イラスト入り
虫シリーズ10作目、待望の新作は6.7巻に登場したテオと彼の命を守るため彼を保護し自分の家族に引き合わせ育んだフリッツとの19歳年の差カップルのお話。
以下ネタバレを含みます。(本作だけでなく、この登場人物に深くかかわるシリーズ6,7作目についても触れていますので、ご注意下さい)
ハイクラスばかりの国の中で、絶滅危惧種のハイクラスのみを求められる公族に生まれたロウクラスだったテオは、(もともと狂っていた)実母に疎まれ、しまいには殺されそうになってしまった過去を持つ。
実の兄は必至で彼を守ろうとしたが、兄自身も愛を知らず育ったため、テオが求める愛を彼の求める形で与えることができなかった。
だが愛を知らないという兄は確かに弟を愛しており、命を守るために友人フリッツに弟を託し、テオは隣国に亡命させられフリッツの家族に迎えられその後は温かく育てられる。
ハイクラスばかりの国の中で珍しいロウクラスの中、(しかもロウクラスでも珍しいレディバードスパイダーなのだが)人々が自分に興味を持つのは自分が珍しいロウクラスだから、愛玩具のように愛でられているに過ぎないと思っている。そしてそれだけでもありがたいと思っている。
そんな「かわいそうな子」テオ。
不遇な環境で育ったためか、その心の底に、自分だけに唯一注がれる愛がほしい、ただ一人でいいからその人の一番になりたい、その人が一番愛する人になりたいと心の飢えを抱えテオは生きていた。
そしてテオが愛されたいのは自分が愛するフリッツだった。
過保護すぎる兄として、テオを守ってきたフリッツ。その行動はどこからどう見ても過保護の域を超え、溺愛と執着の混合物を含んだ深い愛にしか見えないが、テオは今の関係が変わってしまうのを恐れ告白できない。
そんな中進路に迷うテオに、「人生の中幸せの基盤を決めなさい」と教授が言う。
進路よりも何よりも自分にとって大事なことは、フリッツと共に生き家族になることだと自覚したテオに、フリッツは「その気持ちは勘違いだ」と拒絶する。
前作のレビューでも書いた気がするのですが、樋口作品は恋愛の機微というよりも、愛は人をどう変えるのか、愛は時に人を強くし、時に弱くするかと言うことを描いていらっしゃると思う。
そして人の孤独について描き続けていると思う。
この虫シリーズはその傾向が顕著だし、前作愛の夜明けを待てはシリーズ中もっともその色が強く出ており、BL作品でありながらも、文芸作品に近かったと思う。(それは先生が一般文芸を経たからかとは思うが…)
そして今作は前作よりも少しBLに回帰された感じがする。
加えてここ最近の作品の受ちゃんは以前の運命に翻弄される(部分はもちろんあるが)よりも、運命に立ち向かう力強さというか、勇気をより感じられる気がしている。
今作のテオはもちろん不憫だ。
幼い頃からの状況はいっそ不憫のミルフィーユ状態と言っていいだろう。
テオはただただかわいそうな子だろうか?
