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表題作灰の月 上

嘉藤、本橋組組員・惣一のボディガード、43歳
本橋惣一、本橋組組長の息子、33歳前後

同時収録作品月に笑う バレンタイン編

加納路彦、外資系保険会社社員、24歳
山田信二、何でも屋の従業員、28歳

その他の収録作品

  • 月に笑う 大晦日編

あらすじ

本橋組組長の息子・惣一は5年前に敵に襲われたトラウマで、一時も1人きりでいることができなくなってしまった。
同時に押し込めていた自分の性癖も暴かれてしまう。
性欲処理を寡黙なボディガードの嘉藤が見ている前で行っていたが、ある日道具の代わりに嘉藤自身をねだると彼は命令に従い惣一を抱いた。
感じたことのない強烈な快感にもう一度とねだるが、嘉藤に「抱くのであれば女の方がいい」と拒絶されてしまい…。
『月に笑う』の山田と路彦のその後のエピソードも収録。

作品情報

作品名
灰の月 上
著者
木原音瀬 
イラスト
梨とりこ 
媒体
小説
出版社
リブレ
レーベル
ビーボーイノベルズ
シリーズ
月に笑う
発売日
ISBN
9784799741818
4.2

(124)

(88)

萌々

(14)

(4)

中立

(5)

趣味じゃない

(13)

レビュー数
19
得点
513
評価数
124
平均
4.2 / 5
神率
71%

レビュー投稿数19

性欲が強すぎて付き合いきれない

「月に笑う」を先に読んでおいてよかったです。いきなり「灰の月」からだと、上巻の途中で挫折したかもしれなかったです。
「月に笑う」で、山田信二が茂木組解散後、次に仕えた本橋組組長の息子、惣一のお話です。

「月に笑う」は山田と路彦に感情移入して読んでいたので、惣一が酷い目に遭ったと聞いてもざまあみろ位にしか思っていなかったのですが、この「灰の月」の序盤でその「酷い目」が詳細に描かれ、その内容が本当にひどすぎて目を覆わんばかりでした。
でも、この序盤の「ひどい」は暴力のひどい、ですが、その過酷な事件の後、むき出しになった惣一の性欲の描写こそがひどかった。
「灰の月」上巻は、雌犬と化した惣一の情欲がこれでもかと描かれています。
私の所有する上巻には本に帯が巻いてあり、そこにでっかい文字で「純愛」と書いてあるのですが、上巻を読んだだけですと、純愛という言葉の定義を疑いたくなる、それくらいただの性欲魔人であり、権力があるだけに厄介なわがまま坊主です。付き従う嘉藤が甘やかすからこんなことになってるんじゃないのか、とイライラさえしてきます。

木原先生の作品ですし、この先どのように落とすのかまるで見当が付きませんが、本作品は雑誌掲載作ではなくて同人誌掲載作をまとめたもののようなので気になるところです。何作も何作も、惣一の物語を書き綴ったからには描きたい何かがあるはずなので。

さて、上巻には巻末に、「月に笑う」の後日談が2本掲載されています。
こちらと「灰の月」との温度差がものすごくて、そのアンバランスも醍醐味かもしれません。

1

愛してもらえない人と愛されては困る人の凄まじい描写力

ちるちるさんのYou Tubeチャンネルで木原先生作品の紹介をしている動画を見て購入。私はアオイトリが大好きでそこから木原先生の過去作品を買い漁っていましたが読む時間が作れずしばらく本棚の前に置いていました。

しかし読み始めたら、結末が気になって気になってあっという間に読了してしまいました。

あらすじは他のレビュアー様が書かれているので感想を書きます。

この作品は受の一途な片想いを延々と見守るといえばそうなんだけど、そこはやはり木原先生だけあって、徹底的で容赦がなくて、あまりにすごすぎて、読了後、呆然自失。なんでこんなにすごいんだろう…と思わずにいられないほどの容赦のなさ。そして、もう攻・受の心理描写や行動描写が凄まじいほどに徹底的で救いがない。

でも一方でそこまでに徹底的なので、読者は作品世界にどっぷり浸かって、どんどん夢中になって読み進められます。木原先生の作品は読者の心に響く吸引力というのがすごいと思います。痛くて、もうやめてあげて…と思うけど、絶対に最後まで見届けたい感。とにかくすごい。

