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表題作ツァイガルニクの恋の沼

二ノ宮航輝,人気木工作家
市川春音,手芸店の新米店長

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

「誰でもいいなら、別に俺だっていいだろう?」

都会から地元に戻って半年、
祖父母の経営していた市川糸店を継いだ
市川春音には好きな人がいた。
おさななじみで今は人気木工作家の二ノ宮航輝だ。
中学生時代、「男のくせに兄貴のこと好きなの?」と
軽蔑されたように言われて以来、疎遠になっていた。
でも、春音の姉と航輝の兄が結婚したこともあり、
Uターンをきっかけに親しくつきあうようになっていた。
好きだという気持ちは隠したままで。
だけど、やさしくされるほど恋する想いは強まって……
おさななじみのすれ違いラブ!

作品情報

作品名
ツァイガルニクの恋の沼
著者
月村奎 
イラスト
志水ゆき 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
発売日
電子発売日
ISBN
9784813013297
4.4

(146)

(83)

萌々

(48)

(11)

中立

(2)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
21
得点
642
評価数
146
平均
4.4 / 5
神率
56.8%

レビュー投稿数21

優しく甘く深い、恋の沼

ふあ。。。なんですかこの読後の多幸感とふわふわは…!!!!

毛糸玉に手編みのニットに手袋、暖かい暖炉の前で食べる手作り料理…

現実の自分の世界には到底出てこない、夢のような品の数々・:*+.

「夏」から始まり、季節のチャプター毎に紡がれるお話にときめきと胸きゅんが止まりませんでした…

両片想いの幼馴染、当て馬(に見せかけて全然そうではないのだけど誤解して暴走する攻め)、クリスマスイブのラブラブいちゃいちゃ…窓に映る自分と春音の姿を見つめて興奮する航輝……に興奮する私←

月村先生の「好き!」をぎゅっと詰め込んだ作品とのことですが、私の「好き!」もこれでもか!!と詰め込まれており、気のせいか小刻みに体が震えました。。。

中学時代に航輝が春音に浴びせた言葉は許されるものではないけれど、
再会後、そして想いが通じた後のスパダリ具合に「もんなんでも許してしんぜよう」という気になっちゃいました。

春音は手編みのニット・手作り手袋、航輝は家具店の職人なのでスツールそして手作り料理と、違いに自分の「手」で編み出したものを相手にプレゼントすることができるのって、とっても素敵ですよね。
(…全然関係ないけど、私も今通っている絵付け教室、頑張ろう!って思えました。完全に感化されましたね)

人肌恋しくなるこれからの季節、大切に読み返していきたい作品に出会えたことに感謝です◎

余談ですがタイトルの「ツァイガルニク」が気になって気になって、読み始める前に検索しちゃいました。

ツァイガルニク効果:中断された課題や未完の課題は、達成済みの課題より記憶に残る心理現象のこと。

だそうです☺︎(作中でも言及されてます)

中学時代、誤解し喧嘩別れしてしまった二人の未完成の恋…未完成だからこそ、お互いにずっとずっと忘れられなかったのですよね。
タイトルも小粋かつお洒落で、志水ゆき先生の美麗なイラストが作品の世界をより深めてくれていて、大好きな作品になりました。❤︎

1

燻る思いの最適解

再読なのに ついつい前のめりで読んでしまいました。
「そうそう、これこれ。両片思い やっぱサイコー!」と思いながら。幼馴染みのすれ違いラブ、大好物です。

春音(受け)というキャラが私は好きです。いい意味で普通の青年で、でもどこか品があって 好きな仕事には妥協を見せず、しっかり足が地についている。でも航輝(攻め)のこととなると・・・
自分の気持ちが相手に露呈することを何よりも恐れていて、追いつめられると言わなくていいことまで言ってしまう。この不器用さに愛着がわいてきます。
全編、春音視点で語られるので「それ、間違ってるからっ!勘違いも甚だしいから!!」て場面にいくつも遭遇するたび、切なさが じわじわと染み込んでくるのです。

中1の時、尚輝(航輝の兄)がきっかけで 航輝と春音が疎遠になる出来事が起こります。が、今現在 尚輝と春音の姉(夏乃)が結婚しているので、二人は姻戚関係。
【もうおまえは一生俺に話しかけてくるなよ! おまえみたいなやつ、大っ嫌い!】
と、過去に春音から暴言を吐かれたのは 航輝の中で無かったことになっているのか、再会した航輝は やたら親切でいい男になっているのです。おまけに 料理人になっても通用しそうなくらいに料理上手で、 お手製の料理を携え「ぬっ」と春音の元をたびたび訪れます。
こんな感じなので 航輝の本心が春音には読めなくて、接し方の正解がよくわからないまま…

お互い表面上は平静を装って なにごともなかったかのように交流を続けますが、春音の友人・航輝の職人仲間がそこに加わったあたりから 素直になれない臆病くんたちの物語が動きはじめます。
航輝が、誤解を招き度1200%の場面に遭遇してしまい(2度も!)、ひそかに打ちのめされている姿が気の毒で可哀想で でも二人の恋の加速度をヒートアップさせるには、この上ないスパイスで。読み手は思わずニヤニヤ悪い顔になってしまうんですね。

