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表題作アドリアン・イングリッシュ(3) 悪魔の聖餐

ジェイク・リオーダン,40歳,LA市警の刑事
アドリアン・イングリッシュ,33歳,書店主で小説家

その他の収録作品

  • 解説:三浦しをん

あらすじ

悪魔教カルトの嫌がらせに巻き込まれたアドリアンはまたしても殺人事件に遭遇。自分の性癖を嫌っている恋人ジェイクとの関係も緊張状態で!?

翻訳:冬斗亜紀

作品情報

作品名
アドリアン・イングリッシュ(3) 悪魔の聖餐
著者
ジョシュ・ラニヨン 
イラスト
草間さかえ 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
モノクローム・ロマンス文庫
シリーズ
アドリアン・イングリッシュ
発売日
ISBN
9784403560187
4.5

(88)

(59)

萌々

(20)

(6)

中立

(3)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
19
得点
396
評価数
88
平均
4.5 / 5
神率
67%

レビュー投稿数19

感情を揺さぶられました

アドリアン・イングリッシュシリーズ三作目です。
一作目で主人公アドリアンとジェイクが出会い、
二作目で関係を深めた二人、そしてこの三作目。

本自体が分厚くかなりのページ数があって、ちょっとずつ読んでいこうと思いきや、
一旦読み始めると読み止めることが出来ずに一気に読んでしまいました。
それぐらい面白かったんですが、
「面白かった」と単純に言うのを躊躇うほど、読んでいて胸が痛くなる展開でした。

二人の関係に大きな変化があったのが今作でした。
ジェイクはアドリアンのことを誰よりも求めている一方で、
普通の人生を歩むチャンスを捨てるつもりはなく、
彼の言動の節々に、彼自身が抱える苦しみや葛藤が現れていて、とても痛々しかったです。

そして、近付く別れの気配を敏感に察するアドリアン。
溢れ出そうな感情が表に出ないよう必死に抑えながら、ジェイクと対峙する彼の姿もまた切ない。
けれど彼は最終的に、自分を深く傷付けたジェイクを最後まで守り通そうとします。
皮肉屋で斜に構えた印象があるアドリアンですが、根っこのところは真っ直ぐで、とても勇気がある。

読んでいて思わず目に涙が滲むようなシーンがいくつかあったのですが、
アドリアンのシニカルなユーモア溢れる一人称で話が進んでいくので、
全体の話の雰囲気はそう重くはない……かな?
思わずクスッと笑ってしまうようなジョークもあったりします。
ミステリーの面でも、前作より暗く、実態の掴めない不気味な部分が押し出されているのですが。

そして例えどんな展開になろうとも、穏やかな萌えポイントが。
ふとした拍子に、それが甘い雰囲気でなかろうと、
アドリアンのことを「ベイビー」と呼ぶジェイクが素敵。
ジェイクが頭をくしゃっと撫でただけで、
苛々とした気持ちが簡単に晴れてしまうアドリアンが可愛い。
もう一体どれだけ好きなの!って感じですw
早くアドリアンに幸せになって欲しい。
いや、そう簡単に幸せにはなれずとも、彼の今後が気になって仕方がないです。

アドリアン・イングリッシュシリーズは全五作だそうで、
今はただ来年2月に出る四作目をじりじりしながら待ちます。

12

源氏物語の『若菜』の章にあたる巻

電子書籍での再読、3巻目です。
私が使っている電子書籍リーダーでは、この巻からページめくりの形式が変わってブックマークも付けやすくなり、ストレスが減りました。

アドリアンとジェイクの関係が胃が痛くなるような展開を見せる『転』の巻。
2014年の発売直後に読み終わった時には、この二人がリアルなLAで生きている様に錯覚してしまい、もうどうしようもないほど狼狽えてしまったことを思い出しました。
辛い。
実に辛いのですけれど、でもここからの展開がたまらなく面白いのです(自分でも酷い性格だと思う)。

