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  • 心を半分残したままでいる(3)

心を半分残したままでいる(3)

kokoro wo hanbun nokoshitamamadeiru

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  • 紙書籍【PR】

表題作心を半分残したままでいる(3)

中上衛、カフェマスター、26
静良井真文、記憶障害を持つ青年、28

同時収録作品心を半分残したままでいる(3)

久遠光彬、カフェチェーン社長、35
静良井真文、記憶障害を持つ青年、28

その他の収録作品

  • カナリー
  • あとがき

あらすじ

日記の内容について久遠を問い詰めた静良井は、すべてをリセットしようとした彼に池に突き落とされた。それから数週間、静良井は車椅子生活ながらも、久遠の元で穏やかに暮らしていた。そこへ、ひどい別れ方をして以来静良井のことを気にかけていたらしい中上が様子を伺いに現れる。日記の恋人「M」が誰であったかを知らないまま、再び顔を合わせた二人だが……? ひたむきな愛が胸を打つ、感動の完結篇!!

作品情報

作品名
心を半分残したままでいる(3)
著者
砂原糖子 
イラスト
葛西リカコ 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
シリーズ
心を半分残したままでいる
発売日
ISBN
9784403524585
4.5

(187)

(139)

萌々

(25)

(12)

中立

(2)

趣味じゃない

(9)

レビュー数
24
得点
833
評価数
187
平均
4.5 / 5
神率
74.3%

レビュー投稿数24

辿り着く場所。

久しぶりに読み返してます。
どうなるのかとハラハラドキドキの最終巻。
読み終えた時、心からよかったと思い、この2人の幸せを願わずにはいられませんでした。


記憶障害を患い、数年おきに自分を忘れてしまい、まっさらになってしまう真文。
幼なじみとして、恋人として過ごし、真文が自分を忘れてしまっても、傍らに居続けてきた衛。
真文が失踪した後は、探し続け、待ち続けてきた。

2人の気持ちを思うと、たまらなく切なくて苦しいです。
夜の公園でのシーン。
初めてあかす、悲鳴のようや衛の本音や弱音。
衛の慟哭が苦しいのですが、その激情がきゅんであり、めっちゃ萌えた( *´꒳`*)
とっても好きなシーンです。

そして、そ知らぬ顔して真文を送り出してくれた久遠に感謝でした。
彼の傷に寄り添える相手が出来ることを願います。


2人が同棲を始めて、真文が「忘れたくない」と涙をこぼすシーンも好きです。
そりゃそうですよね。
大事なものができる度に願わずにはいられないでしょう。
そんな真文に新しい約束をする衛。
きっと、喫茶カナリーがあそこにある限り、衛がオリジナルブレンドコーヒーを入れ続ける限り、真文が帰る場所はあり続けるのでしょうね。

真文の病気が完治した訳ではないけれど、未来が明るく感じる、幸せで美しいラストでした。
いつか喫茶カナリーへ行ってみたい。
衛の手引きコーヒーを真文にサーブしてもらって味わってみたいな、としみじみしました⃞⃛୭ᐝ

1

心に沁み入る神作品としか言えない。。

電子で番外編集まで読み、ちょうど昨日からコミコミさんの文庫フェアが始まっていたため3冊まとめてカートに入れ、注文しました。
紙でも保管し、何度でも読み返したい本です。。
絶対に泣いてしまうと分かっているけど、読み返さずにはいられない作品。
読んだら絶対に誰かと語り合いたくなってしまう…

なんだか色々言いたいことはあるような気がするのですけれど、心が揺さぶられすぎてうまく言えないため、箇条書きします。

・久遠は久遠で幸せになってくれ…
→ひと昔前の自分だったら久遠のことは絶対許せなかったんじゃないか、と思うのですが。今は久遠の気持ちも痛いほどよく分かってしまう…どうしても一緒にいたくてついてしまった、大きな嘘。それを覆い隠そうとすればするほど、嘘が積み重なっていって…静良井を騙した久遠の罪は重いけれど、だからといって単純に憎むことはできない。。ひとり残された久遠がどこかで誰かと新たに出会い、救われてくれたらいいなと思わずにはいられませんでした。

・静良井くんお願いだから雪道を一人で歩かないで…!
→これ本当に転倒すると思いヒヤヒヤしながら読み進めました。中上が迎えに来てくれて心の底から安心しました…!リスクを冒してでも、どうしても一刻も早く会いに行きたかったんだよね。涙涙涙。。

・静良井がこの先何回記憶を失ったとしても、そしてそのことでお互い二人が傷つくことは避けられないとしても、その度に新しく出会い、惹かれ合い恋に落ちるのは変わらない。たとえ糸が切れてしまったとしても、新しい糸はまったくの無から生まれているわけではなく、記憶はなくとも過去までの糸としっかり結ばれていて…
だからこそ、静良井は昔言った台詞を一言一句違わず何度も言うのですよね。
そこに、悲しみや切なさを凌駕する愛と救いがあると感じました。

こんな素敵すぎる作品に出会えて、BL小説を読んでて良かったなあと心から思いました。ああ。。〆がうまくいかない、、

コミコミさんから紙本が届いたら、また1巻から泣きながら読み返すと思います。

1

ちょっと泣けた

感想なのでネタバレしています
未読の方はもったいないので、このレビューは読まずにどうぞ

真文の夢の描写で思いがけず泣いてしまった
思い出す部分に障害が起きているって、そう言えば言っていたもんね
記憶自体はあるんだ
お母さん、よそのお子さん巻き込んで大変な事故起こして本当危なかった、似たような人に会うこともなかっただろうし、理解されてるって思うことのない育児期間の末に亡くなって本当気の毒だったな

いい人なんだか無神経なんだか、佐藤とか茂木みたいな、相手がどんなでもお構いなしなタイプの人がいて、真文が打ち明けることができたのは良かったな
言ってしまっても大丈夫なんだって、そんな経験もしたこともあるんだってだけでも、なんか良かった