もちろん実母からの仕打ちはありえなく、かわいそうの範疇は超えている。
でもテオは愛を自分の中で育てる強さを持っていたと思う。
テオの心の真ん中の本当に柔らかい部分はシオンが必死に守ったからだと思う。(ここら辺は6、7巻参照)
シオンからの不器用な手放すことで彼を守った愛や、フリッツ家族からの無償の愛はテオに孤独を与えたが、共に力を与えていたのだと思う。
その孤独ゆえに「ただ一人、フリッツに愛されたい」と強く願う。それさえあればもう何もいらないと思う位強い願う。
でも注がれた愛がテオに愛する強さも与えたのだと思う。
自分の気持ちに向き合い、フリッツを深く愛し、彼以外を愛することがないと気が付いてしまうほどの強い愛。
テオはそのことに最初絶望する。そしてそのことに喜びも得る。
ただ唯一に愛されたいと願う心は、ただ唯一に愛したいという勇気を持つ事なのだ。
19歳という年の差がある相手を愛するとき、その思いはテオの道標になるに違いない。
虫シリーズ10作品目は力強いお話だったと思う。
樋口作品を読むと、愛とはいろいろあって正解も間違いもないといつも思う。
ただ、愛を手放したくないのなら、そして愛を手放したいのなら、そこには苦しみが伴い、だから強さが勇気が必要なのだとテオ君に教えてもらったような気がする。
愛を知り強くなる、愛を知り弱くなる。愛って難しいです。
このお話を私たちに届けてくださった先生に感謝です。
ちなみに、コミコミ小冊子はフリッツ視線。
友人で未来の義兄になるシオンや葵その息子たちVSフリッツともいえるお話。とても楽しかった。永遠に読んでいられる。
テオは不憫でかわいそうだけど実は強く、フリッツの方がテオに執着し脆さも抱えていると思うので、フリッツ視線で迷走しまくるのも読んでみたい気もしていたので、その部分もちょっと満たされたかな。
なんかのシリーズ作品っぽいなとは思いながらも手にとって読んでみましたが、やはりスピンオフ作品でしたか。私はオリジナルの方は未読ですが、全然問題なく理解できました^ ^
コミックスの方のムシシリーズは既読だったおかげかな。この作品の世界観がすぐに理解できたのは良かったです。
ハイクラス・ロウクラスといった階級とか、年が離れてるとか、義兄・義弟関係にあるとか、色んな設定が盛り込まれていて、すごく引き込まれたストーリーでした。
物語のテイスト的には、切ないし、悲しい気持ちにいっぱいなるけど、それでも自分の気持ちに正直に生きようとする主人公・テオの姿には前向きになれるし胸が熱くなりました。
フラれても立ち上がる。拒否されても諦めない。恋心への向き合い方が一直線。想いが報われないときは痛々しくも見えますが、でもこのがむしゃらな姿勢がすごく眩しく映りました。
19歳上の義兄に恋したテオ。
ロウクラスで可愛らしくて小柄な彼の身体のどこに、こんなにも強い好きのエネルギーが秘められているのかと驚かされました。
好きだ、愛してる、恋人にして、キスもセックスもしたい…などなど…聞いてるこちらが赤くなってしまうほどの熱烈ストレートな告白は、すごく情熱的でシビレます。でもこんな熱い告白を想い人であるフリッツに投げかけても、拒絶されるっていう衝撃。。。しばらく脳内フリーズでした。
フリッツもテオのことが好きなのは彼の言動からも一目瞭然なので、この拒否の意味が本当に分かりませんでした。テオに好意を抱く青年をこき下ろすわ、勝手にテオの家に住み着くわで、すごい独占欲と執着を見せつけてるのに、なんでかテオの想いは受け入れません。
テオの告白を受け入れないくせに他の男がテオに近付くとなると邪魔をしまくり、自分の側に置こうとして、言ってることとやってる事がチグハグで意味不明…。その行動にはちゃんと理由があるけど、それにしてもテオがあまりにも可哀想で、見てらんなかったです。
フリッツのことが大好きで諦めないテオが健気すぎて泣けてくるし、しんどいし切なさいっぱいでした。
この作品の肝は、なんといってもテオの"執着受け"属性かなと私は思います。このバイタリティがなければ、ハッピーエンドはなかった。テオの諦めない気持ちに何度も救われました。
一応フリッツも"執着"の属性持ちではありますが、なにぶんヘタレと臆病要素が強いんで、トータルでテオの執着には負けてます。ついでにいうと、エッチのときもテオの方が積極的なので、何から何までテオには勝てないフリッツ(笑)
テオの若さと勢いにのまれないよう頑張って欲しいなと思います^ ^
この作品にはフリッツ視点がありませんでしたが、彼の心内もぜひ覗いてみたかったです。テオを痛烈に拒否し、突き飛ばして睨みつけたあのときの心情とやらを聞かせてもらいたいものです。(テオが許しても私は根に持ってます 笑)
ムシシリーズ、最新作。素晴らしかった…最高だった…!✨
…実はシリーズ未読なのですが;(コミックス版の1巻のみ既読)、こちらのあらすじと表紙のバックハグの美しさが気になりすぎて、メイトさんで購入。
読み始めて17ページぐらいで既に涙でうるうるし始め、何度もティッシュで目を押さえながら読みました。テオ(受)の不遇さと精神的な強さが刺さって刺さって仕方なかった。
以下あらすじなしで、感想のみを。
養父母にも実の兄にも大切にされてはいるけれど、いつも誰かの”一番”になることのない人生を歩んできた、テオ。
ー誰かの唯一になるのって、どんな感じだろう?
