SS付き電子限定版
想像力に乏しくファンタジーは苦手なほうですが、こちらは最初からお話の世界にすっと入り込めて読みやすかったです。
武力は持たないが魔力の力で栄える国に生まれた王子と、隣国の武強国に生まれ父の業による呪いを背負わされた王の話。攻めの父は戦で死んでいて、攻めが隣国の若い王です。
武強国は自力では魔力を精製できないため、受けの国から王女を王妃に迎え、魔力を供給してもらうことで王の力を維持してきました。元々、隣国である攻めの国とは、第一王女を嫁がせる盟約が交わされていましたが、更に強大な国が攻め入って来たため、第一王女をそちらに差し出さざるをえなくなりました。第二王女は体が弱いため、王子である受けが攻めの国に嫁ぐことが子供の頃から決まっていました。王位は弟王子が継ぐことになっています。ちなみに後でわかりますが、実は上の二人も男で、四人兄弟でした。受けが隣国に嫁ぐことになったのは、攻めと年齢が近いからでもありますが、子どもの頃に怪我をして背中の魔法円に傷を負ったせいで、魔力がほとんどないことも理由の一つでした。
受けは自分の命をもって父王と国民の命を救ってもらうよう嘆願するつもりで嫁ぎますが、実は梟を使って長年偵察されていて(その目に映るものを水鏡に映すことができる)、受けが王子であることも知られていました。
攻めのほうにも事情があり、父王が隣国を滅ぼした際に降伏した相手を惨殺したことで恨みを買い、王子である攻めに呪いがかけられていて、子が生まれればその子にも呪いが移るため、子を成すつもりはなかったようです。よって、嫁いできたのが王子であることは了承していたようですが、王子であっても契れば魔力を得られると期待していたようです。
受けに魔力がほとんどないことを聞かされても、攻めはそれもまた呪いのせいだろうと受け入れ、盟約通り受けを王妃とし、優しく接します。
攻めの呪いというのは、満月を見ると化け物に変身し人としての自我を失ってしまうというもので、それを知った隣国が攻め入って来て、魔法で月の満ち欠けをコントロールし、王を化け物化させます。それを見た受けは変身が解けた王にも怯えてしまい、王もそれに気づいて受けを避けるようになります。
偵察のためのトカゲ(梟と同じで見た者を水鏡に送ることができる)が城内で見つかったことで、王の呪いや受けに魔力がないことを隣国に知られていたことが発覚します。王の呪いの空白部分を埋めるための呪具を壊すために、隣国の城に奇襲をかけることになり、受けも同行します。以前、隣国が攻め入ってきた際に受けは自ら自身の魔法円を刀で傷つけ、傷によって魔法円が正しい形になったため、魔力が増加していました。受けが近くにいると、攻めはその魔力を遠隔で吸収することができ、属性の雷の力を発揮することができます。
再び魔法で満月が現れ、王が化け物化しそうになりますが、その前に城内に侵入した受けが呪具を真っ二つにして、王の呪いは解けました。
身代わりで嫁ぐ話は受けが親から虐げられていたり、嫁ぎ先で無体を働かれたりして不憫なことが多く苦手でしたが、こちらは家族も城内の人達も皆、王子を大切に思っていて、王子も、民を守るという覚悟をもって嫁いできたところがよかったです。受けの、王妃としてなにもできないことへの辛さや、王のために生きたいと思う気持ちに心を揺さぶられました。
親の業を背負わされながら、国を守るために戦の前線に立ち、王子の魔力がないとわかってからも常に誠実であり続けた攻めも、とても魅力的なキャラでした。
話としては一冊できれいにまとまっていましたが、続巻もあるようなので読んでみたいと思います。
次の展開はこうなると思ったら全然違ってるシーン
が大きく2回ありました。全編通してこの人が裏切り者じゃないか?とあたりをつけたら逆に口が悪いだけで忠義に厚い信頼出来る性格だったり、王の抱える秘密はそっちかぁと驚きました。
細かい設定も含め自分の想像のはるか上の上をいく壮大なファンタジーで面白かったです。
強大な魔力があり食料が豊富で平和な国。花々が咲き、緑の自然が美しいエウェストルム国が目に浮かぶように描写されていて読んでいて明るい気持ちになります。なりますが、姉の代わりに武力国であるイル・ジャーナに嫁入りしなくてはならない王子リディル。それだけじゃなく王族としての強い魔力の供給を期待されているのにリディルは、弱い魔力しか持っていません。
嘘を2つも抱えて婚礼後にグシオン王に自分の命をもって謝罪し、エウェストルムの国民を守るという責務を果たそうとします。
リディルがかわいそう。運命は非情だ。と思ってたらグシオン王にも秘密があり、とお話は続きます。このグシオンがルックスと性格ともに立派な王で、リディル視点で話が進むためミステリアスな魅力がずっと続いて魅力的でした。