久遠は真文を手に入れるって風に関わって、叶わないから諦めた
日記も読んで利用したんだもんね
死んでしまう可能性だってなくはないことをして
でも、真文は久遠の弱みや自分を好きな気持ちを認めて、それならばと一緒にいることにした
衛を自分に巻き込んで傷付けることから開放して次のリセットからは久遠と…次に忘れてしまうまで保ったかな
次まで保たせればその過去がなかったことになって、性の問題を記憶障害の面倒みさせる負い目で誤魔化してやってくんだったのかな

初めから前払いの集合住宅に引っ越していたこと、旅館での以前一緒に来たって話とで久遠のこと怖い人かと思って読んでいたけれど、やっぱり、やっぱりそうだったよね
でも、日記についてはさすがに、信じていたわ

衛はさ、カナリーで待って待って、初めて来たときどんな気持ちだったんだろう
待つって、来ることが分かってなかったら待っていることになるんだろうか
ただとにかく待つのってなんとなく忘れることの正反対なような気がする
同じ場所から動かずに忘れることをしないでいるって感じ
衛はメモリの日記も読まずにいて、同級生のからかいと同じ様になる記憶を植え付けることは絶対にしない
けど、けどさぁ
本当のことなら植えても良かったんじゃないの?
きっとここに来るって思って待っていたんじゃなくて、来ないことは前提で、その上で万が一真文が来たらって淡い期待すら持たないようにしてやっていたんじゃないかと思うんだ
来たとしても、もし連れがいたら話しかけるつもりすらないんだ、ハンカチのときみたいに
子供のときにまともに愛されないって、ひどいことだよね
本当、真文が何度も何度も恋してくれて良かったよ〜

2巻で金色の記憶のことが判明したり、カナリヤの色のこととか、真文は色については思い出しやすいみたいよね
忘れても積もるものが数えていければいいのにね

0

久遠…

「心を半分残したままでいる」3巻です。
こちらで完結となります。

1巻のとても気になる所からの続きになり
どうなっていくんだろう…!と緊張して読み始めました。
あらすじに書かれているので書いちゃうのですが
久遠さん…静良井のこと池に突き落としたの!?と
とてもびっくりしました。
私の中で久遠さんって紳士なイメージがあったので
静良井のことを、ここまでしてまでも手に入れたいのか…と。

池に突き落とされてどうなっちゃうんだろう…って思ってたんですけど
そこからの展開は私が想像してなかった方に向かいました。
とにかく良かった…!!!!!

中上との関係もきちんと進展するし
私が一番望んでいた形になったものの
やっぱり久遠さんのことを考えると胸は痛くなります。

久遠さん、酷いことをしたことに違いはないのですが
彼も幸せになって欲しいな…。

読み終わった後に、久遠さんのスピンオフがないか調べたんですけど
スピンオフ作品はないんですね…。
いつか、彼のお話も読みたいです。


静良井の記憶障害は今のところ治ることはないのですが、
こんなに色んな事があったのに、最終的には中上の元に静良井が戻ってくるってことは
きっと何回記憶障害が起こっても戻ってくるんじゃないかな…って
勝手に期待させられるんですよね。
静良井の帰る場所は中上の元なんだろうなぁって。

心の霧がはっきりと消えることはないのですが
一日一日、二人の思い出が積み重なっていきますように…と思う作品でした。

0

回想を経て、未来へ

1巻で中上と約7年振りの再会を果たした静良井。とはいえ中上は静良井とは初対面を装い、静良井の日記に残されたMとの足跡を辿る。

2巻では静良井が失った記憶、2人がまだ学生時代の出会いから恋人同士になり、静良井が記憶障害を起こして失踪するまでの回想。

そして3巻。1巻の終わりでMは久遠ではなく中上ではないかと久遠に告げた後、静良井はライター時代(1巻の時)の時分を知る、カナリーの元バイト佐藤と出会う。そこでライター時代の住居、高校時代に中上と出会った時に住んでいた自宅を訪ねる。

自分の過去を自分で辿り、静良井が決断した今後の生活とは…。


やっと自分で自分の過去を手に入れた静良井。それは自分の記憶にあるものでは無く、不完全なものではあるかもしれないけれど、それでも中上の幸せを願わずにはいられなかった。自分の中途半端な記憶では、そしてこの先また再び記憶を無くすことを考えれば、中上の元を去ることを決意した静良井。

静良井は当事者だからもちろん過去のない自分がとても所在なげで辛いだろうけど、中上は幼少期から待つことに対して耐性が強く、でもそれって逆に不安が大きくなって…決して表には出せないけど独占欲とは執着につながるのでは?何もかもを諦め、内に秘めるように過ごす中上の辛さはどれだけのものだったろう…と思うとやりきれませんが、その点についても静良井はちゃんと気付いてあげることが出来て良かったなと思います。

正直、カナリーでの短期バイトの時に静良井が気付いてしまった記憶障害を発症する頻度から、今後も記憶障害を引き起こすことが察せられて、また次のページでは静良井が中上に「君は誰」と言うのでは無いかとずっとヒヤヒヤしながら読んでいました。ですがこの3巻に収録されている「カナリー」を読むと未来に対して絶望では無いなと思えました。

その「カナリー」。ライター静良井のカナリーの紹介文。中上へのラブレターですよね?そしてこれから先、記憶をなくしてもまた帰る場所はここだと宣言文でもある。すごく綺麗に纏まっていて泣けました。そして最後にタイトル回収。ここまでの2人のストーリーを読んでいるだけに鳥肌でした。

まとまりのない感想しか書けないのがもどかしいですが、ここまで3巻を通して中上と静良井の長い、遠回りの旅を見届けることが出来て良かったと思います。記憶をなくしていても体は覚えていて、じゃあ記憶を無くす前の自分と今の自分は別人なのか…?じゃあ自分を形づくる自分はどこにあるのか?面白いけど難しいテーマだなと思います。

