【電子限定版】書き下ろし番外編「Chestnut」収録。
作家買いです。あらすじを拝見した時に少し痛い話なのかなあ、と思ったのですが読んでみました。
内容をざっくりと。スミマセン、ネタバレしてます。
幼少期から吃音という病気を持っていた平良くん。その障害のためクラスメイトに馴染めず、いじめというほどではないにせよクラスから浮く存在で、平良くん自身周りに溶け込むことをなるべく避けて生活しています。
でも高校2年生になった時に生活が一変します。新学期が始まるにあたり自己紹介するときに吃音が出てしまい、そのせいでクラスメイトからのいじめともいえるからかいが始まってしまいます。でもその自己紹介の時に前に座っていた男子に目を奪われます。それが受けの清居くん。
清居くんは口数が少なく不遜な態度ながら、他のクラスメイトとは違う雰囲気を持っていてそれなりに発言権を持っています。清居くんはクラスメイトからパシリのような扱いを受ける平良くんをさり気なくフォローしてくれることや見た目が美しいことから平良くんはどんどん彼に惹かれていって。
平良くんを庇ってくれると言ってもはっきり庇ってくれるわけではないですし、彼自身平良くんを良いように使うことも多々あるのですが、平良くんはどんどん彼に傾倒していきます。好きだ、というよりまさに王様に傅く下僕ちゃんです。
そんな彼らも卒業すると同時に関係が切れてしますのですが…。
というお話です。
清居くんは確固たる自分の世界を持っていて人から何をされても揺るぎません。それには彼の家庭環境が関係していて。自分の気持ちを素直に出すことができない彼ですが、平良くんに惜しみない愛情を注がれることで徐々に心を開いていくのですが。
対して攻めの平良くん。クラスメイトからからかわれるたびに、いじめを受けるたびに「死」を意識するほど追いつめられていたのですが、清居くんと出会い、彼に尽くすことで自分を取り戻していきます。どうしてそれほど清居くんのことが好きなのか、ちょっとわからない。ただ「これという理由がない」のに惹きつけられるっていうのがこのお話には凄くあっていてよかった。
ただその愛情が自己完結型なんですよね…。相手からの見返りを求めることは一切なく、また相手の気持ちは一切関係なく尽くすことに喜びを見出す。自分が清居くんに受け入れてもらえるはずがないと思い込んでいるので相手の気持ちを推し量ろうともしない。そういう意味では「本当に相手を愛しているのか」とも思えました。もちろん平良くんの愛情は本物なので、すれ違う彼らにやきもきしたりもしましたが。
あと特筆すべきは葛西さんの描かれた挿し絵です。
葛西さんの描かれる絵って儚さや悲しさを感じることが多いのですが、このお話にぴったりのある意味病的ともいえる美しさを持った表紙だな、と。扉絵もすごく良かった。高校生の頃と、今の二人を素晴らしく表現されていて。本編を読み終わってからもう一度拝見するとその表現力にうっとりしました。
前半は平良くん視点で、後半は清居くん視点で書かれているので二人の気持ちが理解しやすく読みやすかったです。
個人的には凪良作品には、あたりはずれもあるのだが
これは好みの一作。
まずは、挿絵が葛西リカコさんということで、
読む前から加点だったのだが、話も期待に違わずだった。
話は全部で4編からなる。
ちゃんと時間順に繋がっていく話なのだが、
一つ一つの色合いが違う。
寒色から暖色へ、シリアスからコミカルな甘さへ、
その変化がとてもいい。
一編目の表題作は、BLでなくても読ませるような短編。
(←これ褒めてます。)
学校カーストの最底辺に位置する平良の視点で描かれる
彼が生き延びる日々の中出会った
憧れ崇めてやまない美しい清居。
平良は弱くて、でも強い。
最下層のパシリなのだけれど、育ちがいいのだろう、
根っこが濁っておらず、優しく
そして人としての心をちゃんと大切にしている……
心の中で呼びかける、アヒル隊長のモチーフがまた秀逸。
続く「ビタースィート・ループ」は、大学に進学しカーストの楔から放たれ
自分にあった居場所を見つけて過ごし始めている平良の日々。
写真のサークルで出会った友人に想いを向けられ、
彼の想いに応えるべきか……と思い始めた矢先に、清居に再会。
キモ!ウザ!と罵られても、彼が俺の幸せ。
そして、視点は清居に移って「あまくてにがい」。
これが可笑しくて、でも可愛くて切なくて悶える!
彼の視点で高校時代からの関係が振り返られていて、
混じりけのない揺らがぬ熱をひたすらに自分に向ける平良に、
徐々に惹かれていく様子が描かれる。
半同棲のようになりながらも、
神のように好き過ぎて手を出すなんて滅相もない感じの平良との
ズレまくったやりとりに、じれてジタバタする清居。
そして、そんな苦労を乗り越えてようやく辿り着くH(笑)。
最後のSS「月齢」は、付き合ってからの平良のモテっぷりに
やきもきする清居という甘いデザート。
中身は相変わらずのキモい奴なんだけれど
清居プロデュースで外見を磨いてみたら
あら!(笑)
嫉妬はHの亢進剤だけれど、平良はつねにMAX!
読み終えた後に「評価が難しい」という意見と「BLアワード2015小説部門1位」という事実に納得した作品です。
いじめがテーマであろう作品のあらすじを、スクールカーストLOVE!!なんてPOPに仕上げちゃって大丈夫なの!?という不安を抱えながらも、レビューと凪良先生を信じて手に取ったのですが…
結果身体がよじれる程萌えました!!
