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表題作フェロモン探偵 蜜月のロシア

如月雪也(白松龍一),34歳,映の探偵助手で実業家
夏川映,28歳,探偵事務所所長

その他の収録作品

  • 掛け軸
  • 愛人
  • 家族
  • 初夜
  • あとがき

あらすじ

兄・拓也の隠し子騒動がきっかけで、これまで没交渉だった実家にたびたび足を踏み入れるようになった映。すべてを捨てたつもりが雪也との出会いが心に変化をもたらしたのだった。父・一馬ともぶっきらぼうながら話をするようになった映に、父は襖絵を描いてくれないかと持ち掛ける。古くからの友人でロシアの富豪・ピョートルの還暦に合わせて彼の自宅飾るものだという。自らの気持ちの赴くまま絵を描いてみたくなった映は、その依頼を引き受ける。しかし、映にはひとつの目論見があった。ピョートルの一人息子で美少年のヴァレリーが18歳という"美味しい"年頃になったことを思い出したのだ。映が筆を持つことを喜びつつ、なにやら不穏さを感じとった雪也は、当然の如く同行を申し出る。かくして二人はハネムーンさながらロシアに飛び立った。しかし、富豪の邸宅では大きなトラブルが映と雪也を待ち構えていたのだ……。

作品情報

作品名
フェロモン探偵 蜜月のロシア
著者
丸木文華 
イラスト
相葉キョウコ 
媒体
小説
出版社
講談社
レーベル
X文庫ホワイトハート
シリーズ
記憶喪失男拾いました~フェロモン探偵受難の日々~
発売日
ISBN
9784065186428
4

(22)

(5)

萌々

(13)

(4)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
89
評価数
22
平均
4 / 5
神率
22.7%

レビュー投稿数2

窃盗犯の目的は美術品の強奪にあらず!?

本シリーズは実業家兼探偵助と探偵事務所所長のお話です。

受様が父の名代で絵を描くために向かったロシアで巻き込まれた美術品
盗難騒動の真相が明らかになるまで。

受様は日本画の大家を父に琴の名手を母に持ち、両親の才を最も受け継
ぎますが、実家を出て探偵事務所を開きます。

攻様は実家のヤクザ稼業を嫌って起業、実業家として悠々自適な生活を
送っていましたが、ブラコンな友人の頼みで近づいた受様に惚れ込み、
助手というなの番犬と化すほど受様に執着するようになります。そして
受様も攻様と過ごす中で攻様を恋人と認めるようになります。

受様は兄の隠し子騒動をきっかけに、長く疎遠だった両親との関係を修
復、攻様が自分との関係を刹那でなく先の未来まで見つめている事を知
り、自身のこれからを改めて考えるようになるのです。

そして今回、受様は多忙な父に代わって父が友人であるロシア人実業家
に依頼された襖絵を請け負う事を決意します。今までは好きに描いてい
る絵で称賛を浴びる事に違和感しかありませんでしたが、再び周囲が
受様の画壇復帰を期待しても構わないと思うまでに気持ちが変化してい
たのです。

依頼者であるロシア人は受様の色彩が彼の歓声に響くらしく、今でも受
様が高校生の時に描いた絵を世界の宝だと絶賛していると言います。
今回の襖絵もダメ元という気持ちもあったようです。

そうして受様は空路ロシアへと向かうのですが、日本画を愛する依頼人
は攻様とも付き合いがあった様で、商談だなんだと適当な用事を作って
強引に受様についてきます。目を離したら何をするかわからない受様を
1人で海外に送り出すわけにはいかないと言うのが本心ですが(笑)

依頼人はとても活動的で仕事関係も交友関係も広いので、攻様のように
受様が知る誰かとどこかでつながっていても不思議ではありません。彼
が最も活動的なのは異性関係で、4度も結婚していて日本に伴う違う妻
子も度々違っていたし、浮気もしょっちゅうしているらしいのです。