まだ一線を越えていない春音と航輝のたわいないおしゃべりの時間は、なんとも言えない戸惑いと 甘い感情が漂っていて、私は遠足前日の子どもみたいに 読みながら気持ちが逸って仕方なかったです。
月村作品の、この「来てほしいところで来てくれる感じ」何度味わってもいいし この先また何度でも味わいたい。

「ツァイガルニクの恋の沼」
【BLアワード2022】BEST 小説 10位

0

これだから現代ものはやめられない

ファンタジー作品も含めた多くのBL作品を読んできた中で、やっぱりの原点回帰。

現代もの最高ーーー(*´꒳`*)

現代もの作品に心惹かれる理由は、同じ世界に立ってると思う期待からです。私のすぐ近くで起きてるかも?と思うドキドキ感に、私はそれだけで萌え堕ちます。

月村先生×現代もの作品。最強タッグ過ぎる。
そんでもって大好きな幼馴染みときました……間違いない。そして間違いなかった。
面白くて読む手が止まりませーん。


春音と航輝の長い恋心が紡ぐストーリーに、それはそれはもうどっぷり。春音視点のすれ違いと誤解描写が主ですが、航輝の言動に間違いなく春音への愛を感じ取れたことに、妙な安心感を抱きながら読み進めることができました。

ストーリーの中に、色んなトラップが仕掛けられていて、これで誤解するなって言うのが無理でしょって思うくらいです。春音サイドでも航輝サイドでもそれが起こっているから、本当にややこしいしもどかしい。
それを軌道修正できるのは、告白一択。
さてさて、どちらから告白するのかな?…なんて、予想ゲームを脳内で展開してました(笑)

航輝からポロッと好きの言葉が飛び出したのをキッカケに、それまでの誤解と勘違いの答え合わせが繰り広げられていく会話が、とても面白かったです。

航輝のアピールが春音よりも分かりやすくてこれは結ばれたら相当に甘やかすだろうなと想像していたら案の定(笑)春音の部屋まで勝手に作ってしまう気の早い男に、ニヤニヤするしかありません。エッチも底なしのようだし、両想いに浮き出し立ってる姿は、幸せハイ。可愛いですね^ ^


親戚同士の春音と航輝だから元々「家族」の関係にあったけど、これからは本当の意味での家族になっていって欲しいと思いました。

1

ほっこり

この季節に暖かくしながら、まったり読んで欲しい作品です。
何気ないプレゼントの渡し方とその意図がお互い様でお前ら〜ってなります。かわいい。
周りの人達もみんな優しくてほっこりします。

1

ちょっとしたプレゼントの定義とは

いじっぱりで素直じゃない幼馴染の長い長い両片思い。

中学の頃、好きだった近所の幼馴染・航輝(攻め)に性嗜好を馬鹿にされたと思った春音(受け)は大嫌いと罵り、絶交を言い渡してから10数年。
東京に出て行って物理的に離れていたけれど、思い出深い祖父母の毛糸店を継ぐために会社を辞めて戻ってきて半年。
航輝の兄と春音の姉が結婚したことで姻戚関係になっており、お互い昔のことはなかったかのように親戚付き合いをしています。
昔は春音の邪魔をしたり意地悪ばかりしていたのに、人気木工職人になっていた航輝はすごい世話好きになっており戸惑う毎日を送っています。

絶交するまでは、編み物をしている春音の邪魔をしたり(自分の相手をして欲しい)、虫などが嫌いな春音に蝶を持って追いかけ回したり(綺麗なものが好きだから蝶は好きだと思った)と春音からしたら嫌がらせまがいなことばかりしていた(全く悪気はない)航輝は典型的な好きな子に意地悪する小学生男子で、それを嗜める航輝の兄(春音にとって今では義兄)の好感度が上がるイベントになってしまい、小学生の情緒でそれを理解するのは難しいとはいえ可哀想なことになってしまっていました。
結果なが〜い両片思いに発展したんですね。
最終的に今この歳になったからこそずっと続く関係になれたんだと2人は納得できていましたが、今までの苦労はなんだったのかと時々思い出したりするのかな。


「途中で放置しているといつまでも心に残る」
ツァイガルニの意味はこの作品で初めて知りましたが、私も編み物するので春音の気持ちがすごくよくわかります。見ごろとかパーツを編んでしまって満足して、完成まで辿り着かず放置した作品の多いこと。
悪い意味で、恋も同じなんですね。ちゃんと失恋してないから、いつまでも踏ん切りがつけられない。だからこそ、時がきて両思いにになれて良かった。


航輝は春音が東京から帰ってきてからも尽くしてたけど、両思いになってからのワンコ化した姿のギャップが‥
誰?って感じで面白かったです。
ただ、甘い2人をもっと堪能したかったです。

1

両片思いの幼馴染の再会もの

恋人がいるのでは?
やっぱり嫌われているのでは?と両片思いのすれ違いや、
攻めが間男(誤解)に嫉妬したりなど私の大好きな展開モリモリ。
攻めが甲斐甲斐しく受けの家に通って手料理を差し入れたり尽くしてアプローチしてるんだけど、受けは一体どういうつもりなんだ??と訝しんだりしてて気づいてないのが面白い。
そして引っ付いてから急激に甘くなるもの萌える。
攻めよ、その激甘な態度をもっと最初から発揮しなよ…と思うけど
攻めは意外と臆病で繊細な子でした。
受けが攻めの料理をいつも絶賛しまくるから
「料理ができない恋人っていいな(出来る人からすると簡単な並べて焼いただけのものでも感激してくれるから)」って言ってるのも面白かった。

