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「ふさいで」
シリーズ6作目にして、なんて斬新かつ意味深なサブタイトル。初めて目にした時、真っ先に思い浮かべたのは、「横顔と虹彩」のワンシーンでした。病院に担ぎ込まれてなお、うわごとのように仕事の話を続ける栄の目を、設楽が手のひらで覆う。「もういい、もういいんだよ、栄」
あの時はまだ、「あんなにみんなに鬼と恐れられてる相馬Pを下の名前呼び⁈ さすが陰の大物設楽さん」と感心した程度で、2人の間に漂う特別な気配のようなものに全く勘づくことなくスルーしてしまったわたし。でも本作は、まさにその病室の場面で幕を開けるのです。そして開始10ページもいかないうちにいきなりのキス。この時点で設楽さん40代半ば、相馬さんが10こ下くらいで、当然シリーズ中最もアダルトなカプのはずですが何たる早業!! ていうか、え? 何これ、ドッキリ? それともただの読み違え? この2人ってそういう仲だったの? いつから???
こちらがあっけにとられてる間に、時はぐんぐん巻き戻され、2人出会った11年前にさかのぼります。設楽がプロデューサーを務める夕方のニュース番組にディレクターとして配属されてきたのが栄。まだペーペーながら上司を上司とも思わぬ不遜さの陰に見え隠れする尋常ならざる才能の片鱗。色恋うんぬんより先に揺さぶられたのはすごい原石を見つけてしまった設楽のプロデューサー魂の方だったのかもしれない。興奮、高揚、そして同じ業界人として避けようもない嫉妬… たとえいくら内面では激しい感情のアップダウンに引きずりまわされていようと、それを微塵も面に出すことなくあくまで飄々と、まるで同年輩の友達のような気やすさで栄に接する設楽。同じく彼がかわいがっていたデザイナーの奥も含め、3人のゆるい付き合いはいつしか仕事の枠を超えていく。あの誰にも馴れない獣のようだった栄を、当人にも悟らせぬうちにじかに触れてもかみつかれない程度に手なづけちゃうあたり、やっぱり只者じゃないよ設楽さん。
3人の奇妙なくらい穏やかな日々はけれどそう長く続かなかった。唐突に迎えたあまりにも悲劇的な幕切れ。自失し、荒れる栄と抱き留める設楽。そう、いつだってその役回りは彼に巡ってくるようだ。興奮をなだめるというより、まともでない状態をもっとまともでない行為で塗りつぶす一夜。聴力を喪った栄の耳に告白めいた呟きだけ残して設楽は栄の前から姿を消す。自身の都落ちと引き換えに、栄の背中を「ゴーゴー」へ向けて押し出して。
表紙にある「fill me in」はすなわち「ふさいで」。一穂さんのあとがきによれば、「詳しく教えて」の意味もあるとのことですが、わたしには「満たして」と読めました。栄が設楽に繰り返し請うた「ふさいで」は、「何も見えなくして」であると同時に「俺の隙間をあなたでいっぱいにして」という意味ではなかったろうかと。設楽が栄の才能を、時に激しく嫉妬しながらもまぶしくふり仰がずにはいられなかったように、栄もまた、どうしたって自分が持てないものばかりいっぱい持っている設楽だから惹かれた。一瞬で人の器の奥底まで見切ってしまう設楽の眼力が怖い。でも同時に、見抜かれたい、とも思う。自分の同類とだけつるんでいれば楽なのに、人がわざわざ真逆の相手に吸い寄せられてしまうのは、自分に欠けている部分を満たしてほしいからかもしれない。セックスにしろ恋愛にしろ、突き詰めていけばそういうもののような気もする。
11年のブランクを経て、再会。前よりもっと孤独で、さらに満身創痍の栄を、どんな方法で設楽は満たしてやれるのか。テーマがテーマだけに、シリーズ中最も重くシリアスな本作ですが、やっぱり主人公が逃げずに仕事と向き合う肚を決めたとき、物語が生き生きと走り出すのは変わりません。計や竜起、錦戸カメラマンなど主要キャラもわらわらと寄り集まってきてあっという間にゴキゲンな現場に。にしてもどうしてこの業界の人たちって、厄介でイレギュラーな事態が発生すればするほど楽しげに立ち向かってゆくのでしょう。苦肉の策のはずの急造チームがなんだかマジで続いてゆきそうな気配だし、これはもう続編を待つしかないでしょう。栄と設楽の関係も、まだほんのとばぐちに立ったばかり。「付き合うって何?」とか言ってる朴念仁によく教えてあげて、設楽さん。
『イエスかノーか半分か』のシリーズ6冊目。
『イエスか~』のスピンオフ作品になるわけですが、なんていうんだろうな。