そんな過去を思い出す中で、話を聞く限りでは依頼人の最後の子供であ
る少年にふと思いを馳せます。彼は金髪に鮮やかな碧の瞳をもち、宗教
画に描かれる天使そのもので無邪気に受様を慕い、「受様をお嫁さんに
してあげる」と抱きついてきて軽く口にキスした事もありました。

金髪碧眼のロシアの美少年に涎が垂れそうになる受様でしたが、空港で
出迎えてくれた彼は引き締まった分厚い体躯をもつ彫刻のような美丈夫
に育っていて受様はがっかりしてしまいます。

辿り着いた依頼人の屋敷は見事に整えられた庭園に囲まれた3階建ての白
亜の豪邸と和風庭園を整えた日本建築の離れがある豪勢な邸宅でした。
依頼人は8年前と変わらず壮健でとても来年還暦だとは思えないほどで、
1人息子の母で妻である女性もゴージャスな肉体美の魅力的な美女のまま
でした。

翌日から受様は早速襖絵の構想に取り掛かります。夕食は受様達の歓迎
のを込めたパーティが開催されますが、攻様は依頼人の妻に捕まり、受
様は元天使に姫君を守る騎士のように恭しく付添われる事となります。

パーティには依頼人の先妻の子供達も出席していて紹介された受様は、
奥さん同氏はそうはいかなくても子供達は仲がいいのかなと思いますが、
前妻だと言う日本人女性が怒鳴り込んでくると言う騒動まで起こり、な
かなか複雑な家庭事情を垣間見ることになります。

しかし、その騒動はまだまだ序の口だった事が、その数日後に依頼人の
発案で向かったサンテクトペテルブルグで起こります。受様はエルミタ
ージュ美術館でかつて攻様を組長にと暗躍していた元組員に声を掛けら
れ、依頼人は愛人宅で夜を過ごしている頃、モスクワの屋敷に賊が入り
依頼人の美術品が盗まれてしまうのです。

慌てて一同がモスクワに戻ると今度はサンテクトペテルブルグの屋敷に
賊が入り、その屋敷にあった美術品が盗まれるのです。

犯人はどうやってセキュリティーの厳しい屋敷から美術品を盗んだのか!?
攻様がかつて頼りにしていた元組員が接触してきたのは偶然なのか!?

本シリーズは男性引き寄せ体質でトラブルメーカーな受様がいろいろな
事件に巻き込まれながら、攻様との絆を深めていくお話です。

8作目となる本作は再び絵筆をとる事を決意した受様が向かったロシアで
依頼人となる実業家をターゲットにした盗難事件に巻き込まれるお話です。

受様が男に好かれる体質の今回の犠牲者は依頼人の息子である元天使です
が、父に似てモテるだろうことは明らかだし、ロシアでは同性愛は認めら
れていないし、昔の事だしと軽く考えていたのは受様のみで、攻様は彼を
牽制するために2人の情事を彼に覗かせて相変わらずの容赦のなさです。

そんな中、攻様の実家のヤクザの幹部だった男が受様に接触したり、依頼
人が各地の別荘に保管している美術品の盗難事件が続き、受様と攻様は
元組員が何らかの形でかかわっているのではと疑い始め、調査を始めるの
です。

そして最初は無関係に思えた人達が複雑に絡まり合って、美術品盗難計画
が練られていた事が判明するのです。盗難事件の真相はそうくるか!?と予
想外のものでたいへん楽しく読ませて頂きました。(^O^)/

受様の過去は徐々に払拭されてきたので、今後は2人でいる為の未来に焦点
が当たっていくのかと思いますが、過去の因縁は未来へと布石とでもいうよ
うに登場人物の過去が現在の関係と複雑に絡まり合っていて、2人の未来に
どう絡んでいくのかワクワクします。

前巻で受様の気持ちが固まったこともあり、本作の攻様との絡みはすっか
り恋人同士のいちゃラブ、濃厚&濃密ながっりさで美味しかったです♡

2

エロ、そして甘々が堪能できます

『フェロモン探偵』シリーズ8作目。

美少年のような麗しいビジュアルを持ち、良家の子息で、画家として天才と謳われる才能を持ち、けれどそのすべてを捨てて探偵業をこなしている映。

「映」という存在を形成づけたかつての恋人(といっていいのか悩むが)と、本当の意味で決別できたのは、忠犬さながらに映の傍を離れず見守ってくれる雪也という恋人ができたおかげ。ここに来るまでに紆余曲折はあったものの、兄・拓也に降りかかった隠し子騒動(前作『フェロモン探偵 母になる』参照)のおかげで音信不通だった家族とも交流が再開した映。