受の惣一の攻の嘉藤に対する愛情というのはもう凄まじくて、愛してもらえないのに絶対諦めたりしないんです。とにかくずーっとずーっと嘉藤のことが好きなんです。

過去にされた凌辱・レイプがトラウマとなる一方、身体的には男に愛される悦びを認識することとなった惣一。惣一にとって、嘉藤と最初に身体を重ねたときから、嘉藤のことが好きだったんだと思います。しかし、嘉藤にいとも簡単に拒絶される。

なんでも手にしてきた惣一からしてみれば、嘉藤の拒絶ってかなり堪えたと思うけれども、この上巻で綴られる惣一の嘉藤への執着は凄まじいもので、いくら仕事とはいえ、毎度、ワガママと無理難題、さらに応えられない愛情を一方的に押し付けられる嘉藤は超人的な忍耐力のある人だなーって思いました。

この嘉藤の惣一に対する本当に淡々とした受け答えも秀逸で、嘉藤というキャラクターの骨格がめちゃくちゃしっかりしていて、読んでいて安定感が半端ないです。

嘉藤も嘉藤で子供の頃に両親の事故をきっかけに人生が暗転。本当に可哀想すぎる子供時代を過ごし、生きていくために図太く諦めず生きてきた人というバックボーンがあるので、コレと決めた主人がどんなに自分を困らせても簡単には態勢を崩すことがないんですよね。

上巻で心に刺さったのは、惣一がアイマスクをしながら金で買われた男とのセックスをしている最中に嘉藤の名前を呼ぶ。行為が終わって嘉藤が惣一をバスルームに連れて行ったときのシーン。

惣一が嘉藤をバスルームの床に押し倒し胸ぐらを掴んで、さっき抱いていたのはお前だ、嘘でも認めろ、と嘉藤に迫る。
ややおいて、嘉藤が、そうです、私です。と答えると、泣きながら嘘つき!と嘉藤を罵倒する惣一。嘉藤が、自分をこれ以上幻滅させないでくれ、と惣一の耳元で囁くと、号泣して悲鳴する惣一。その悲鳴が耳障りで、それをキスして塞ぎ、惣一が暴れて怪我をしないように強く抱きしめる嘉藤。

このシーン、本当に何度も読み返しました。愛してもらえない苦しさをそのまま、オブラートに何も包まずにストレートに何度もぶつける惣一。それがわかっているけど、自分ではどうすることもしてやれない嘉藤。

作中、惣一が嘉藤に愛してもらえない苦しさからいろんなことをするのですが、その中でも、上記のシーンが本当に胸が痛くて痛くて…。惣一の弱さというか、女々しさというか、そういうのもあるんだけれども、愛してもらえないことをこんなにも苦しく、辛く、自分ではどうすることもできない、感情のコントロールがまったくできないところまで追い詰める描写力に、ただただ圧倒されました。

そして、上巻の最後に初めて嘉藤が、疲れた…、とつぶやくシーン。本当に心からそう思ったと思います。惣一を愛してやれないことの代償は大きく、嘉藤も追い詰められていきます。でも、惣一に対して、「恐怖」みたいなものはなく、哀れんだり呆れたりしているんです。

惣一って完全に嘉藤のストーカーだし、普通の人だったら、絶対恐怖に思うと思います(笑)でも、そのことよりも、嘉藤はヤクザとしての惣一に惚れ込んでいたってことなのかな…。そういう意味では、嘉藤も自分の理想を惣一に押し付けて、惣一の本質を否定、もしくは矯正しようとしているとも言えるかもしれません。まぁ、でも、嘉藤はもともと異性愛者だし、嘉藤としてもどうすることもできない過酷な状況には同情するほかなしでした…。

上巻の最後は、嘉藤がこのままではいけないと、自ら大阪へ行き、惣一と決別したところで下巻へ。

上巻はひたすら、愛してもらえない苦しさ、愛に応えられない苦しさをこれでもか!と緻密に徹底的に描写しています。あまりの苦しさですが止められない。圧倒的すぎて神評価しかありません。

3

心を鷲掴まれる

[月に笑う]のスピンオフと知らずに読み始めました。
ヤクザもので寡黙で従順な部下とビッチな二代目。

なんだかちょっと肩書きは違うけど、鳥のタイトルの大人気BL漫画作品と似てる?と読み始めたけど、もっと手強かった。困った坊ちゃんに手を焼く部下のお話でした。
二代目特有のワガママ傍若無人ぶりで全然受けに対しては感情移入出来ず、この困った人はどうなるの?って思いしかなかった。
ゲイとして覚醒するキッカケの強盗強姦&殺人未遂の時も可哀想なんて思えなかった。
なんとしても生き延びてやるってハンガリーさも無ければ、自分の今までの行いを振り返っての反省もない。情けないお坊ちゃん。