このシリーズのスピンオフ作品は、単純に『イエスか~』に登場した脇役が主人公になった作品、ではない。潮×計を中心に、色々な角度から、旭テレビの局員たちの姿が描かれている。過去の作品の裏話的な、「ああ、あの時の話か!」というエピソードを盛り込みながら進む展開。だから、彼らの内面がより一層浮き上がってくる。
さすが一穂さんだな、というストーリー展開になっていました。
そして、6作目の今作の主人公は栄さんと設楽プロデューサー。
一穂さん×竹美家さんのコンビって最強だと常々思っていますが、今作品の表紙にはやられた…。
オジサマの色香が半端ない。
シリーズ通して読んできて、栄さんて男前のイメージがあまりなかったのですが、
クッソカッコええですやんか…!
と、表紙で悶絶しつつ読み始めましたが、内容もめっちゃよかった…。
もう一度言う。
めっちゃ萌えた。
テレビマンとして天才的な面を持ちながらも、強烈な個性を放つ栄。
そして栄の才能とともに中身も丸ごと愛し受け止めてくれた設楽P。
そんな二人の純愛のお話。
けれど、そこには働く男としてのプライドと意地が立ちはだかるために甘々な空気感はほぼ皆無。ガチンコな、そして泥臭い男の闘いの世界が描かれている。
この作品のシリアス度を上げている要因がもう一つ。
途中で起こる、痛ましい事件。
奥さん(新キャラ)の哀しみ。
奥さんを失った栄の慟哭。
そして、そんな栄を救ってあげたいと願う設楽さんの想い。
一穂さんの文章がリアルなだけに、思わず涙腺が崩壊しました。
また、三人で冗談を言いながら楽しく飲める日が来ることを願って。
そして終盤に計と竜起も登場します。
前半のちょっと暗い雰囲気は一変。
いつも通りの『イエスかノーか半分か』のドタバタコメディも楽しめます。
というか。
計と竜起の男気がこれまたカッコいいです。
惚れなおします。
一穂作品は男たちの仕事面もきっちり描かれるものが多い気がしますが、このシリーズはそれが特に顕著な気がします。
仕事にプライドを持ち、真摯に向き合う男たち。
時に転び、時に倒れ。
でも、必ず這い上がってくる。
カッコいい!
『イエスか~』シリーズは新刊が出るたびにこれ以上萌える作品はないだろうと思いつつ読むのですが、今作品もそのハードルを楽々クリアして萌えが上がり切って降りてきません。
ずっと続いていってほしいシリーズです。
なっちゃんが奥さんと同じこと言ってるんだな。
死んでもうたら、駆けつけたところで変われへんやろ
地位とか名誉、金ではなくて仕事に対して縄張り意識持ってる男の人って良いな。
つか国江田さん、毎度番外編で横から心をかっさらってくんですがやめてください格好良い。
一穂さんキャラの中で密とか雪とかの捻くれた人が好きなので栄はほんと、ほんとあれです。尖りっぷりが半端なく鋭角。触るもの皆傷つける勢い。
でもどっかですごく純粋。
過去編で新キャラっていう嫌な予感しかしない奥さんがとても良い子で辛い。口絵が神懸かっていて、この本の中ででひとつ絵にするならこのシーンだよね。ですよね。
画面の反対側向いて背中丸めて寝転んでる絵も栄らしくて好き。
後半楽しかった。一人だけ嬉しさを隠しきれてないなっちゃんは可愛すぎたし、いつもの皆川くんらしくない愛想のかけらもない反応は、あぁ相馬さんをライバルと認定してんだなと面白く、あと国江田さんはシリーズ最初の頃だったらこの行動は無かったんだろうなと思う。
潮の影響は勿論、なっちゃんとかも含めた理解者の存在がなにげに強いんではないかと。
物分りの良い王子様でない面も出せるようになって、成長してるんだなぁと感慨深い。
カップルまとまったところで終わったのが物足りないです続き見たい。
もうほんと待ってました。
大人気シリーズの最新刊で、本当に楽しみに待っていた1冊です。
シリーズのうち前の潮と計、竜起となっちゃんはかなりラブコメらしいラブコメでBL小説はあんまり読まないような人にもおすすめしやすい感じでしたが、こちらは大人向けというかラブコメとはだいぶテンションが違います。
なので一穂先生の作品の中でイエスノーシリーズだけ読んでてラブコメが好き!って方には合わないかもしれませんが、一穂作品でもoff you goとか好きな方にはたまらないんじゃないでしょうか。
個人的には大好きでたまらなかったです。でも誰にでもおすすめできるか?と言われたら違いますね。最高に萌えましたけど。
あと、これから買われる方はできる限り協力書店で買われた方がいいです!