1

しんどさの治まらないハピエン(メリバではない)

 表紙と見開きイラストで既に泣きそうになった。
 
 久遠は、真文を騙して横取りしたようなものだから、いい印象はなかったけど、ちゃんと罪悪感を覚えるいい人間だった。幸あれ。

 記憶のノートが衛に宛てたラブレターみたいで切ない。

 自分からは行動を起こさずただ待ってるだけの衛に、真文が爆発して気持ちを言ったおかげで無事にまたくっつけたのでほっとした。

 二章目(?)の「カナリー」が超絶幸せ。
 でも鈴原は辞めさせて、二人でカナリーを経営して欲しかった……。
 衛が、ずっと自分の傍に置いておきたいって本音を零すシーンに首がもげそうな程同意。
 欲を言えば、監禁でもして真文を何処にも行かせないようにしてほしかった……。(安心したい)

1

感動!

ネタバレ、、っていうかもうこれ表紙がネタバレてる気がしたので、
読み始める前からホッとしてました。時系列的に2→1→3で、いままでの流れを受けて、切なさも甘さも、ほろ苦さも楽しさも含まれてて、ずっと心全部、震えてた気がします。

が!冒頭、「え!?そうなってんのか?」とドキドキしまくったことを白状します。久遠という人物には最後まで、同情できないのですが、もし、噓偽りなく静良井をサポートしたら、2人の関係性は変わったのかもと思わずにはいられないと同時に、このシリーズにおいて彼の内面を考えることは(どこまでが真でどこまでが偽で、なにをしたかったのかetc)、意味がないと思いつつ、どうしても引っかかってしまうキャラでした…。(受だと解釈したんですけど。)

いろいろあって、、中上が抱えていた罪悪感と後悔を吐露する場面があるのですが、読んでて抉られました。だからか~、、と今までの彼の行動がしっくりきました。抑えても湧き上がる独占欲と、相手の幸せを考える気持ちとがせめぎ合う苦しさもしんどくて切なかったです。その後、2人が同棲を始めるにあたって、”離れる理由がなくなった”という表現がとても好きでした。

あと、1からずっと思ってたんですが、静良井って性欲強い受ですよね。貪欲に中上を求めるスケベシーンが熱くて大好きです。3では、彼がいままであまり表に出さなかった気持ちが随所にみられました。特に、書き下ろしの”カナリー”で、自分のことをなかなか話さない中上に対して、”もっと君のことが知りたい”と涙するシーンが印象的です。聞いても忘れる、だから忘れることをたくさん教えてもらうのは心苦しいけど、でもなんでも知っておきたいという葛藤、否が応でも記憶が喪失されてしまう近い将来があるからこそ、いまこの瞬間のすべてのことをおろそかにしたくないという気持ちが、なんとも胸に迫りました(;;)

何度も悶絶しながら、たどり着いたラストが、ひたすら優しいんです。タイトルにかかるラストがかっこよすぎて、いつまでも余韻が残りました。

葛西先生の絵も神がかってます。大大大大正解。これ以外のイメージないわ~ってくらい、特に、しっとり感が半端ない!泣いている人物の描写が好きでした。

2

中上の思いに涙

3巻を読み始めてとても驚いたのは久遠との関係が、そう揉めて長引くことが無かったことでした。

1巻ではあんなに静良井に執着して池にまで落として記憶をリセットしようとしてたのに。

久遠は静良井の過去を盗んだことにずっと罪悪感を感じていたんですね…。そして静良井の記憶が消えて無いのを怪しんで試したりしてました。
既にMが中上だと気付いてもいました。

何度忘れようと静良井が中上に惹かれるのは、もう本能のようなものだと思いました。

ようやく静良井が無くした過去を取り戻して中上に会いに行っても、すんなり事が運ばないのがこのお話の醍醐味でした。

まさかの中上の拒絶?静良井は中上を諦めちゃうの?って焦りました。

もう駄目かと思っている所で、中上が静良井に会いに来て本当の心の内を話してくれてジンと来ました。平静を装っていながら、本当はどんなに苦しかったのかを知った時は切なくて涙が出ました。

そして「カナリー」では、静良井の新たな夢と中上との幸せそうな生活を読むことが出来ました。

でもこのお話って電子版の「~未来を半分残したままでいる~」までがひとつの話だと思うんですよね。

2

1-3巻の感想 合本にしてほしい

ジリジリと苦しみながら読みました。
1巻から読んで2巻までは、過去の真文の説明です。
出口が見えない構成なので、まどろっこしくなって、もう読むのを止めようかと積読に。想い直して続きの2巻の半分からやっと3巻まで読了。
・・・この作品は1-3の三冊で一つの作品、1-2は3巻の為の説明。3巻で謎が解き明かされる。
だから3巻一緒に全部読まないと意味がつながらない構成になっている作品です。
やっと3巻全部読了して思ったのは、「合本にしたらいいのに。」
---
4年ごとに記憶が殆ど消えてしまう記憶障害を持つ真文。
母が生きて居た時は、母が失った記憶を上書きする役をしていた。生活の記憶が消えても、学校の学習は忘れないらしくて、勉強の遅れはないようです。
その母が、事故で亡くなった時と重なる時期に真文の記憶が喪失してしまう。そして失踪。=静良井真文には一年半以上前の記憶がない。
記憶の上書き役の母が死亡して、自分が分からなくなった所から1巻が始まる
→日記にある、恋人『M』という男は、誰なのか?喫茶店カナリーのマスター中上衛と二人で、自分が書いた記憶(日記)を辿って、過去の自分探しを始める。
---
感想。
真文は、母似の美人。完璧すぎる美しい容姿を持っている人。
もし真文が暴力性を帯びた歪んだ素地の性格で、魅力的な容姿ではなかったら、どうなっていたのかな?
記憶喪失で挙動不審な状況でも、誰も振り向かなかったんじゃないの?と、読後にタラレバの仮想展開をつい考えてしまいました。
真文が魅力が乏しいキャラだったら、記憶喪失で彷徨しているところを誰かが見つけて助けても、恋人にしようと囲わなかったし、あれほど深く執着して愛した人を探してもらえなかったと思う。
美しい人であることが原因で、よくも悪くも人生を翻弄される主人公。

