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偏食家のためのレストラン

henshokuka no tame no restaurant

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表題作偏食家のためのレストラン

友光 祐大
27歳、料理人
柳井 千秋
27歳、不動産営業

あらすじ

元同級生・友光と偶然再会した千秋。料理人の彼になんでも希望する料理を作ると言われるが、千秋には愛ゆえの食へのこじらせが!?

作品情報

作品名
偏食家のためのレストラン
著者
海野幸 
イラスト
蓮川愛 
媒体
小説
出版社
二見書房
レーベル
シャレード文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784576250588

ちるちる評価ランキング

16

4.7

(42)

(34)

萌々

(6)

(2)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
12
得点
200
評価数
42
平均
4.7 / 5
神率
81%

レビュー投稿数12

再会した高校の同級生の食生活改善




千秋(受け)は不動産屋の営業として着々と成績を重ねてきた今日この頃、何か足りない思いに囚われ、人生の迷子になっています。
そんなとき、偶然本屋で高校の同級生友光(攻め)と再会します。
料理人の友光は勤めていた店を辞め、今はぎっくり腰で店に出られない叔父の店をやっているという。
不動産屋の性でつい独立するなら物件紹介するという話になり、どういう店を開きたいかと聞くと「偏食家のためのレストラン」を開きたいと。
とりあえず、千秋をサンプルとして料理を作らせて欲しいと頼まれ、休みの日に料理を作ってもらうことになるるのです。


タイトルから主人公がすごい好き嫌いが多い食に関してわがままな人なのかと思ったら、栄養を摂るために食事するタイプでした。でも、サプリで栄養を補うタイプじゃないところがまだ救いがあるかなーと思いながら読んでいました。

友光のカウンセリングにより、食事を楽しむとか、自分の体がいま何を必要としているのかを問いかけることとかを学んでいくうちに、友光に対して好意を持っていくのです。

千秋がこんな食生活になってしまったのは、母親と祖母の影響です。
が、二人に悪気はなく「たくさん食べて大きくおなり」という考えの祖母によって高カロリーなものを食べすぎたせいで、肥満体になってしまい、それを当時好きだった人に指摘されたことがきっかけです。

そもそもの話、中学の制服採寸の時まで太り過ぎってことに気が付かないのはおかしいですね。
小学校の間は学期ごとに身体測定があって、身長体重肥満度が家庭に送られるはず。看護師だった母親がそれに気が付かないなんてありえない。
仕事で忙しかった時ならいざ知らず、再婚後は専業主婦で祖母と二人で家事を回してるなら余裕あるはず。
結局母親が悪いんだろうなってことですが、肥満体になったことで母親や祖母とギクシャクしてしまい、頑張ってダイエットした結果、リバウンドが怖くて栄養素のことしか考えられない食事をする生活に終始する、違う意味で寂しい食生活をすることになってしまった千秋が、食事の楽しさを自覚し、母と祖母と和解できて本当に良かった。

これからは料理人がすぐそばにいてくれるし、大丈夫ですね。
いつか、友光のお店を千秋がプロデュースする日が来るのかな。

食事は大事だと痛感するお話でした。

0

私のオーダーも聞いてほしい。

読み始めたときの感想は、「あぁ〜海野幸さんの書く受けって感じ!」でした。
一癖あるというか、妙な拘りのせいで生きづらそうというか。

この作品の受け、千秋の拘りは食事なんですね。
味とかではなく「正しい食事」かどうかにめちゃくちゃ拘ってる。
彼の食事は、好きとか嫌いとか気分とか一切関係なく、栄養バランスが正しいかどうかを突き詰め、嫌いな食材でも栄養に必要とあれば機械的に口に運ぶ。
食事というよりも、補給とか摂取って感じ。

最初こそ厄介そうな人物だなぁと思ったけれど、読み進むにつれて、食に正しさを求めるようになってしまった背景がわかってくると、千秋への印象が変わっていきました。

9年ぶりに会った千秋に対して、「偏食家のためのレストランをいずれ開きたいからまずはお前が客になってくれ」なんて言い出した友光に対して、気持ちが揺れ動いていくんですね。
ここまで丁寧に対応してくれるなんてもしかしたら??と期待してしまったり、いやいや、そんなはずない……とか一喜一憂するんですよ。
友光の真意が私自身も読んでいてなかなか見えてこないので(まぁBL世界の攻めなので、読み終わってみりゃ、そりゃそーだ!なのですが)揺れ動く千秋の気持ちに寄り添って読み進めることができました。

個人的には、千秋の母が好きではなかった……。

祖母の気持ちはまぁわかる。
(でもさー、病床の孫にフライドチキンって、自分も病気のときにフライドチキン食べられるの?!)