協力書店の特典ペーパー、必読です。本当に。
以下、ただの感想です。びみょーーーーにネタバレあり?かも。核心には触れないです。
もう最高ですね、最高。
栄視点の話で、栄と設楽の他に重要キャラが一人出てくるんですが、なんか………人生の話だった。それ以上言いようがないです………
「横顔と虹彩」のエピソードとリンクしてる部分がたくさんあって、栄のあのときの言葉はこれか…とか、ゴーゴーをそんな気持ちで…とかたまらないポイントもりもりなので、よく覚えてない方は復習してからがおすすめ!
そもそも個人的に栄と設楽のキャラがドツボなんですよね~~~食えないキャラと頑なな一匹狼…
ずるくないですか?栄、あんな感じなのに設楽のこと好きなんだね…ってかんじとか。特に協力店?ペーパー。ずるい。設楽Pもね、かっこよすぎる。普段柔らかくてニコニコしてるかんじの人が見せる本気っていいよね。
設楽が結構独占欲強くて、栄が意外と顔に出るのがまた。すごい好き。
あと、エッチシーンが今回2回あるんですが、なんか………すっごいエロい。特に、2回目。挿し絵ないのに。
総じて言うとほんと最高でした。こういう本に出会いたいがためにBL小説を読んでるんですよね…
あと続編出てほしい…あの場所で働く栄を見たい。
あの……読後は本当に言葉にならないです…。
のっけから私情で申し訳ないのですが
栄のような人間って基本的に好ましくないんですよ。
言葉が乱暴で年上を敬おうともしない感じとか。
あんな人が職場にいたら胃に穴あくどころじゃないなとも思うし。
なのに芯もちゃんととおっていてこうまで魅力的な人物にしてしまえるのは
さすがとしか言いようがありません。
深がなぜあれだけ栄に心酔していたのかようやくわかりました。
序盤の、設楽さんと奥と栄の三人が
わちゃわちゃつるんでいる頃をずっと読んでいたいくらい楽しかった。
奥のした事は許されないものかもしれませんが胸のすく思いもしました。
題材が題材なのでとてもシビアで苦しくなりましたけど
色んな感情が揺さぶられるようでした。
なんといっても設楽さんが……なんであんなにいい男なんですかね……。
いつも笑顔で温和そうなのにしっかり短銃隠し持ってますみたいな感じが最高!!!
いや例えが悪いな、必要とあらばいつでもざっくり斬りつけますみたいな…⁇ww
栄にかけた呪いにも似た言葉、あれがなかったらどうなっていたのかな。
仕事でのお互い思うところがある関係性が非常にしびれます。
どのシーンにもぐっときすぎて
ここが、と挙げられないくらいですが
“じじいレンジャー”の掛け合いは声を出して笑いました。
こういうね、コミカルなところ持ってくるのもめちゃくちゃうまい!!
発売日翌日(田舎だから一日遅れ)に購入して
早く読みたいのに読んだら終わってしまう葛藤と戦い
ついに本日負けてしまったのですが勿論後悔はないです。
またシリーズぶっつづけで読み返したくなりました。
更に大好きになれるのがとても嬉しい!!
ニコラシカ、いつか挑戦してみたいですが
格好良く飲める気がしません……。