記憶を失うことは、一つの生涯の中で「4年ごとに死んで復活」を繰り返すことに等しい人生を送るということ。
記憶をなくしたとき=生れ変った白紙の状態の時に、誰かの都合で偽りの過去の記憶を上書きされても、真文の過去を知る人と出会わなかったら、そのままの人生を送ることが可能なので、久遠に良心の呵責がなければ、また違うシナリオになっていたかもしれない。

ずっと探して、真文が考案したカフェを経営しながら、真文が質問してくる迄何も言わずひたすら待ち続けた衛。衛は、真文が疑問を抱くように仕込みを仕掛けている。諦めきれず住まいの傍に夜訪れて、見つめ続けて待っていた。

誰が一番深く真文を想っていたかを考えると、不器用で歪んだ表し方だけど、淋しい生き方をしている久遠の愛の方が深かったんじゃないかと思いました。最後は、久遠が身を引く形で押し出しちゃった・・ホント不器用な役をさせられて気の毒。

1

再び記憶を失った受、マスターからの拒絶に傷ついて
行きついた先。
なんでそんなところに・・と思ったらなるほどなお話でした。
久遠さんにも新しい恋人をお願いしたいわ。
なんやかんやこの人も可愛そうな人なんだなと思ってしまった。

失った過去を取り戻せないまでも
知りたいと辿る回ですね。
失ってしまったものと、失っていなかったもの。
失ってなお繰り返すもの。
どんなに突き放しても一途(執念?)なマスターには泣いてしまう。
大人になった今ではなく、15歳だったあのころから変わらない
そんな行動に思わず胸が痛くなる。

「自分のことも好きになってほしい」

ここが一番好き。
記憶をうしなって、自分のことが分からなくなってしまった
相手でさえなお、愛しいと思う重すぎる愛をささやく攻も好き。
記憶をうしなっても、何度も初恋の相手は君がいい。
結局同じ人間、同じように同じ人を好きになる。
運命ってこういうことをいうのかなとちょっと思いました。

0

恋人を池に突き落とすってありえる?

と、首を傾げたくなるところですが。
作中で久遠は完璧主義っぽい性格に描かれており、彼ならやりかねない気がしてくる。
重要なシーンを「え、なんで急にこんなことするの?」って興醒めさせることなく読ませてくれた人物描写力に神評価をつけたいと思います。

肝心の内容はかなり切なくて、胸がズキズキして辛かった。切なさのかたまり。これまた余韻が残る美しいエンディングが切なくて。切なすぎました。のちのラブラブっぷりを見てもすれ違っていた時の切なさが勝ってしまい...払拭しきれなかったので、気分的には中立につけたいです(笑)

0

涙が止まらない

シリーズ通しての感想になります。

積本にしちゃってたこの本を遅ればせながら読ませていただきました。
3巻揃ってから読むつもりでいたんですが、まとまった時間がなかったことと、読んだら当分次の本に手が出せなくなりそうな気持ちもあって積んでしまってました。

細心の注意を払っていたお母さんの気持ちと最期の姿と。

忘れたくない、忘れるのが怖いと本音を零した静良井と。

もう、辛いと嗚咽を零して、それでもどうしても忘れられないと言った中上と。

1巻、2巻と胸がツキツキ目がうるうる。
最終巻の序盤からもうほんとに涙が止まらなかったです。

ラスト一行の文章、ああ、ここでここに戻ってくるんだなとしみじみと胸に沁みました。

中上くん、本当によく頑張ったよ。
カナリーにはいつまでも二人の灯台のようにそこに建っていて欲しいです。

3

二人の未来にたくさんの希望を感じました

衛と真文が恋人に戻って終わりではなく、二人の未来についても想いを確かめ合えたことが、良かったです。真文が記憶障害で思い出を失う切なさよりも、たくさんの希望を感じました。

衛のことを忘れたくないと涙する真文に、衛は約束をします。「これからもずっと『カナリー』はここにあるから。もし迷子になっても安心して帰ってきて」と。何度真文が記憶を失っても自分たちはお互いを好きになると、衛は確信しているのでしょう。衛のあふれるような愛情を感じます。真文と想いを通い合わせて、これまで一人で飲み込んできた哀しみも、母親に捨てられた心の傷も癒されたのだと思いました。真文も衛の約束を信じて、日々を大切に生きていこうと心に決めます。前向きな二人が、とても眩しいです。

衛と真文の恋模様は、毎回さまざまなエピソードを加えて、味わい深いものになっていくのでしょう。切ないことも、心躍ることもあるかもしれません。きっと真文はそのときどきの想いを日記に綴るに違いありません。衛が言うように、50歳の頃にはコーヒー一杯の時間では話しつくせないくらい積み重なっていくのでしょうね。その頃の二人はどんな感じだろうと想像すると、ちょっと楽しいです。真文の勉強が実って、自家焙煎コーヒーが『カナリー』の名物になっていたりして。衛は蝶ネクタイの似合う渋いイケメン店長になっているかもしれません。

真文がカフェライターとして再出発できたのも良かったです。いつか一冊の本になって、『カナリー』の本棚に置かれたら、素敵でしょうね。真文の足跡がたくさんの人の心の中に残ればいいな、と思います。

