なぁ、先生。俺はな、ずっと後悔してることがあるんだ

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表題作愛に終わりはないけれど

斑目幸司,元伝説の外科医で現在日雇い
坂下晴紀,ドヤ町の開業美人医師

その他の収録作品

  • 双葉パパの奮闘
  • あとがき

あらすじ

労働者の街で診療所を営む坂下は、ボランティア紛いの診察で常にギリギリの生活だ。そこへ新たな珍客・斑目の師匠の久住医師がやってきた。隙あらばセクハラをしかけてくる恋人の斑目に加え、それに輪をかけて下ネタ遊びや酒好きの久住に手を焼かされる坂下。しかしそんなある日、いつもの見回りをしていた坂下は街に起きている異変に気づく。その背景に絡む一人の男により、斑目が医師を辞めるきっかけとなった出来事が明らかに。斑目の癒えることのない傷、それを知った坂下は――。

作品情報

作品名
愛に終わりはないけれど
著者
中原一也 
イラスト
奈良千春 
媒体
小説
出版社
二見書房
レーベル
シャレード文庫
シリーズ
愛してないと云ってくれ
発売日
ISBN
9784576130354
3.9

(26)

(5)

萌々

(15)

(6)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
9
得点
103
評価数
26
平均
3.9 / 5
神率
19.2%

レビュー投稿数9

先生のアソコ、見せてくれよ…シリーズ第5作

元天才外科医→今ドヤ街の日雇い労働者と、日々奮闘する貧乏医師の育む愛、「愛してる」シリーズ第5作。
1作目は斬新な設定と攻めの斑目のワイルドセクシーな魅力、ヤクザも出てきて〜という展開だったけど、巻を重ねるごとに「ドヤ街」という場の設定を生かしての社会問題のようなものも問うような物語になってきた!
さて、5作目。今回は「貧困ビジネス」がテーマ。
個人がもらうべき生活保護費、それをホームレス達を集団で囲い込んで搾取する…数年前に社会問題として話題になりましたね。
正に舞台であるドヤ街と、そこに住む人々の状況を存分に生かしたストーリーになっていて見事です。
冒頭は、女っ気と娯楽に飢えたドヤ街の住人達が坂下診療所にたむろっている平和な風景。悪友の双葉が去り一人になっても坂下にセクハラを仕掛ける相変わらずの斑目。
(斑目がウクレレ抱えて歌う「先生のぉ〜アソコォォ〜〜ッ」は爆笑モノ!)
さて本作で登場するのは、妖怪子泣きジジイ、いや斑目の恩師・久住先生。
久住はすぐにドヤ街に馴染み、毎晩飲み歩き、街のオヤジ達と打ち解ける。
そんな時、街からホームレスが消えていく…という不穏な空気。その中心にいる人物と斑目は過去に因縁があって…
その過去とは、斑目が今でも後悔で苦しんでいる、ある心臓病の少年の死と医療事故。
後半はドヤ街に忍び込む「貧困ビジネス」と、悪徳NPOに搾取される労働者の暴走、巻き込まれる斑目と坂下、という緊迫と、斑目の深い苦悩が描かれます。
もちろん坂下の斑目に対する熱い想いも…
そして、ラスト。
この街にやって来た久住の本当の理由が明かされます。
それは、斑目に離島で医師をやってくれないか、という依頼。
立ち聞きしてしまった坂下の心は千々に乱れて…

さあ、斑目は今後どのような道を選ぶのか。坂下との関係は?
この話は次の巻に続きます。


「双葉パパの奮闘」
街から卒業し、今は施設にいる実子・洋を引き取るために奮闘している双葉の様子。
仕事も頑張り、毎週洋に会いに行く。洋はまだ素っ気なくてパパなんて呼んでくれないけれど、双葉は幸せだ…
優しくて明るい双葉なら、きっと洋ももうすぐ懐くことでしょう!

0

恩師はお見通し、なのだろうね…

生活が不安定な日雇い労働者達の為に診療所を開設して切り盛りしている青年医師・坂下の奮闘記、5巻目。

斑目が医師を辞めて街にやってきたのは未だに拭えずにいた過去の罪悪感が原因だった。
そういった過去を知るきっかけとなるのは、坂下達が暮らす街に貧困者の保護を銘打って活動し出したNPO団体『夢の絆』のスタッフの一人に医療過誤で亡くなった元患者の身内が居たから。

今までもヤクザに追い詰められたり執着心の強い腹黒医師に押しかけられたりとすったもんだはあったが、今回は貧困ビジネスといったいささかヘビーな話題が絡んでいる。
私自身は小説やコミックの物語がどんなにリアルであってもフィクションとして捉える考えだから、社会派BLってのは本当は好みじゃない。
…なんて言っておきながら、事件が起きてクライマックスまで持っていく展開に惹きつけられるのは、現実的な問題を題材にしていても物語上で上手く昇華されているからなんだろうな。

