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表題作37℃

若杉,34歳,演劇関係
野田,32歳,妻とは別居中の銀行マン

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

「悪いんだけど、俺をしばらく泊まらせてくれないか」 銀行に勤める野田に突然掛かってきた数年ぶりの電話。それは、大学時代の野田の秘密を共有する男、若杉からだった。泊めることを了承してしまえば、面倒なことになる… そうわかっていながら、野田は頷かずにはいられなかった。とっくに終わったはずの関係だ…… それなのに…? 静かな熱病のような恋が始まる──!
出版社より

作品情報

作品名
37℃
著者
杉原理生 
イラスト
北畠あけ乃 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
発売日
ISBN
9784813011743
3.7

(86)

(34)

萌々

(13)

(24)

中立

(10)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
25
得点
304
評価数
86
平均
3.7 / 5
神率
39.5%

レビュー投稿数25

萌えどころは無いけれど

恋愛模様が丁寧に書かれています。
受けも攻めもどちらにも感情移入は出来なかったけれど、この二人には幸せになって欲しいし、こんな風に(大小じゃなく)人を好きになることが出来るのは羨ましいなとも思えました。

野田の自分の性嗜好に気付かないまま、流される風に結婚して、仕事もそれなりに順調で、なのに過去に重い荷物を抱えたように生きている。そしてその荷物の一つが再び目の前に現れたら…
若杉もあの時に感じていた想いをずっと持ちづづけて、面影を辿るようにして生きている。

長く離れた時間がお互いの立ち位置を変えてしまっている(妻帯者と恋人持ち)が、それが故に?野田は若杉への想いに気が付き、何よりもただ若杉を離したくない離れたくないということを一番に置くことを覚悟した訳で。
若杉はどうにもならない野田の気持ちが自分に向けられていたことを認識し、恋人とも別れて野田を甘やかす。。。いえ、自分だったら野田みたいな奴は付き合いきれないですけどね〜

離婚を承知した奥さんもかわいそうだけど、良い相手がいるなら二人をそっとしておいてあげてほしいな、と切に願います。(実際は義母だけど)

BLというよりも、切ない、でも未来は明るいと思える恋愛小説だと思います。なので萌えない(笑)

終わり方は余韻があるので、モヤッと感はありますが、野田の意気込み?がハッキリしているので、引っ張る感じではないかな。
続編希望が多かったら、その後のストーリー展開もあったのかも知れません。

1

R37

作家買いです。有難いことに紙の新本がまだ入手可能だったので、名作の呼び声高い本作品、お取り寄せしてしまいました。”神”or”しゅみじゃない”の二択系統です。いつもより読み進むのに時間がかかってしまいましたが、読了して”神”一択でした。”翳りゆく部屋”という昭和の名曲があるのですが、音楽にするとそんなイメージでした…。

大人のベリービターな恋愛小説ですね。”恋愛”の本質小説です。楽しい内容ではないので、誰にでもお勧めできるものではないのですが、読み継がれてほしい名作、こういう情緒が廃れてほしくないという気持ちです。昭和の文芸が好き、とかいう方ならささる気がするのですが。あと、R37ということで…。(37℃なだけに)

一目惚れ!ってヤバいですよね。相手のバックボーン抜きで好きになっちゃうんですもん。俗っぽく言うと見た目なんですが、綺麗にならすと魂レベルということです。見た目に惚れたという野田に対して、同じ見た目で全く違う中身の自分を好きになるのかと若杉が問う場面が印象的でした。形もなにも存在しないところでも野田を選ぶと語る若杉、こんなにもロマンチストで誠実で寂しがりやな男がなぜ野田のような男を好きになってしまったのか、、というこの不可解さこそ恋の醍醐味な気がします。

年齢と経験を重ねるほど、純粋に恋愛をすること自体が難しくなるんですが(実際問題w)、だからこそ10年前に封印したはずの若杉への気持ち、世俗に汚れていない唯一の美しいものを手放したくないと考える野田と、求めても求めてもすり抜けていってしまうような存在に情熱を注ぐ若杉が、心から血を流しながら行う行為が切なすぎました。野田が狡い人間に見えるのですが、実は自分が傷つきたくないと思う分だけ、他の人にも傷ついてほしくないと思っているだけな気がします。両想いなのに自分の幸せだけに酔っていられないほど、野田は周囲の人の気持ちを慮ってしまうのだと思いました。(ある意味、正しい大人なんです。)