1

期待のハードル上げ過ぎていました。。

シリーズ最終巻です。個人的に期待のハードルを上げ過ぎていたようでした。
辛口感想になりますが、あくまで個人的な感想です。

1巻は謎を呼ぶ展開でスリルがあったし、2巻の本編(過去編)は短いながらも、記憶障害のある主人公を取り巻く人々の主人公への様々な想いにリアリティを感じ、とても感動したんです。

ところが、最終巻は序盤から入り込めませんでした。何処かご都合主義な展開が引っかかり、結末も凡庸に感じました。2巻の深さに比べると、最終巻は全体的に物足り無く感じ、盛り上がりに欠ける気がしました。
まさに物語のクライマックスが終わった後から、最終巻が始まる、そういう印象を受けました。

2巻で本編の後に静良井視点の番外編を入れずに、続けて最終巻の本編の収録がされていた方が、全体の物語構成が良かったのでは無いかと感じました。内容は深いけれど、本編が非常に短い2巻(静良井視点の番外編は長いが、本編と内容が重複する部分が多い)にボリュームはあるけれど、特に大きな展開も無くストレートに安定の終盤を迎える本編が収録された3巻。どこかアンバランスさを感じました。上・下巻の2巻構成の方がしっくりきた気がします。その方が最後までもう少し話に入り込めたかも。。。

1巻、2巻で期待感が増し、「最終巻でどんな大どんでん返しが来るんだろうか…」と夢を見過ぎたんでしょうね。個人的に残念に感じてしまいました。他の人のレビューを見ると、最終巻から色々な事を感じ取られているようですね。感受性が豊かでない自分には、そこまで文面から読み取れ無かった事が物哀しい…です。訴えるものがもう少し欲しかった最終巻でした。

6

心を半分ではなくすべて奪われました、この作品に。

読み終わった後もしばらくその余韻から抜け出そうにありません。
今年読んだBLコミック・BL小説のなかで、私のベストは今のところこれだと思いました。

この作品を片手に好きな人同士で合宿したいくらいです。
(涙に暮れながらなので、タオル必須)

本当にとりとめのない感想を。

・もし記憶を失くした自分がこの店を見つけてやってきたとしても、もう普通のブレンドを出して欲しいという真文に涙腺決壊。

・「幸せってここまでって量なんて決まっていない」という真文の言葉。二巻でかつて二人で夢を語り合った時も真文の口から出てきたけど、例え記憶を失くしても真文であり続ける……そしてこの状況でそれを言われる衛の辛さよ。

・途中で衛に「ハチ公」と命名したくなった(涙)
そしてようやく言えた本音……あぁそりゃぁ辛いでしょうよ……(涙)。

・大雪の日、歩いて帰る真文にハラハラ。また転倒して記憶を失うのか!?と。お願いですから自重してください……。

・カナリーは真文を閉じ込めるための籠じゃなくて、例え迷い鳥になっても見つけられるような、いつでも安心して戻ってこれるような巣であり続けるという衛の愛に涙・涙・涙……。
だけどついに漏らした独占執着愛も萌える。

・久遠を断罪する気にはなれない。
衛が思春期に真文に出会えたように、久遠が人生の早い段階でそういった彼だけの特別な存在に出会えていたら…と思わずにはいられません。
これから先、彼には幸せになってほしい。

・一つ知れば、いつか忘れるものが一つ増える、に涙。
だけど「自分は輝く日々の中にいたのだ」と思えた真文に涙。

・本人は覚えていなくても身体は快楽を知ってるのがエロい。
衛の「俺が知ってること 全部…教えますから」がエロっ。

・「愛おしい日々は儚い」は琴線フレーズであり涙腺決壊フレーズ。
泣けて仕方ないです。
儚いからこそ美しく、愛おしい。

・最後の一文がタイトルにつながって余韻半端ない。

・四年周期くらいで記憶を失うことがわかったので、記憶を失った自分宛に自分用の取扱説明書を書いておいてほしい。
自分には中上衛という大切な人がいること、過去も自分は何度も記憶を失くしたけどその都度彼を好きになってること、最初は戸惑いしかないだろうけど必ず衛のことを好きになるから彼の側にいるように……記憶を失くした自分の代わりに衛は全てを覚えているから大丈夫だ、安心しろみたいなやつ。
あと10回くらいは記憶なくすはずだから、そのうちに「やれやれ〜どうやら俺、記憶なくしちゃったみたい(キャラ崩壊)」「え?またですかぁ?でも大丈夫ですよっ♪(キャラ崩壊)」みたいなやり取りになる……?!ならないだろうなぁ……
でも、なんか良くわからないけどこれを読む限りでは衛という男のそばにいれば大丈夫なんだなと思えるくらいには、なってほしいです。

・佐藤くん(笑)
憎めないしいい味出してて好き。彼が登場してくれると、攻め受けの切なさで泣き濡れた心がほっと緩むことができたので彼に感謝。



15

常連になって通いたくなるカフェの話

時系列的には1巻の続きです。

酷いじゃないか久遠!!。
本当の恋人の『M』のことも過去の自分もわかりかけたのに、また全てを忘れさせれば自分だけのもにできる、だからって池に落とすという暴挙に出た久遠でした。
久遠の幼い頃のエピソードや現状の満たされない思いを知れば同情もしますが、けどやっぱり都合のいいことを植え付けて自分に縛り付けた姑息な久遠は許しがたい。
とはいえ、次は自分のことを本当に愛してくれる人と出会って幸せになって欲しいと思わせる描き方は作者さまの思いやりでしょうね。

でも、久遠さんはそれ以上非情にはなれなかった、というか寂しがりな孤独な人だけど悪い人じゃなかったってことですかね。
記憶をなくしても忘れられない想いを胸に抱いている二人を引き裂いてまで自分の気持ちを押し付けることはできなったのからなのかなと思いました。