もし私が、千秋母の立場だったら……と考えるとめちゃモヤるんですよ。
小学生の頃から肥満だと成人病のリスクが高くなるってのに、子供の健康そっちのけで、自分の立場とかお気持ちを優先する母親ってなんなの?と。

お料理はありがたく頂戴するとしたって「もうちょい量を減らしていただけませんか?」とか交渉するのがお前の役目だろーが!
自分が憎まれ役になったとしても子供を守れよ!!
なんで一緒になってデブまっしぐらの道に加担してるんだよ!!と。
サバサバぶってるところも鼻につくというか。
千秋はそのせいでめっっっちゃくちゃ苦労したってのに……!!!!

それはさておき。
攻めは包容力のあるお方でしたね。
「お前のオーダーは全部叶えたいんだ。」というセリフ、私も言われてみたいです。






0

偏食家のための

自分も飲食店勤務が長かったので、友光がやろうとしている「客の要望を全て聞く1日1組のお店」とやらにまたまたまたぁ、やっぱり小説だからよね、なんて思っていたのですが、最後のタネ明かしで納得!!
凝り固まった千秋の「正しさ」は幼少期の経験が原因で、素直になれないこじらせた思春期も良きところに着地し安心しました。
”誰かが作る料理にはささやかだがたくさんの祈りがこもっている”というフレーズは胸にくるものがあり泣きそうになりました。
食べる、作る、ということに対して改めて考えさせられる1冊でした。
あ、もちろんBLとしても良かったです!!
千秋が超初心者なくせに「いつもみたいに甘やかしてくれ」とか言っちゃうの!!
コラー♡

1

沁みました~!!!

じんわりとこころがあたたかくなるお話…!とても、とても面白かったです!!
食事って大事なんだなぁ…と何度も思いました。友光さんの言葉に(そうだよなぁ…)と何度も頷き、千秋さんの過去からくる食への思いに(それはつらいなぁ…)としんみりし、お祖母様とお母様の過去の行動やそれに関するお気持ちを知り(ああ…わかるなぁ…)と思ったり。
いっぱい食べてくれると嬉しいですものね…わかるけれど、思春期な千秋くんにはすごくつらかっただろうなぁと。
再会したクラスメイトの友光さんに背中を押され、お祖母様とお母様へ想いを伝えられたシーンは涙ぐんでしまいました。ええ話や…!

友光さんと千秋さんの恋も素敵で…!友光さんの穏やかさと包容力にときめきまくりでした。ふたりの過去エピソードもとても良かった。高校時代、千秋さんが笑えていたこと、すごく嬉しかったです。友光さんの行動力に乾杯!

こころがあたたまり、お腹がすいてしまうお話でした。おもしろかったです!!!

2

面白かった!!!

海野先生の現代物、本当にハズレがないですねぇ。
面白くて一気読みでした。
blとしても面白いのですが、自分の食生活を見直すいい機会にもなりました。自分の気持ちに寄り添って、何を食べたいのか考えてみる。一見簡単そうに見えてなかなか難しく、作中の受けの気持ちがよくわかりました笑

特に好きだったのは後半のおばあちゃんと母親とのエピソード。思わず涙ぐみながら読んでしまいました。

もちろんbl部分も超面白いです。学生時代の攻めと受けのエピソードが良かったなー

おすすめです!

