パブリックスクール-八年後の王と小鳥-

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パブリックスクール-八年後の王と小鳥-
  • NOT BL
  • E-BOOK ONLY
  • R18
  • 神127
  • 萌×214
  • 萌5
  • 中立1
  • しゅみじゃない3

2

レビュー数
11
得点
707
評価数
150件
平均
4.7 / 5
神率
84.7%
著者
 
イラスト
 
媒体
小説
出版社
徳間書店
シリーズ
キャラ文庫(小説・徳間書店)
発売日
価格
¥570(税抜)  ¥616(税込)
ISBN
9784199008429

あらすじ

パブリックスクールを離れて8年後──。
かつて義兄として慕っていたエドと恋人同士になった礼。けれどエドは、イギリス貴族の御曹司で、世界を相手にビジネスを展開する大会社の社長。どんなに想い合っていても、口煩い親族たちや社交界は、天涯孤独で財産もない日本人の礼を侮り、決して認めようとはしない…。
そんな中、遠距離恋愛中だった礼は、仕事で渡英し、長期出張の間、エドと一緒に暮らすことに!?

表題作パブリックスクール-八年後の王と小鳥-

エドワード・グラームズ,英国貴族で社長,27歳
中原礼,編集者,25歳

その他の収録作品

  • 八年目のクリスマス
  • つる薔薇の感傷
  • あとがき

評価・レビューする

レビュー投稿数11

エドワードの思い

パブリックスクールシリーズの完結編。
大人になったエドワードとレイが、お互いの思いを確かめ合っての遠距離恋愛8ヶ月後、レイはようやくイギリスのエドワードの元へと行くのですが…。

最終巻にきて、ようやく自ら語り出したエドワード。
「個人の話じゃなくて、国の話。次元が違う」
レイへの愛を守り通して、やっとそれをレイに伝えられるだけの地盤を築いたエドワードの、途方もない努力と孤独。
ただの個人のエドワードとしての愛だけではすまない、次元の違う全てのしがらみや重圧も込みで、それでもレイが、本当に自分を選んでくれるのかを、震えて請い願うエドワード。
エドワードの荒療治に、レイの肝も据わります。

第1巻ではただただうつむいて、自分の愛だけに閉じこもっていたレイの話から、第3巻ではこんなに激情を秘め続けたエドワードの重たい恋の勝利の物語に辿り着いて、感無量。
1巻目単体の評価を変える気はないけど、シリーズ全体を通しての評価は「神」で。

3

あれから……

パブリックスクールの続編。その後。
エドと礼の8年後の様子を書いたお話になっています。
想いがが通じ合って漸く恋人同士になった二人。
礼が仕事で3ヶ月イギリスに滞在することになり、待ちに待った蜜月に期待に胸を膨らませて9年ぶりにイギリスの地に降り立ったのだけれど、そこでは想像していなかった苦難が待っていて……という、またもやここまでするかという受への試練でした。

パブリックスクール時代を経て、日本で順調に仕事をしていた礼は、それなりに自信もついて、他者との関わりも上手く出来ると自負している部分がありました。
けれどもそれはあくまで【日本】でならの話で、イギリスで再会したエド、友人のギルやジョナス、オーランドとの関わりの中で、徐々に違和感を感じ不安へと変化していきます。
【イギリス】における礼の立場はアジア人で庶民という、どうしようもない壁があって、持てるものと持たざるものとして明確に分けられていました。
そんなことは分かっていたはずなのに、エドとの仲はだんだんとぎくしゃくして拗れていく様子は、見ていて本当に辛かったです。

私はエド贔屓なので、礼の性格にはまま苛つ続きいていたのですが、今回もご多分に漏れずイライラしていました。確かにエドは自己中心的で高慢ちきに見えるかもしれないのですが、そんなエドと恋人として生きていく上で、なにひとつその意味を理解してなかったのは礼の方だと読んでいて思っていたので、礼のそれこそ自己中心的な行動が鼻についてたまらなかったです。
そうなってくると、段々と礼の昔の【ぼくか弱いの……】が見え隠れてしてきて、中盤読むのがしんどくなっていたのですが、終盤の弱みを見せるエドの姿にノックアウト。
彼の脆さに萌え滾り、にやにやが止まりませんでした。
ちょっとページが足りなかったのか、後半はもの凄い駆け足になっていたのが残念なのと、酔って完全に性格が変わっている礼には首を傾げましたが、酔っ払いエッチがあまりに萌えたので全てが帳消しです。