数年ごとに記憶を失い何もかもリセットされてしまう症状は改善されることはないのだから、また近い将来、そしてまた何度も愛する人のことも楽しかった思い出も失くしてしまうのだと思うと悲しくなります。
けど、二人が辛く不安な気持ちで毎日を過ごすのではなくて前向きに未来に向かって二人で歩んで行く決意が読み取れたので安堵し良い読後感でした。
きっとこれからも何度繰り返すことになっても、何度でも二人は恋をして共に生きて行く気持ちを持っていけるんだど思います。
50年後も、同じ店で二人の素敵なおじいちゃまがこだわりの美味しいコーヒーを飲ませてくれる気がします。
そんなこだわりの豆を自家焙煎して手で挽いてじっくりと入れてくれたコーヒーを飲みに行きたいと思わせるカフェのお話でした。

6

この物語に出会えてよかった

3巻通してイラストがぴったりで素敵でした。

1巻の終わりに久遠に公園の池に落とされた静良井は、左足を痛めて車椅子生活に。
久遠は右手首の骨にヒビが入りギプスをしています。
久遠は仕事をしていますが静良井は療養のため休職中で、2人で助け合いながら生活しています。
スーパーの傍の公園にいる静良井に中上が来て声をかけますが、静良井は話をしません。
久遠は静良井が記憶障害になっていないのではと疑い、ここから逃げて中上の元へ行かないのかと聞きます。
でも、静良井は逃げるつもりだったけど気が変わったと言います。
久遠は日記の破りとったページとリュック、住所が書かれたタグを静良井に返します。
静良井は足のギプスが外れてから、1人で当時の家へ行ってみます。

久遠に池に落とされた時に静良井は記憶を失くしたのだと私は思い込んでいました。
以前の、久遠の家を出る前に過去の情報を教えてもらえなかったのは久遠の未練からだったのでしょうか。
実家へ辿りついて再会した叔母から話を聞いても、何も感じられなくて悲しくて頭を打ちつけたシーンは怖かったです。
高校時代の日記を見つけて「M」が中上だとわかっても、久遠が「M」に成り代わっていた時間は消えるわけもなく。
静良井はカナリーで2週間のアルバイトをして、その間に過去の「僕」を教えてもらう約束を取りつけたのは良かったけれど、中上をまた好きになっていくのに中上の心には近づけない。
中上にも久遠にもこれ以上迷惑はかけられないと、2人との別れを選ぼうとする静良井が悲しいです。
それも、中上には久遠と暮らしていくと思わせたままで。
記憶を失くしてカナリーへ来てもオリジナルブレンドは出さないでほしいと頼んだ時は、コーヒーの味が2人にとってこんなにも重要な鍵なのに手放さないでと思いました。
お互いに別れを選んだのに、久遠が2人を再会へと導いてからの展開が凄かったです。
中上が静良井のリュックに日記を入れた事が、良くも悪くも複雑に作用していた事実。
静良井の恋人だったのに過去を持ち出さずに新しく出会った人として関係を築こうとした中上と、他人なのに思い出を捏造してまで恋人になろうとした久遠は考え方や行動が全く違いますね。
中上はこれから、もっと静良井に甘えたらいいと思います。
10代で恋におちたあの時から、2人はお互いにとって唯一無二の大切な存在なのだと思いました。

静良井の記憶障害の4年毎の周期に、私は気づきませんでした。
元アルバイトの佐藤の言動に、静良井が中上と2人で動揺しているシーンが微笑ましかったです。
雪で行けなくなったレストランには、また行って美味しい料理を食べて欲しいなと思いました。
喫茶カナリーの紹介記事では、静良井が中上の事を「ハンサム・イケメン」と書いていて意外と大胆でした。
文庫書き下ろしの結びにもってきた一文が秀逸です。
カナリーのようなお店に行ってコーヒーを飲んでみたくなりました。
輪廻転生ではないけど何度も静良井が中上と恋におちるような不思議なお話でした。

10

読み応えあり

3か月連続刊行で毎月楽しみにしていた本作品もついに完結。
できれば一気に読みたかったけど待ちきれずに1巻目を読んでしまい毎月じれじれする結果に。
3巻読んだ後に再度1.2巻を読み返すと、新たな気づきなどもありました。
以下完全ネタバレです。




読後、彼らのこれからを思って落着いている半分、この先の不安もどうしても感じてしまいます。
ただ、中上とその結びつきの強さが本編後の書下ろし「カナリー」で感じられるのでこの先は安心かな・・・とも。

前巻の時にこけすぎでドジっ子って思っちゃっててごめんなさい(´・ω・`)
4年のサイクルだったんですね・・・。
記憶障害というと、ドリュー・バリモア主演の映画「50回目のファースト・キス」をどうしても思い浮かべてしまいます。
彼女の場合は超短期で翌日には忘れてしまうのですが・・・静良井さんはまだ4年はあるから・・・

この次の記憶障害ができれば訪れないで欲しいけれども、訪れてもきっと今までとは違うような希望も感じられる終わり方に感じました。
あとは、久遠さんのその後がとても気になります。
彼の寂しさ、苦しさに救いが訪れますように・・・。

7

静謐、余韻

読み終えた後もしばらくレビューできずにいた当作。今も自分の評価を決めかねています。
中上と静良井を見守りたい応援したいという気持ちで神としたいけれど、このようなシチュエーションになったら自分だったら耐えられるのかという氷のように冷たい恐怖心があって、すんなり神!とし難く。
これ以上のラストはないと感じますし、音叉のようにいつまでも響く何かがあるのですが・・

つらつら思うままに書くと。
本当に怖くてしようがない。自分よりも大切だと思う人が、こんな風に記憶をなくす病を持っていたら。
静良井の母が心を病んでしまう気持ちが、とてもとても良くわかります。私は中上の立場にたてる自信はないし、静良井のように生きることも出来ない気がします。ひたすら怖い。そしてひたすらどうすればいいのかと考え込んでしまう。
この怖さを上回る幸せさを書いてくださっているのですが、どうしても砂上の楼閣という印象でしかなくて、無邪気に浸れなかったです。びびりなのかな。

