• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作眠り王子にキスを

宮村周平,29歳,デリの常連で教室生徒の会社員
堀篤史,32歳,デリのオーナーで料理教室講師

その他の収録作品

  • 木下けい子「赤ずきんちゃんの誘惑」
  • あとがき

あらすじ

デリのオーナー兼シェフの堀篤史には、気になるお客がいた。
人懐こい笑顔にスーツがよく似合うサラリーマンと思しき男だ。
週に二回ほどやってくる彼とかわす会話が、最近の密かな楽しみだった。
彼の人懐こい笑みを思い浮かべると胸の奥に小さな火が灯るのだ。
でも、傷ついた過去の経験から、篤史はもう一生恋愛をしないと決めていた。
それなのに、彼──宮村に料理を教えることになって!?
番外編コミックス『赤ずきんちゃんの誘惑』も特別収録!

作品情報

作品名
眠り王子にキスを
著者
月村奎 
イラスト
木下けい子 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
シリーズ
いつも王子様が
発売日
ISBN
9784813012818
4.2

(351)

(195)

萌々

(106)

(23)

中立

(13)

趣味じゃない

(14)

レビュー数
48
得点
1481
評価数
351
平均
4.2 / 5
神率
55.6%

レビュー投稿数48

冷え固まった心を溶かすもの

まだ月村先生の作品を読むのは2作目なんですが、どうもすごくツボみたいです。本当に身近にいそうなありそうな世界観でリアルなお話で、でもとても夢とロマンのあるお話がすごく好きです。

今作はゲイであることで理不尽に蔑まれてきた過去から恋愛を封じてしまった料理教室の先生兼デリを営む篤史と常連客で気さくなリーマンの宮村さんのお話です。

もうこの篤史の過去があまりに理不尽で読んでいて悔しくなります。しかも篤史には自分が悪いという考えが根底にあるから辛い過去を自虐的になんて事ない感じで語るのがさらに痛ましい…何度眉を顰めたことか…
そんな傷つけられすぎて固まってしまった心を文字通り暖かく、時に強引に溶きほぐしてくれる宮村の優しさが沁みました…そんな彼だって優しいだけじゃなくて篤史を自分のものにしたくて一生懸命行動してたという事実もまた尊い。

篤史が宮村家に恋人になってから訪ねたシーンは思わず涙が出ました。すごく痛くて辛いけど本当に温かい気持ちになれる1冊でした。

0

凍りついた心を優しく呼び覚ますキス

木下けい子先生の作品が大好きで、『いつも王子様が』は既読でした。
最近になって小説にハマり、漁っている中で偶然出会えたこちら。

はああ…良かった。。夜中にずびずび、泣きました。
特に、篤史が宮村の実家でいんげんの白和えを食べ、涙をこぼすシーン。
後に明かされる母親とのエピソードを読んで、再度号泣です。辛い…

篤史の家族と宮村の家族との対比にもまた、胸が締め付けられました。
篤史が欲しくて欲しくてたまらない、けれども絶対に手に入らないと分かっている「理想の家族」、眩しい家族の姿が、宮村家なのですよね。

宮村が篤史を母親に”一生添い遂げたい人”として紹介し、泣いて詫びる篤史の姿にも号泣。そこに、ふんわりと優しい声をかけ、篤史のことを肯定してくれる母親…
血の繋がった家族とは理解し合うことはできなくとも、自分を罪あるものとして常に否定してきた篤史にとって、大きな救いになったのだろうなと思います。

篤史の境遇がもう、本当に痛々しくて痛々しくてたまらなかった。
実の母親・弟からの拒絶。その言動に、人の醜い部分をぎゅっと凝縮したような生々しさがあって。
でも一番腹が立ったのは、中学の教師ですね。。本人はいたって善意のつもりの悪。

こんな環境で、まさにタイトルどおり、恋心を永遠に封じ込めた「眠り王子」になった篤史の頑なな心を、優しく優しく解してくれたのが宮村。

同性が恋愛対象ではないノンケが、その壁を飛び越えて同性を好きになる、って、まあちょっと考えても相当ハードル高いよねって思うんですが。
月村先生の手にかかると、もうこれが本当に、ごく自然な流れに感じる。すごいマジックです…

