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吸血鬼と愉快な仲間たち 3

kyuuketsuki to yukai na nakamatachi

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表題作吸血鬼と愉快な仲間たち 3

アルベルト・アーヴィング,半人前の吸血鬼,29歳(外見年齢21歳)
高塚暁,エンバーマー,30歳

その他の収録作品

  • 恋とラーメン(書き下ろし)

あらすじ

大好きな暁と一緒にアメリカへ里帰り!?
久しぶりの懐かしき故郷。
のはずが、またも九死に一生のトラブル続出で――。

ドラマ撮影のため、アメリカへ行くチャンスを摑んだアル。
最初は渋っていた(そしてなんだか様子がおかしい)暁も、結局同行してくれることに。
再び冷凍蝙蝠になって海を渡ったアルは、撮影が始まる前に一目家族の顔を見ようと、暁と故郷のネブラスカへ向かう。
その道中、唯一の吸血鬼仲間・キエフと偶然再会。
波乱に満ちた旅が始まる――。
甘えん坊で頑張り屋、半人前吸血鬼アルの奮闘記第3弾!
書き下ろしショートストーリーも必読!

作品情報

作品名
吸血鬼と愉快な仲間たち 3
著者
木原音瀬 
媒体
小説
出版社
集英社
レーベル
集英社文庫【非BL】
シリーズ
吸血鬼と愉快な仲間たち
発売日
電子発売日
ISBN
9784087445916
4.1

(11)

(5)

萌々

(5)

(0)

中立

(0)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
4
得点
45
評価数
11
平均
4.1 / 5
神率
45.5%

レビュー投稿数4

新装版3作目

新装版3作目。
3作目は旧作版と比べるとそこまで大きく変わったところはないかなと思います。
下村先生の挿画もそのまま収録されています。いつ見ても美しいですね。
今までは日本を舞台に犯人前吸血鬼のアルと愉快な仲間たちの日常+αがメインに描かれていましたが、3作目となる今作は物語が少しずつ動き出すと同時に、永遠の命に関するアルの心の動きが見られる1冊となっています。

BL的な面では亀の歩みです。ただ、足場は周囲の人々によって固められて来ているんですよ。
暁がどう足掻いても誰も彼もがゲイカップルだと決めつけてくる上に、SM趣味まであると思われてしまっている彼の表情を想像すると…どんな顔をしているのかがすぐに頭に浮かんでちょっと笑えてしまう。
巻を増す毎に暁が素直じゃないかわいらしい人に変化していくのがツボです。怒っていてもかわいい。
室井の絶対に実らない片想いも結構好き。

さて、以前撮影中に事件に巻き込まれた吸血鬼ドラマの続投・ロケ地でもありアルにとっては故郷でもあるアメリカ行き・先輩吸血鬼のキエフとの再会等エピソードが盛りだくさん。
今作の見どころはやはり、不老不死で永遠の命を持っている吸血鬼としての孤独の描き方でしょうか。
日本が舞台の1〜2巻では、ただただ愛くるしいアルの姿にばかり目がいってしまったところがあったんです。
けれど、舞台が彼のホームであるアメリカに移ったことによって、改めて現実を突き付けられるというか…永遠に生きられる中途半端な身体を得てしまった者の孤独がここに来てドンとアルにのしかかってくる。

遠くから覗き見た、頭に白いものが増え年を取った両親。
知らなかった妹の新しい家族。自分と同じ名前の甥っ子。
自分だけが時の狭間に取り残され、周りはどんどん先に進んでいって、やがては老いて死んでしまうのでしょう。
いざ自分の家族の時が進んでいるのを目の当たりにすると、人間を愛するのは辛いと言うキエフの言葉の重みが増していく。
ほのぼのだった作品にピリッと今後に効いてくるスパイスが入った感じがします。
不完全ではなく完全な吸血鬼になるかと問われるも、暁のことが好きだからこそ、もっと一緒に居たいから完全な吸血鬼にはなりたくないと幼い執着を見せて渋るアル。
完全な吸血鬼になった方が食事も何もかも今よりも楽なんですよ。
でも、アルはたとえ不便だとしても、半人前で不完全な吸血鬼のままでも暁たちといたいんですよね。孤独ゆえの執着なのか愛なのか。

暁のミステリアスな過去もちらりと描かれ、気になる点があちこちに置かれ、アルと暁の行く末を引き続き追いたくなる巻でした。
今作で忽滑谷不足な方はコミコミスタジオさんの小冊子をぜひ。

4

アルの里帰り

巻数が重なる事に面白さと萌えが増している木原先生の長編シリーズ。
私のなかでは、吸血鬼というより変な蝙蝠っていう印象だったアルなんですけれど、あぁ、そういえばむしろ吸血鬼だったんだな!と少しオカルトっぽさも出てきたかも(?)の3巻。舞台はアルの故郷のアメリカです。

アルとは旧知な正統派吸血鬼のキエフの語る言葉がいちいち重い…というか、人間ならざるものの悲哀がとても感じられる、あぁそういえばアルって吸血鬼なんだよな、だからいつか死ぬ運命の暁にこんなにも入れ込んで大丈夫なんだろうか?と心配になってきました。なにせ吸血鬼10年もやってないからw、アルって永遠の命を持つもののメンタリティじゃないんですよね(当たり前だけど…)。その差(キエフとアル)の描き方が面白いな〜と思いました。

