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ううう、すごかった。すごく好きです。
元々刑務所ものが大好きなもので、刑務所というワードが出て来た瞬間から、これは…木原先生の刑務所ものが読めるぞ…!と、非常にわくわくしていたのです。
はー、その期待をポンと軽く超えて来る作品でした。
これまでパラスティック・ソウルシリーズを4冊追いかけて読んで来て、木原先生の引き出しの多さに毎巻驚かされていたのですけれど、過去4作の設定もしっかりと踏まえつつこうも魅力的にカラーが異なるお話が書けるのかと…素晴らしいです。
過去作と比べると、とっても甘くて幸せなお話だと思うんですよ。
ただそれは木原先生作品の中での甘くて幸せなので、全ての方の感覚に合うかどうかは分かりかねますが、少なくとも私は、映画館で上映されていてもおかしくないほど糖度と純度が高い極上のラブストーリーだなと感じた1冊でした。
なんでしょうね。やや映像的に感じたと言いますか、文字を読んでいるのにキャラクターの表情や感情だったり、ここはこんな色味なのかな…など、読んでいる内に頭に映像が浮かんで来て、挿画で描かれた部分以外を想像しながら読み進める楽しさが味わえたのです。
精神体「0」に寄生され、収監され監視されているやんごとなき身分の赤毛のビルア種の青年と、彼の監視を担当することになったケイン。
当初は退屈で仕方がなかった、全裸の青年の監視をするだけの勤務時間が、次第に心のどこかがざわつく何かに変化していく様子が描かれていきますが…これまた木原先生にやられましたね。
2人の間には物理的にも大きな壁があり、こちらからは見えてもあちらからは見えない。
こちらは声も何もかも聞こえているけれど、あちらには何も聞こえない。
壁越しの日々のやり取りを見守る内に、名前も顔も知らない「ベイビー」に子供のように懸命に話しかけるH3が愛おしくてたまらなくなってしまうんです。ケインも読み手も。
2人にしか分からない穏やかな時間。
名も知らぬ相手からの無条件の優しさを感じて幸せそうなH3。
ただ、そこに絶対に訪れるタイムリミットが設けられているというのだから、パラスティックシリーズでは過去一甘い2人だというのに、その倍以上の切なさが漂ってくるのが上手いです。
どうか幸せになってほしい。でも、一体どうなってしまうのか?と、どうしようもなく惹きつけられました。
結末を書いてしまうと面白くないと思うので書けません。
けれど、悪くはないどころか「これはやられたぞ」と、見事な発想に驚きを隠せませんでした。キャラクターに奥行きを持たせるのが上手すぎる。
本当にどの作品を読んでも魅了されてしまいます。もうすごいとしか。
次はどんな味付けになるのかが楽しみですね。
ホープタウン出身のケインは都市部で刑務官をしている。友人もいるが出自を隠しているため心を開けない。
ある時仕事で配置換えがあり、地下階の独房に収監している囚人の担当となる。
最重要人物の息子であるため肉体の保護が鉄則、24時間体制で交代で囚人を監視する必要があり、ただし囚人側から刑務官の姿は見えない。
彼は絶滅危惧種となったOの疑いがあり、三十歳になると排出されると言われている本体を殺すために12年収監されているのだった。
刑務官と囚人の恋です。殺される(時期が来れば精神体のみを殺害、肉体は保護する)ことが前提の収監。
囚人は独房の中で視聴可能なドラマを見続け、見終わったら続きを刑務官にリクエスト。パネルを通してそれに応えるだけのつながりだったのが、ケインが音声をオンにして囚人のひとりごとを聞き、食べ物のアレルギーを考慮したり、体調の変化をみて薬を差し入れたり、あくまでも担当業務の範囲内で心配りをしたことがきっかけで、囚人の方も自身の環境の変化に気が付く。
どこのだれかもなにも分からないけれど、やさしくしてくれる人が居るということに感じ入り、「ベイビー」と勝手に名付けた相手に感謝し、素直に好意を告げる。
会話はできないから、囚人のひとりごとをきいて、ケインが話す(こちらもひとりごと)だけという関係が続くわけなのです。
この、点と点が交わる感じ(厳密には交わっていないともいえる)に唸りました。うますぎる。
ケインには仕事以外の現実の世界もあり、心を開けないそちらの状況も丁寧に描かれているからこそ、双方がひとりごとを言い続ける独房での時間が際立ちます。
ここからどうなるのだろうと。関係も膠着しているし、時間的な制限(しかも時期がくれば殺害=消滅)もあるし、ケインも焦るけど、読んでいるこちらもドキドキして目が離せない。うますぎる(2回目)。
そして、特筆すべきは「絶滅危惧種」です。あのOが30年前に滅んだというのです。
種族のことをケインは学校の教科書で知ったというのです。
ついこの前読んだ「endless destiny」で不穏な終わり方をした「Rainy」。あのあと何が起こったのかわかりませんが、そういうことになったようです。
時の流れがおそろしいです。
この「love escape」は至って平穏なお話で、「endless destiny」で感じた世界の崩壊を予感させるような気配は無いのですが、ここに至る空白の時間が気になります。本書にもさらっと「O狩り」などという言葉が出てきたり、この囚人も実父に疑われてOを吐き出させるために水攻めに遭ったり挙げ句12年収監されてますし、裏側では何が行われているのか。
なんとなくさらなる番外編、続きもありそうなので、Oが復権?の機会を虎視眈々と狙っているかもしれないし、今後も楽しみに待ちたいと思います。
肉体を持たない精神体のみの種族"O"。
5歳児のビルア種のみに寄生し、30歳で次の身体へ乗り移って生き続ける種族。
こんな"O"のお話もあるんですねぇ(*´∀`*)
刑務官のケインと、ケインに監視されているH3ことヨシュア。
ヨシュアは、"O"に寄生されており、フェードアウトする半年後まで、独房で過ごすという。
ヨシュアは自傷防止の為、独房で全裸。
素直でピュアで、とても可愛い人。
ヨシュアからはケインの事、何も分からない状態で、こんな状況でどうやって交流してBLにもっていくのかしら、なんて思っていたんですけど。
読んでいくにつれ、普通に自然に惹かれあっていて、ケイン視点なので、ケインに共感して悶えました。
ケインが惹かれているのはヨシュアではなく寄生しているH3であり、フェードアウトの時は刻一刻と近づいていて。
これ、どーなるの!?大丈夫!?
