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表題作夜ごと蜜は滴りて

元代議士秘書で清澗寺家末娘鞠子の婚約者・深沢直巳
清澗寺伯爵家次男で家を憎む美貌の次期当主・和貴

その他の収録作品

  • 蜜よりも夜は甘く

あらすじ

没落しつつある華族・清澗寺家の次男・和貴は、長男の国貴が出奔してからも、相変わらず放埓な毎日を過ごしていた。ある日、ほとんど話したことのなかった秘書仲間の深沢と親しくなり…。(ill.円陣闇丸)

作品情報

作品名
夜ごと蜜は滴りて
著者
和泉桂 
イラスト
円陣闇丸 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
リンクスロマンス
シリーズ
この罪深き夜に
発売日
ISBN
9784344802674
4.5

(63)

(50)

萌々

(4)

(5)

中立

(0)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
11
得点
281
評価数
63
平均
4.5 / 5
神率
79.4%

レビュー投稿数11

テンプレも極めれば神!

清澗寺家シリーズ第二弾。
前作は長男の国貴、今回は次男の和貴(26歳 表紙絵左下)が主人公です。

今作の内容を一言で言えば、その美貌で数々の男たちを手玉に取り、破滅させてきた和貴が、妹のフィアンセ・深沢(27~8歳 表紙絵右上)に調教されて、深沢なしには生きられなくなる・・・というもの。
このテのストーリーを読んでいつも思うのは、「こういうのは敢えてBLにしなくても、男女ものでいいのでは?」ということです。
繰り返し作品化されるテーマだけあって、調教ものは魅力的ではあるんですが、その魅力を追求していくと、女(=大半の読者)の被支配欲というところに行きつきそうな類いの話だけに、BLにすると陳腐になってしまう気がするんですよね。
でも、この作品は別。
そういう醒めた感覚を吹っ飛ばすオーラを持った作品だと思います。

オーラの源の一つは、やはり説得力かと。
舞台となる大正期という時代にマッチした堅めの文体。
しかもなんちゃって大正風ではなく、時代背景がさりげなく物語に織り込まれているのが嬉しいところです。
このテのストーリーの宿命として、和貴はかなり女性化してしまうものの、和貴が深沢に縋らずにはいられなくなるまでの彼の心の揺れがしっかりフォローされているせいか、知らず知らずのうちに説得されてしまう・・・文章力も抜群です。
BLでこういう愛・こういうエロスを読みたい!という一つの典型(それ自体はとても扇情的なもの)が全く衒いなく表現されている上に、充実のクオリティー。
作者あとがきには「メロドラマを目指し」たとありますが、メロドラマ上等!
これは名作BLだと思います。

個人的にツボなのは、深沢の描写。
私の場合、BLを読む時の評価は、どちらかというと受けの魅力に左右されがちなんですが、このシリーズは何故か攻めに惹き込まれてしまいます。
全編受けの和貴目線で書かれているため、深沢の心理は和貴の主観を通して描写されています。
しかし、和貴は深沢の気持ちにとても鈍感。
深沢は自分に愛情などないし、感情に流されることにない鉄面皮の男だと思っています。
でも、実は深沢が和貴に執着していて、嫉妬心や独占欲が彼に衝動的な行動をとらせているのだということが、読者にはちゃんと仄めかされていく・・・その辺の微妙な心理描写が、上手い。
深沢の行動からじわじわと伝わって来る和貴への想いに、心を鷲掴みされてしまいます。

しかし、完全に深沢以外は何も見えなくなっている和貴に対して、深沢は・・・?
深沢は、和貴を支配することで清澗寺財閥をも完全に掌握しています。
和貴は全てを深沢に差し出しているけれど、深沢はマキャベリストの顔を完全に捨てたわけではないんですよね。
深沢という男にほんの少しグレーな部分を残したまま終わる・・・そこがまた、イイ。
サディスト深沢には愛が全てになってほしくないし、できればむしろ悪党であってほしいので。

悪党と言えば、深沢がベッドで和貴を縛るのに鞠子のリボンを使ったり、外から鞠子の声が聞こえるところで和貴との情事を楽しんだり、和貴に兄のペーパーナイフを〇〇させたり・・・という背徳的な嗜好を持っているのも、メロドラマとして高評価。
それって、愛・・・?と疑いたくなるような行為を「愛」と言い切る倒錯ぶりがたまりません。
さらにさらに、
「私の愛は、あなたにはきっと重すぎる」
という深沢のセリフが、最高にツボ!
この、決して安定することなく、崩壊の要素を孕んだままの2人の関係が、萌えを持続させてくれます。
深沢×和貴編は同人誌も多数出ているそうですが、それも頷けますね。(今月同人誌再録本が発売されるそうですよ~)

深沢の婚約者である鞠子と和貴の間で何の確執も生じないのは、とても不自然に感じる部分ではありますが、そこは女の登場がタブーであるBLジャンルの限界なのかなと。
深沢が鞠子のフィアンセであるという設定は、この物語に背徳的な色彩をたっぷり加えているし、個人的にはそれだけで大満足です。

ただ、このベタすぎるタイトルと表紙絵だけはどうにかならんかったか・・・本屋ではとても買えない(苦笑)
タイトル&表紙以外は文句なしに神!なんですが。

13

お前だけが、僕のやり方を否定した。

清澗寺家シリーズ第2弾。
1弾とは主人公が違うので、この本から読んでも大丈夫。
テーマはずばり「調教」!