3

フルパッケージ

幼馴染の拗らせ両思い再会もの
どこからどう見ても両思いなのに本人だけ気付かないってなんでこうも楽しいんでしょう
と手放しで言いたくなるほど完成されてる感じがします
二人それぞれに誤解を喚起するキャラがおり
すれ違いが入りつつ紆余曲折を楽しめます
受けちゃんからの一人称ですが受けちゃんが編み物作家一歩手前的なキャラで
攻めくんが人気の家具作家
子供の頃の幼さ故の誤解からそのまま疎遠になっていたけど故郷に帰ってきた受けちゃんを
あらゆる手段で溺愛の搦め手で攻めまくってる攻めくんの気持ちが(読者には)バレバレなのに
受けちゃん本人は全く気付かなく
ともうここまでくれば様式美な気もしますがそれが楽しい
そしてキャラクターの造形が良い
受けちゃんはフェミニンになりすぎず
攻めくんは過度にならない程には雄身がある
贅沢を言うならもう少し攻めくんを掘り下げてくれたらもっと良かった気がしますが
この二人は作り出すものでより性格を表してる気がします
彼らの作り出す空間やクラフトが脳内で素敵にレイアウトされちゃうので
二人の恋物語を楽しみつつ
二人とも手作り作家なためか感じのいい家具屋さんの片隅のコーヒーコーナーで一杯飲んでるような
雑貨屋さんや家具屋さんをウインドウショッピングしてる様な
ウキウキキュンキュン感を堪能でるお得な一冊だと思います

これに志水ゆき先生の挿絵です
モリモリです
フルパッケージです

5

やっぱり良い、月村作品

タイトル通り、やっぱり良いです。
好きだなぁ…月村先生の作品。
なーんとなく、最終的には大団円!
なのはわかりつつも、程よく
はらはら、ドキドキ、きゅんきゅん
良い波で感じさせてくれるんです。
また、これでもか!と言う程ぐるぐる
勘違い、すれ違い…笑えるほどというか
呆れるほどと言ったほうがよいのかも。
それがしつこくて嫌と感じるか
微笑ましいと感じるかは私達読み手次第。

そして、もうひとつの月村作品の素晴らしいところは、文字だけであたかも目の前に実物が見えるかの様な表現です。
それは、物であったり情景であったり季節であったり人物であったり…
様々なのですが、物語の中に引き込まれずにはいられない感情になってしまうのです。
それは、この作品に限ったことではありませんが、ここでは編み物や手作り品を業合とする男性と木工作家という、ちょっと専門的な職業の二人の仕事や取り巻く環境、その世界に引きずり込まれた感覚でした。

そして、今回もまた勘違いすれ違い…
読んでいて、ちょびっといらいらしてしまうところはたしかにあるのですが、月村ファンとしては、「お〜やってるやってる(笑)」となってしまうのです。

都会からちょっと離れた、素敵な自然と温かい人情のある、幼なじみ再会ラブ。
月村作品未読の方はぜひ、この世界感を味わってみてください。

12

誤解×すれ違い+嫉妬-期待≒♡

今回は幼馴染の家具職人と手芸店店長のお話です。 

誤解とすれ違いを重ね続けた2人が新たな関係を築くまで。

受様は高校を出て東京の服飾専門学校に進学、
アパレルメーカーに就職しますが
祖父母の手芸店を引き継いだ姉から閉店の相談を受けると
迷わず自分が継ぐ選択をします。

姉には猛反対されながらも店を引き継いで半年、
個人経営の手芸店の営業収入は微々たるもので
経営には苦労していますが、
編み物の仕事が大好きな受様が
この選択を後悔した事は1度も有りません。

開店時間に合わせて照明を入れ、
店の前にトルソーだして自作のニットや
ギャザースカートを着せかけ

ご近所さんに声を掛けらて雑談に応じ
店の脇のプランターに水をあげていると
見慣れた軽トラが店の前に停まりました。

窓からワイルドな顔を覗かせた幼馴染こそ
今回の攻めになります♪

攻様の実家は家具店で、
攻様は自分の工房で椅子専門の家具職人をしながら
家具店の配送を手伝っています。

攻様は受様の店の建てつけを直してくれたり
作品展示用の棚を設置してくれたり
料理が苦手な受様のために食事を差し入れてくれたりと
受様をいろいろと手助け暮れていて
受様もとても感謝しているのですが、

受様と攻様は中学生の頃に受様が
攻様の兄のために編んだセーターをきっかけに
仲たがいして長い間疎遠な関係だったのです。

この街に戻ってくる事で一番心配だったのは
攻様がどんな反応を示すのかという事だったのに
再会した攻様は疎遠な時などなかったかのように
普通に接してくるのですよ。

実は受様は攻様と諍いで攻様へ初恋心を自覚し、
今、再び攻様に惹かれていたのです。

果たして攻様の真意とは!? そして受様の恋の行方とは!?