ミステリの方は『悪魔崇拝』のカルト教団を巡った殺人事件にアドリアンが巻き込まれる、おどろおどろしい雰囲気の物語で、LOVEの方もジェイクの『自分の性指向を拒む気持ち』と『家庭を持ちたいという願望』によって拗れに拗れるものですから、物語全体を覆うトーンはとても暗く、重苦しい。
その中で、精一杯自分らしくあろうとし、それと同時に、何と言ったら良いのか、自分がすっきりするためだけに感情を相手にぶつける様なことをしないアドリアンの姿がとても胸に迫ります。

「このまま突き進んで行っても結果は酷いことになる」と解っていても、そこに自分の信条があるために進んで行かざるを得ない時ってありますよね?
この巻のアドリアンは正に『それ』です。
結果が望まないものであると知りつつも、自虐的な皮肉を飛ばし、深刻な事柄を冗談にしながら、たった一人で進んでいくしかない……
だから泣けてしまうのです。
胸がつぶれるような気持ちになるのです。

私は、この物語は2000年前後のLAを舞台にしていると思っていたんですけれど、この巻を読んで「あれ?勘違いだったな」と気づきました。
アドリアンの家族が、同性婚について話している様な場面があったんですね。
カリフォルニア州で同性婚が認められたのは2008年。その後、州憲法が改正され同性婚は禁止されますが、2013年に連邦最高裁の判決で再び認められることになりました。
……ってことは、このお話、2010年前後のことか⁉
えーっ!合衆国って、そんなに同性同士の恋愛に偏見があったの?
自分の感覚との違いに大変驚きました。
いや、でも、マイノリティの辛さって、むしろこの手の『感覚のずれを理解してもらえない』っていう処にあるんでしょうねぇ……

5

読んでいて涙が止まらない3巻でした

kindleアンリミテッドで1巻~5巻まで一気読みしました。
1、2巻もミステリーやロマンスの先の読めない展開にハラハラどきどきでページをめくる手が止まらなかったのですが、この3巻からは特に感情が揺さぶられ、終始涙が止まりませんでした。
視点となるアドリアンの感情の動きももちろん、相手のジェイクのわかりにくいながらもかすかに揺れ動く感情を垣間見るのもまた辛い…そして悲しい。

3巻はクリスマスシーズンに悪魔カルト集団の事件に巻き込まれながら、アドリアンとジェイクが甘々イチャイチャと逢瀬を重ねる様子が前半に盛り込まれています。2巻までのぎこちないふれあいから一変、情熱的で心温まる描写に読者もにっこり…
同時に、外で会うときはどうしても人からの目を気にしてしまうジェイク…カミングアウトをしない”クローゼット”の男としてのジェイクの恐怖が、じわじわと伝わってくるとともに、それをアドリアンの視点から見ることで、アドリアンの言葉にはされていない寂しさも感じられるようです。
でも、アドリアンは決してそのことでジェイクを責めない。その鷹揚な、ある意味自立した人間同士の関係として二人のことをとらえているアドリアンのスタンスが、きっと彼の魅力のひとつでもあります。
そして、事件の謎解きを進めるとともに、ふたりの関係にも暗雲が差し込めて行きます。

他のレビューではジェイクへの怒りが爆発しているみたいなんですが、私自身はジェイクのような流され侍、愛はあるけど煮え切れない不貞男がとても好きなんです…。自分がゲイだということを自己嫌悪してて、でもそれは家族を失望させたくないとか社会的な体面という、根っこには優しさや自分の人生を自分だけのものととらえられない親しい人への思いやりがあって、それゆえの臆病さだと思うとまた切ない。この優柔不断な不誠実さ。
ずっとアドリアン視点で物語が進んでいくのでジェイクの心中は推し量るしかないのですが、今までSMクラブのマスターとして「怒り」の形でしかゲイとしての性欲や自我を発散できなかった彼が、一巻の中でアドリアンに恋をして、付き合いを申し込んで…一方で彼は女性と付き合って結婚を考えている最低男だったわけですが、どこかでほんとうの自分を認めて生きていく生き方も模索していて、無自覚だとしても一縷の望みをかけるようにアドリアンに告白して付き合ったと思うと本当にズルくて自分本位。でもその足掻く姿が堪らなく哀れで、愛おしいと思ってしまいました。最低だけど最高に人間くさい。
穏やかに二人が付き合っている期間のジェイクのアドリアンへの物言いやセックスは慈しみと愛に溢れているのに、決裂寸前はレイプ紛いの乱暴さと強引さで、ジェイク自身がゲイである自分をどう思っているのか、その態度が鮮やかに語るんですよ。ジェイクのアドリアンへの恋心と、彼の自己受容は表裏一体……