ー自分だけが欲しい、と言われるのはどんな気分なのだろう?
もう、このテオの心の内を読んだ時点で涙が溢れてきてしまい、自分でもびっくりしました。。開始17ページで泣いてて300P超えの一冊に耐えられるんか?と。。
その後やっぱり、何度もボロボロ泣きました。
義兄弟 × 歳の差恋愛(なんと攻めが19歳上!!一回り以上違う)× 両片想いと、大好きな設定てんこ盛りの今作。
このほぼ20歳の歳の差と、攻めのフリッツがテオには告げていない”ある事実”がフリッツを尻込みさせ、頑なにテオを拒む理由になっていて、切なさMAXでした。
一度こっぴどくフラれて落ちるところまで落ちても、諦めずにフリッツに想いを告げるテオと、えちの時迫っちゃうテオ。めちゃくちゃ美人で可愛いのに男気溢れてて、惚れた…!!
で、二人のえちの際のある描写が最っ高で。
”レディバードスパイダー”という美しい種であるテオならではのある技(?)が無意識に出てしまうのですが、その技自体と、それを見て興奮するフリッツに興奮する私。愛する人を捕まえて、逃さないための…❤︎萌えと興奮しかない。。
作中に出てくる「チョコレート・チョコレート・チョコレート」の思い出エピソードが大好きです。好きすぎて読みながら声に出して呟いてた…
そして、最後に。
テオに長い間片想いしてアタックし続けるアントニー、私は君が好きだー!!!
なんっていい奴なの…と、読みながらアントニーへの同情と切なさが怒涛のように押し寄せて感情がぐちゃぐちゃになりました。想いが通じ合うって、なんでこんなに難しいのかなあ…!( ; ; )
とりあえず、読後すぐコミコミさんでシリーズ作品をカートにインしました。
9冊あるのか…!2日で1冊読めたら、3週間弱も楽しめるってことだ!とワクワクが止まりません。
長い長い片想いの末の、最っ高の「粘り勝ち」ラブストーリーでした✨
突然ですが、まりあげはは虫シリーズで一番シモンと葵のお話が大好きです。
ですのでスピンオフとはいえ、(というか絶対次はこの2人だと思っていた!)今回またケルドアの皆さんのお話を読むことができてとても嬉しいです!
そんな虫シリーズ記念すべき10作目。
シモンの歳離れた弟テオと、シモンの友人で医師のフリッツが主役のお話。
(そして、ラブセレシルバー読み返しました。フリッツとテオの予習は、万端です。)
ざっくりとストーリーを説明しますと、誰がどう見ても両片想いなテオとフリッツ。
けれど、フリッツはテオの気持ちをどうしても受け入れてもらえなくて、、、
その理由が分からず困惑するテオ。
フリッツを無理やり忘れようと、オーストラリアに短期留学へ行ったり、アントニーとデートしたり、、、
でも、やっぱりフリッツのことを好きで。
ふと、フリッツがテオを受け入れない理由が、とあるきっかけで判明して、、、
という展開。
虫シリーズなのでご存知の通り、ただ両片想いのすれ違いなわけじゃないんです。
テオは、王族だけどロウクラス故に母国を追われ、「誰からも必要とされてない存在」として、フリッツの家で7歳から育てられているし、フリッツはフリッツで、ハイクラスでいい身分だけど、頑ななにかに縛られているし(これはネタバレになるので言えない)、で。
相変わらず双方ハードルの高い恋愛であることは、間違いなくて。
でも、いつもの虫シリーズと違うのは、攻めが最初から受けを溺愛していること。
虫シリーズのデフォとして(まりあげは的に)、攻めが受けを心身ともに立ち直れないくらいざっくりと痛めつけるイメージがあったりするのですが、まったくフリッツはそんなことがなく、、、
むしろ、悪い虫がつかないようにセコム系攻めになっていて、萌えるわ! スパダリじゃない! って、ニヤニヤしたくらいで。
だからこそ、もどかしい1冊と言いますか。
フリッツは愛するが故に、テオへ嘘をついているのが切なくて、苦しくて。
けれど、いらない子だと思っていた自己肯定感低すぎテオにとって、生きる意味を、幸せの基盤となったフリッツが、果たしてなんの嘘をついているのか。
途中までまったく予想がつかなくて、、
フリッツがついた嘘の全貌が少しづつ明らかになっていったとき、そこにはテオへの大きな愛しかなくて…号泣
当たり前ですが、愛する人への愛のカタチって色々あるなあとしみじみ。
そして、虫の特徴をうまく捉えた先生の考えるドラマティックな設定が今回も素晴らしくて。
2人の歳の差も!