その襲われた事のトラウマでセキュリティが気になって常に嘉藤を側にはひらせていて、ワガママ放題。
ある会合で急遽泊まりになった時に惣一おもちゃセットのトランクの中にディルドが入ってなかった事から、ディルド代わりをさせられそこから執着されて上司が雌犬化して面倒臭い事に。ノンケの嘉藤は丸く収める為に性欲処理の手伝いしたのに嫉妬したりとにかくイジイジぐじぐじと子どもっぽい。
いくら組長に忠誠誓ってて仕事面で惣一をリスペクトしてたとしても割に合わんよ。

なんなんだ、コイツは。

そして嘉藤の過去、サラッと描かれているが案の定壮絶な10代を過ごしている。

この世界の何処かにいてるかもしれないなって思わせるキャラクターを描くのが木原先生は本当に上手だな。
そして、全くBはLしてない。
下巻でどうなるのか、楽しみです。

同時収録のSS2作が[月に笑う]のお話で
未読だけど顛末知ってしまったーー

[月に笑う]の方は、お互い思い合ってる2人。
コワモテ元ヤクザが優し過ぎるあまり、可哀想な子をほっておけない性分が出てました。

しかし、好きなカップリング。みんなが通常思うのと逆。可愛い年下の方が攻め、コワモテ元ヤクザ受け。
それが、初リバもある!なんて美味しい。
よっしゃ、こちらの本編も読みたいぞ。

0

読んでて辛いけど、ページをめくる手が止まらなかった。

ヤクザのボディーガード×ヤクザの組長。
私が初めて読んだ木原音瀬作品がこちらです。こんなに凄まじい作家さんがいるなんてと衝撃を受けました。
猟奇的で救いのない展開が続き、メンタルボロボロ。
金曜日の夜中に読み始めて、ショックで二晩眠れずほぼ三日起きてました。土曜日は布団から出られず、ご飯が喉を通らず、それでもこの作品の中毒性に負けて、何度も読み返しました。
平日に読んだら仕事が手につかなかった。メンタルが弱ってる時は読めません。

0

試し読みの段階で何度も挫折していたものの、ようやく上巻を読みました。
「オパールグリーンの明るい壁に、黒い絨毯は趣味が悪い。足元が暗すぎて、穴の中に落ちていきそうな気分になる。」
初めの一文だけでも痺れます。
これから読もうとこのレビューを読んでいる方がもしいたら、是非ネタバレを読まずに読んで欲しいです。(神率と読者許容範囲は全くの別物で、地雷多い人は細心の注意を)

個人的にヤクザものは題材として惹かれないのですが、組長の息子である主人公の惣一は従来の気質を嫌うインテリで、身の回りの警備用面子とその衣服もシュッとさせているので読みやすかったです。それより何より、ここぞという決めシーンでなくてもグッとくる、惹きつけられる文章でグイグイ先を急ぐように読みました。

惣一の警備にあたる嘉藤は姿こそスマートでいるものの、ヤクザの血が染み込んだ性格で、強いボスを欲し、盲信して身を捧げる。惣一は嘉藤との一夜(三日三晩?)が忘れられず求めるも、嘉藤は元から女好きで、惣一の男の部分(頭脳、先見性、カリスマ性)を尊敬するだけ、なし崩しに懐柔はされない。
淫乱で女々しく、女に嫉妬し、子供っぽい惣一が面白く、とびきり切ない。組長に頼られた嘉藤、嫌々な惣一に頑張るの図は滑稽で笑えました。

二人が相手に求めるものが全く違うので、同じ空間にいても共有していない温度差、キッツい言い回し(こんなに男を棒呼ばわりする作品ないでしょう…笑)、鋭い感情表現と側から見た時の滑稽さが木原先生独特で最っ高でした。

上下巻あることで行為描写が丁寧で緊張感が増し、いつもながら結末が全く読めません。
普通のBL(?)であれば、惣一の味を知った嘉藤が夢中になるとか、組長になった惣一に嘉藤が惚れ直してラブエンドとかになりそうなところ、邦画がヨーロッパ脚本?になったようなゾッとする展開が下巻で待ち構えていました。
重ねて言いますがこれから読まれる方がいれば絶対ネタバレなしでどうぞ。

1冊読み終える前に惣一の話が中断、山田達のお話になったので、その分は下巻を読み終わってから楽しみに読みます。

1

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