椅子専門の家具職人である攻様と
祖父母の手芸店を姉ら引き継いだ受様という
幼馴染2人の恋物語になります♪

まずタイトルの『ツァイガルニク』とは!? と惹かれ
志水先生の美麗で意味深な小物使いにノックアウトされて
もう読む前から楽しみで仕方のなかった1冊でしたが
期待を裏切らない素敵な逸品でした (^-^)v

あるきっかけで関係を拗らせてしまった2人ですが
読者視線で見れば受様が戸惑う攻様の言動も
受様には見えない彼の気持ちも丸わかりです。

ゴ―ル地点は定まっている2人の恋の道のりを
受様と一緒になって攻様にドキドキさせられたり
受様の誤暴走(笑)にハラハラさせられたりしながら
とっても楽しく読ませて頂きました。

本作は何か大きな出来事があって
2人の関係が劇的に変わると言うものではありません。

普通の暮らしの中で感じる幸せ、楽しさ、苦しみ、
対人関係の中で抱く羨望、嫉妬、歓喜、

日時用生活の中で誰もが抱く感情が丁寧に描かれ
受様の言動にそうだよね!!って共感したり、
そうじやないだろ!? と突っ込んだりするのが
すっごく楽しかったです。

4

こういう話大好きです!

ここ暫く月村先生の作品にハマりきれなかったんですが、今作のお話は設定そのものが大好物でした。

長い間の両片思いとそれぞれの誤解、航輝の気持ちなんて読者には筒抜けなのに春音は悲しいかな気付いて無い、そしてお互いが勇気が無いもんだから要らぬ妄想をしてこんがらがってしまう。
もう焦ったくて焦ったくて、キュンキュンしどうしでした。

二人の日常描写が秀逸で、こんな丁寧な生活を送ってみたいと思ってしまいました。妄想の中で航輝の森の中の自宅兼工房を想像してみたり、寂れた商店街にあって懐かしさもあり小洒落た感のある春音の店を思い浮かべたりしました。

コロナ禍で家に閉じこもっている時間が長いので、余計に彼等の生活が眩しく感じました。

元から読者からは航輝は春音を溺愛していた事は分かってましたが、恋人同士になってからは春音をデロデロに甘やかしてて、両片思いになって浮かれてるのか丸わかりで微笑ましかったです。

ずっと壁になって見ていたいと思えるカップルのお話でした。

6

月村作品を未読の方にこそ読んでいただきたい

「ツァイガルニクってなんだ?」と読む前にひじょーに疑問を感じていたんですが、へえー、そういう意味だったんですねぇ。キリの良い所までやってしまわないと気になって他のことが手につかないという『癖(へき)』の強い私にはなかなかできない技でございます。

(何度も書いた様な気がするけど)今作も安定の月村さんでございました。
次にどうなるかが予測できちゃっても読んでいて面白い。
これって名人芸ですよね?

読んでいる最中に「あー、次はこう来るな」とか「そろそろ誤解が生まれるよ」とか、結構推測できるんですけど、でも本のお代金や費やした時間を「もったいない」なんて、ちっとも思わないの。
それどころか「ありがとう月村さん、またしてもほっこりしたよ」と、感謝の気持ちだけが湧いてくるの。

もう歌舞伎とか落語とかの名人みたいな域に入っているんじゃなかろうか?
何の名人かと言ったら『多幸感』の名人だと思うの。

なので、月村さんのお話を一度も読んでいない方に、そういう名人芸をお勧めするのと同じ様に「読んでみてくださいよ」とお勧めしたい。
色々あったが故に「好き」と言えない2人のモダモダと、その後の『幸せ感』を堪能しないのはもったいないと思うんです。

8

切なく甘く可愛く♡

『ツァイガルニクの恋の沼』面白かった。
大好きなお店を継いで仕事面では満足だけど、恋は諦めてる風な春音が切ない。ずっと好きだった航輝が昔を忘れたように接してくるのも嬉しい反面、先を考えると不安だろうなぁとハラハラしてました。春音にとってのファーストキスはあの時点では残酷で、胸が痛かったです。
航輝が結婚すると勘違いし気持ちが落ちてから、大逆転で想いが通じた場面は幸せが溢れていて感涙でした。初めてのHも幼馴染な雰囲気もありつつ、甘くて可愛くて素敵でした。恋人になってからの航輝の言動にはキュンキュンしました。すごく好みな作品♡

7

陽だまりみたいに温かい

BL小説初心者なので、あまり新刊には手を出さないのですが作者さんの作品を読んだことがあったのと、評価の良さに惹かれて読みました。

あとがきにあるようにサラッと読めるお茶漬けのような一冊なのですが、冷えた身体と心が一気に温まるような癒しを感じました。

商店街が微妙に寂れているような片田舎でそれぞれモノづくりを仕事にしている2人の両片思いです。
2人ともちょっと鈍感で早とちりで面白いようにすれ違ったりもしますが、攻めの航輝が男らしいタイプでへこたれないのが良かったです。
中学時代に一度挫折した恋を諦められずにいた2人がやっと叶えられた恋なので、とても幸福に満ちた読後感でした。

久しぶりに編み物をしたくなっちゃいました。

5

三ツ星クラスのお茶漬け(´∇`)

月村先生の小説に志水ゆき先生のイラストがつくとなったら、読まない訳にはいきませんです(///ω///)♪


受け様は、地元に戻って実家の手芸店を引き継いだ春音。

攻め様は、木工作家の航輝。


2人は幼馴染みだけど、春音が中学生の時に航輝の兄へ手編みのセーターをプレゼントしようとしたのをきっかけに喧嘩をして、それっきりになっていた。
再会したら、そんな事などなかったかのように接してくる航輝。
それどころか、手作りの食事を度々差し入れてたり、なにくれとなく顔を見せては構ってくる。