4

よかった〜


しみじみいい話でほろりとしてしまった「正しい食事」をとることを大事にしている千秋が、高校の同級生で料理人の友光に再会します。 なぜ正しい食事になってしまったのかその事実を知ると家族のすれ違いがいろいろあって些細なことでボタンの掛け違いになってしまうんだなぁと思った。料理は相手を思って作るものなんだよね。心を開いて和解できてよかったなぁ千秋。友光が根気強くてすき。

「食事」ってほんとうに心と身体につながっているなぁと感じるお話でした。 今日は何を食べようかなぁ☺️

3

栄養補給

先生買い。ははーなるほどーと思うお話でした。難しいよね、食育というかなんというか。キャラに惚れるとか恋話方面はそんなに萌えなかったので萌にしました。本編270Pほど+あとがき。

地域密着型の小さな不動産さんで働く千秋。働くことにも慣れてきたこの頃、何かが足りないと思うことが増えてきて、資格の参考書探しに本屋に入ったところ、レシピ本をにらんでいるイケメンを見かけます。それは高校時代の同級生だった友光で・・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
受けの母、祖母、受けの同僚少々ぐらいかな。

++

仕事していて、定時きっかりに帰ったことなんて、1年に数えるほど という生活が何十年って続いてます。仕事しながらコンビニで買ってきたサンドウィッチや、カ●リーメイトを口に入れたり、疲れたのでパフェで晩御飯って、当たり前だったんですよね。そんな生活している方には、このお話、羨ましいというか身につまされるというか。

自分の胃袋、体調に「何が食べたい?」って丁寧に聞いて、それを丁寧に食べる。
そんなことを叶えてくれる料理人が攻め。ゆっくりゆっくり受けの気持ちをほぐしていく感じです。

食べるという行為を決められた栄養素、カロリーを正しく摂取することに一生懸命だった人が受け。生真面目、融通利かない感じの方です。まあ理由あってなんですけど。

そんな二人のゆっくり恋話でした。ふたりとも不器用なんだもんな、可愛い(笑)
あれこれおいしそうなお料理も出てきて嬉しかったです。私の一番食べたいなあって思ったのは、白玉ぜんざい。誰か作ってくんないかな。

2

正しさの基準

今回は叔父の店の臨時店主と
不動産会社の営業マンのお話です。

食に拘りをもつ受様が料理人となった攻様との再会で
生き方を変えるまで。

受様は地域密着型の不動産会社にて
精鋭メンバーが集まる店舗でも抜群の営業成績を
誇る営業マンです。

大学進学で始めた1人暮らしにもすっかり慣れ
仕事は順調で職派の人間関係も良好で給料も満足ですが
時々、何かが足りないと思う時があります。

今日はそんな何かが足りないという気持ちに背中を押されて
書店に向かい資格試験の参考支所コーナーに向かいます。
しかしながら仕事に必要な資格はすでに取得済みで
店内をさ迷い、趣味のコーナーにやってます。

ぼんやりと視線を漂わせているとそこは料理本のコーナーで
離れようとしたときに隣にやってきた男性客が
しかめっ面で本を開いていたと思ったら
受様の方を向いてばっちりと目が合うのです。

この男性客こそが今回の攻様です♪
2人は高校時代の同級生で卒業以来9年ぶりの再会でしたが
攻様は受様が誰かすぐわかったようです。

偶然の再会に食事でもと誘われますが
受様は基本的に他人と食事をとらないため
攻様煮もきっぱりとお断りするのですよ Σ( ̄。 ̄ノ)ノ

それに対して攻様は少しもひるむことなく
それどころかおおらかに笑って見せるのです。
この再会が受様にもたらすのものとは!?

高校の同級生の攻様と受様が再会によって
新たな生き方を掴み取っていくの物語です♪

攻様はフレンチレストランのシェフでしたが
今は腰を痛めた叔父の定食屋の臨時店長をしているそうで
その店で受様好みのコーヒーを振舞ってもらいます。

受様はその後が決まっていないという攻様に
いっそ独立したらと手ごろな物件探しを提案するのですが
攻様は「偏食家のためのレストランがやりたい」
というのですよ。

受様が試食係を頼まれるのですが
どうみても偏食家=受様ってことだよね!?
受様のいう「正しい食事」に起因した
何があってソレを改善したいという事かな!?
と思ったのですが