結果的には丸く? 収まって、これからも些細なことで悩みながらも、二人で手を取り合って前に進んでいくだろう姿が見えたので安心しました。

2

人を「愛する」ことを描いた13年分の想いの記録

シリーズ3作を総括してこのタイトルを付けさせていただきました。
出会い~学生時代を描いた「檻の中の王」、
卒業と別れを経て再会を果たした「群れを出た小鳥」、
結ばれたがゆえの障壁と共に生きていく二人の課題を提示した本作「八年後の王と小鳥」……。
ただ「圧巻」の一言に尽きるシリーズです。

偏見ではありませんが、BLというある種限定された市場にこの作品が置かれている理由が私には分かりません。
確かに同性愛が含まれていますが、それは要因の一つでしかあらず、仮にこれが男女だとしても「愛」という普遍的なテーマを扱っている傑作ではないでしょうか?
誰かを愛することだけが生きるよすがである礼と、
この世の全ての富と権力を得て愛だけを持たずにいたエドという対照的な二人の愛し方。
それを突き付けられた読者はそこに本質的な「愛」の姿を見られると思います。

メリットデメリットなど考えず人の弱さに寄り添って愛を注ぐ礼と、
その愛を受け取ったエドは持てる権力の全てを使い策略を巡らせて、
あらゆる火の粉(庶民やアジア人、ゲイであることに対する批難)から礼を守ろうとします。
礼が少続きしでも傷つけられれば、
「俺はあなたを何度でも殺します」
と言い切って、実の叔父に銃を突きつけ手を汚そうとする――。
王室とも繋がる400年の歴史を棒に振り、たった一人を愛し抜く彼の姿は、
とてつもなく重いと同時に一途でもあると思わされるのです。

礼がエドや他者へ注ぐ愛、エドが礼や他者へ注ぐ情に「人間愛」を見たのは私だけでしょうか?

何も持たない、ただ互いの人格に恋い焦がれた末結ばれた二人の人生。
波乱は多いと思います、不安やすれ違いも多々あると思いますが、
生涯寄り添って生きていってほしいと切に願っています。

蛇足になりますが……

今後シリーズ4弾、5弾と続くなら、大変楽しみにお待ちしておりますのでご検討下さい樋口先生。

3

一言でいうなら

声を大にして言いたい。
「「 イギリス貴族めんどくせーーーーーーーーーーっ( ´△`)!! 」」
ようやく結ばれた2人からのその後。
甘い蜜月でも待っているのかと思いきや、これがまた重っい。
何度でも言います。
イギリス貴族めんどくせー。
なんにせよエド、まだ頑張ってたのねと思う1冊でした。

お話は、二人がようやく結ばれてからその後の話。
エドの視点からスタート。
気持ちが通じ合ったとはいえ、礼にも仕事はあるわけで
イギリスと日本で離ればなれの2人。
エドからみた過去から現在が描かれております。
正直読みにくかった。
ただ、どれだけ礼が好きなのか。
クリスマスが待ち遠しいのか。その一言に尽きる。

後半は礼視点。
久しぶりに「なにいってんだこの人」のセリフが聞けて
なんだか懐かしい気持ちになりました。
長期の出張でイギリスへやってきた礼。
相変わらず絶倫なエドとの交合はエロスでマル。
エドしか見ていない礼にやきもちをやくエドはさすがと言うところ。
今回の大きな標題としては貴族との格差、立場の差。
想い悩みそれから~という部分が苦しかった続き

ここから後の二人の生活~な話も是非読んでみたいな

amazon限定ペーパーはエドの秘書さん視点のお話。
この秘書さんが何気に好きです。
頑張っていただきたい。いろんな意味でw

3

美しい世界

もっともっとこの本の続きが読みたい!たくさんの愛すべきキャラクターたちのお話が知りたいと思う作品です。エドワード・グラームズの英国貴族としての立ち振る舞いの大変さや中原礼の3歩下がって見守る姿が健気で本当に幸せになって欲しい二人です。でもこの作品を読む限り今後どんな困難が二人に降りかかっても二人の愛の力で乗り越えていくこと間違いなしと確信しました。それを踏まえた二人の幸せな姿を読んでみたいです。親しい友人に囲まれて幸せそうな二人の姿が見てみたい!3巻通して甘いところが少なく苦労の連続なのでデレデレした二人の生活を覗いてみたい!

