イラスト付き
1巻のラストより少し前、篠口が救出された直後からのお話。攻め視点と受け視点が入れ替わり、双方の気持ちがよくわかる描き方です。
冒頭、犯人袴田への黒澤のどす黒い怒りが、いかに篠口が黒澤にとって大事な存在かを感じさせます。
1巻にもあった子守唄のシーン。
黒澤視点で丁寧に描かれます。
黒澤の優しさにウルっとします。
そして二度と誰にも傷つけられないように、今度こそ手に入れようという、黒澤の決意にキュンとさせられました。
そして受け視点。篠口は心も体も酷く傷ついており切ないです。監禁時のことがトラウマとなりPTSDの症状が出てきます。そんな篠口に黒澤が優しく寄り添います。
しばらく入院していた篠口が、年末年始に一時帰宅することに。そこでも黒澤が付きっきりで面倒を見る。淡々としつつも甲斐甲斐しく世話をする黒澤に、またもやキュンとさせられます。
ゆったりした時間を過ごす二人。篠口も少しはリラックスできたようでしたが、あることをきっかけに、フラッシュバックが。ここでも黒澤が淡々とした優しさで、篠口に寄り添います。
終盤、袴田から受けた心の傷から自暴自棄のようになり、黒澤を誘う篠口。ネガティブな感情に囚われている姿があまりにも痛々しくて、読んでいてつらく切ないです。
そして黒澤は優しく、篠口を癒すためだけの行為をする。黒澤にたくさん甘やかされて、ようやく安心することができた篠口にほっとしたところで、上巻本編が終わりました。
中編の書き下ろしも収録。
【ストームグレイの行方】
こちらは攻め視点のみ。
篠口と黒澤が初めて出会った頃のお話。
公安の黒澤の部署に篠口が配属され、二人が上司と部下として関わっていく様子が描かれます。
公安について、かなり詳細に説明されているのが大変面白いです(どこまで事実に則するかはわからないけれどw)。
そして初めての二人の濡れ場が。
かなり積極的な篠口に、少し驚きました。
かなりのページを割いて、丁寧に詳細に描かれていて、とても官能的です。
初めは黒澤を手玉に取るような篠口ですが、後半は篠口をなんとか陥落させようとする黒澤と、それに懸命に抗おうとする篠口の攻防が。詳細にエロチックに描かれていて、ドキドキしました。
終盤では、表現はぼかしていますが、黒澤が過去に元妻を愛して、しかし破綻してしまったこと、そして篠口に彼女を重ねて、助けたいと思っていることが読み取れます。そんな黒澤の心情が切ないです。
最後に黒澤のあのセリフ「助けてやろうか」。
何度か出てくる象徴的なセリフです。過去にこういった経緯で発せられたのだなと、感慨深いラストでした。
上巻は傷ついた篠口を、黒澤がとことん甘やかして、癒していくお話でした。
下巻の展開は全く知らないので、読むのが楽しみです!