『夜ごと蜜は滴りて』
清澗寺家次男で次期当主候補の和貴(24)は代議士の秘書を務めていた頃に同じように秘書をしていた深沢直巳(27か28)と出会う。
深沢は将来に夢を見ているようで、和貴にはそれが気に食わない。
自分の躰を遣って弄落してやろうと試みるのだが、深沢だけはどうしても落とすことができない。
それどころか、ある日を境に深沢は和貴に対して別の顔を見せるようになって…。

父親の生き写しのような容姿を持つ和貴はそれ故に一族の滅びを望んでいるところがあって。
何者にも囚われず、自分の躰さえも相手を支配し破滅させるための道具のように扱っていた。
生きる意味さえ持とうとしなかった和貴に踏み込んできたのが深沢。
深沢は和貴の武装を徐々に剥がして奪っていく。
どうしてかわからないまま気がつけば深沢に貶められる日々で。
自分の気持ちに気付いた時には深沢は自分が追い込んだ妹の婚約者という立場で。
ひどい扱いを受けるのはそんなにも憎まれているからなのか。

プライドの高い和貴が、最後の最後で屈せずにいられないのが深沢。
躰だけで満たされればいいのに、それ以上を求めてしまう自分がいるので躰だけを差し出すということも出来ず、かと言って想いを告げたところでどうにもならないだろうと思ってるのがなんだか切ない。
深沢は深沢のやり方で和貴の本質を見抜いて、手に入れようと動いてるんだけど…敬語攻めがイイ!

『蜜よりも夜は甘く』
両想いになったのに、顔を合わすのが恥ずかしかったり優しくされることが嬉しかったり和貴が初々しいです。
そして、好きなのに父親の陰を恐れて素直に触れることができない和貴が切ない。
深沢のことが好きで好きで好きで。
嫌われたらどうしよう。
深沢なしじゃ生きていけない。
そんな和貴がとても愛しく感じました。

9

シリーズ開始20周年でも色褪せない面白さ

シリーズ一作目が20年前に雑誌掲載されたという2022年、このタイミングで初読→沼落ちしてしまった神作品のレビューを…。

ちるちるTVでBLCD回を見るとよくアンリ54世さんが推しておられるので、タイトルに見覚えある方も多いのではないかと思います。
ドラマCDは現在入手が難しいですが、原作小説は電子書籍にもなっているので手を出しやすいはず。
電子の内容はこちらの新書版なので、文庫の書き下ろし短編が読みたい方はご注意ください。

ただ個人的には新書版&電子版もとても推したいです!!
理由として、文庫版は作者様が加筆修正をしているがゆえに、受け(和貴)の内面描写がだいぶ「わかりやすく」なっています。
わかりやすいのはもちろん良いことですが、受けの真実に気付いているのは攻め(深沢)だけ、となる=読者も騙されやすい楽しさがこちらの版にはあるかなと。

表紙やあらすじで攻めが一筋縄ではいかない男だとバレバレですが、バレていても豹変シーンでは「きたきた!!」となるので、何度読み返しても本当に面白い作品ですね。
アンリ54世さんもドラマCDの方で豹変シーンのセリフを「サビ」と言っておられましたが、原作でもサビなのでどれだけリピートしても飽きない笑。
令和のコンプラ遵守攻めが話題に上がる今日このごろですが、正直BLでコンプラなど要らない派なので、同じ気持ちの方にはとにかくお勧めです!!

異世界よりももはや異世界的に思える大正ロマンの時代。
骨太な長編シリーズなので読破には体力気力を使いますが、好きそうなカップリングの巻から読み始めるもよしで、私のおすすめはこちらの次男編です♡

読めば読むほど二人ともが愛おしくなるカップリングの始まりの巻、20周年だからこそもっと読む人が増えてくれたらなぁと願っています!

9

「おまえだけが僕の存在を定義する」。この一言が深い!