春音にとって航輝が初恋で、今でも好きな相手なのだけど、「大っ嫌い」とまで言って疎遠になった出来事が忘れられず、距離感が掴めないまま過ぎていく毎日。

そんな春音の生活は、好きな手芸にかこまれた好きな仕事をして、航輝が差し入れてくれる食事はめっちゃ美味しそうで、なんだか素直にいいなぁ、と思っちゃう。
特に薪ストーブを使ったオーブン料理!
想像するだけで美味しいハズ!
食べたいわ〜
お疲れ気味の毎日で、なんだか癒しをもらえました(´∇`)
先生があとがきで書かれてましたけど、日常の中にも新発見やちょっとした幸せって、ドングリみたいに気付けばたくさんあるのかもしれないなぁ。
そうであればいいなぁ。
そうありたいなぁ。

なんて、2人の様子に、にこにこほっこりな気持ちになっちゃいました。


勘違いの末、航輝が春音にキスをして泣かせた時。
航輝ってば春音の涙を見たら、とたんに怯んで謝って。
その後、謝罪に来た時の航輝の気持ちを想像すると、萌える(≧▽≦)
ウロウロしまくってたんだろうなぁ。

謝罪からの告白の流れ、大好きです。


また志水先生のイラストが素敵過ぎる。
表紙からキュート。
えちシーンは垂涎ものだし。
なんといってもラストのキス手前の幸せそうに微笑んでる2人のイラストがめっちゃいい(///ω///)♪
バックにお花とかじゃなくドングリがあるのも2人らしくていいです(*´ω`*)





11

読むと心がほんわかする

「幼馴染」「再会」「両片思い」
もうこの文字だけで萌えるぜ、早く読みたいっ!!と前のめり気味で手にしたこちら。
期待してたほど萌え転がるところがなく、わりとさらっと終わってしまいましたが、「ちょっと胃を休めたいときいうような気分のときに、さらっと読んでいただけたら嬉しいです」とのあとがきにいたく納得。

なるほどなーと。
それであれば、目標達成率200%です。

月村さんの「耳から恋に落ちていく」が結構好きなんです。
あの作品の受けは「実家男子のていねい暮らし」という本を出していることもあり、家の中を居心地良くするために細々と整えたりする描写を読んでると「私も家の中を整えよう!」という気持ちにさせられるんですが、この作品もそう。

この作品の受けは、手芸店の店長で自ら編み物をしたり、ドングリ拾ってブローチにしたりしてるんですね。
その穏やかで丁寧な暮らしぶりを読んでると、なんか私も頑張ろう!丁寧に暮らそうって気持ちになれるんです。(実行するかどうかは別としても)

「耳から恋に落ちていく」もギャー!!神!!って感じではないけれど、何度か読み返しています。
ギャー!神!!って作品は、読むとしんどいというか、体力も気力も消耗する傾向があるので、結局繰り返し読むのはこういう「ちょっと胃を休めたいときに」的な作品なのかもしれません。

さてさて内容ですが「すれ違い」ではあるけれど、攻めの気持ちが丸見えで、気づいていないのは受けだけって状態なので安心して読めます。
ちょいちょいさりげなく引越しを提案したりしてて、萌える。

幼い頃、攻めから意地悪をされて何度も泣かされてはいるけれど、それだって受けのことが大好きゆえの行動で、ただし小学生男子なので全部裏目に出てしまった……というだけで、昔から受けのことが好きなんだなぁっていうのが伝わってくる。

そしてこの攻め、さらっと割とアツいことを言うんですよね、そこも萌え。
「あの頃、俺がどんだけお前に恋い焦がれていたか」とか、きゃー!!って感じ。
他作家さんの執着溺愛攻めだったら、あー言ってら!ってスルーしちゃうところだけど、月村さんの作品だとなんか、きゃー♡ってなります。
で、「妖精」とか「小鹿」とか割とトチ狂ったことも言ってるし。
こいつ、かなり熱いパッションを秘めてるというか、こんな熱いパッション持ってながら今まで良く堪えていたなぁと変に感心してしまいました。

それだけに受けから「大っ嫌い!」と言われた時の、ガーーーーン……!!!!とした心のうちを考えると、可哀想で萌えます。

攻め視点大好き人間なので、後半にでも攻め視点があればなぁ……と。
攻め視点がなくても攻めの気持ちはダダ漏れなので、無くても全く困らないんですよ。
だけど、この攻めの溺愛思考回路が逐一読めたら、絶対にニマニマしまくりだったと思います。

萌萌と迷いましたが、こういう読むと心がほんわかできる、そして前向きな気持ちになれる作品ってそれだけでありがたいので、感謝の気持ちを込めて神で。

11

スローライフBL

待ってましたの月村節です。
評価はちょっと盛ってます。なぜなら、、こういう世界観が大好きだから!!! 
ありきたりな日常に向ける丁寧で優しい視点が心地よい作品でした。
先生いわく、”美味しいものを食べすぎて疲れた胃にさらっと食べられるお茶漬け作品”ということですが、私にとってはお茶漬けというより白米でした。物語に主張が少ない分、読み返しやすくて、その都度この心地よいAメロに気持ちを委ねられます。とくに後半はほぼニヤケてましたが、温かい感情が湧いて幸せな気分になれるので、安眠のためのナイトキャップ的に読めると思いました。