無印巻から引き続きメイン・キャラの篠口、黒澤が魅力的だけに物語の吸引力に抗えず、一気に読んでしまいました。
やっぱりBLものはキャラにハマった時の威力がすごいなーと実感しました。
「墨と雪」の上巻では、無印巻で事件の被害者になり、心身ともにズタボロになった篠口がセフレ(?)の黒澤により少しずつ心を開いて再起していく過程が描かれていました。
篠口の心の揺れ動きや葛藤が丁寧に描かれ、特に劇的な大きな変化はないものの、淡々と被害者の立ち直るまでの日常の機微が描かれていて、まるでああいった被害者の事件後の再起を描くドキュメンタリー映像を見ているかのような現実感が漂っていました。
こういう題材をじっくり読めるのはBL小説ならではの贅沢さがあります。上巻では、少し光が見えてきた…という所で終わりました。
これからという所で終わってしまい、気力が抜けましたが、同じ巻に収録されている「ストームグレイの行方」は「墨と雪」の陰鬱なムードとは一転、とても面白く萌えまくりました。
篠口と黒澤の馴れ初め、二人の距離の縮まったきっかけ、篠口ので公安生活が事実上短かった理由等それぞれのエピソードが最高でした。
篠口も黒澤もキャラが立っているだけに二人のカップリングに萌えて萌えて…。
もともと公安物には惹かれる要素が多いですが、この小説では短いながらも公安の実態や警察組織のことなどの説明が分かりやすく説得力があり引き込まれました。
非常に質の高い濃縮した短編で楽しめました。
公安に配属された篠口に対して、もし黒澤のように気にかける人物がいなければ、篠口が公安の中でどうなっていたか…と思うと胸が痛みました。
適性がなくても嘆くことはないんだなーと、自分を活かせる、自分に見合う場所を見つける事が大事だと思いました。
それにしても篠口が他のメインシリーズでは、当て馬の扱いを受けていたとは信じられないです。主役の王格があるのに…。
時には脇キャラやサブキャラの方が王道な主役キャラ達よりいい味を出している時があります。サブキャラの魅力を最大限に引き出されるスピンオフは大歓迎です。
最近WEB小説や海外小説を読むことが増えましたが、日本の大御所作家さんの貫禄と偉大さを感じる一冊でした。
シリーズ物とは知らず、同じタイトルの3冊だけを読みました。
最初にたくさんの人の名前(今までの作品の方々なのでしょう)が出てきて少し戸惑いましたがこの3冊だけでも十分楽しめました。
そして、黒澤さんの深い愛情(執着?)に悶絶しっぱなしでした。
お話には痛い場面もしんどい場面もあるのですが、途中から黒澤さんはどうやって守ってくれるのか、どうやって助けてくれるのか、どうやって手中におさめるのか期待しながら読んでしまいました。
他の作品のレビューを読むとシリーズ作品を読んでいた方が楽しめたようなのでこれから読破します。
ただ、電子だとイラストなしとなっていて少し残念です、、。
待望の、と言いながらも私は完結してから読んだ人間なので待ってません(笑)ですがリアルタイムで読んでいた方はさぞ、待望だったことでしょう。あとがきでも先生が仰っていましたが、6年後の出版だったようです。私だったら6年間、あの状態で待てができたかと思うと、リアルタイムで追っていた方には尊敬の念を送ります。と、前置きはさておいて…。
前巻で袴田に拉致監禁されていた岬の屋敷から救出されての入院期間(正月の外泊)がこの墨と雪2上の内容にあたります。
ホラー映画のような鎖で繋がれ、逃げることも出来ず、いつ酷い暴力を振るわれるか分からない監禁生活というのは1週間で済んで良かったね、という生易しいものでは無いようです。入院直後は安定剤投与でほぼ眠りっぱなし。安定剤が抜けるとフラッシュバックを起こしパニックに。
そんな篠口の心理面を誰よりもしっかりと支えてくれるのが黒澤。PTSDで不眠の症状があると聞くと病室に泊まり込み、正月の外泊は誰かがいないと心配だと聞くと名乗りを上げ。ひたすらに篠口に負担のないように甘やかす日々。
いや、他のシリーズではめちゃくちゃ嫌われ役だったのにスパダリじゃん。そう、職場での立場はもちろんエリートコース、経済力も頭脳もずば抜けていい(性格はやや難あり笑)から間違いなくスパダリなんですよ。
前巻の墨と雪ではとにかく辛い展開が続いていただけに、黒澤の「大人な甘やかし」が激甘なのに丁度よく感じられました。
こちらの続編も凄く良かったです。
淡々としながらも前作に足りなかった部分が書かれていました。
そして当事者にとっては拉致監禁から救出されて、めでたしではない事を改めて痛感させられました。
肉体の傷は治っても心の傷はなかなか癒えない…、篠口の苦悩とそれを包み込むような黒澤の愛情に萌えまくりました。決して無理矢理じゃなくて、あくまでも篠口に選択肢を与えるスタンスが素晴らしいんです。前作からですが更に黒澤ファンになりました。
そして「ストームグレイの行方」では、2人が身体の関係になるキッカケが書いてありました。最初はお気に入りってだけで、黒澤には篠口に対する愛情がなかったんですよね。
前巻と違って事件後なのでゆっくりゆっくり進むのが、篠口の再生物語として良く出来ていて夢中になって読みました。