなんて…悔しいったらありゃしない。
樋口先生の受けは、しょうもない攻めをまっとうなカッコいい奴へと変えていく。
個人的には単なるバカに見える(お好きな方ごめんなさい)受けは、
人を疑わず無垢な愛を捧げる、実は聖なる者か。
後書きの後ろのSS「something good」は、
同人誌で出ている「わたしのした、なにか善いこと」の改題かと思ったが、
読んでみたら全く別な話だった。
本編がお好きでしたら、同人誌の話も是非。
同人のほうでは見てなくて、初見からの感想です。
このシリーズは全部見ているのですが、今回の話が一番泣きました。
やはり人が人を救うお話はぐっときますね。
ネタバレ↓
昔ひどいことをした攻めが、受けによって改心します。愛を感じ、生きる喜びを覚えます。
受けのことを一途に想い続ける攻めがたまらなく切なくて、優しい気持ちになります。
受けのレイプシーンが痛々しいのと、話の展開が前作、前々作と似ているところは評価が少し下がりますが、それをも超えてこの作品での受けと攻めのキャラクターと設定がよかったと思います。
個人的にこういう話が好きなのもあるのですが、とにかくロウクラスが嫌いだった攻めが受けによってだんだん変わっていくのがとても萌えます。病弱な受けがいつ死ぬかもわからないという設定も切なくてたまらないです。
でも最後はハッピーエンド!
いやーよかったなぁ~と最後に一つお茶を飲める…そんな作品でした。
カイコガの郁。カイコガって虫の中でも可愛い虫だと思うけど、寿命が短く羽があるのに体が重くて飛べない。
脚が弱いから自分の力で木とかに止まれないし、地面に落ちたら死んじゃうとか可哀想な生き物です…。
陶也が郁にキスをするとき、「眼、閉じてみ」って言うんだけどこれに萌えました。
郁が可愛い。
でも、寿命が短くてあとどのくらい生きられるかわからない。
せっかく、大好きな陶也と一つになれたのに切なくてやるせないじゃないか。
郁の拉致られてからの状態は悲惨でした。
今までの翼や里久は拉致られても最後までヤられるまえに助けてもらえてたし…。
郁がいなくなった時間から4時間も経って陶也が助け出すんですが一番体の弱い郁なのにボロボロにさせられてました。
篤郎も可哀想だと思う。頭ごなしに怒られてちゃ理解しても反発しちゃうだろうし。こうなるまでに放置してた親が悪いです。薬や悪い事に使うってわかっててお金は使わせてたようだし。
陶也が郁とのノートを読み返すシーンに泣いてしまった。
シリーズ1で陶也は悪者扱いなんですが、私にはそんなに悪者に見えなかったです。
大事に澄也を取られるのが嫌だっただろうなと思ってました。
この巻で陶也と澄也の関係に触れてるけど、セックスを覚えたのも二人で友達以上恋人未満、お互いに孤独で陶也には澄也、澄也には陶也しかいなかったんだなって。
ロウクラスの生き物はみんな体が小さかったり、体弱い人たちしかいないのかな?
俺様なロウクラスが攻めと美人なハイクラスが受けの下克上みたいな話も読んでみたいです。
ハイクラスに健気で純粋な受け子はいないんでしょうかね。
時折、出てくる澄也と翼。
赤ちゃん生まれたんだね。おめでとう。
そこまでの甘々な二人の話も読んでみたいな。
苦労多かっただろうし。
でも、翼はホルモン投与で完全な女の子になっちゃったのかな…。
両性具有なら良いけど、完全な女体化は受け入れられないかも…。
見た目は男の子らしいから両性具有って事かな。
陶也の兄の雅也と秘書の刺野の関係も気になります。
今まで一番長くなったかも…。
擬人化昆虫シリーズ第3弾です。
今回は1作目でものっそ嫌な男だったタランチュラと、家畜化された唯一の虫であるカイコガのお話です。
自分一人では生きることも出来ないくらい身体の弱い郁は、口をきくことが出来ず、すぐに熱を出すし転けただけでも歩けなくなってしまうこともあるくらい、とにかく弱い種です。
そんな子をうっかり好きになってしまう攻、という構図。
一途にずっと陶也のことを大好きだった郁を、最初はロウクラスに対する嫌悪もあり、暇つぶしのようにして付き合うんですが、あまりの健気さに絆されて、気がつけば自分が蜘蛛の巣に引っかかっちゃった状態。
嫌~なやつだった陶也が、紆余曲折あって受に振られ、涙涙な展開になった時には思わず、ざまぁ、な気持ちになるんですが、とにかく全編通して郁が健気で健気で健気で、もう胸がきゅんきゅんします。
胃の腑がせり上がるような切なさもあり、ことある毎に命の危険にさらされる姿は、もの凄い庇護欲をそそります。
1作目の陶也を見てると、最後の方ではここまでデレたか、というくらいの変貌っぷりに、愛は人を変えるもんなのか、と胸が温かくなりました。
タランチュラ 陶也 とカイコガ 郁
今回も愛の巣への澄也(陶也の従弟)と翼が脇役で登場。
時系列は翼と結婚した後のようです。
陶也22歳ということは愛の巣から4年後。
澄也20歳と翼18歳で結婚し最近子供も生まれたとか。
翼が高校卒業してすぐ結婚して幸せに暮らしてるんだなと思うと知人の近況を聞いたみたいに嬉しくなりました。
けれど陶也にしてみたら、自分と同じように虚しい思いややりきれなさを共感できていた唯一の救いだった澄也の幸せそうな顔は見たくもないってとこでしょうね。
自分だけが取り残されて、なんだか裏切られてような気持ちで。
前半の陶也は本当にろくでなしです。
力のないものは傷付けてもいいし同じ人間とも思っていない最低な男でした。
もしこのまま郁と出会わず、人の痛みや悲しみを感じることもなく愛する喜びと苦しみも知らないまま生きていたら、もっとしょうもないヤツになってたくさんの人を悲しませたことでしょうね。
後半の4年後の陶也は本当にすごいいい人に変身してました。
学生時代にはボランティアをして、ロークラスのための安価な弁護士事務所に低賃金で勤務してるんですから。
愛の巣の頃の陶也とは別人。
これも愛の力ですね。
短命で力も弱く刹那的な郁。
自分が死んだときに悲しい思いをする人が少ないようにしたいというのが望みの儚さで、多くを望まない。
このシリーズは1冊ごとに痛さが増すように思います。
陶也の思いを受け入れることに迷っているとき翼が自分の愛する人への想いを語り背中を押してあげられたのはいいエピソード。
翼も人の親ですね。
郁のひねくれ者の義弟はちゃんと更生できるんですかね。
郁のために生き直してほしいものです。