どうしたらそんな呪いのような美しい愛のお話が書けるの?? と、感嘆しました。(褒め言葉)
やっぱり虫シリーズ好きです…!
と再認識した1冊でした。
まったく参考にならないレビューで申し訳ないので、ぜひ読んでみてください。(できれば、葵とシモンのお話も…切ないの大好きな人には、超絶いいよ。)
今回はヴァイク元大公家の三男坊の医師と
ヴァイク元大公を養父母として育った青年のお話です。
不憫な生い立ちの受様が攻様の唯一無二の相手となるまで。
受様はタランチュラを起源種とする
ケルドア公国の大公夫婦の14男として生まれます。
大公家の血筋は
グーティ・サファイア・オーナメンタル・タランチュラで
母は起源種で生まれた受様の兄に執着し
ロウクラスのエレサス・サンダリアトゥスで生れた
受様を我がの子と認めませんでした。
狂気を育てた母は受様の命さえ奪いかねなくなり
受様は7才の時に兄の親友の攻様に助けられて
隣国ヴアイクへと移り住みます。
ヴァイクもタランチュラを起源種とする公国ですが
大公一家は一貴族に降りて権力を手放しており
受様は攻様の親である元大公夫妻に預けられ
愛情を注がれて育てられます。
受様がヴァイクで過ごした13年の間に
兄は故国を安定させてケルドアも共和国としての道を
歩み始めます。
そうしてやっと受様の兄は受様に帰国を促しますが
ヴァイク国立大学を卒業を控えた受様は
進路を決められずにいました。
愛する人に愛されない事を知る受様は
誰からも真には必要とはされていないように
思えてなりません。
受様が幼い頃から恋心を寄せている攻様は
兄とおない年で19も上の奔放な独身主義者で
受様の恋が叶う望みはありません。
ところが養父母に受様の恋心を知られると
攻様に告白する事を勧められてしまうのです。
果たして受様の恋は叶うのか!?
ムシシリーズ10作目である本作は
既刊「愛の在り処をさがせ!」「愛の在り処に誓え!」にて
脇キャラとして登場していた攻様の親友と弟の恋物語です♪
ムシシリーズはハイクラスとロークラスという
強者と弱者の階級差による距離感と様々な愛のカタチが
楽しいシリーズで今回も入手してから一気読みでした。
母から拒絶され、使用人達からも無視された受様にとって
誰かを愛すれば必ず愛し返されるものではないと
達観しているのが哀しくて切ないし
そのために攻様を愛していても好かれているはずはないと
攻様に愛を求めないと決めていて
母の妄執じみた執愛が兄を苦しめたように
愛する事が必ずしも幸せに結びつかないと知る受様が
弟のように可愛がってくれる攻様を好きになった事を
よこしまな事と養父母に謝罪する受様は可哀想すぎて
胸が痛かったです ๐·°(৹˃ᗝ˂৹)°·๐
ただ養父母が気づいたように
受様を好いた同期優勢が気づいたように
攻様も受様を愛している事は明らかなのに
攻様は受様の愛を受け入れません。
受様を大切なのに拒否する理由は
攻様にはとても重大な理由なのは後々わかるのですが
攻様はヘタレ以外の何物でもないと思いませんか!?
失われるかもしれない未来を恐れる攻様の弱さも
一緒にいる今を大切にしたいという受様の強さも
とても心に響く物語でした。
病でなくても人の命は一瞬で失われます。
今を懸命に生きる線テクをした受様の幸せが
少しでも長く続きますように。