3

白鳥とアヒル

パブリックスクール3巻。
レイのイギリスでの長期出張がきまり、3か月間エドと一緒に暮らすことになりますが、8年ぶりのイギリス生活で自分が混血児で忌み嫌われていることを改めて痛感させられます。

エドの親族からだけでなく、町の人間からもアジア人でエドにふさわしくないと思われていることを知り、エドとの将来に不安を感じるレイ。
一方のエドもレイを守りたいがために、逆にレイを監視するような接し方をしてしまい、二人の思いが噛み合いません。

愛しているだけではどうにもならない現実に葛藤する二人が切なかったです。
白鳥とアヒルは愛し合い続けられるのか。
白鳥の群れを飛びだした白鳥はどうなるのか。

エドに他を捨ててでも自分を選んでくれと言われ即答できなかったレイが現実味があって良かったです。
悩み葛藤して覚悟を決めた決断だからこそ二人の絆は強まったのだと思います。
困難を乗り越え寄り添い続ける二人が想像できます。

すごく素敵な作品でした。
そして魅力的な脇キャラ多いのでスピンオフも読んでみたい。

3

聖母マリアを思わせる美しい表紙

エドの激しいヤキモチにニヤニヤ。
レイは相変わらず天然タラシ♪

期間限定のラブラブ同棲生活かと思いきや、二人の関係は不穏な空気に。
新キャラの秘書ロードリーとデミアンが良い味出してました!

今回は8年前にも増してレイはヒエラルキーに苦しめられたけど、エドの、血統や権力や金ごと俺を愛して、の叫びが痛々しくて胸が抉られた。
魂で結ばれてる二人なら、乗り越えていって欲しい。
ぜひ結婚まで続編書いてほしいです!

4

お・重い。。

パブリックスクール卒業後の2人のその後を描いた短編集的な続編。
幼い頃の受け・レイの無垢な健気さに改めて泣けます。。
本編ではあまり描かれなかった攻めのエドの心の揺らぎや葛藤がより見えました。
それにしても攻めの立場やら血統やらが重過ぎて、萌えというより、苦しくなるくらいでした。。
一緒にいることがこんなに困難なのかと。。
攻めなりに受けを守りたいという気持ちからの行動だとは分かるのですが、正直何が正解なのかどうすれば良かったのか、いまいち良く分かりませんでした。。
ただ、これからまたどんな困難があっても2人で乗り越えていくのでしょう。

2

重い血の宿命と愛を抱いて

パブリックスクール第3巻となります。
レビューをするには、あまりにも苦しい物語でした。
読んでいて、心が大変痛みました。

物語は、3編で構成。
最後の「八年後の王と小鳥」が表題作となります。

◆「八年目のクリスマス」

エド視点。
イギリスで仕事をするエドと日本で仕事をするレイ。
両想いになってから八か月ぶりの逢瀬になる予定だった
クリスマスが、レイの仕事の都合で取消になってしまい…?
というのが物語の流れです。

幼いころの回想で、エドのために夜の庭で雪兎を作ってあげる
レイが、健気で愛らしくてたまりません。
エドがこの時どう思ったのかも読んで欲しいポイントです。

◆「つる薔薇の感傷」

ほぼジョナス視点。
2巻でレイがエドと再会する前に、ジョナスが2人の行く末について
どんな憶測をしたかが描かれています。
憶測よりも、はるかに素敵な結果になりましたね~♪

◆「八年後の王と小鳥」

≪あらすじ≫
年末から3ヶ月の間、イギリスのフラットで同棲することになった
レイとエド。
甘い3ヶ月の同棲が始まると思われましたが、レ続きイにとっては
苦しい試練の連続となります。
エドの親類からは、パーティでは東洋人、混血児、男娼と蔑視されたり、
挙句の果てには、エドとのあまりの価値観の相違に失望してしまったり…
果たして、レイとエドの行く末に、幸せな未来は
待っているのでしょうか…?

----------

冒頭は、あま~く物語が始まります。
もぉぉぉぉ、あまりのラブラブっぷりにあてられちゃいます><

この物語は、ほぼレイが主人公。
甘い年末年始の後は、レイのつらい試練が待ち受けています。


まず周囲についての試練。
これが一番大変なところかもしれません。
しかも、試練の種類は一つだけではないです。
エドは貴族・グラームス家の当主として、
親類皆から注目を浴びる存在でした。
それは、尊敬の眼差しもありながら、
若い有能な当主への醜い羨望もありました。
親類のパーティに呼ばれ、心ならずもそこへ赴くエドとレイ。
周囲の陰口は、予想していたとはいえ酷い!
猿ってなんだよ! こんな可愛いレイに向かって!
そして、無視するなー!
嫌がらせもするなっ!