なんといっても、理想的なスローライフを実践してる2人が羨ましすぎます(夢のようだわ…)。祖父母から受け継いだ手芸店を細々と営み、古い店舗を心地よいスペースにすべく日々創意工夫している春音(受)に、家具職人として工房をかまえ、マイペースに作品を作りながら、日々春音のための手料理にいそしむ幼馴染の航輝(攻)。好きなことをして、好きな人といて、美味しいものを食べて四季を感じる…、最高の人生や。。そんな話です(笑)。

にしても、この受さんの鈍感っぷりには、何度となく攻さんが可哀想になりました。大好きな人から2回も”大嫌い”って言われるって、しんどすぎます。攻があんまり深く考え込まない(落ち込んで終わり)タイプなのが幸いでした。愛情表現の加減がわからず全力でいってしまう体質、きっと仔猫や小鳥を可愛がりすぎて(弄りすぎて)殺めちゃうタイプなんでしょうね。

一番体温が上がったのは、クリスマスイブの場面でした。はじめて受け入れる受の心情描写、めちゃくちゃ受に寄り添ってる感じがして、なぜだか新鮮でした。印象的だったのは、”ゴルフボール用のホールにボウリング球”。名言じゃないですか?!(産むより案じてるときのほうが…も上手い!と思いました。)
また、翌朝の朝食の場面、、受が座る椅子の座面に、攻めがすかさずブランケットを敷いてあげる気遣いに萌えました。他にも珠玉の甘々表現が随所にちりばめられていて、その一文一文を噛み締めながら読みました。

月村先生の作品には、世の中の”良い方を見る”という姿勢が一貫してあるような気がします。だから、これからも好きなものを描き続けてほしいなと思うのでした。

12

気分あがる

先生買い。この表紙で超気分あがってウキウキで読み始めたのですが、超盛り上がるかっていうと?だったので萌2より萌にしました。しかし素晴らしいこの表紙。着ている服も好きだし、手に持っている毛糸の色合いもめちゃくちゃ好き。私がハンドメイド好きだからかな?今年のベスト3に入る事まちがいなし。お話は本編220P弱+あとがき。月村先生の既刊お好きな方でしたら全く問題ございません、是非お手に。

勤めていたアパレルメーカーを辞め、曾祖父の代から続く手芸店を継いだ春音(はると)。昔恋心をいだいた幼馴染の尚輝は家具店を継ぎ、春音の姉と結婚しています。その弟航輝は椅子専門の家具職人になっていて、昔気まずいことがあったのですが、すっかり忘れたように、ご飯の用意だの、家のこまごました修理だのをやってくれていて・・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
尚輝(攻めの兄)、夏乃(受けの姉)、真冬、秋良(攻め受けの姪甥)、日名子(攻めの専門学校時代の友人♀)、悠一(受け友人、編み物作家)ぐらい。

++好きだったところ

攻めの作る料理、攻めのものに対して示す愛情や職人気質なところ、同じく受けの編み物や手芸に対する姿勢がとても好きでした。穏やかな時間、丁寧な暮らしとでも言えばよいでしょうか。受けがどんぐりやらまつぼっくりなどを拾うシーンや、最後ラブラブな朝ごはんを作る薪ストーブのオーブン等も、読んでいるだけで幸せ気分満点なのです・・・

攻めさんは好きな子に昔「大っ嫌い」と言われたから、慎重にあれやこれや受けを面倒みてアピールする方。なんとなく大型犬種、番犬という印象でした。

受けさんは手芸店でご近所の皆様と編み物のワークショップやったりするし、編み物だったら何時間編んでいても意に介さなさそうな方。攻めさんに恋心バレないように、あわあわするところも可愛らしかったです。

攻め受けのキャラもイイですが、やっぱり薪ストーブのある生活や、攻めの美味しそうなお料理、攻めの作る素敵な椅子などにうっとりする部分がとても大きかった一冊でした!

4

こんなお話が読みたかった

王道設定は何回出会っても飽きません。金太郎飴作家と自虐されようが、金太郎飴に信頼を置いているファンはいます(わたし)。

幼馴染みの両片思い大好物!!年齢不問、赤ちゃんから爺まで、幼馴染みサイコーな読者にはたまらない新刊なのではないでしょうか笑

年齢的にはアラサー同士、子供の頃から家ぐるみで付き合いのある幼馴染み同士のすれ違いが物語の心髄です。

アパレル会社を辞めて祖父母が経営していた手芸屋さんを引き継いだ春音。

家具屋を経営する実家から独立し、自分の工房で家具づくりをしている航輝。

ものづくり大好き!な二人が、お互いのために手作りした会心の作?を贈りあうシーンが本当に素敵です。

古いものや、自然の恵みに手を掛け、工夫をして大切に使い続けること。それから、月村作品には欠かせない美味しい手作り料理や無邪気な子供たち…

人々の、他者を思う気持ちがさりげなく描かれる作家様の作品に自分が求めているのは、こういった部分なのだなぁと実感しました。

日本のどこかの町で、誰かと誰かが恋をして、ささやかな幸せを噛みしめる。特別にしつらえられた世界観や魔法がなくても、こんなにも切ない気持ちと優しい気持ちにさせてくる王道BLなんて、月村作品でしか味わえない。

意外と難しい日常系のラブストーリーをさらりとこなしてしまう作家様はすごいと思います。タイトルのセンスも大好きです!