次男和貴編。和貴の性格も和貴と深沢の関係性もドツボでした!こういう濃厚なドラマがやっぱり一番萌えます。
父・冬貴に容姿が酷似している和貴は、そのことに嫌悪と恐怖を抱いています。「汚れた」父から生まれた自分は、生まれながらに汚れていて、全く無価値の存在である。己の存在を肯定できない和貴は、つねに破滅(死)への願望を抱いています。
和貴は、「自分は父とは異なる」ということを確認するために、セックスを通して他者を支配しようとし、高慢な自分を擬態します。しかし、擬態は、和貴の本来の自己から遠ざかること。擬態を続けていれば、自分自身を見失って行きます。結局自分を保つために為していたことが、自分を追い込む結果となっていくのです。自らを追い込むことでしか自分を保つことができない和貴が痛々しいです。
さて、そんな和貴が職場で出会った深沢。眼鏡が似合ういかにもエリートな男です。初めは、穏やかで実直な人柄を装っていますが、和貴の妹、鞠子の婚約者として清澗寺家に入るや、目的を露にします。いえ、彼の目的は実にシンプルで、ただ一つ、和貴を手に入れることだけなんですけどね。  
深沢は、和貴を抱くことで、和貴が父とは違う存在であることを彼に知らしめ、彼を破滅から引き離そうとします。これがかなりの荒療治なんです。濃厚な諸々のプレイも、荒療治の一環。深沢の趣味も入ってるかもしれませんがw(最初に読んだときは、強烈な印象だったんですけど、最近読み直してみると、そうでもない。あれ、私、麻痺してる?) 
理性では抗いつつも、快楽に溺れていく和貴に激萌えしました。この辺り、やはり兄の国貴と共通する部分がありますね。二人とも、父と自分を重ね合わせて見てるから、性に対して禁忌の念を抱いている。そういう意味でも和貴にとって、国貴はただ一人の「共犯」なんです。兄が側にいてくれれば、父に対する感情を共有することで、和貴は精神の均衡を保てたかもしれません。だけど、ただ一人の共犯である兄に見捨てられてしまったことによって、和貴は絶対的な孤独に陥ってしまった。 
和貴は、心の奥底ではつねに、自分を孤独から救い出してくれる存在は求めていたんだと思います。「おまえだけが僕の存在を定義する」。和貴と深沢の関係は、この和貴の一言に尽きるんじゃないでしょうか。深沢だけが和貴を和貴自身として見てくれた。深沢の前だけでのみ和貴は和貴自身として在ることができるんです。深沢によって高慢な擬態が剥ぎ取られ、現れたのは、繊細で脆く、子どものように孤独に怯えて、「捨てないでくれ」と訴えかける姿でした。ああ~どんだけ可愛いんだよ、和貴。
人間って他者から認めてもらうことで、初めて自分の本来の姿を知り、本当の意味で「私」になるんだと思うんですよ。和貴がそんな相手と出会ったことで、今後どのように自分の人生を歩んでいくのか。すごく気になります。
二人の関係は、きわめて危ういものですね。和貴は、深沢という自分にとっての唯一無二の存在を無条件で欲しつつ、深沢を失うかもしれないという可能性と彼によって暴かれる自分の本来の姿に怯えています。一方、深沢の愛は、深いがゆえに強烈です。深沢は、和貴の全てを独占せずにはいられないし、和貴のすべてでありたい。彼は、いわば和貴の全権を所有したがっているんじゃないでしょうか。快楽も生き死にもすべて自分が与えたい。深沢の愛は、そんな強烈な欲求に基づいているようにみえました。
こうした二人の関係は、危ういけれど美しい。虚飾のない、生身のところで結ばれる関係、全存在をかけてお互いを求める関係は、たとえその後に何が待ち受けていても一番美しい、素直にそう思いました。

7

エレニ

サガン。さん、こんばんは。コメ、ありがとうございます!
和貴さん、とても可愛い人ですよね。高慢さの奥に脆さが隠れているところとか、深沢が好きすぎて、深沢のことしか見えてないところとかもう!可愛すぎです!
「調教」って自分の中では、すごくハードルが高かったはずなのに、今では普通に読めてしまう自分にちょっとビックリです…(笑)まあこの作品の場合、エロそれ自体がメインなのではなく、あくまで方法という位置づけですし。もしエロだけが前面に出てたら食傷気味だったかも…。
>深沢はパワーアップ
なんか、6巻では、なかなかスゴイことになってるみたいですね。ついに針ですか…(笑)楽しみです(え?)

サガン。

エレニさんこんばんはー。
やっぱ和貴さんいいですよねぇvvv
私もまた読み直したくなりました。
…私も最初読んだ時は衝撃的だった記憶があるのですが、今あまり思い出せないところを思うと自分が麻痺してしまったのでしょうか。
話を重ねるごとに深沢はパワーアップしてますから(笑)

至上の一対

「あなたには私しか残してやらない。あなたには私しかいない。私にはあなたしか同じように。」
「愛と絶望は同じだ。」

言葉でうまく表現できないかもしれませんが、本当に彼らの間に流れている何とも言えない特別な雰囲気が好きでたまらないです。

7

この作品が収納されている本棚

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