エドがついに堪忍袋の緒が切れて、
皆に冷静に対応しながら、レイを連れて
パーティを途中退席したときは、胸がスーッとしました。
ザマア!
でも、もっと早くレイをあの嫌な視線達から救って欲しかった。
しかし、それはレイを侮辱することになると思ったのかな?
ここの場でのレイは驚くほど我慢強く、前を見据え、
静かに対応できたと思います。
――――眉一つ動かさず、敢然と辛苦に立ち向かえ
という、リーストンのノブリス・オブリージュの通りに
行動できたレイを誇らしく思うシーンでした。
400年の貴族の血統なんて、蹴散らしてしまえ!!


ストーリーのクライマックスとしては、脅迫され、ひとりで
エドを快く思わない親類の家に赴くレイの姿が描かれます。
必死でエドとの関係を国民に知られないよう、なんとかひとりで
解決しようとするレイの健気さに心打たれると同時に、
エドをどれほど大事に思っているかが、分かるシーンでもありました。
エドの親類に脅迫され、暴力を振るわれ、怪我をするレイ。
そこに助けに来るエド。


それから、レイが目を覚ました後のエドの長い独白が
あまりにも悲しく、孤独で、寂しく、心を打たれます。
まさにクライマックス中のクライマックス。
目頭が熱くなり、思わずポロリと涙が出ました。
まさか、エドの言葉で涙が出ようとは……考えもしませんでした。

まず怪我をさせたことを謝るエド。
危ないと知りながら、わざと親類の家にレイをひとりで行かせ、
レイ自身をテストをしようとしたことを告白するエド。
テストしたことは、確かに驚きましたが、そのあとのエドの
理由の告白で、それも納得できました。
エドはレイを守る。
全身全霊をかけて、これからもエドはレイを守っていくのでしょう。
でも、どうしても今回のようにレイを守りきれないときがあります。
それを知っておいて欲しかったのだと…。
グループのCEOとして君臨するエド。
しかし、レイがいなければ全て意味がないと言います。
この言葉は、あまりに重く、切ないです。
今の身分も地位も肩書も金もすべて捨ててでも、
レイの方がずっとずっとずっとはるかに大事だなんて…。

そして何より心を打った言葉。
「どうか捨てないでくれ…」
涙を流し、手を震わせ、レイに懇願したエド。
あのエドが!
「捨てないでくれ」などと泣いて縋って懇願している……!!
ああ……、世界の全てを持っているようなエドにとってみても、
レイの愛以外、何も意味がないのだと…何の価値もないのだと
言っている…。
あまりにも切ないエドの涙に、目頭が熱くなり、
気が付けば、涙がこぼれていました。
まさかエドの言葉で、泣かされようとは……。



この物語の厳しいところは、
「これにてハッピーエンド」と言えないところです。
レイは、これからもっともっと今以上に辛い目に遭うでしょう。
それこそ、この本で書いたこと以上に嫌な目に。
エドが全力で守ったとしても、苦しい環境が待ち受けている。

「レイとエドはこれからも幸せに暮らしてほしい」なんて
簡単な言葉は言えません。
レイはこれからも心が死んでしまうほどの苦難にも遭うでしょうし、
ひょっとしたら、怪我では済まされず肉体的に殺される危険にも
さらされてしまう訳です。

エドに血統も宿命も全てを捨てる覚悟があるのだとしたら、
レイも全てを捨てて、どこか、誰も知らないところで
穏やかに暮らしてほしいです。
2人が死ぬまで、こんな厳しい環境が待ち受けているなんて、
考えられないのです。
そんなの私には耐えられません。見ていられない……!!
どうか、穏やかな日々がレイにもエドにも待っていることを
望んでやみません……。