おそらく、出会わないほうがそれぞれ完璧な人生を歩めたのかもしれないと思わせるCPです。価値観の相違は別れる前提みたいな設定なんですよね。肌をあわせたときに感じる温度の幸福感が自分のおかれている現実をひととき忘れさせる中毒性のある麻薬みたいものだからこそ、野田はその感覚と正気のはざまでずーっと揺らぐんじゃないかなと思いました。しんどい…でも素晴らしい作品です。

2

大人の恋は重い

KindleUnlimitedで読みました。挿絵、あとがきなし。
表紙のイラストが素敵なので、中の挿絵も見たかった。ちなみに、杉原先生の作品はこれが初読み。

序盤から、くっついたり離れたりのモダモダがもどかしい。受けが攻めを簡単には受け入れられない理由として、信心深い親に育てられて自分の性癖を責められてるように感じて育った、との記述はある。が、それ以上の具体的なエピソードが語られるわけでもないため、そこにイマイチ感情移入できなかった。
攻めも攻めで、そこまで受けに執着する理由がよくわからない。受けの一人称なので、最後まで攻めの生い立ち、背景が見えないままだったせいか、何を考えているのか掴みきれなかった。

好きだと言い合って、体を重ねても、ずっとどこか不穏な空気を感じるストーリー展開がツライ。結局どちらのキャラにも感情移入できぬまま読み終わってしまい、ぶった切られたような結末にも呆然としてしまう。
この読者の想像に委ねたラストは、前半部分で受けが攻めの愛から逃げたのを見ているからか、どうにも「この二人なら大丈夫、乗り越えられる!」という確信が得られない。しんどさとモヤモヤばかりが残る読後感。

2

そういう終わり方か~と言う感じ

学生時代に出会う攻めと受け。そのときの二人の関係性が何とも形容しがたい繋がりで、読んでいる方は攻めが受けに夢中なのはわかるのに…受けは関係性が曖昧なのに乗じて受け入れない感じが焦れったかったのですが、背景には受けの育ってきた環境、大人になって再開した頃にはまた違う要因があって、どうしても幸せを受け入れられないのが切なかったです。総じて攻めがかわいそうだな、という印象で読み進めたのですが、ラストが思ってた終わり方と違って、なるほどなあと言う感じ。きれいに終わりきれなさそうなのがリアルでした。ハッピーエンドじゃないとダメな人にはおすすめしにくいかな。

0

この余韻は、好みが分かれるかも……

切なかった……
ハッピーエンド?メリバ?
終わりの始まり?
読後の余韻は不安いっぱいでしたが、作品自体は愛に溢れたものでした。

若杉みたいな男にここまで愛され、求められたら幸せだと思う。
意地っ張りだった野田の心境の変化を、とても丁寧に描写していました。
心変わりじゃなく、10年引きずった初恋だと思う。

若い時には分からなかったことが、年をとると分かってくる。
それは絶対にある。
色々な経験をして辿り着いた答えが、「若杉」で「野田」で。
出会ってから10年経った今だから結ばれた2人なのでしょう。
その過程で傷付けた人がいたとしても、出会うべくして出会い、再会した2人だと思う。

野田の業は、離婚する前に若杉と付き合ったこと?
それとも、ゲイなのに女と結婚したこと?

ただ、どんな業を背負っても若杉と別れないという野田の強い気持ちは伝わった。
同じような状況で逃げ出そうとした、過去の野田はもういない。
これからどんな事があっても絶対に離れない2人だと思うし、そう思わせてくれるだけの熱量を感じました。
熱くもなく冷たくもなく、でも決して冷めない温度。
それが、37℃なんだと思う。

イライラしながらも、最後までドキドキさせられました。
綺麗事じゃない、年相応の大人の恋愛を見た気がします。

1

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