最後に。久遠さんが好きで。気になって。彼はこの後どうなるのかと気になって。寂しくて。
悪いことしてない、間違ってないと彼に誰か伝えてあげてほしい。
砂原先生、どうか彼の後日談をいただけないでしょうか。もし幸せになった彼に会えたら、私の中で、このお話を読み終われるのかもと感じました。そして、久遠さんのお話の中で、その後の中上と静良井の穏やかな日常を教えていただけると大変嬉しいです。

私はこのお話に心を半分残したままという気がします。
エンタメという点でいうと、あまり好きではないお話なのですが(すっきり爽快面白かった!というものではない)、いつまでも心に残るという点では神なので、間で萌2にします。ああ中途半端な評価(泣)

そうだ、忘れてました!書き下ろしプチ文庫全員サービスがあったはず!
よし、久遠さんのSSを超絶期待して、とっとと送ろう!
締め切りは11/10でした。皆様お忘れなきよう。

8

あーちゃん2016

leeとsoup様
こんばんは、あーでございます。コメントありがとうございます。
全員サービス、楽しみですよね~と言っても私も払込票を郵便局に取りに行ったまでで、まだ払ってないんですw 早く払わなきゃ!
leeとsoup様もお読みになった後、良かったらレビューしてくださいね\(^o^)/

明るく前を向ける

謎が深まる1巻、過去を知る2巻、そして完結編の3巻です。


ようやく、気になる最後だった1巻ラストの続きが読めます!
過去の記憶がなくてぐるぐると不安がいっぱいだった前巻までから、今巻では少し明るい未来を見る事ができたのかと思います。そして、ラストでこの本のタイトルの意味がわかります。嫌な人にいない、胸がいっぱいになるお話です。


個人的には、倒れないか転ばないか記憶をまた失わないかとはらはらしながら読んだので少し疲れました(笑) 同じように心配性の方には、少し余裕がある時に読む事をオススメします笑

8

とうとう完結

3ヶ月連続発売の長編、とうとう完結です。いやー待たされました(笑)記憶喪失というか記憶障害のお話。この幸せがいつまで続くの?また記憶失っちゃうの?とドキドキしながら読みました。

こちらも1ヶ月おきだったのでキャラクター同様、部分的に記憶を手繰り寄せながら読みました。あーそういえば前にこんなことあったあった、みたいな。

久遠さんも悪い人じゃなかったし中上くんよりも長い時間を一緒に過ごしたのに、結局中上くんを選ぶところがロマンチックでした。

4

感動の完結編。

待ちに待った『心を半分残したままでいる』の3巻。

1か月おきに1巻ずつ発売するって、誰が考えたんだろう…。めっちゃ良い手法だよね。待ちきれないほどの期間ではないし、前作を忘れてしまうほどのブランクもない。続きを早く…!とジレジレしながら待つのにちょうどよい長さで、発売が非常に楽しみな作品のひとつでした。

この巻で完結かと思うと、読むのがもったいないような、早く読みたいような、非常に不思議な気持ちで読み始めました。

ネタバレ含んでいます。ご注意ください。








とにかく、とにかく、素晴らしい作品でした。

1巻から巧妙にまかれた伏線をこれだけ上手に回収しながら進む展開は、さすが砂原さんといったところか。

誰が「M」なのか。
という謎ときは2巻で明らかにはなっていたものの、まだわからなかった部分が少しずつ明らかになっていく。少しずつ少しずつ、パズルが完成していくかのような展開にページをめくる手が止められませんでした。

何度記憶をなくしても、それでも中上くんに惹かれていく真文の恋心。
何度忘れられても、それでも待ち続け、愛し続けた中上くんの想い。

二人の愛情と想いを糧に、少しずつ頑丈に育っていく二人の関係。

喫茶店。
USBメモリー。
日記。
カナリア。

そういった小道具が非常に効果的に使われ、読み進めていくうちにあっと驚く謎解きも非常に面白かった。BLとして読んでも、ミステリーとして読んでも面白い。

途中、また真文が記憶をなくすのでは…?とドキドキしながら読み進めたのですが、なんだろうな、また真文が記憶をなくしたとしても、中上くんと真文の二人なら、その困難を盛り超えられる、と信じられる展開でした。

1巻、2巻と、真文自身が「記憶をなくすこと」に対する恐怖心を持っていましたが、3巻ではソレが再度起こっても、この二人なら大丈夫。

そんな風に思える明るさと強さがありました。
そう思えるだけの、愛情と、信頼と、強さがこの二人にはある。

もうね、萌えが滾ってとどまるところを知りません。どうすんだ、これ。

そして、久遠さんです。
彼もまた、真文を深く愛していたのだと。

彼の愛情は独りよがりだった部分は否めない。
否めないけれど、彼の不器用な愛もまた、本物だった。

どうかどうか、彼にも大切な誰かが見つかることを願ってやみません。

本当に素晴らしい作品でした。

またどこかで彼らに会えるといいな。

9

心に沁みる・・・(*´ー`*)

1巻、2巻と来て、3巻の表紙でこんなに幸せそうな二人を見ると、読む前から泣けてしまう・・・(´;ω;`)
と、表紙の幸せそうな二人から想像がつく通り、感動の完結巻です。







内容ですが、自身の日記の不自然な点に気付き、真実の断片を掴む静良井。
しかし、全てをリセットしようとした久遠に池に突き落とされー・・・と言う2巻からの続きになります。

それから数週間後-。
足を痛めた静良井は車椅子生活ながら、久遠と共に穏やかに暮らしています。
そんな中、公園で知り合った子供と話す静良井の元へ、もの言いたげな長身の青年が現れー・・・と言うものです。