これからのレイとエドにどうか多大なる祝福を。
どうか2人をお守りください…。

7

あやちゅけ

yumi333さま

コメントいただき、ありがとうございます!
「素敵なレビュー」などと言っていただき、感激しております><
感動と興奮のある作品だったので、実はレビューを書いてから、
しばらく寝かせておりました。 とても冷静ではいられなかったので、
文章に感情をぶつけすぎるかもしれないと思ったのです…
でも、yumi333さまのように参考にしていただける方がいて、
ほんとうに嬉しいです。
是非読んでみてください!
楽しみにもして下さい。期待を裏切らない作品だと思います。
コメント、ありがとうございました!(^^)

yumi333

この作品に対するあやちゅけ様の愛を感じました。とても素敵なレビューを有難うございました。参考にさせて頂きました。私はまだ未購入ですが、必ず読むつもりです。楽しみ。

樋口流(&yocoテイスト)、なつかしの身分差もの

前2作は既読。
8年後ということで、30代になっている二人の話かと思ったが
(←個人的な期待?)実際には違いました。
パブリックスクールを出てから8年後、
『群れを出た小鳥』の最後からは8ヶ月後の冬、
二人が恋人になってから初めてのクリスマス〜の話。

最初に短編が二つ。

『八年目のクリスマス』
思いが通じて後遠距離恋愛中のエドが、
久しぶりに会えるクリスマスを前にウキウキしている。
しかし、レイは急な仕事でクリスマスに渡英できないと言いだし……
子どものようにかんしゃくを起こすエドだったが……

『つる薔薇の感傷』
エドがレイに会いに行く前の頃のお話。
かつてまだローティーンの頃に肌を重ねたジョナスにエドが語った思い、
そして時が流れて……

    *    *    *    *    *


格式の高い貴族で且つ国際的な大企業のトップのエド。
前作で幸せにまとまったとはいえ、彼らが愛を貫くのには
数多な試練があることは明らかなことだった。
貴族と平民、しかもレイは混血、更には近親相姦の二人。

ただお互いを愛しているとい続きう気持ちだけでは、どうにもならない現実。
常に衆目を集める立場、ハイエナのような親戚達、
現実を見据えて耐える強さが必要なことを、エドは身に沁みており
一方のレイは分からない。
その齟齬が起こす事件と、それを乗り越えてレイが
あらゆる物を捨ててでも互いを選ぶという覚悟に辿り着くまで。


傲慢で孤独で愛に飢えたエドは、樋口さんの作品の中でも
個人的にはとても愛おしいキャラクター。
その思い入れのある彼にとって、求め続けた愛を得られた
本作でのレイの決断はどれほど幸福なことか!

一方レイは、例によって樋口さんらしい「聖なる者受け」なんだが、
そして他の作品に比べると、イライラさせられずにいたのだが
やっぱり「君は25歳にもなってバカなの?!」と言いたくなるような
あるいは、わざとなの?小悪魔なの?というエピソードがあり、
やはりイラッとしながらでも頁を捲る手は止まらない。


昔の少女漫画、あるいは少女小説のようなコテコテな樋口節は健在。
レイが親族にいびられるシーンや、監禁されそうになるシーン、
一方で彼の味方になるかつてのパブリックスクールの仲間達、
エドの秘書など、典型的で期待を裏切らない感じ。

そういう意味で、面白いのだが新鮮にハッと心を打つという感じでは
個人的にはなかったのだが、シリーズ中初めてボワッ涙が溢れたのは
最初の短編『八年目のクリスマス』の最後。
愛に飢えたエドがレイを得たことによって、自らの柔らかな心に
気がつきそれを受け入れることができるシーンに、涙がこぼれた。

貴族に対して葛藤的なアーティストのデミアン、
彼のキャラクターはなかなか面白いので、
彼を主人公にして、エド達のその後が見られるような
さらなる続編を希望。

コテコテのある種レトロとも言えるテイストに、
非常に綺麗でスタイリッシュなyocoさんのイラストが
現代的な魅力を添えているのが、また魅力的。

10

礼が試されるの巻

今回収録されているのは
「八年目のクリスマス」(小説Chara Vol.33掲載)
「つる薔薇の感傷」(Char@ Vol.20掲載)
「八年後の王様と小鳥」(表題作/書き下ろし)

●「八年目のクリスマス」
イギリスと日本で遠距離恋愛中のエドが、クリスマスに礼に会えるとウキウキする。でも急な仕事の都合で礼はクリスマスにイギリスへ行けなくなり
エドがっかり……でも、その代わりもっといいことが、というお話。

