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『天球儀の海』も持っているのに、なぜかスピンオフの方から読んでしまいました;
昭和18年。
太平洋戦争真っ只中のラバウル航空隊が舞台の切なく儚い青春BL。
優秀だけど問題児の恒とペアを組むことになった六郎。
優勢から劣勢へ、目眩く変わる戦況。
散っていく同胞たち。
明日生きているかも分からない過酷な状況下で、本土の家族を守るために命がけで戦う空の男たちに、胸が締め付けられる思いでした。
悲惨で過酷な環境なのに前向きで、直向きな恒が魅力的です。
その恒を理解して寄り添う六郎は献身的で健気。
惹かれ合う二人が当たり前のように理解できました。
燃料も弾もないまま出撃する若者たちが悲しくて、最期の手段として選んだ特攻の場面では涙が止まりませんでした。
諦めきれない生への希望。
敵兵に縋ってでも恒を生かしたいという六郎の思いが胸を打ちます。
二人が……というよりも、当時の若者たちに思いを馳せてしまいました。
明らかに劣勢で物資も途絶えて、一体どうしろというのか?
大人たちの理不尽さに腹が立って仕方がなかった。
せっかく理解し合えそうだった同僚・斎藤も還らぬ人となり、本当に悲しかったです。
ハッピーエンドは嬉しかったけれど、それだけでは終われない余韻も残りました。
その後の『約束の月』も泣いた。
青い花火が上がった瞬間……二人が乗っていた「月光」の名がついた花火。
それを見て号泣する恒と、作り上げた六郎の思いを想像すると、また泣けます。
きっと、色んなことを思い出してるんだろうなあ。
第二次世界大戦中のラバウル。二人乗りの航空機でペアを組んだ、六郎と恒の青春の日々を描いています。
飛行機をこよなく愛するやんちゃな天才操縦士・恒と、温かくおおらかに恒を支える六郎は、飛行を重ねるたびに信頼を深め、やがて身も心も結ばれていきます。死と隣り合わせの中、命を分け合うように一つになりたいと願う二人に、頷きながら読みました。紺碧の空で命を懸けることに心満たされる若者らしさも、眩しく感じました。
でも、実際にあった戦争が元になっているため、どのような距離感で読んだらいいのか、ずっと迷いました。たくさんの若者が戦死したことを思うと、六郎と恒に共感しつつも、物語に深く浸ることができなくて。
ラバウルは終戦まで自給自足で籠城を続けたそうですから(Wikipedia参照)、飢え死にや玉砕で大勢の兵士が亡くなったほかの戦場よりは、物語の舞台にしやすかったのかな、と考えたりもしました。
物語に強く引き込まれたのは、終盤、敗戦が濃厚になる中で、六郎の胸に戦争の理不尽さがこみ上げる場面でした。人を殺すためでなく、恒を飛行機に自由にのせてやりたい。自分は火薬で爆弾を作るのではなく、内地で修行して、恒のために愛機「月光」の名をつけた打ち上げ花火を作ってやりたい。でも、死にゆく自分たちにそんな未来は決して来ない…。抗うすべもなく夢をあきらめなければならない悲しみが、私の胸にも押し寄せてきて、戦争のリアルを感じました。勝っている時は、戦争の空しさは見えないのかもしれません。
最後の出撃を前に、夕暮れの浜辺で二人が手をつないで星を待つ姿が、とても印象的です。夜になる一瞬に永遠を感じる二人は、前半の生き生きとした様子とは対照的で、静かな描写に胸を打たれます。
偶然が重なり生き延びた六郎と恒は、約八年後に帰国を果たします。六郎が作り上げた打ち上げ花火「月光」を見て号泣する恒の胸にあふれたのは、ラバウルの空を愛機で翔けた日々と戦争へのやるせなさ、死んだ仲間たちへの思いではないかと感じました。この青い花火が、二人にとっての青春の形見なのでしょう。タイトルが切なく胸に響きました。
尾上先生の作品は今回初めてでした。たまたまHOLLY MIX で別の小説を読みたくて購入。その中に碧の・・があり、内容が知りたく取り寄せました。読み進むうちに、どんどんストーリーに引き込まれ、一気に1冊読んでしまいました。戦時中の内容であり、しかも明日命があるかどうかも判らない、命を懸けた若者が日本国を守るという使命を持ち、毎日ひたむきに、純粋に生きている。。確かに物語ではあるけれど、実際の太平洋戦争・最前線・ラバウルであればやはり戦争は過去であるにもかかわらず、たくさんの若い兵士が亡くなったというのは事実、心に響くものがありました。
そんな中でも六郎と恒の友情を超えた2人の深い絆に熱いロマンを感じます。ストーリーの所々に出てくる星の話や、花火の話。夜の飛行風景。そしてそれは、六郎と恒と愛機”月光”が飛び回る風景と重なります。訓練の合間に何気なく話した〟降参”という英語が最後にこう来るかー!と。かなりのどんでん返しでしたが、これで良かったのだと安心しました。
最後のほうで、数年後日本に帰国し、花火師として修行した六郎の作った花火が打ち上げられます。それを万感の思いで見上げている恒。そして2人が固い絆で愛機と共に飛んでいたラバウルの空を思わせる様な大きな青い花火。そしてそれは六郎が恒に約束したその名も ”月光”! もう。。最後まで感動させられました。
恒の弟のストーリーもあるとのこと。是非是非読ませていただきます。
良い作品に出逢えるのは嬉しいことです。
最近、以前まとめ買いした蒼竜社のノベルを読んでいます。尾上さんは苦手な作者さんだということは分かっているのですが、前の作品を読んでからしばらく経ち、ほとぼりも冷めたのでまた手にとってみました。
全体に、ラバウルでの戦時下における時代物で、戦友から恋愛に、というお話。受けの琴平が、なかなか懐かない猫がモデルのようで、喧嘩っ早いが仲良くなれば気のいいやつ、というキャラなのですが、弟への愛情表現も事実上いじめだったりと理解できないところが多い。
攻めはいいやつですが、琴平の魅力がよく分からないので、なぜ惚れるのかな、と思ってしまう。
しかし色々なエピソードがあり、最後は戦後の二人まで書かれていて読み応えはありました。最後に約束していた大きな花火で号泣っていうのにはおセンチで参りましたが。。
全体に、パイロットのかっこよさが強調され、戦争を肯定するような調子であったのに違和感を持ちました。また尾上本はしばらくお蔵入りかな。。
とにかく好きすぎる。終わってしまったのが寂しくて仕方がない。読了後の感想でした。
恒のイメージは「繊細」でした。
なにかの拍子に壊れてしまうのではないかというほど尊い。溺死しかけたり、マラリアに感染したりと、なんども恒の死を感じました。
明日には死んでしまうのではないか。ここで別れたら二度と会えないのではないか。
六郎目線の恒の描き方が壊れそうなほど美しいので、死んでしまうのではないかという恐怖が常にありました。
最後の米兵に囲まれた時は終わりだと思いました。
しかし、六郎は諦めなかった。
恒だけでも助けてほしいと懇願しました。
意識のない恒を助けたい一心で。
「あの夏も海も空も」の歌詞があまりにも合いすぎていて、驚きました。
この二人の話をもっと読みたいと思いました。