攻様と関わっていく事で少しづつ見えてくる
受様の食事に対する考えの根底には
受様の過去が関わっています。

攻様が偏食家のレストランをお題目として
受様と関わりを持とうとした事には
攻様側にも忘れられない過去と想いが見えてきます。

タイトルイメージで偏なった食事をする受様の
食事概念を変える話かと思ったのですが
全く想像外の展開でした。

受様か食生活を変えていく事で別の問題が発生して
受様の過去が見えて来てハラハラ&ドキドキ、
2人の恋が実るまで楽しく読ませて頂きました。

食べる事は日常のことですが
楽しく食べる事が全てではないとしても
食べる事が幸せを産むことは確かですよね。
とても素敵な恋物語でした ヾ(≧▽≦)ノ

2

No Title

好きな作家さんの作品なので、発売日をたのしみにしていました。
イラストも、この作品の作風にぴったりで、大満足の一冊でした。

タイトルから想像できるように、「食」が、この作品の大きなテーマになっています。

食べることのたいせつさと、極端に健康的な食生活をしようとする食への「こだわり」について、共感できるところもあるので、興味深くよむことができました。

「食」へのこだわりは、ほどほどのほうが、人生をたのしく生きられそうだとおもいました。

3

自分を大事にする極意

タイトルに惹かれ、蓮川先生の男前攻め×美形受けの表紙に「これは間違いない!」と期待値が高まり楽しみにしていた一冊です。
男前攻めが美形受けにご飯を食べさせる設定、大好きです。

攻めが優しく細やかに受けの「今食べたいもの」を聞き取りして丁寧に作ってくれる描写に、カチコチだった受けの頭と心が柔らかく変化していくのがよく分かりました。最高すぎるよな、このレストラン。

それを受けて、食への意識や習慣が自然と変わっていった受けは柔軟だと思います。時には失敗したり恐れたりしながら、ひとつずつ攻めと共有して歩みを止めぬ成長物語としても素晴らしかったと思います。

表紙絵からは攻めが男っぽさ全開だったので俺様攻めかなぁ(ウキウキ)と思っていましたが、包容力たっぷりで優しく見守り寄り添ってくれる男前攻めでした。
令和の攻めは押しつけすぎない、こういうタイプが多い気がしますね。

「偏食家」というキーワードを「偏屈」のように無意識に捉えてしまっていたのですが、受けの正しい食事へのこだわりは、攻めと関わる内に柔軟に解れていったし、むしろ真っ直ぐで芯があってピュア。
決して拗らせてしまった偏屈な人ではありませんでした。

こだわりの原因も、受け個人の経験としては辛くてそれを捨てられない気持ちもよく分かりますが、家族間の愛情のかけ方や伝え方、そしてすれ違ってしまう経緯に納得のいくものでした。
BLによくある悲惨なエピソードではなくて、地に足の着いたリアルさを感じ、それが良かったと思います。

今作で大切なのは「身体の声を聞く」ということ。
慌ただしい日常の中でうっかり忘れがちになってしまうその行為の大切さを思い出させてもらいました。
こちらを読んでから、「何を食べたい?」と食だけでなく、「何が着たい?」「何が飲みたい?」と自分に聞いてる私がいます。
その時々の自分の小さな望みを満たすこと、大切ですよね。

また、受けが実家に戻ったシーンで「自分の気持ちを言葉にして伝える」大切さがよく伝わってきました。受けの一歩の勇気に拍手を贈りたいし、それを次に攻めとの関係にも活かした受けが素晴らしかったと思います。
実家のシーンは受けの気持ちに思わず共感し、泣いてしまいました。家族の温かさが良かった。

共感しすぎて、告白シーンも受けと一緒にウルっと来ました。
受けが全く気づいていなかった攻めの距離の詰め方と下心に気がついていたのに(笑)
咄嗟の攻めの行動に対する受けの溢れた想いの描写がもう…!