こちらの作品ですが、推理サスペンス要素もございまして、読者に仕掛けられる巧妙な罠が面白くもあるんですよね。
今作でも序盤は久遠と穏やかに暮らす静良井と、読者はこれまでのパターンから静良井の状態を予想します。で、裏切られる。
してやられるワケですが、それがまた面白いです。
こう来たか!!と。

で、1巻では推理サスペンス要素を楽しみつつ切なさに身悶えし、2巻では構成の妙に唸らされました。
そして3巻では、とにかく深く深く感動です。

人をその人たらしめるのは何なのか-。
と、1巻を読んだ時に酷く切ない気持ちにさせられたのです。
今作でその答えが語られますが、もうボロボロ大泣きしてしまいました。

「自分は絶対傷付かない」と言う中上の約束。
そして恋人を「M」と呼び始めた理由。
また、静良井の記憶障害の本当の意味での決着-。

全てを鮮やかに回収しつつ、物語は大団円を迎えます。
共に過ごした時間や共有した思い出、肌の温もり。
そんなものが自分の知っている「相手」を形作るなら、無くしてしまった時、それはもう本人では無いのか。
これの答えに、ひどく心を打たれました。

静良井自身は、だいたい4年周期で記憶を無くしている事が分かります。
やっと結ばれる二人ですが、現在の彼は、また3年もすれば失われてしまう・・・。
決して、全てが上手く収まって、幸せそのもののラストでは無いのです。
だからこそ、後悔の無いように生きようと言う静良井の決意に胸が熱くなります。
また、中上の新しい約束に、深く感動する。
そう、たとえまた迷子になっても、安心して帰る場所があるのです。
いやもう、ここまでたどり着くのが長かったよ!!

ところで、こちら、やっと結ばれた二人と言う事で、甘々成分が多め。
描き下ろしの「カナリー」ですが、二人はかなりイチャついてます。
また、これまでは過去をひたすら振り返る二人でしたが、ここでは未来を見ています。
二人を待つ未来には、辛い事がまた訪れるのでしょう。
でも、二人はもう大丈夫だと感じさせてくれる、素敵なラストでした。

最後の1行で、タイトルがとても心に沁みます。
そうゆう意味だったか(*´ー`*)
読み終えたあと、表紙の二人を見るとまた泣けちゃいますよー。

17

見えなくても輝いている

上記『あらすじ』の記載に究極のネタバレがあるんですけれど(2018年8月10日現在)これ「あまりにもデリカシーがない書き方なんじゃないかな?」と思います。個人的には「どなたかが情報修正をしていただければ有り難し。今現在『情報修正依頼中』なので、その方が直してくれれば良いな」と思っています。
私もネタバレを叫びたいので、ブランクを置きます。







「始まってたった40ページなのに静良井は真相を知るんかい!」
2巻目もそうだったんですけれど、読み始めてちょっとでまたしても叫ばされてしまいました。
「ねえ、まだ200ページ以上もあるよ。砂原さん、これからどうなるの?」と、ものすごく不安に。
だって、不安要素しかないじゃないですか!
「Mは君だったんだね」「そうだ」→イチャイチャ、なんて感じにこのお話が終わらないのは自明の理じゃないですか。『バッドエンド』という文字すら頭に浮かびましたよ、あたくしは(念のために書いておきますが、違いますよ。『感動の最終巻』の文字に間違いはありません)。

レビューがあまり多くない場合、いつもならお話しのさわりをご紹介するのですが、このシリーズでは出来るだけそれをしないでお話の面白さを伝えたいと思って来ました。なんたってミステリ仕立てですから。
それと同時に、このシリーズのテーマが単純なものではないと思うからです。読む人によって感じることの振り幅がかなり大きいような気がするんです。多分、そのどれもが『感動』という処に行き着くタイプの感想なんだと思うのですが。
なので、以下は私が感動し、鼻の奥をツンとさせた部分についての言及です。

健忘性障害を抱える静良井と、母に捨てられた過去を持つ中上の長い長い物語は、それぞれが自分の欠けていたものを捕まえて、修復するという形で終わりました。
『修復する』と言っても『元のように戻す』とか『失ったものが失われていない状態に戻す』と言う意味ではありません。それは『失ったままで、それでも前を向いて一緒に生きていこう』と思うこと。

この巻で、どうして中上が静良井に「Mは自分である」と告げなかったのかが明らかになります。
ここ読んだ時、もう二の句が継げなくて、唸り声しか出ませんでした。
そうだよね。2巻で書かれていた『強い心』なんて、人が持てるものじゃない。
静良井を大切に、それも唯一の心の縁として思えば思うほど「忘れられても傷つかない」と言うのは、精一杯の強がりだったんだろうな、と解りました。
それと同時に、彼がどれだけ静良井をなくしたくないと思っていたかの表れでもあったんだな、と解ったんです。そのことが、後々彼を縛っていくとは……唸った後に胃が痛くなりました。

そして静良井です。
真相を知り、中上や叔母に会い、ノートに書きためてきた自分の手記を読んでも、過去の写真を見ても、それを自分のことと捉えられないもどかしさを持つんですね。自分は情のない人間なんじゃないかと思ってしまったり。
また、高校生の自分、ライターの自分、久遠と暮らしていた自分、そして今の自分に連続性がないので、常に根無し草の様な不安定さに苦しめられます。

私は1巻を読んだ時から「記憶を失ってしまえば、その人は前の人と違う人になってしまうのか」という疑問を抱いてきました。そして、この最終巻で、砂原さんがどのような答えをもたらしてくれるのか、ずっと楽しみにして、そして若干怯えても来ました。

結果は大満足です!
それが書かれているシーンの描写の美しさも相まって、泣けたよ。
暗く重たい雲に隠れていても、太陽は常に輝いている。
まさしく、神の天恵のごとき答えでした。
砂原さん、素晴らしい物語をどうもありがとう!

21

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