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1945シリーズのなかで、二人は実に健全な男子という印象。
家族もいて愛されて育った、すこやかで明るいペア。小気味よく読み進めました。
六郎が恒に惹かれるのと同時に読んでいるこちらがときめきます。やんちゃだけど賢く腕が良い、星のように眩しい子。
屈託無い素直な性質がシリーズの中でも珍しく、それが一層戦場との対比で切なくはなりました。
戦争でなければ出会ってない二人。
尾上先生が仰るように
戦争は書かれていない。戦争時代を生きていた若者たちが書かれています。
六郎が死にかけた恒を抱えて「戦争より航空機よりおまえがいい」と禁句を言います。
当たり前に言えない時代を生きているふたり。
「鳥が還る日」では恒の父、星の視点で書かれています。息子の生還を心から喜び、六郎とのことも受け入れる寛容さに感動。
「命の尊さを誰もが分かる世の中になった」と、それ以前の価値観を否定してくれます。
六郎の月光と名付けた花火をみて泣く恒の涙のわけ
誇らしさ、悔しさ、無念さ。月光を愛した恒に、盛大に散っていく花火、月光はどう慰めてくれるのだろう。
ふたりの残りの人生が笑顔で過ごせますようにと思わずにいられません。
戦闘機の操縦士と偵察員。戦時中のお話で、命をかけて空を飛ぶ2人のお話です。
花火師の息子の六郎。操縦士として英雄であり有名人な恒。
命令によって新しい特別な機体に乗るペアとなった六郎と恒。おおらかで懐の大きな六郎が、短気で喧嘩っ早いが操縦士としての才能がある恒に振り回されながらも絆を深めていく様子が丁寧で、本当に読んでよかった!
操縦士と偵察員って、2人で空を飛び、互いに命を預けている特別な関係なんですね。
戦争ものだと辛いかなーと少しびくびくしながら読みましたが、時代が戦争中という中でも、綺麗なものは綺麗と感じたり、愛おしく思ったり、日常を過ごしたり、青春が詰まった作品でした。
ラバウルの五連星とも称されるエースパイロットの琴平恒が厚谷六郎とペアを組み複座の戦闘機月光で活躍する様が描かれる本作。
キャラ文庫で復刊されてからのシリーズ3冊目。(元はこれが2冊目)
「天球儀の海」の主役である琴平希のすぐ上の兄なので、希の話題はちらちら出てきますし、ラバウル航空隊の話なので「蒼穹のローレライ」の秋山整備員が出てきます。シリーズものはこの重なっている部分が楽しくもあります。
恒の売られた喧嘩は買う性格や天真爛漫な様子は子供っぽくもありますが、その分怪我をしたとき病気をしたとき愛機が沈んだときとの差が著しくて、気付けば惹かれている自分がいました。
南国の空の美しさと相俟って戦争という残虐で愚かな行為がつぶさに描かれています。
ペアである六郎との信頼関係も、戦況が悪化するなかでの焦燥感も諦念も、なにもかもが鮮明です。没入して読みふけり、BLであることを忘れてしまいます。元のHolly Novelsというレーベルの懐の深さを改めて感じました。
本書は、本編である表題作のほか、「雨のあと」「約束の月」「鳥が還る日」「青のかたみ」の4編SSが収録されています。このうち「青のかたみ」だけ書き下ろしです。
すべてが本編の後日談で、あたたかい良作揃いです。二人の関係性を父と語り合う「鳥が還る日」が印象的です。また、「青のかたみ」では、これからがあるから思い出の品は何もいらないと言っていたのに、あの線香花火だけは別だったというのも、今じゃなきゃだめだと騒ぐ恒の願いをきいて行動する六郎の様子もとてもよかった。
牧先生のイラストも本当に素晴らしいです。途中コミック仕様になっている挿絵があり、コミカライズの一環かと思っていたら、コミカライズは別の作家さんが作画をされるのですね。
1945シリーズ、復刻の第3弾。
月光ペア、表紙の笑顔が眩しい。
六郎がラバウルに着任してすぐに喧嘩をしていた恒に遭遇し、後にペアとして月光のパイロットになることに。
とにかく飛行機が大好きな恒が守りたいのは内地にいる家族。
1番になりたかった恒を1番にした六郎。恒のペアという言葉に込められる強い想い、初めに出てくる鷲の番の描写からのペア、番のようなものっていう表現が本当に好きです。
後半の六郎の必死な想いと叫びも、花火の名前も。
書き下ろしもすごく良かったです。六郎との想い出の物が大切でパイン缶の空き缶も拾いに行きたい……。そんな恒がかわいいです。
花火職人の家の息子(六郎)と琴平家の三男(恒)
シリーズ新装版3巻。恒は2巻の主人公(希)の兄。
本のあらすじや帯に書かれてあること以外前情報なく読んだ。
『蒼穹のローレライ』『天球儀の海』既読。
以下既刊の内容にも触れる部分がある。
まず、『天球儀の海』で琴平家に恒の戦死通知が届くことは確定事項なので、読み始めるのをちょっと躊躇った。
主人公たちが複座の戦闘機の搭乗員なら、最悪二人とも死ぬし、辛い死別が描かれるかもしれないし…行方不明で戦死とみなされた可能性もあるけど、さすがに二冊続けて戦死→生存ルートはない気がしたので望み薄だと思った。
読んでいてほんとうに怖かった。
六郎が絶望したとき、私も絶望した。
絶望と緊張と弛緩。涙が溢れる。
叫びだしたいような数ページは、強烈に胸に残った。
その場面に心が持っていかれたので、他の部分の感想がうまく出てこないのだけど、
恒も六郎も、戦争がなければごく普通の人生を歩んでいただろうなというのはすごく感じた。
恒が好きな航空機と、六郎が将来打ち込むはずだった花火の、現状…
六郎が感じた理不尽はとても印象深かった。
恒がボロボロになっても戦う理由が、内地の家族を守りたいからなのを知って前巻へのモヤモヤが少し再燃。
いっそのこと、坊ちゃんは恒に一発殴られたらいいのに。やっぱり家族を蔑ろにして二人の世界…てのは納得がいかないと思ってしまう。
でも、恒は坊ちゃんを殴らない気もするんだ…。六郎を「ペアだ」と言いきった恒なら。
それから、斉藤。斉藤のことは、いろんな意味で許せない。奴のために涙してしまった。悔しい。
何かが違っていたら気の置けない友人になってたろうと思うのがまた悔しい。
斉藤視点の小話とかあったら読みたい。悔しい。
琴平父と恒の遺品の短編は楽しく読んだ。
父は良いキャラしている。前巻からもっと出てきてくれたらよかったのに…
紙縒を大切にとっておいた恒の気持ちは分かる気がする。あれは確かに、とてもとても特別だった。
あの頃は全く見えなかった未来が、日常の顔をしてやってきて、この夏はあの花火を私もやりたいなと思った。