攻めが終始受けのためを思って行動し、なんなら受けのために◎◎になった想いの深さが良かったです。2人の恋の行方も最後まで楽しく読むことができました。

自分を大事にする極意が詰まった素晴らしい作品だと思います。是非。

5

沁みる。考えさせられる。盛大にお腹が空き、心いっぱい満たされる物語

海野幸先生の新刊、お豆腐が繋ぐ恋物語を読んだのは
つい先週のことだと思うのですが、
続けてこんなに素敵な物語が読めるなんて、本当に感激です。

先月の「社長!」シリーズ新刊も、お豆腐のお話も、
そしてこちらのお話も漏れなく全て最高オブ最高だったのですが。

特にこちらの一冊は、刺さって刺さってしかたありませんでした。。
受けの経験が昔の自分の境遇と重なるところがある、というのと、
”甘くて甘い元同級生攻め”が萌えのど真ん中すぎて。


まず、蓮川愛先生のイラストが、神がかっています✨
表紙の千秋(受け)が持っている、大きなくまさん。

こちらが可愛くてそして気になりすぎる!!
…でも、なんでくまなの?

と疑問に思いつつ読み始め…


読んで納得!
まさにまさに、あの”森のくまさん”の歌詞にあるように、
道に迷った女の子を優しく導いてくれる
”くまさん”そのものの攻めでした。

なんて優しくて、ストレートで、包み込むような愛なんだ...
書きながら思い出し泣きしそうです。


物語の主人公は、不動産会社営業マンの千秋(受け)。
「正しい食事」をすることを己に課し、
昼食はいつも決まった定食屋の「A定食」と「B定食」を日替わりで。

それが”正しい食事”だから、好きではない生野菜、サラダを
機械的に口へ運ぶ。

正しい食事ではないから、間食はしない。
会社の飲み会、忘年会にも参加したことはない。

と、かなりこだわりの強い、驚きの食生活を送る人物です。

そんな彼がある日偶然、高校の元同級生・友光(ともみつ←名字です・攻め)と
再会。
料理人をしているという友光に頼み込まれ、
なんと流れで「偏食家のためのレストラン」というコンセプトの
練習台になることになるのですがー

と始まる、元同級生との再会ものです。


序盤〜中盤にかけて、千秋の独白やセリフの中に
何度も繰り返し出てくる「正しい食事」という言葉。

この言葉と、彼の持つ異常とも言えるほどの厳しい食事ルールから、
食に関して何らかのトラウマを持っているんだろうな、ということは
想像していたのですが...

もう、この千秋の”心の傷”となっている出来事、
小学校時代の体験が昔の自分と重なる部分があり、
身につまされてしまって......ホロリと涙が出ました。

(自分の場合は千秋とは違い、ストレスから拒食
→あばら骨が見えるようになってしまい、
それについて色々言われ…...というものだったのですが;)

一番デリケートになる体型についてのストレートな一言、
しかもそれを、好意を持っていた相手からかけられてしまう、
という出来事の衝撃たるや。。

自分が容姿について悩み、苦しかった時期のことを思い出し、
苦しい思いでページをめくりました。

そして意表をつかれたのが、
千秋の体重が増え続ける原因を作ったその裏に、
溢れんばかりの「家族の愛」があったこと。

なんとなく自分の中でもっとこう、
仄暗いトラウマ(家族から愛されなかった、というような)なのかな...
と想像していたため、それとは正反対の
愛ゆえに・愛があるのにすれ違ってしまう切なさに、
より胸を締め付けられました。

実の母親からの愛と、義父(母親の再婚相手)の母、
つまり千秋にとっての(血の繋がらない)祖母からの愛。

友光との週に一度の交流、そして風邪で倒れた友光を看病し、
自炊をしない千秋が初めて知った
”誰かのために料理を作る”行為に込められた思い、その手間と大変さ。

そこに気付いた千秋が友光の言葉に背中を押され、
5年ぶりに実家へと帰り祖母に「ありがとう」と告げるシーン。
…もう、ここ、夜中にひとりぐずぐずと泣いてしまいました( ; ; )

千秋と会話を交わしながら紅茶のカップを握る
おばあちゃんの手が、震えてるんですよね。緊張で。。

そんな祖母の様子を見て、昔の自分の言動を強く後悔し
言葉と態度で、感謝を伝えた千秋。頑張ったね…!
(もう誰目線か自分でも分かりませんが、褒めてぎゅっとハグしたい)