あとこのシリーズ、主人公のアドリアンが私と年齢が近いのもあって、ゲイとか関係なしに彼が感じている「寂しさ」がひしと滲みてきます。独身の女性も男性も、誰もが持ち得てる寂しさが、彼のユーモアと飄々とした態度の隙間から覗くのもまた堪らないのです。
ゲイに対する悪感情もそうだけど、好意的な感情や善意の好奇心からくる無意識の差別もほんと痛々しく生々しい。これは同性愛だけでなくて、日本社会の中での独身女性・男性や外国人というあらゆるコミュニティにおける「普通」でない人たちの内側に少なからずあるものだと思います。

アドリアン・イングリッシュ、アドリアンとジェイクというふたりの主人公は、まさにこの社会における「恋愛」や「家族」というものをどうやって築いていくか、その裏にある感情や価値観を切々と表現してくれるお話です。ゲイロマンスというのはもちろんですが、そういう意味でも共感できる部分は多いんじゃないかな、と思います。

3

なじみの悪魔

続けて4巻がすぐ読める状況になかったら転がり回っていただろう3巻です。勘弁してくれ!よかったよ4巻が目の前にあって!
ってレビュー他の本でも書いた記憶があります。稀によくあるというやつですね。

今回は登場人物がぶわっと増えて、ちょこちょここの人誰だっけ?と思ったりもしましたし、シリーズの前2作とミステリに関してはほぼ同じ感想でした。アドリアンは関わるなと何度言われようとも事件に関わり、正直3,4回死んでてもおかしくないのですが、度重なるラッキーで切り抜けています。コレぞ素人探偵。

この作品はミステリを楽しむというより、斜に構えたアドリアンの皮肉と冗談、そして周辺の人間模様を楽しむ作品ですね。前巻はジェイクのセクシーさを楽しむ作品だなと確信してましたが、今回ロマンスとは遠ざかってしまいました。ジェイク、罪な男。あの病室のシーンは息が詰まりそうで。分かっていたこと、分かりきっていたことだよ。

他に印象深かったのは、アドリアンが抵抗をやめ、目を少しばかり閉じて2分で全てを終わらせようとしたシーン。好きです。

3

ディープな世界に引き込まれました

相変わらずやめ時が見つからない程面白かったです。
ミステリーや小説のプロットが緻密であるという訳でもないですが、ストーリー進行がテンポよく、登場人物が実に個性豊かな人達ばかりで引き込まれるんだよね。。。
今回はオカルト系の話でカルト教団的な話にまで及びますが、引き出しも多いし、なかなかディープな知らざれる世界も味わえるので没頭できました。

 今巻は主人公アドリアンはお相手ジェイクにメンズラブでお約束的な酷い仕打ち(?)を受けます。読者も予想外でガーンとショックを受けますが、ジェイクの事を忘れちゃうくらいオカルト事件の展開が忙しいし、ガイやらガリバルディといったアクが強く妖しくも魅力的なキャラクターが次々出てくるので、紛れました。このシリーズの起承転結の「転」の巻でした。まだまだ謎も解き明かされていないし、ガイの事も気になります。

 アドリアンは自主的に事件に巻き込まれ型主人公なので読んでいてハラハラします。ジェイクも本気で心配していると信じたいな。
個人的には色々マイナスに作用される面も受け入れつつも、プライベート趣向をオープンにしているアドリアンやガイの生き方の方が共感できるな。社会性を一番重視して自分を偽るジェイクの方が葛藤とかストレスすごそう。。
恋愛色が薄くても、それ以上にストーリーが面白ければ、満足度が高く感じられる証になった巻でした。

 作家のジョシュ先生は親日家でしょうか?話の節々に感じる所がありニヤニヤしていました。オカルト話でも「遊戯王」が出ていたりと嬉しかったです。

2

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