19

テンプレだけどおもしろいって実は深いよね

想像以上のことは起きません。
でも読後ちゃんと、おもしろかったなぁ、楽しかったなぁと思える作品です。

……よくよく考えたら、これってすごくないですか?

「想像以上のことが起こらない。だから、つまらない」と思った作品は過去に山程ありますが、

今回のように

新しくない
深くない
エロくない
まんまテンプレ

な内容なのに、
読んで良かった!もう一回読もう!
と思わせる作品って落ち着いて考えたらちょっと尋常じゃないです。

じゃあ何がどうおもしろかったのか?といきなり聞かれると、実は困る。
あとがきで先生ご本人がおっしゃっている通り、味付けも刺激も驚きも控えめな薄口小説なので、他の骨太小説みたいに
キャラが〜、展開が〜、職業描写が〜、と具体的なポイントを瞬時に挙げるのは難しい。

でも、おもしろい。
なのに、おもしろい。

それはつまり、この作品の「おもしろさ」が既存の評価尺度にありがちな、キャラの個性、意外性、新しい視点や切り口、伏線の巧妙さ、物語の深さ、エロといったポイントとはもう全く別の所に宿っているってことなんだと思います。

じゃあその月村流の「おもしろさ」とは何なのか?

ものすごく噛み砕くと「温かさと伝わりやすさ」なのかなと思います。

まず圧倒的に文章が読みやすい。
長すぎず、短すぎず、平易で親しみやすく毒のない言葉選び。

そしてわかりやす過ぎる起承転結。
盛り上がりポイントを後半の1点に集中させ、あれもこれもと欲張りません。
前半は全て後半へのフリに特化しています。
回想シーンもグダグダさせず、ハプニングエロもありません。
ノイズもブレも迷いもなく、古典的な一本道です。

しかも今回は月村先生にありがちな主人公不憫設定もありませんから、より一層シンプル度が増しています。

読み手への負荷がもう圧倒的に少ない。

そんなテンプレ通りの構成なのに機械的な印象にならないのは、作中に出てくる工芸、手芸、料理の描写から月村先生の「それが好きでたまらない!」といった人間味が溢れてくるから。
付け焼き刃の知識や、ストーリーを進めるだけの押し付けの説明だとこうはなりません。

しかも、テンプレはテンプレでもちょっとだけ構造にひねりがあり、
作中、攻の航輝は日名子、受の春音は悠一というそれぞれの専門学校の同級生と付き合っていると誤解し合ったり、
心のこもったプレゼントをお互いに試作品と偽り合っていたりと
同じ時間軸で攻と受の状況が対になっているんです。
そういう発見自体も読んでいて楽しいし、本文の受視点だけじゃなく、同軸の攻視点を想像する余地も生まれるから2週目も地味に面白い。

つまり、深さは無くても奥行きはちゃんとある作品なんですよ。

こういう所が並のテンプレ作との違いなのかな。

ここまでシンプルなストーリーを現代の商業作として成立させる数々の技は、フリーハンドで直線を描き続けるようなある種の特殊技術のような気がします。
見た目は地味で簡単そうだけど、その味わいは機械にも他の人にも出せない。

誰かが真似して簡単に出来るものでは無いだろうし、このテンプレストーリー1本勝負の土俵で月村先生に勝てる人は中々いないんじゃないでしょうか?

だから巷には新しさ、派手さ、意外性、真に迫る読みごたえをプッシュした作品が溢れているんだろうし。

それらはもちろん面白いけれど、
月村先生のシンプルな作品を読む度に、「おもしろさ」の定義を再認識させられハッとします。

BL小説における古典芸術と究極のお手軽感を両立させた稀有な1冊。
ライト層にもヘビー層にもおすすめな良作です。

21

ひみた

こんにちは。おラウさんのレビューもとても読みやすくて参考になりました!読んでみたいと思います✨

さらっと読む作品

まず、ツァイガルニクとトルソーの意味を調べました。

あとがきで作者さんが、味付けも刺激も驚きも控えめでさらっと読んでいただけたら。と書かれていますが、まさにそんなお話でした。

あとがきを読むまでは、惜しい!もっと盛り上げられたのに!告白合戦が始まりお互いの誤解が解け気持がわかり、おお〜ってなると思ったら、すんって感じで…。
でも作者さんの思惑通りなんですね。

20年に及ぶ両片想いのすれ違いというか思い込み?
長い!でも大人になって姻戚関係もできて、今だからきっと上手く噛み合って良かったんですね。

もう航輝の子供時代を読んでるだけで、きっと春音が好きだったんだろうなとわかるんですよ。好きな子に構いたくて構ってほしくてたまらないみたいな。
でも肝心の春音は嫌われてて嫌がらせされてる、しかも誤解されてさらに性指向を嫌悪されてると思いこんで…。

航輝の春音への好意の表し方や春音を迎える準備?などなどグッと来ます。
春音も同じように引かれないようにさりげなくめっちゃ頑張ってセーターを編んで渡したり。

帯に情報量が多すぎませんか?読者を惹き付けるためだとは思うのですが、すでに読む前からわかってしまって。わかった上で読むのもかなり萌えるんですがね。

二人がお互いの仕事をリスペクトしていて、仕事でも暮らしでもお互いの色が溶け合って、とても良いですね!