そんな千秋の変化・気付きが、不動産営業の内見での
一言に表れたシーンもまた、印象的でした。

キッチンの機能説明をするのではなく、
”こんなふうに明るい日差しの差し込む部屋で
みんなで食卓を囲めたら、幸せですよね”と自然とこぼれた言葉。

もう本当、序盤の無機質にも見える千秋からは
考えられないほどの変化じゃないでしょうか。


さらにさらにグッとくるのが、
千秋に気付きをもたらし、救いとなった友光の方もまた、
千秋によって救われているということ。

笑顔で自分の料理をやっとやっと(8年越し!)食べてくれた
ことで、料理人として仕事への意欲を取り戻すー

で、そこに萌えを畳みかけてくれるのが、
高校時代からずっとずっと、千秋のことを
”特別な目”で見てたんだよ、という友光の告白です。

もーーーーーこんなのって、こんなのって、運命だよね!
と夜中にひとり内心、萌え転がってゴロゴロしていました(*´◒`*)

二人が初めて抱き合う描写もまた、蕩ける甘さでした。

たった一人のために、じっくり丁寧に聞き取りをし、
メニューを決め、丹精込めて料理を作るように。
時間をかけて千秋の体も心も開いていく友光...好き...

”食べる”ということ。
何かを食べる時、そこには「作る人」の愛が込められている、ということ。

そんなことをあらためて見つめ直しながら、
お腹が空きすぎてマンゴーゼリーを食べてしまい、
罪悪感と共に「ま、いっか」「明日の食事で調整しよう」
と思えた夜でした(*´艸`)

6

人生のソウルブック

食事が本来どのような意味を持つのかということに気付かされた啓発的な側面と、家族との間に燻っていたわだかまりが解けていくヒューマンストーリーな側面とにアプローチしていく物語展開にただただ感動……
食事に悩みを抱える全世界の人たちにぜひ読んでもらいたい至高の一冊でした。


「正しい食事」とは、人によって捉え方が違うものです。
正しい、正しくないの概念は意識次第で変えられるということ、正しい食事と楽しい食事は違うこと。……ハッとしました。
海野幸先生の奏でるストーリーは、恋愛の枠外におけるお話の濃さもそれなりにあり、しかも話がめちゃくちゃ素敵なもんだから、ものすごい読み応えを感じます。
ストーリーの中に秘められたメッセージ性を強く感じる見せ場作りにも圧倒されました。

美味しくもない食事を、"正しい"からだと淡々と食する千秋。彼は私がこれまで出会ったことのないタイプのキャラクターでした。
少しクセのある性格で、何かを抱えているワケアリ感が妙に気になってしまうユニークな人物像。食べる楽しみやワクワク感のない規則的な食事の仕方には、病的なものを感じます。
千秋の場合、食事は"食べる"じゃなく、"摂取する"といった方が良いのかも知れません。食事行為に対する気持ちの温度感が一切感じられないんですもん。
そんな変わった食事をしている千秋の懐にそっと入ってくる同級生の友光の存在が素晴らしくて、食事に対するリスペクトがとにかくアツい。千秋に食事の大切さを教えてくれる我儘メニューの追求も、食への持論も、彼の発するセリフ一つ一つが沁みました。

食の大切さは家族の関係にも繋がっていき、千秋のトラウマの元凶にも迫っていきます。
千秋が"正しい"食事をするようになった経緯やトラウマ、母親への吐露、そして家族への感謝……千秋だけじゃない、千秋の祖母や千秋の母の想いも全部乗っかってきて、最後には涙がホロッと出てきました。
千秋の姿を通して見えてくる家族の真実の想いが優しくて、温かくて、食事が苦痛であったことの記憶が塗り替えられていく救済の側面には感動しかありません。

食の大切さが骨子にあるストーリーに、再会で芽生えていく想いとが掛け合わさって、最高の作品でした。
わたし個人の人生のソウルブックにしたいくらい大好きな作品になりました^ ^

4

この作品が収納されている本棚

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