映画界の大物と家族同然のつきあいをしてたり、悩みがあると甘いものを尋常じゃないくらい食べたり、ミステリアスな暁の素顔が徐々に見えてきました。周囲からみたらめちゃ恋人同士なんだけど実際アルの片思いという、ちぐはぐさが可笑しくて、この不憫さがなんだか木原節!という印象…大好きです。微妙に進歩しているようないないような、アルの絶妙にヘンテコなカタコト日本語になんだかキュンしてしまうのでした…。

そして、室井の片思いの切なさ(不憫さ)はなんともいえずBL!もしや津野といい感じになるのでは??なんて思うんですけど、なんとなくこちらのCP(?)のほうに、いつもの極北テイストを感じてしまう極北民です。そして、忽滑谷ファンなのでもちろんコミコミさんから購入しました。

2

どうやって渡米すんのかと思ったら

今回渡米編です。
例のドラマがアメリカロケでまたアルが吸血鬼役で出るんだって。ドラマで海外ロケなんて景気いいな。今や滅多にないと思う。

昼は蝙蝠夜は人間のアルが飛行機で何時間もかかるアメリカまでどうやって行くん?と思ったら日本にやってきたのと同じ方法だとは。
いくら不死身だからといっても一回成功したからってもう一回試すの嫌だな、私だったら。
蝙蝠の状態で冷凍小包便で知人宅に送るって。

これ、暁は一度きりで帰りは自分一人で帰るつもりだからこんな面倒な事に付き合って7日間も休んでくれたんじゃないの?

アメリカでは唯一の吸血鬼仲間キエフと再会。完全なる吸血鬼になる方法があるかもしれないんだって。
中途半端な吸血鬼じゃなくなったら暁にお世話して貰えなくなるからと拒むアル……。
私はキエフと同じ考えだわ。いつまでも暁に頼るのか、暁大変やろと。
アルは、対等な関係性とか暁から自立しようとかじゃなくてエゴでしかない。自分が暁と居たいから、このままの中途半端吸血鬼でいいだなんて。

まぁ、木原作品の登場人物ってエゴの塊みたいな奴絶対出てくるもんな、相手が幸せかどうかよりも自分がどうなりたいかの方が大事な奴。

今まではアルの事好きでも嫌いでもないけど蝙蝠姿で甘えてるのが可愛いなと思ってたけど、この先の成り行きによっては嫌いになるかもしれない。

キエフみたいなキャラ好きだからもっと出てきて欲しい。

そんで、最後の書き下ろしの津野と室井がラーメン食べに行くお話。ラーメンがオーソドックスな中華そばの様子。食べたくなってしまいました。
この2人フラグ立ちましたね。今後要チェックです。

0

本物吸血鬼と中途半端吸血鬼

シリーズ3冊目。例のドラマの続編撮影のためにアルがアメリカに帰国(っていうか密入国)することになるお話。
3巻のポイントは、アルの帰国に伴って暁も休暇取得で渡米すること、そのため暁の過去が少し判明すること、それから本物吸血鬼のキエフの登場でした。
キエフ。本物吸血鬼。何百年も生きている先輩なのです。
そうか、これがそうなのか! と目を瞠る思いでした。
アルは昼間コウモリ、夜は人間という時間縛りがあり、キエフにはそれがなく自在に人間とコウモリどちらにも擬態できるとは知っていましたが、霧状にもなれるとは!
他人の記憶操作ができるとは!
受けた銃弾をその場で身体から排出できる!(アルみたいに怪我しない)
なにそれ最強じゃないの。しかもある意味ストーリー展開で結構都合よく動かせそう。
しかもですよ、キエフとアルが交流することによって、アルは記憶操作という技を会得しました。まあ5回に1回という成功率のようですが。
今のままでは生きづらいだろうから吸血鬼の血を飲んで血中の成分量を増やし、もう少しまともな吸血鬼に近付いてはどうかという魅惑的な申し出がキエフからありまして、アルは拒むわけなのですが、理由が「誰の助けも必要としなくなったら、(暁は)きっと僕を遠ざける。一緒に住んでなんかくれないし、優しくもしてくれない」ていうところに、私はすっかりツボを突かれて床の上をゴロゴロ身悶えてしまいました(あくまでも脳内で)。
我が儘だけど、このこじらせっぷり。
アルについてはあまりにも物を考えずに行き当たりばったり過ぎたり、イライラすることも多いのですが、こういうところがずるいと思う。
片言日本語で「こわいえいが こわい」とか言うのもずるいと思う。
こんな感じで「あきら ごめん」とか言われたら、そりゃあとげとげイライラしている暁も結局は折れたりほっとけなかったりするのも分かる。
そしてこの巻のパワーワード。
「俺の蝙蝠」
はぁぁーーーー、所有格やばすぎますね。
わかってます、暁的にはこの愛情はペットに向ける愛情とほぼ同類項だと。
人間になったりコウモリになったりするアルに庇護欲をかきたてられてるのは、ペット愛なんだと私は解釈しているのですが、向けられるアルにとってはただただ嬉しいことだろうし、恋する気持ちも分かる。

巻末の「恋とラーメン」で、スマホ画像の手のアップだけで暁の手だと見抜く室井も、相当こじらせています。何度振られても、恋情は無くならない。事故みたいなキスもしちゃったし、ますます今後どうなってしまうのか気になります。

0

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