途中までは神だと思ったら告白の場面で、んん?となり、もうひと押し欲しかったんですが、そこは作者さんの望んでないことなのですね。

一気読みでした。あたたかくほっこりさらっと、これは何度も読み返すでしょう。

8

愛情が暴走して、攻めがおかしな事になってるんだが・・・

月村先生の待ちに待った新刊になります。
幼馴染みに両片思いに誤解にどんぐりにと、先生の好きなものを詰め込んだとの事。
そんなの私も大好きー!と、めちゃくちゃ楽しみにしてました。
や、どんぐりだけは大して好きじゃないけど。

ちなみに、月村先生と言うとしっとり切ない系のお話も多いイメージですが、今回はひたすらほのぼのでして。
もうめちゃくちゃ甘酸っぱいんですよ!
とにかく可愛いんですよ!
最高にキュンキュンなんですよー!!
や、特別派手な展開無し、ドラマチックな出来事無しと、これでもかと地味なお話なのです。
なのに、めちゃくちゃトキメかせてくれるのです。
こう言うお話、好きすぎる・・・!

内容です。
祖父母の経営していた手芸店を継いだ新米店長でゲイの春音。
彼には今でも好きな初恋の相手・航輝がいるんですね。
Uターンをキッカケに航輝と再び親しく付き合うようになりますが、実は中学生時代に自身の性指向を貶された経験から、二人は疎遠になっていて・・・って言うものです。

えーと、まずこちら、主人公の心情と言うのがなかなか複雑でして。
彼にとって航輝ですが、初恋で未だに引きずってる相手でありながら、同時に信用しきれない気まずい相手と言いますか。
幼い時分の彼ですが、春音の嫌がる事ばかりするクセに、何故か優しくもしてきてと、否応なしに意識せざるをえない存在だったんですよね。
で、優しく穏やかなもう一人の幼馴染み、航輝の兄に春音はなついていたものの、彼に手編みのセーターをプレゼントすると言う行動を「男のくせに」と非難されて売り言葉に買い言葉で絶交。
春音の初恋は気付いたと同時に無惨に散った。
それが、大人になって再会した航輝は面倒見が良いスパダリ。
何事も無かったように、せっせと春音の世話を焼いてくる。

春音にとっては人生で最悪のあの出来事も、航輝にとっては忘れてしまえる程度のものだったのか。
また、優しくされればどうしても、好きと言う気持ちが溢れそうになる。
でも、ゲイを嫌っている彼には想いを隠すしか無い・・・。

実はこちら、キャラの設定がとても上手いと思うんですよね。
この設定だとひどく切ないお話になってもおかしくないのに、実際はめちゃくちゃ可愛いしキュンキュンなんですよ。しつこいけど。
や、春音がですね、なんか小動物系と言いますか言動が楽しいのです。
彼がドギマギしちゃうのを必死で隠そうとしたり、航輝とポンポンと軽快なやりとりをしたり。
これがとにかく甘酸っぱくて、もうひたすら萌えまくってしまう。

またこれ、お相手となる航輝がですね、春音に輪を掛けて可愛いのです。
春音はそんな調子で誤解してますが、読者から見るとめちゃくちゃ分かりやすい単純な男でして。
えーと、幼い時分の意地悪ですが、小学生男子のアレね的に。
世話を焼きまくるのも、下心がスケスケじゃん的に。
ついでに嫉妬心や独占欲がバレバレじゃん!的に。

や、これな、私は「眠り王子にキスを」の宮村が大好きでして、攻めならこれくらい包容力が無くちゃと常に思って来たんですよ。
が、自分が年をとったせいか、今回のようなちょい未熟な部分のある攻めが可愛くて。
てかこれ、春音は航輝に振り回されて腹立たしいとか思ってるけど、実は、より振り回されまくってるのは航輝の方じゃん!と。
せっせと世話を焼き、一生懸命アピールし、そして全然通じずと、めちゃくちゃ気の毒じゃん!
航輝、可哀想に・・・!と。
萌えちゃうけど。

ちなみにですね、嬉しいのが、二人が結ばれてからもたくさん書かれてる事。
その量、およそ50ページ。
これ、くっつくまでは甘酸っぱ~い!ですが、くっついてからは初々しい~!、そして甘ーーーーーい!!なんですよ。
帯に溺愛男前攻めとありますが、それに恥じぬ甘々っぷり。
いやマジで、胸ヤケしそうな甘さに悶絶しましたよ。
春音を妖精だの小鹿だのとおかしな事を本気で言い出して、思わず吹きましたよ。
ここまで愛情が暴走してる攻め、月村作品では彼が一番じゃないでしょうかね。

と、そんな感じで、とにかく可愛いし甘酸っぱいしキュンキュンだしで最高でした。
それぞれの友人やお兄ちゃんやと、サブキャラも素敵でした。
ついでに、タイトルが秀逸ですよねぇ。
まさに沼にズブズブはまってもがいてる主人公の姿を、とくとご覧いただきたい。

とりあえず、甘くて可愛いお話が好きな方、ぜひ読んでみて!

33

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