●「つる薔薇の感傷」
エドと礼がくっつく前、エドが日本へ礼に会いに行った頃のお話。
エドが礼に思いを告げることに対してあまり良く思っていないジョナスに
エドが、いかに礼が大切で自分にとって必要で…ってとこを訴えるお話。

上記に関しては過去に掲載されたものですのでこの辺で。

●「八年後の王様と小鳥」
表題作は「八年目のクリスマス」の続きになります。
序盤で、礼が貴族であるエドと恋人であると改めて実感し、ちょっと不安がよぎったり、使用人やオーランドから「レイをよく思わないエドに群がるハイエナ」の話を聞いたりで、今回の一波乱はこの辺りかな?という感続きじがムンムン。
今回のテーマは「貴族(白鳥)と混血児(アヒル)は愛し合えるか?」ってとこでしょうか。

案の定、礼が辛い思いをします。
知人のブライトには血統の話をされ、パーティーではエドの親族から、男娼だのエドが飼っているアジア人だの侮辱され、反撃してくれたエドがさらに親族から侮辱の言葉を吐かれる。エドが一族からの風当たりが強いのは、東洋人の血が混ざった自分という恋人がいるせいだと悩む礼。予想通り。
ほんでエドと礼が一緒にいるところをタブロイド紙にすっぱ抜かれ、礼にとっては辛い記事の内容にショックを受ける。
エドは礼と一緒にいるためなら何もかも捨てられる…と言いますが
エドに何かを捨てさせないと叶わない恋であることに苦しみます。

あれ、そういえば前巻までで、エドは礼を迎えに行く準備ができたから、日本に行ったんじゃなかったっけ?準備できてなくない?
誰にも文句言わせない的なこと言ってなかったっけ?まず身内が全然ダメじゃん!

エドに会社の役員から降ろされたチャールズに呼び出されて
誰にも告げずに会いに行く礼。ちょっと迂闊です。危ない予感しかしないのに。
完全に短絡的になっているチャールズから殴られ、監禁されそうになりますが、そこはエドが助けに来てくれます。

エドが仕組んだわけではないですが、礼が危険な辛い目に会うことが予想できた中で、エドが対処しなかったのは、エドなりの理由がありました。
いつか世間に礼との関係が知られることを予想し、“エドが選んだ東洋人の男性”として生きて行くこと、それを全て理解した上でエドを選んでほしいと。

エドの恋人であることで、礼が好奇の目にさらされること、蔑まれたり
反対に擦り寄ってくる者がいるであろうこと。
礼はフェアではないと思っているが、エドと関係があることで礼の仕事が
うまくいくこともあること。
そんな現実を礼に突きつけます。
エドには自分の血統は変えられないし、根本的な解決はしてやれない。
礼にはもっと楽に愛し合える人がいるであろうけれど
それでもどうか自分を選んでほしいと心から訴えるエドに心を打たれました。
礼はきっと辛いだろうけど、愛する礼に辛い思いをさせるエドはもっと辛い。
やっぱりエドの執着と愛は大きかった!

最後はちょっと礼も強かになり、腹をくくったよう。今後もっと嫌な思いをするだろうけど、どうかエドと末長くお幸せに。

好きなシーンは、2人が生活するフラットにて。喧嘩の途中で、時間の都合で仕事に戻らなくてはならなかったエド。玄関まで見送りに行かなかった礼のところまで戻ってきて「レイ、仲直りのキスは?」と。
偉そうな態度でしたが、やっぱり険悪なまま離れるのは嫌だったんだねエド。
ちょっと可愛かったです。

あと前巻でも思ってましたが、エド絶倫。絶倫だよ社長。

おまけのショートストーリーは表題作であまり感情の見えなかった
エドの秘書・ロードリー視点でのお話。
礼の事となると子供っぽくなるエドと可愛らしい礼の恋を支えていることに
喜びを感じているようで、嬉しかったです。
何考えてるのかあんまりわかんなかったからね。

なかなか中身の濃い作品でした。あのシーンどこだっけ、と読み返した時に
あれ、このシーンこんだけのページ数だったの?とびっくりしました。
ページ数の割に内容が詰まっているというか。
やっぱり樋口先生の技量なんだなぁと。
また続編があったら読みたいけど…もうないかなぁー。
今回2人とも辛い思いをしたので、ただただ甘々な2人が読みたいです。

22

ほほん

すみません。
表題作「八年後の王と小鳥」の間違いです。
大変失礼いたしました。

この作品が収納されている本棚

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