今回は、斑目の恩師である老医師・久住がひょっこりと現れたのだが、坂下が反発する事なく常に素直だった所から、彼がお祖母ちゃんっ子だったのを思い出した。
どうも坂下は老人に対して情に弱い一面があるよね。
久住じいちゃんが街にやって来たタイミングがこれまた絶妙で、斑目の医師魂がまだ消えてないってのはもう解っているんだろうな。
今後の斑目がどういう道を選ぶのかってのは、このじいちゃんにはお見通しなのかも知れない。

1

最終巻が見えてきた

な、奈良さんの絵がまた変わりましたね・・・。
このシリーズで絵師さんが3人変わってるみたいだって言っちゃダメですよね、はい。
フォローするわけじゃないですが、奈良さんは他の作家さんの挿絵のときも、内容をしっかり把握なさって描かれてるなあと毎度感心します。
そして表紙の構図の素晴らしさ。これは色気たっぷりな頃よりも圧倒的に進化されてるな~。
双葉親子が似てるのもすごく良い。こういったところの手抜きのなさはやはり一流。
で、肝心の小説ですが、今回もまた斑目を通して中原さんならではのオヤジシモネタギャグ炸裂してたなあ、という。
だって~(思い出すだけで噴き出してしまう)『先生のアソコ』の歌!
あんな、いかにもスケベオヤジが歌いそうなくっだらない歌を思いつくって、中原さんしかいない!

2

終わりに向けて緩やかに加速。

相変わらずセクハラ三昧の斑目、オカアチャン対応が板についてきた坂下のコンビに今巻は斑目の恩師である子泣きジジィ:久住が登場します。

のっけからスカイツリーやら『アソコ~♪』な歌やらこのシリーズらしいおやぢ風味満載のシモネタを見事に受信しました(笑)

関わってくる事件の内容と斑目の過去が明かされたことで斑目と坂下の関係が新たな展開を迎えることを示唆されていることもあり少々、波乱含みの巻。

『無法』に近い日雇い街を舞台としたダークな内容は読み応えがありです。
石田衣良さんの【池袋ウエストゲートパーク】でも以前、似たような貧困ビジネスを扱っていた作品がありましたが実際に存在するんでしょうね…行き場をなくして流れ着いた人たちを食い物にする輩が。

例によって火中の栗を拾いまくる斑目と坂下ですが彼らは街を救おう!なんて気負いはないのが良い。
日雇い街はもうそこでしか生きていけない人ばかりで、そんな彼らが(自分たちを含めた)ただ普通に生きていけるように『権利』を守ろうとするだけ。
ヒーローっぽくないけれど人としての最低限のラインを守ろうとするふたりのスタンスが好きです。

辛い経験を『糧』に生きていける人がいるその一方で『枷』になってしまう人も少なくない。
触れることも叶わない過去の出来事が現在とこれからを制限してしまうことがあります。
それを忘れられれば、もっと自由になれるのに…と、斑目の過去に少々、感傷的になった私の気持ちを上へ、と押し上げた双葉親子の話。

お弁当作りにいそしむ双葉が眩しい~。
パパまでの距離はまだ少しあるけれど少しずつ隙間は縮んでるような挿し絵が嬉しいです。

双葉パパが息子と2人で斑目や坂下with愉快な仲間たちに会いに行けるといいなぁ、目を細めてしまう自分がいます。

そういった楽しみも含めつつ斑目が次巻でどんな『これから』を選ぶのか少しこわごわ待つとします。
実は終わってしまうのが寂しくて買ってからしばらく読み進められなかった(笑)
あとがきから読んで確認してから読み始めたマヌケです。

奈良さんの絵(と色のトーン)がまた少し変わりましたね~。
このくらいの抑えた感じが好きです。


2

斑目が

このオヤジ、かっこよすぎ。

肉体労働で鍛えた男らしい体躯で、オヤジギャグでラテン系の明るいエロフェロモンまき散らし、
オマケに前職は優秀な脳外科医で、いざとなったら、その手腕は神業。
ただのエロオヤジと見せて、実は受け一筋で、チョー愛して大事にしている。
そこへ、今回は更に、医師をやめるきっかけとなった過去に苦悩する姿なんて物も見せて、
もう、これ、
惚れるなっていうほうが無理だよね。
自分の身体なんかでちょっとでも慰めになるんだったら、もう、どうにでもして。
だよね。

このシリーズのいい所って、斑目より、寧ろ坂下の描かれ方。
坂下が、ちゃんと医師としての矜持を持っている自立する男でありながら、斑目との恋愛に於いてはメスで、その事に葛藤しながらも自分の意志でそれを受け入れていく。
この辺がBLの醍醐味だよなぁ。
と、
納得しつつも、今回、斑目も坂下もかっこよすぎて、捻くれたしらけ心が頭を擡げてしまったので、評価の+は無し。

ところで、双葉がいなくなっているって初耳なんだけど、わたしこの前の本、買っただけで読んでなかったのか?
発掘できるかしら。

3

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