というのも、あとがきに書かれているのですが、
凪良先生の
「気持ち悪い攻めが好き。スーパーネガティブだけどピュアピュアで受けが好きすぎて、ごめんねごめんねと土下座し、俺はダメだダメだと自らを責めながらも止められず、明後日の方向へ暴走する攻めが大好き」
という趣味に激しく共感出来たからなのです!
受けも強気で美人で性格悪かったりするのが好き、とのこと。ME TOOーーー!!!
しかし性格が悪いと言っても、受けの清居が自分の意志でピラミッドの上位に立っているような人間だったら正直読み進めることは出来なかったと思います。
攻めの平良のいう底辺女子と平良に度が過ぎたからかいが起きたとき清居は
「激しくどうでもいい。それおもしろいの?」と一蹴して周りを黙らせます。けして正義感などからではありません、ただのきまぐれです。
清居は自分勝手できまぐれで自己中だけれど、それは自分自身がいじめの標的にされても変わりません。
清居を賞賛するつもりはないのですが、ファン体質の私には重度のファン体質である平良が清居を崇拝していく様に納得がいったのです。
しかし清居視点になる後半は圧巻でした!
家庭環境のせいで猛烈に愛されたい願望を抱えている清居が、自分に向けられる平良の熱烈な視線に快感を覚えていく様子が見事に表現されていました!
崇めるばかりで清居が自分を好きだなんて発想がこれっぽっちもない平良に対して、自分以上に「俺さま」だという清居の意見に激しく同意!
マイルールに縛られている平良に振り回される清居が痛々しくて、「私のキングに何してくれとんじゃあ!!!」と平良を蹴っ飛ばしたくなったものです。
趣味と構成がハマれば至高の1冊になると思われます。
絶妙のさじ加減で難しいテーマと気持ち悪い攻めを書き切った凪良先生に神評価です!!
萌えじぬかと思いました。
私は前半の攻め視点は特に好きです。平良のフィルターを通した清居が本当に尊くて神がかっています。この美しい神がどうやってこっち側に堕ちてくるのか。平良に憑依してとんでもない緊張感とともにワクドキしながら読み進めました。結局この平良視点の時点では堕ちてきてくれやしないんですけどねw
それでも二人だけで会う教室の静けさや清居の横顔なんかが目に浮かぶようで、とてもドキドキします。指先にキスをする場面では、本気で萌えじぬかと思いました。これでこんなに萌えてたら、きっとこの後に凪良先生が用意して下さっているであろう、あんなことやこんなことをしちゃった日には、あたしゃどーなってしまうんだろうと。
でも肝心のファーストキスでは、神のほうからして下さったのに、平良のポンコツな受け取り方で、ただただ切ないものとなっておりました。もう、それでもいいと思ってしまう私は立派な奴隷です。
続く平良視点の大学編も、押さえ込んでいた気持ちが再燃していく様が実にリアルで萌えました。小山くんのおかげで、すっかり私の依り代である平良がちょっといい男に思えてきたのも気分が良かったですw それにしても挿絵の美しいこと。ありがとうございます。
そしてその後の清居視点。いやあ、私は清居視点があるとは予想していなかったので、驚きました。さらに神がかっていた彼が、普通の美青年であったことに驚きましたw この辺りは前半の萌えとは違った種明かし的な面白さがありました。
もうとにかく、ふたりのキャラがものすごく立ってて、この二人が他の誰かじゃダメなんだという説得力がすごい。しかもふたりの性格上なかなかくっつかないのも仕方ないと思いつつ、くっつくまで笑いながら(←ここ大事)読めてしまう。心理描写がほんとに絶妙で、受け攻め共に感情移入できて二度美味しかったです。ふたりの想いがようやく通じたときのカタルシスといったらそりゃもう、これが読みたくてBL読んでたよ!と声を大にして言いたいくらいでありました。
平良のことだから、一生清居をだいじにしてくれるでしょう。しっかり甘々で素晴らしい読後感です。
電子限定ss読みたいなあ。
なんでしょう、、、これは、凄まじいまでに悶え萌え転がりました
私は受けの子が可哀想お話が基本好みなので、読み進めて平良くんが攻めだと知り、「あ、これは地雷かも、、」と半ばガッカリしながら読み進めていました
それに確かに清居くんは美しいけど、キツすぎてあまり好みじゃない、、
中盤、二人きりで過ごす時間が出来き、なにか展開が!
と期待して読み進めましたが、ここでもいまひとつしっくりこない感じ
というかこんなの絶対両思いになれないじゃん!
平良くんほんとに尼さんになるしかないじゃん、、とBL小説なのにこの2人が結ばれる所なんて一ミリも全く全然想像出来ませんでした(脳内は完全に平良くんモード)
そこへきて終盤での清居くんの想い、弾ける可愛さ、シリアス?なのに噛み合わなさ過ぎるふたりの会話に爆笑し、ヤキモキし、焦れったくもずっと噛み締めていたいような、二人のゆるゆると結ばれていく様に、最後はもうずっと泣きながら読み切りました
美しく強い清居がなさけなく、ダサくなる瞬間が愛おしく、神のように崇める彼をそんな風にしておきながら、夢見たい、とこっそり寝顔をみつめる平良くんが愛おしいです