『フェロモン探偵』シリーズの最新刊は、音信不通だった父親から頼まれた仕事を軸に進むストーリーです。

実家に訪れた際、高名な画家である父親からとある依頼を受ける。
それは、家族ぐるみで交流のあるロシア人実業家・ピョートルの別荘の襖絵を描いてくれないか、というもの。

「天才」といわれることに疲れ果ててすべてを捨てた映ではありますが、絵を描くこと自体は好き。それ故に父親からの依頼を受けロシアへと旅立つが、そこには当然のごとく雪也も同行して―?

というお話。

男女問わず自身のフェロモンで虜にしてしまう映ですが、今作品はそのフェロモンはややなりを潜めています。映に夢中になるのは一人だけ。ピョートルの息子であるバル。かつて会ったことがあるバルは、それはもう天使のごとくのビジュアル。18歳になった今、バルの天使ぶりはいかほどか…?と期待する映ですが、がっつりマッチョ(だがしかしイケメン)になってしまっていたバル。バルが可愛い美少年でなくなってしまったことにショックを受けつつ、それとは別に、雪也という特別な存在を得た映にとって、バルは単なる弟になってしまった。

が、バルは昔から映のことが好きで。

富豪の子息で、イケメン・マッチョなバルはそれはもう果てしなくモテる。
モテるが、彼の想いは映一筋。

言葉の端々にそういったものが顕著に現れていますが、バルが映に無理やりどうこうしようとするシーンはありません。このバルのお行儀のよいこと!映のフェロモンに寄って来る数多の暴漢どもと雪也のワンコならぬオオカミぶりに慣れてしまっていたのでバルが品行方正過ぎてちょっと物足りない(笑

そしてピョートルの現妻、元妻たち(何しろピョートルは女遊びに余念がない)、元妻たちとの間に生まれたバル以外の5人の子供たち。そういったサブキャラは多く登場しますが、彼らは映のフェロモンにたぶらかされることなく進むストーリーでした。

で、今作品のキモが「映のフェロモン」ではないのなら、何がメインか、と言いますと、ピョートルの宝物である骨とう品の盗難事件。数件ある彼の豪邸から、ピョートルが大切にしている高価な品物が次々と盗難に遭ってしまう。

果たして犯人は厳重な警備をかいくぐってどうやって盗んだのか。
なんのために。
そして誰が―?

今作品にはもう一人重要なキーパーソンとなる人物が登場します。それは『ヤクザに惚れられました ―フェロモン探偵つくづく受難の日々―』で登場した日永。かつて雪也の信頼を一身に集めていた元白松組本部長だった男。

『フェロモン探偵』の面白いところは、既刊がきちんと伏線になっているところ。どのエピソードも、続編を読むことですべてつながる展開になっていて、丸木先生の手腕に圧倒されます。日永さんとのやり取りも今巻で完結しておらず、まだまだ続きがありそうです。

ロシアの富豪の別荘の襖絵を描く。

それを軸に、過去、現在、それぞれを踏襲しつつ雪也×映の恋愛模様もきっちり読ませる。
さすが丸木さんといった作品でした。

映に一途に想いを寄せるバルと、映の忠実な番犬・雪也との応酬がもう少し読みたかったな、と思ったりしました。

が。

初回限定特典としてSSが封入されています。このSSを読むとバルがまだまだ果敢に挑んできそうな予感もモリモリしていて、非常に楽しみです。ぜひともこの初回限定特典が封入されているうちに購入されることをお勧めします。

丸木作品なのでエロは安定の突き抜けぶり。
そして雪也×映の関係も非常に落ち着いていて、エロも、甘々も堪能できる、そんな1冊でした。

5

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