リディルを初めから溺愛しているグシオンの登場シーンに胸が熱くなり早く2人で幸せになってと思いますが、なかなか簡単にそうはさせてくれません。
後半は王の秘密や隣国との戦い、リディルの幼少時の怪我などいろんな要素と「魔力」が上手いこと絡まってますます面白くてワクワクします。
2巻も続けてすぐ読みたくなるお話でした。
そのタイトルにもあるとおり、花が印象的な作品です。甘く芳しい花々の香りと色合いとが、その文章の一行一行から鮮やかに溢れ出てくるような感覚を覚えました。
物語を追うごとに謎が解き明かされていく仕掛けも素晴らしく、読み終えた今ただただ余韻に浸っています。
前半のリディルの葛藤の描かれ方にはとても引き込まれました。
王に話しかけられても返事のできない、会話することのできないもどかしさ。相手を知れば知るほど、こんなにも良き人間を騙しているという恐ろしいほどの罪悪感に打ちのめされるさま。
そんなどうにもならない渦巻く感情を、どうせこの身をもって償うのだ、というその一心でやり過ごすリディルの追い詰められていくさまが非常に良かったです。
この前半があったからこそ、後半の彼の活躍がより活きてくるのだと感じました。
後半の戦闘シーン、リディルがグシオンから魔力を吸い上げられるさまがとても官能的でした。脊椎にダイレクトに刺激が来るという。遠隔でも二人は繋がっている。いいですね。
リディルの感情に応じて指先から花々が生み出される設定が大好きです。その色や質感の描写によって、グシオンのみならず我々もリディルの感情を伺い知れるという生まれつきの能力。
まさに花に溢れた都に生を受け、行く先々に花をもたらす王子の物語でした。
また一人、尾上与一先生というとても素敵な作家さんに出会えました。
はぁ…良かった…
300ページ超えの大ボリュームを感じさせない面白さ。壮大なファンタジーを、この時間まで読み耽ってしまいました…
掌から花を生み出す王子、ってだけで激萌えですが、攻めのグシオンもいい男すぎて、2人の運命と背負ったものの切なさに胸を突かれました。
王女と偽って輿入れするリディル。リディルを迎えるグシオンにも実は大きな秘密があって…
リディルが男だと知っていながら、優しく心の込もった声をかけ、リディルの心を解そうとするグシオンの姿に、リディルと一緒にぐずぐずに絆されました。
互いを想う気持ちは大きくなるばかりなのに、救うことができない辛さ、リディルの心の痛みがリアルに伝わってきて切ないこと切ないこと…!
そしてSSでグシオンが照れくさそうに語る言葉が最高に良くて。
実はリディルにほとんど一目惚れだったんだね…!なんてキュンとさせてくれるんだー!
最高に萌え狂う物語でした。
死を覚悟した婚礼から始まるファンタジックストーリー。めちゃくちゃ面白かったです!
魔法国の王子が武強国の王の元に嫁ぐ序盤から悲しさいっぱいで物語が始まっていくのですが、このドン底の悲壮感が最後には幸せに満ち溢れたエンディングに続いていく道のりがなんと素晴らしいことか。魔法が介在する世界観により、壮大なスケール感、独創的なストーリー、そしてドラマチックにドラマチックを重ねた息をつかせぬ展開に胸が熱くなりました!
嫁ぎ先のイル・ジャーナ国を騙すカタチの政略結婚ではありますが、死を覚悟していたものの王妃として迎えられたリディル。王のグシオンは誠実で優しい男で、リディルの気持ちがグシオンに寄っていくのは当然の流れと言えるでしょう(^^)
でもなんの問題もないかというとそうではなきてですね、グシオンにかけられた呪いだったり、イル・ジャーナが度々奇襲をかけられてピンチに陥ったりと問題山積です。実はこれらのことは、リディルが輿入れすることで解決するはずだったのに、リディルが偽りの花嫁だったことで解決せず……役立たずだと責められるし、リディルも自分を責めるしで苦しい状況に陥ります。
リディルのいいところはここでメソメソするわけじゃなく、前向きに自分に出来る最大限のことをしようと頑張ることです。周囲がなんと言おうとイル・ジャーナのため、グシオンのために無理をしちゃう美しき王妃の姿がカッコいいったらありゃしない。口先ではなく行動で示すリディルのグシオンを想う気持ちが、物語のスケール感にも劣らず大きいことを読めば必ず知ることになりますよ。
もうね、最後の怒涛の展開は色んな見どころがありすぎてぜひ実際に読んでその驚きと余韻に浸って欲しいです。リディルに秘められた魔法の秘密も、グシオンにかけられた呪いの顛末も全部まるっと含めて解決しますが、そのスッキリ感と読後感に酔いしれました。
甘くて優しい2人のイチャイチャも楽しい見せ場となっていますので、余すところなく全部が楽しい作品だと思います。イラストも世界観に合っていて、どれもこれもが最高でした。