ちゃんと幸せになる!?と、ドキドキさせられました(゚A゚;)
だもんで、2人の迎えた結末に、胸を撫で下ろして、心の底からよかった~"(ノ*>∀<)ノ
そういう事だったのかぁ。
これも"O"のお話だわねぇ。
先生、凄いですね。
書き下ろしのヨシュア視点は、とっても甘くて優しくて、随分と糖分を補給させて貰いました(≧∇≦)
イラストはカズアキ先生。
全裸のヨシュアと制服姿のケインが素敵。
ラストのえちシーンのイラストは、最高に可愛くて幸せです(*´˘`*)
木原音瀬先生の作品はエグくて苦手っていう光の腐女子にもオススメできる作品です。
かなり特殊な設定のファンタジー作品なのですが、まだ読んでない方は「パラスティック・ソウル」の1~4巻を読まないと壮大なネタバレになってしまうので、そちらを先に読むことをおすすめします!
ただし、このシリーズの1~4巻は全体的に暗くてエグくて長いので「ラブラブ甘々なストーリーを読みたい!悲しいBLは絶対に無理!」って人は、すっとばしてこのお話だけ読んでも良いかなと思います。(個人的には1巻が1番好きなので最初から読むのがオススメですが!)
囚人と看守の恋です。読む前は「会ったことも喋ったこともない相手に恋をするなんて出来ないだろ~!」と思っていたのですが、そこはさすがBL界の重鎮木原音瀬先生!!!無理な設定も圧倒的な文章力でねじふせてきました。
圧倒的な文章力に脱帽です。主人公2人が純粋でセリフがちょっとダサいけどロマンティックで、2人が愛を育んでいく様子が素敵な作品でした。
「僕の脳は、何も考えないことを求められている。それでも、君のことを考えている時、僕はたまらなく幸せな気持ちになるんだ。なぜだかわかるかい?
君がね、僕のことを気にかけてくれているからだよ。ありがとう、ベイビー」
「パラスティック・ソウル」シリーズ未読の感想です。特殊設定のお話ですが今作だけでも問題なく入り込めました。
木原さんの作品は読者も身を削りながら読むようなところがありますが、今回はご本人が仰る通り“当社比最高糖度”、ドラマティックで切ない完全なBL。
特殊な状況で監視を余儀なくされた美しい青年とスラム街育ちの看守、壁を介した交流と恋の物語です。
神作「さようなら、と君は手を振った」読後だったので、もっと泥沼を期待してました。ここで地獄が起きるんでしょ?と予防線を貼りながら読んでいましたが、ヨシュアが見続けていた恋愛ドラマのようにロマンティックに徹したお話でした。
鏡越しのやりとりや身分差、直球疾走劇にはクラシカルな趣すらありました。
書き始めたのは一昨年との事なので、連載中にコロナ禍に突入したのですね。
世界中が常にない混乱の中書かれたのだと思うと、本を手にした時ジワジワとくるものがありました。
見えるけど直接触れられないことは現実のリモートに、相手との間にある透明な壁はプラスティック製の仕切り、そして遠くに行きたいという気持ち。お話と現実がリンクした感触があります。なんて言うとファンタジーに陳腐さを持ち込み、大袈裟に言いすぎかもしれませんが、ケインの切なさや逃走への願望が少なからず身近に感じられる今の私達ではないでしょうか。
美しい姿は見えても言葉は交わせないこと
相手の寿命を知っていること
性格と外見は全くの別人と割り切れないこと
相手が弱っても何かを問いかけられても声を掛けて寄り添うことが出来ないこと
初めは特殊な部分に魅せられ、情が湧いてからは苦しくなるケインの一喜一憂の描写が切なくてもう素晴らしかったです。
見えないベイビー(ケイン)に向けたヨシュアの愛と、ピュアでストレートに響く台詞には心がふわふわします。
姿が見えなくても優しさが伝わってくれる、側に居ることを感じてくれるなんて、読んでいて温かくなってケインと一緒に嬉しくなりました。些細な気遣いに気付いてくれる人は素晴らしいし、こちらも嬉しいし、なかなか気づかれないものだから。
念願の再会が叶ってもずっとケインをベイビー呼びなのが可愛くて甘くって堪りません。
脇キャラも洋ドラマ風にカラッとしていて楽しかったです。
魂が色んな人を媒介して一人の女性と恋する映画「EVERY/DAY」、また某有名歌手のMV final distance、等々この辺りの世界観が好きで、今作ではそのエッセンスが感じられて沸き立ちました。
これ木原さんだよね?と背表紙確認するくらい、毒控え目で甘々な洋画テイストは、先生の新しい一面なのかもしれません。入門書のひとつとしても。