料理教室でのキリッとして素敵な篤史と、プライベートのおっちょこちょいで何か放っておけない篤史の姿のギャップ、堪らないですよねえ。かっこいい人なのに、守ってあげたくなる可愛さがあるんですよ。

内容について欲を言えば、攻めである宮村視点のSSなども読みたかったなあ、と。
(宮村が篤史に心底惚れているのは、十分伝わってきましたが)

そして付き合い始めた2人のその後、数年後、10年後の様子なんかも見られたら最高…どうしても不安から逃れられない篤史を、宮村はきっとふんわり暖かく優しく包んでいるんでしょうね✨さなぎを守る繭のように。

こちら、ちょうど10年前の12月の作品なのですね。
「良い作品は色褪せない」とは本当だなあと、しみじみ感じました。

0

繊細な心理描写に胸が詰まる

心理描写が繊細で切なく、ちくちくと痛むトゲがあって、傷を癒すような優しさもある。
これぞ月村節が詰まった作品でした。
「そばかすの浮き始めたバナナ」だったり、月村先生の言葉選びのセンスがすごく好き。

自身がゲイであることに強く負い目を感じている主人公というのは、加減を間違えてしまえばただただ卑屈なキャラクターにもなり得ると思うのです。
しかしながら、今作の篤史はそうではない。
恋愛をする気はない。してはならないと思っている。
宮村にどうしようもなく惹かれているけれど、その手をとってはいけないと思ってしまっているんです。
宮村からの好意も、宮村への好意もなかなか認められず、自分の心に正直になれずにいる篤史に焦れてしまいそうなところですが…
作中で描かれる彼が育った家庭環境と彼のこれまでの人生を顧みると、ああそうだよね。怖いよね。苦しいよねと、胸がいっぱいになりました。
こうならざるを得なかった、こう生きるしかなかった篤史が本当に切ないのです。
自分よりも周りのことを想っている、とても優しい人のように感じました。だからこそ彼の幸せを願ってしまう。
ぎゅっと締め付けられるような心理描写が上手いです。

心の傷と同じように、小さな傷をいくつも作っている篤史の手にそっとハンドクリームを塗る宮村。
誠実な宮村の手によって、少しずつ、本当に少しずつ傷が癒され心解かれていく。
篤史の心の傷が癒えるまで時間はかかるかもしれないけれど、宮村の愛情深さと優しさ、そして少しの執着心に包まれてたっぷり愛されていってほしい。
優しくあたたかい気持ちになれる素敵な1冊でした。

1

攻めの押し強し

ゲイであることを否定されてきた篤史は、恋愛もせず、社会で独り立ちして生きていくと惣菜店と料理教室の講師として頑張っていた。

そこへ客としてたびたび現れていた宮村周平と出会い、ブレーキをかけながらも恋に落ちていくのを止められなかった。

もうね、篤史が過去にトラウマから恋愛しないって決めているのに、宮村の性格や接し方にどんどん惹かれていっちゃって。なのに必ずストッパーをかけようとしちゃう。やはり育った環境ってすごいんだなって思います。しかも途中で出てくる弟君は医者ですよね。
こんな医者は嫌だなって思っちゃう。

宮村の家族は、そういうことも受け入れられるような家庭で育てきたんだろうなというのがうまく書かれていて、いきなり母親のところに連れて行ったのも、きっと篤史に言えば逃げ腰になっちゃうとわかっていたからで。その通りだったわけですが。

篤史が宮村に出会えたのは奇跡かも知れないけど、この奇跡を大事に育ててほしいなと思う二人でした。

1

カッコ良すぎる

なんと言っても攻めがかっこよすぎて。こんなに人間のできてる人たちばかりだとファンタジーとしか言いようがないのですが、攻めの人格に惚れるしかない。潔さ、懐の深さ、好きにならずにはいられない。木下先生の漫画と連動してるのも楽しかった。装丁も綺麗だし普通に飾っておけそうな、外見、内容、両方満たされます。

0

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP