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表題作氷の軍神と陽だまりの最愛

雫石要,常連客の軍人
涼風伊織,18歳,飯屋「ふく」の従業員

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

身寄りのない伊織に手を差し伸べたのは「氷の軍神」で…?

両親の遺産を叔父に奪われた伊織は飯屋「ふく」で働くが、面変わりした叔父が隠し財産があるはずだと押しかけてきた。危ないところを常連客の軍人・雫石に助けられるが、以来、叔父の残した借金の取り立て人に狙われるように。雫石は「心配させて下さい」と一緒に暮らすよう提案し、伊織は雫石が一人で暮らす屋敷に居候する。そんな中、自身の出生に関わるトラブルが起こり、伊織は蓋をしていた孤独感に押し潰されそうになるが、「頑張りましたね」と言う雫石の言葉に涙が溢れ…?

作品情報

作品名
氷の軍神と陽だまりの最愛
著者
貫井ひつじ 
イラスト
カワイチハル 
媒体
小説
出版社
KADOKAWA
レーベル
角川ルビー文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784041123942
4.1

(44)

(16)

萌々

(21)

(5)

中立

(0)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
12
得点
179
評価数
44
平均
4.1 / 5
神率
36.4%

レビュー投稿数12

スパダリと薄幸美人

軍人×料理屋「ふく」の看板息子

全編受けの伊織視点ですが、攻めの雫石さんがどれほど伊織を大切に想っているか、最初から一目瞭然なんですよね。
今回の攻めは自制心の塊のような人でした。

好きな子を守るため同居する雫石さん。
不安で眠れない伊織を抱きしめたまま眠りにつき、抱きしめるだけで何もしない忍耐強い雫石さん。

でも、伊織は雫石さんの気持ちには気付いてないんですよね。「ふく」のご夫婦と常連さんと軍人仲間と読者はみーんな知ってますけど。

ピュアで性に疎い伊織が下着すれすれにある〈痣〉を確認してほしい、と雫石さんに頼むシーンは天を見上げてしまいました笑

そして伊織が雫石さんに対する気持ちを自覚する前に、雫石さんからする告白にめちゃくちゃ萌えました…!
そのシーンのカワイチハル先生の挿し絵も素敵です。
ぜひ、読んでほしいです。

悪役も出てきますが、「ふく」のご主人や女将さん、軍人さんや雫石さんがバシッとやっつけますので読後感はすっきり。
架空の国のお話ですが、分かりやすい文章なので入り込みやすかったです(^^)

攻めのひたむきな献身愛と頑張り屋さんで健気な受けが好きな方におすすめです!
すごく好きな雰囲気のお話でしたが、もう少しラブラブした二人が見たかったのと、悪役が思ったよりしぶとかったので☆4つでお願いします。

0

とてもキュンときました!

氷の軍神という異名を持つ雫石と飯屋ふくに居候して働いている伊織が出会うところから始まります。

常連客と店員という関係から、ほのかな恋心が読み取れて、とてもキュンときました!
当事者以外は二人の気持ちに気付いた上で見守っているという構図も良かったです!

まだ恋を知らない初な伊織の反応が可愛く、雫石に伊織の特別を分かってもらおうと口付ける伊織の大胆さには萌えました…!!

伊織の叔父の借金が原因で襲われたり伊織に特別な力があると信じた烏丸に誘拐される伊織を雫石が助けに来てくれるので安心して読めました!

電子書籍特典の描き下ろし短編は伊織の白無垢を選ぶお話で雫石の溺愛ぶりと伊織の無自覚な惚気が可愛かったです!

1

氷を溶かす陽だまり

やっと読めた……めっちゃいいぃぃぃ〜…

読み終わったのはゴールデンウィーク最終日。疲弊した身体に染み渡る感動にブラボーの拍手を捧げたいです。


なんちゅう素敵な話なんだろう…
独自の世界観ではあるものの、イメージ的には明治〜大正時代を想起させる舞台です。私はこの時代が好きで好みドンピシャ。寡黙で"氷の軍神"との異名を持つ軍人・雫石と、幼い頃から波瀾万丈に巻き込まれた伊織の心温まる恋愛ストーリーに、すっかり心を鷲掴みされてしまいました。


伊織の生きていた境遇があまりにも不憫。そりゃーもうムカついて仕方なかったです。寄生虫ダニのような叔父と伊織の母親に恨みを持つクソストーカー野郎など、伊織の身辺がかなり物騒でヒヤヒヤもんでした。しかし、伊織の身を案じた雫石が悪の芽をことごとく潰していったり、自分の家に住まわせ保護するという素晴らしい展開に。BL的にはドッキリンコです♪

雫石は伊織が働く食事処に足繁く通う常連客。
軍人の中でもそれなりの職責を負う雫石は"氷の軍神"と呼ばれるほど冷淡だと軍人仲間から恐れられているというのに、伊織に向ける瞳からは冷酷どころか朗らかで温かく優しい。雫石の部下たちがその光景をみて驚きビビり倒すのも無理はない(笑)

そんなわけで雫石の態度は周囲にダダ漏れ。みんな知ってるけど伊織だけがキョトンです。
その様子をみた周りの人たちの大きなため息と地団駄が、密かに2人の恋を応援している証拠。なかなか前に進まない関係に、本人たちより周囲がもどかしく思っているシーンがめちゃくちゃ面白いです(^ ^)…2人がどれだけの人たちに応援されているのか分かるだけでホッコリ。

ちょっとした同居生活も距離を近づけるだけじゃなく、これから訪れるであろう未来予想図として期待感持っちゃいます。雫石の静かで落ち着いたアプローチがスマート過ぎてどの行動もパーフェクト。全然ガツガツしてないけど、実は心の中では伊織を求めて止まないと知ったときには雫石の好感度が爆上がりしました。

伊織がどんなピンチに襲われようとも、氷の軍神が都度カッコ良く助けに来てくれるので見惚れます。全財産の金そっちのけで「財産は私の腕の中にある」発言には萌え転がりました!このセリフ最高です…


雫石の抱える心の重石も伊織の抱えるトラウマも、2人が出会い一緒になったことで幸せの感情に上書き出来たのがとても嬉しいです。家族を失った悲しみはもちろん忘れていないけど、人を愛する喜びや好きな人が側にいることの幸福感を得られたことは喜ばしいことだなと思いました(*´︶`*)♡


陽だまりが氷を溶かしたことから始まる心温まる恋愛物語。周囲の人たちに見守られながらゆっくり恋の歩みを進めるカップル2人に、私も目を細めながら応援しました。
電子おまけも良かった〜…。2人には血縁関係のある家族はもういないけど、"家族"と呼べる人たちに囲まれていることが嬉しいです。

たっぷりの読後感・多幸感に包まれた素晴らしい作品でした!超オススメです。

1

「いってらっしゃい」と「おかえり」はセットでないと


天涯孤独な軍人と天涯孤独な印持ちの少年


裕福な商家の息子であった伊織(受け)は両親が船の事故でなくなると、後見人となった叔父に全てを取られ、遊廓に売られてしまいます。
なんとか逃げ出し途方に暮れていた伊織を救ってくれたのは、飯屋の夫婦。
以来、彼らに世話になっています。
しばらくした頃、同じように途方に暮れている軍人・雫石(攻め)を見つけた伊織は自分がしてもらったように、飯屋に連れていくのです。

やっと成人した頃、自分を追い出した叔父がやってきて、母親の持参金は何処だと迫ってくるは、逃げ出した叔父の代わり払えと借金取りはくるは(不貞の子だと嘘の書類まで作って追い出したくせに何言ってんだこいつら)、母親の元婚約者に代わりに嫁に来いと攫われそうになるはと面倒ごとがてんこ盛りに。
そんな伊織を助けてくれたのは、飯屋の夫婦はもちろん、あの日以来常連になった氷の軍神と異名をもつ雫石でした。


早くに両親を亡くし酷い目にあっている伊織ですが、優しい人たちに囲まれて、悪い奴らはきちんと捕まり、皆が因果応報なのが印象的でした。
叔父にしろ母の元婚約者にしろ他責思考が酷すぎてびっくりです。


そして、雫石の理性的なところも脱帽です。「氷の軍神は理性まで氷なのか」という部下の言葉にも納得の鋼の我慢強さでした。
外ではすっごく怖いとか強いとか冷たいとかの人が好きな人にだけ蕩けるような顔や態度をとる攻めが大好きです。

飯屋の主人が、なかなか心を開けなかった伊織がやっと心を開いてくれた後、雫石とのことを心配し、自分たちのことを話すところは涙なしでは読めませんでした。


優しい人たちが皆悲しみを乗り越えて幸せになれてほんとうに良かったです。

1

献身的な攻めときょとん受け

子供向け絵本のような、シリーズ読み切りまとめ本のような、分かりやすさ重視のごとき構成。ただただ溺愛を楽しむのが良さそう。最初からずっと攻めが受けに甘々で過保護。

ストーリーはノーストレスな進み方。情報を出して事件が起きて即解決、新情報を出して事件が起きて即解決を繰り返す。受けの伊織がピンチに陥り、攻めの雫石が活躍する。とても分かりやすい構図。

重要なシーンになると、伊織は途端に空っぽの視点主になり、周囲の人々が場を動かしていく。思考しない受けは苦手。
伊織は何にも気付かない天然キャラ設定なのかな。BL絡みの話にすかさずきょとんとし、他のキャラ達が訳知り顔で読み手への説明役となって萌えポイントを伝える。雫石の呟きにきょとんとする初心アピールは、書き方があまりにわざとらしい。しかも今となっては使い古された表現で読むのが辛い。

ほのぼの雰囲気はどこまでも続き、隠居老人と軍人上司が御膳立て。ここまでくると言葉を失う。ふわふわした夢を見せられているかのよう。その後また伊織がさらわれても、雫石の救出劇に新鮮味がなく盛り上がらなかった。

常に申し訳ないと思ってばかりの受けに魅力を感じず、謝罪より感謝を前面に押し出して欲しいと思った。
堅物ギャップ攻めはとても好み。最後の山場で初めて裏の顔を見せるとか、どこかで萌えを爆発させてくれる演出が欲しかった。描き方が違えばものすごく萌えるタイプのキャラなのに。

貫井さんの作品は二作目。「狼殿下~」の読み応えを期待していたため、今作のハードルが自分の中で高まっていたのかも。ハマれなかったが、また読みたいと思う。

1

かわいかったー…

受けは不憫&健気&天然なんですが、ひとことでいうと かわいい、です。

創作世界のお話ですが、神様がいて~その神様の子孫が貴族や華族で~とか、それくらいなので、完全なファンタジーではないのでファンタジー苦手なかたでもいけると思います。
時代的には明治~大正風。

攻めにも受けにも辛い過去があって、その喪失感や不安を補い合う感じ…たまらなく好きです。受けを辛い目にあわせるヤカラどもはムカつきますが、必要悪です。
なにせ受けがお世話になっている定食屋夫婦が最高でした。この夫婦にも辛い過去があって…このお話の部分では涙涙で読みました。

基本的にはスパダリ攻め×不憫受けです。
攻めが軍人なこともあって、途中戦闘シーンとかあったらどうしよう…ドキドキしてしまって離脱してしまうかも、と思いましたが会話上でだけだったので安心して一気読みできました。
挿絵はキラッキラで、このお話によく合ってると思います。

襲われたり誘拐されたりと不幸な目に合う受けですが、酷さまで行き着く前に助けられたり逃げられたりするので、ガツンと一発、超不幸!!っていう痛みのほうを期待してしまいました。そういうのもないので、安心して読める作品だと思います。

1

氷の軍神の溺愛ぶりよ(人*´∀`)。*゚+

表紙の可愛らしさに惹かれて手に取りました。
とっても優しくて温かいお話でした(^.^)


受け様は飯屋『ふく』で働く伊織。
両親が亡くなり後見人だった叔父に売り飛ばされた所を逃げ出して、『ふく』を切り盛りする2人に引き取られて4年。
恩を返そうと真面目に一生懸命働くいい子。

攻め様は〈氷の軍神〉との異名を持つ軍人の雫石。
気持ちが弱りきっていた所、伊織に手を引かれて『ふく』へと連れてこられ、以来『ふく』の常連に。

読み出してすぐろくでもない叔父が出てきて、もう事件か!?と思ったら、颯爽と雫石が登場し助けに入る。
軍人さんだけど、力に物を言わせず理詰めで撃退するのはなんか小気味いい。

氷の軍神と言われているのに、伊織に見せる顔は優しく穏やかな顔ばかり。
あらあら、まぁまぁ!溺愛やないの╰(*´︶`*)╯
見つめ合って甘々の世界を作る2人。
そんなむず痒い世界を目の前で見せられる雫石の部下の胸中を思うとめっちゃ楽しい!♪ └( ^ω^)」
なかなかくっつかない2人に、やきもきする周囲の面々楽しかったです。

大丈夫だと言う伊織に対し、心配させて下さい、なんて優しく言葉をかける雫石の、相手に負担をかけない数々の言葉かけに、タメ息が出ました。
いい男だわねぇ。

感情の起伏が遠慮遠慮しい伊織に、最初こそ、ん〜〜!?癒やしだけなのかしら、なんて思っていたのですが、ちゃんと自分から雫石のところへ動いてくれてよかったです(^.^)
拐かされた時も、絶対雫石を1人きりにはしない、と強い気持ちを持っていて、強くなったんだなぁ、なんてきゅんでしたよ(*´ω`*)
もちろん、迎えに来た雫石にも萌ゲージはマックスです。


イラストは大好きなカワイチハル先生。
雫石の氷の軍神ぶりの表情、優しい表情、オス感たっぷりな表情。
めっちゃ萌させて頂きました(^o^)

3

大切な人の為だけに

今回は飯屋の常連客である軍人と看板息子のお話です。 

両親の死で家族も家も失った受様が
軍人として身を立てる事のみを願った攻様の幸いとなるまで。

芙奏の国はかつて世界中の神々が集って暮らす神域でした。

しかし時代が進み人々が数を増す中である神は旅にでて、
ある神は人と交わり、やがて神は消えていきました。

国を統べる帝と皇族は最高位の神の血を引き、
華族と呼ばれる人々も何某かの髪を祖としており
数多の神の逸話と信仰は連綿と伝えられています。

受様の父親は工芸品などを商う商人でしたが
両親が商談を兼ねた旅行で乗った客船が沈没
帰らぬ人となってしまいます。

大海原での事故の原因は未だにわからず
4年たった今も遺体は見つかっていません。

しかも学生だった受様の後見人となった叔父は
兄の店を我が物顔で采配しだした上に
受様を母の不貞の子だとして戸籍を抹消、
色街に売り払うのです。

受様は冬の雷によって人買いの手をなんとか逃れ
ようやっとたどり着いた人気のない神社で
飯屋を営む老夫婦に拾われて引き取られ
今では店の看板息子として働いています。

そんな飯屋に2年前から足しげく通う軍人が
今回の攻様になります♪

受様が攻様と知り合ったのは
頼まれた買い物帰りの道での事でした。

攻様は鋭利な横顔と軍服の威圧感を放っていましたが
受様はよく知る悲しみようなものを感じて声をかけ
受様が知る限り一番温かいところへと連れ帰ります。

以来攻様は時間が有れば飯屋に通うようになり
立派な常連客となっていました。

そんなある日、受様は
げっそりと頬が削げ薄汚れた身なりとなった男に
名前を呼ばれてぎょっとしてしまいます。

男はなんと金の無心に来た叔父で
兄の隠し金や義姉の持参金があるはずだと
受様に掴みかかるのです!!

受様が叔父の手を逃れる術はあるのか!?

氷の軍神と呼ばれて恐れられる攻様と
飯屋の看板息子として働く受様の恋物語になります♪

主人夫婦が加勢するも危ないだけどヒヤヒヤするも
颯爽と登場した攻様は見事な正論で
叔父を黙らせて追っ払うのですが

今度は叔父に金を貸している男達が
叔父の借金を払えと店にやってくる事態になって
またもや攻様はヒーローよろしく助けに現れた上に

店には用心棒もどきとして部下を通わせ
受様が心配だからと自宅に保護するのですよ♡

どう読んでも攻様ってば受様にゾッコンなのですが
当の受様だけが攻様の好意に全く気付いていないのが
とってもMYツボで萌えまくりです ヾ(≧▽≦)ノ

受様の遺産を食いつぶして無心する叔父から
受様の母に人生を狂わされたという男が絡んできて
受様が母から受け継いだある力が明らかになり

受様が攻様の恋人となるまでハラハラ&ワクワク、
とっても楽しかったです♪

端々に丁寧に引かれた伏線が効いていて
攻様が受様に見せる穏やかな顔と
部下である軍人たちに向ける氷の顔との
ギャップも楽しく、ニマッとしてしまいました。

6

あたたかい

先生買い。前作大好きだったのでとっても楽しみにしていました。今作もとても温かい感じのお話で大好きですが、前作より好き度は下かなと思ったので萌2にしました。温かい優しいお話が大好きな方でしたら絶対おすすめ、本編230Pほど+あとがき。

4年前に客船の沈没事故で両親を亡くした伊織。後見人となった叔父により家を追い出され売り飛ばされそうになっていたところを飯屋「ふく」の夫婦に助けてもらい・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
「ふく」のご夫婦(絶対ええ人たち)、攻めの上官やら元教官やらに部下(みんなええ人)、受け叔父(あかん人)、もう一人あかん人ぐらいかな。

++好きだったところ

言葉遣いが丁寧なんです。そこがとても好き。色事シーンでも、あれやこれや色っぽいぐちょぐちょというのではなく、可愛いらしいという印象。なのでぐっちょんぐっちょんとか直截な表現がお好きな方なら、ちょっと物足りないと感じるかも。

攻めさんは氷の軍神とか呼ばれてますけど、受けやその周りの方に対しては非常に丁寧、おだやかな態度でいらっしゃる。それが好きです。おだやかなだけじゃなくってちゃんと決めるときは決めますよ、男前。「伊織さんを貰いました」(事後報告。ここ爆笑しました)何されても言われても揺るがない、既成事実「貰いました」(きりっ)。こういう筋通った男前大好きです。

周りの方はヤキモキしながら見守っているんですけど、ちょこちょこその心情を挟んでくるのです。「おれはいつになったら赤飯を炊けるんだ」ってぼやくセリフが好きだったな。

受けは天然ピュアピュア良い子(天然すぎて困る)で、幸せになれてほんと良かったなあと思いますし、攻めも周りのサブキャラも全体的にお話が好きだと思った一冊でした。先生テイストなんでしょうね。ほんと温かいという言葉がぴったりだと思いました。

5

溺愛攻に萌えました

貫井ひつじ先生の作品の中で1番好きなのは、「狼殿下と身代わりの黒猫恋妻」なんです。
未だにこれを超える作品はないです。

今作も年上溺愛攻と薄幸受という大好物な設定でした。あとがきで先生が「日常のなかで、安らぎの一時なれたのなら幸いです。」と書いてある通りに、事件が起きて悪役が出て来ては盛り上がるかと思いきや、スカッと外されて何度かこれじゃ無い感を味わいました。

氷の軍神こと雫石の伊織を側で見守り続ける一途さとか、伊織にだけ見せる顔だとかは萌要素大でした。
後半の伊織を助ける為の大胆な作戦にはとてもワクワクしたんです。

ただ伊織の叔父が途中で消えてしまったのと、あれだけ伊織を苦しめた「印持ち」「富苦之神」の扱いが中途半端に思えてしまいました。

雫石が伊織自身しか見てないからしょうがないと言えばそうですが、中途半端なファンタジー要素は必要だったのでしょうか?

もちろん、雫石の部下の荒井や貝塚、元教官の宇垣や上司である龍紋寺中将に、伊織の恩人である飯屋「ふく」の夫婦とか脇役陣が皆魅力的でした。

なのでもうちょっと伏線を回収してスッキリしてくれたらと思うと残念でなりませんでした。

4

安らぎのひとときになりました

タイトルの氷の軍神のところで、氷の神様?ファンタジーかな?と思ったら…。

なんともあたたかい癒やされる甘いお話でした。
泣けたりくすぐったかったり萌えたり。
人と人との結びつきや縁に心があたたまりました。

舞台は戦前の日本の東京を想像しました。下町のお店が立ち並ぶご近所さんも顔見知りな。

主人公伊織、大変だったねえ(泣)。気の毒に。ふくやの夫婦に助けてもらえて本当に良かったです。
やっと平和に暮らしていたのに叔父に突き止められ、言いがかりをつけられ借金を負わされそうになり…。

軍人雫石、軍人萌えしました!
あの日伊織に手を取ってふくやへ連れられていったのが縁で、2年も通ってくれて。
伊織の窮地を救ってくれて。

借金は一安心かと思ったら今度は伊織の母と結婚するはずだったという男に狙われて…。

伊織の母のことを印持ちだと言う男。
そういえば生前両親は…。
伊織の幸せな秘密。一番大切な人にしか見せてはいけないよと言われていた…。

とにかく雫石が伊織を大事に大事にしてくれて。
僕のわがままですからって何かと助けてくれて。
実は雫石と出会った日、彼も抱えきれない悲しみに立ち尽くしていて。
二人とも家族を失い、喪失感にいつまでも立ち直れずいたところに…。
だから雫石は伊織が泣けなくて立ちすくんで怖くてどうしようもないところを、どうすればいいのか包んでくれたんですね。

お店のおかみさん主人や常連さんも雫石の部下や上司やら、伊織以外はみんな雫石がふくやに通ってくれる理由を知っていて、何も言わず(伊織が聞いてなかったとも言える)見守っていてくれたんですね。

みんながハラハラしたり祝福してくれるのも、こちらまでくすぐったかったです。
最後のページに特に感動しました。

4

癒し特化作品です

和風ファンタジーで「氷の軍神」と呼ばれる攻めと、あたたかく癒し系の受けによる、ひたすら穏やかで優しいお話になります。

や、タイトルで受けが「陽だまり」と表現されてるんですけど、お話自体もまるで陽だまりみたいなんですよね。
めちゃくちゃ頼りになって包容力があって思いやりまである攻め。
彼の愛は1ミリの揺るぎすら無い為、ただただ安心して溺愛に浸っていられる。
また、境遇自体は不憫なものの、周囲から大切にされ、ささやかな毎日を幸せに生きる受け。

えーと、作者さんのお話が好きでデビュー作から追ってるんですけど、今回は「安らぎの一時になれば」って思いで書かれたみたいなんですよね。
そのせいか、既刊中で一番の穏やかさになるんじゃないかなぁと。
悪役なんかも居てと多少のスリルはあるものの、基本はひたすら甘くて優しいお話なんですよね。
こう、人によっては物足りないと感じるかもしれないんですけど、個人的にはとても好みの作品でした。
や、結構心が荒んでいるから、癒されたいんですよ。
同じように癒しを求めてる方はぜひ。

で、内容です。
飯屋「ふく」で働く青年・伊織。
実は両親の遺産を叔父に奪われ、更に売り飛ばされと悲惨な境遇ながら、優しく面倒見の良い店主夫妻に助けて貰って、今は幸せな毎日を生きているんですね。
そんな彼があわい好意を抱くのが、常連客である軍人の雫石。
借金取りに追われる叔父が押し掛けて来たところを助けてくれますが、心配した雫石から、彼の家での保護を提案されてー・・・と言うものになります。

と、こちら、繰り返しになりますが、とにかく穏やかであたたかくて優しいお話でして。
や、叔父がかなりしょうもない男で、色々厄介事を引き起こしてはくれるし、それにより、主人公である伊織はそれなりに辛い思いをしたり危ない目にも遇うのです。
遇うのですが、とにかく攻めがスパダリで颯爽と助けの手を差し伸べてくれる為、そこまで辛い展開にはならないと言うか。
あと、こちらはファンタジー。
実は伊織ですが、母親から受け継いだとある秘密があるんですよね。
ずいぶん都合良く助けの手が入ったりするなぁとか思ってたら、実はこの秘密が絡んでたりして。
これ、なるほどね!と納得が行くと共に、本当に設定からして優しいお話なんだなぁと、なんかほっこりすると言うんですかね。
ストーリーとしても面白いですし、とにかく癒されたいって方には、とてもオススメじゃないかと思うんですけど。

ちなみにですね、こちら、BLとしての萌えもしっかりありまして。
や、繰り返しになりますが、雫石ってとにかく優しいし穏やかだし思いやりがあるしでパーフェクトな攻めなんですよ。
ただし、それは伊織に対してだけ!
実は巷で彼は「氷の軍神」と呼ばれていて、その呼び名の通り、他の人間には結構クールなんですよね。
こう言う攻め、個人的に大好きでして、受けがまんまと騙されて「本当に優しい」とかやってると、思わずニヤニヤしちゃって。
や、これね、何が萌えるって、そんなクールな攻めが、受けにだけは本当の笑顔を見せてってところなんですよ。
そう、雫石ですが、彼もまた、結構悲惨な境遇なのです。
それが、伊織の存在により救われた。
タイトル通り、彼にとって伊織って「陽だまり」のような存在なんですよ。
凍りついた心を溶かしてくれて、安らぎを与えてくれたー。
このエピソードがとても素敵だと思うんですけど。
いつも助けてもらうのは伊織の方ばかりだと思っていたら、実は雫石が、それ以上に伊織に救われていた的な。
なんだかジンワリきちゃうよなぁと。

他、なんかピンポイントの萌えになるんですけど、伊織の天然ぶりも最高でした。
や、前述のとある秘密に絡んで、証となる痣を雫石に確認して貰おうとするんですよ。
で、その痣ですが、なんとあるのが足の付け根!
その際の雫石の反応がですね、意外に可愛いものでニヤニヤしちゃうと言うか。
そりゃ、真面目な話をしていたのに、いきなり際どい部分を見せられそうになれば、いくら冷静沈着な雫石でも動揺しちゃうよねと。

これね、こんな際どい部分をアッサリさらそうとする伊織。
その根本的な理由にも萌えまくりなんですよ。
彼が天然だってのもあるけど、そこには「見せていい大事な人」だと言う無意識の信頼があるんですよね。
や、これからは自分にしか見せちゃダメだと語る雫石に対して、彼だから見せた的なやりとりに萌えちゃって萌えちゃって。
この二人、何甘酸っぱすぎるやりとりを繰り広げてるんだと。
我ながら単純だとは思うんですけど、こういうの大好きー!と。

と、そんな感じで、とても甘くて可愛いお話でもあるんですよねぇ。
繰り返しになりますが、スレ違い等一切無いので、人によっては物足りないと感じるかもしれないです。
でも個人的には、とても癒されたし最高でした。

8

この作品が収納されている本棚

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