表題作殉愛という名の純愛

ランワン・八代目竜王
守屋龍聖・八代目リューセー

あらすじ

エルマーン王国の悲劇と言われたフェイワンの母、八代目龍聖の物語
「空に響くは竜の歌声」番外編同人誌

作品情報

作品名
殉愛という名の純愛
著者
飯田実樹 
媒体
小説
サークル
G×GPLACE<サークル>
ジャンル
オリジナル
シリーズ
空に響くは竜の歌声 紅蓮をまとう竜王
発売日
5

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萌々

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中立

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趣味じゃない

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レビュー数
1
得点
5
評価数
1
平均
5 / 5
神率
100%

レビュー投稿数1

とても悲しい愛の話

フェイワンの父であるランワンと8代目龍聖のお話。
本編でもかなりのインパクトのあったフェイワン誕生までの話なのですが、一体どんな悲劇だったのかと思ったら想像以上の悲劇っぷりに涙。いやもうだばだばだーです。

時は明治、日露戦争の真っ直中で軍人に憧れていた龍聖ですが、ご一新によって守屋家に代々受け継がれてきた儀式の作法もろもろを失ってしまったことにより、我が身に起こることを知らぬままにエルマーンに召喚されてしまいます。
時代が時代であったため、自身が女性としての役割を与えられることなど受け入れられず、それも子を産むという想像もできないような事実に愕然とし、それでも守屋の家を守らねばという自分に与えられた使命に苦悩する。
もう読んでいてとてつもなく辛かったです。
フェイワンの父であるランワンが、龍聖のことを愛しく思っている分、心の拒絶に切なげにしているのがこれまた辛い。そしてランワンの両親が早世(珍しく龍聖の方が先に身罷ってます)しているため、ランワンの寂しさを思うと何だかもう……早世したとはいえ、きっとランワンの両親も仲睦まじかったはずですから、ランワンも自分のリューセーが来るのを待ちわびていて、また新しく出来る家族をとても楽しみにしていたと思うんですよね、それが……ああ……(涙)

龍聖の戸惑いぶりは、ちょっと神経過敏なんじゃないかなぁ……とうっすら思ったりもしたんですが、でもここまでなった根本的な原因って側近のジョンシーにあったんでは、と。彼も彼で一生懸命だったのは分かるんですが、側近だからこそ龍聖の最大の味方として寄り添って欲しかったなと。
そして苦痛としか感じない子作りの末に身ごもった龍聖が、不安でいっぱいの中で出産をしたトドメが「産み落としたのが生身の人間じゃなくて卵だった」という愕然とした事実。
いやいやそれ龍聖に説明してた? あなたは卵産むんですよーって、エルマーンの歴史と竜族の仕組み勉強したんだよね?ってちょっと確認したいのだけど……そんな感じでやっとの思いして産んだ子供が卵だったのを見た瞬間、龍聖の辛うじて保っていた糸がプツンとなったのか、ついに心が壊れてしまったようです。
この辺りで私の胸もギリギリ搾られるような痛みを覚えていましたが、完全に気が触れてしまった龍聖が、卵に魂精を与える姿はこれ以上ないほど痛々しく、そして愛しくもありました。

自分の役割、未知の世界、未知の体験、その末の子宝と龍聖にとっては受け入れがたいものばかりの中でも、それでもランワンに対して芽生えていた確かな愛情と、愛し子の誕生を奥底の部分で心待ちにしていた様子が描写から垣間見え、涙で紙面が霞む……。
今までは竜王の名前は歴代竜王が名付けしていた印象ですが、ここでは孵化する前に龍聖自身が「フェイワン」とその名を呼んでいます。
それを耳にしたジョンシーの喜びを思うと、そしてランワンの帰りを待ち侘びていたであろう龍聖が命を落とす瞬間を、目の前で見てしまったランワンや竜のバオシーの気持ちを思うとこれまた辛くて涙腺が……。

それでも救いがあったのは、龍聖の死の真相がきちんと分かったということでしょうか。
ランワンからもらった大切なものを失いたくなくて取った行動が、結果的に悲劇を招いたわけだけど、それにしてもつらい。そしてこれを商業誌でびっちり読みたい……バッドエンドで需要ないのかもだけど、もっと掘り下げたの読みたい。せつない。
でもちゃんとフェイワンが龍聖から愛情を与えられていた事実が分かって嬉しい。
龍聖がぎりぎりのところで大切に慈しみ、抱き続けた愛情がなければ孵化することさえなかったのだと思うと……心が壊れていながらも、それでもしっかりと卵を抱きしめ続けた龍聖を想い、これまた涙です。

3

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