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アメリカの哲学家ジュディス・バトラーの『ジェンダーをほどく』でこんな一節を目にしたことがある(大概):
「……(ヘーゲル)は、意識が何であれ、自己が何であれ、それは他人における自分の反映を通じてしか自分を発見できないと指摘している。自己になるためには、自己を失う経験をしなければならない。そしてこのような喪失を経験した後、決して「かつての自分」に戻ることはできない。しかしながら、他人における、あるいは他人として反映されることは、意識にとって二重の意味を持つ。意識は反映を通じて何らかの形で自分を取り戻すことができるからだ。しかし、その反映は外的なものであるため、取り戻した自分自身もまた外部からのものであり、意識はさらに自己を失うことになる。このように、意識と他者との関係は永遠に矛盾しているのだ。自己認識の代償は自己喪失であり、他者は自己認識を保障することも、破壊することもできるのだ。明らかなのは、自己は決して他者を離れて自分自身に戻ることはできず、この「関連性」が自己を形成する要素となるのだということだ。」
この言葉は、「百目鬼を失くせなくなる自分」を恐れている矢代、「百目鬼を受け入れることは自分自身を否定することになる」と言う矢代を思い起こさせる。
「意識は反映を通じて何らかの形で自分を取り戻すことができる」
「自己認識の代償は自己喪失である」
「この『関連性』が自己を形成する要素となる」
30余年の人生で、「愛」と「SEX」が切り離され、惚れた人とやったことがない矢代は、この二つが同一人物に現れた場合の対処法をまだ身につけていない。そして現在、その状況が彼の前に現れたのだ。百目鬼と結ばれて、矢代は間違いなく百目鬼の愛と優しさを感じている。
だが、まさにこの熱い愛情が彼を恐れさせるのだ──百目鬼が自分のために簡単に死にそうになること、百目鬼を失くせなくなること、それによって「自分」──30余年かけて嘘つくまで築き上げてきた「自分」──を否定しなければならなくなることを恐れているのだ。
矢代にとって、「百目鬼に対する自分の感情を受け入れる」ことと「百目鬼の愛を受け入れる」ことの両方が、自己喪失を意味し、築き上げてきた「自分」を失うことを意味するのだ。しかしながら、自己喪失こそが自己認識のための必経の道であり、自己になるためには自己を失う経験をしなければならないのだ。
この葛藤も、矢代が百目鬼を本当に愛していること、そしてこの愛によって変化を生み出していることを裏付けている。本巻の終わりに出てくる「ホイホイついてくる雛鳥」の比喩は、言葉にできないほどの胸の痛みを与えてくれる。この胸の痛みを生み出す心情こそが、この作品の素晴らしいところであり、読み手を止まらなくさせてしまう魅力なのだ。
第1巻から、矛盾という言葉がとても印象的に残っています。
矢代と百目鬼。
彼らの関係性は簡単には進展しないと思っていましたが、これほどまでにもどかしくせつないのか…と胸がいっぱいに。
百目鬼が矢代を想えば想うほど、矢代が百目鬼に新たな感情を覚えれば覚えるほどに、彼らがこれまで生きてきた中でついてしまった深い傷あとがフラッシュバックして邪魔をする。
10以上も年下の百目鬼にここまで一途に想われ、自身を構築するひとつひとつの部位をやさしく丁寧に確かめるように全身で愛され、己の感情に戸惑うばかりの矢代。
この気持ちを受け入れたいけれど、もし受け入れてしまったらいったい自分は。
矛盾した気持ちと激しい葛藤が渦巻く、痛みを感じる心理描写が本当に素晴らしかったです。
矢代という1人の男の深みから抜け出せそうにありません。
何気なく側に置いていたはずの男が、いつのまにかどうしようもなく心を乱されてしまう存在になってしまっていた。
骨太な裏社会関係はもちろん、巻数が増す毎にBL面もじわじわと変化を魅せてくれる、非常に読み応えのある作品だなと思います。
BL的には大事な巻になるかもだけど、それより印象に残ったのはヤクザものの魅力についてでした。
あちこちで男惚れが発生してて、血生臭いのに熱くキラキラしてて、なるほど!っていう。読み手でハマればその沼は深そうだとか、作り手は描き応えがありそうだとか。どこまでも濃くできそうな世界ですごいなあと。
肝心の矢代と百目鬼の関係は、やっとここから第一歩、しかしここから長そうだ…という感じでした。矢代は殻を壊されて、即、より一層分厚いシェルターを築いてしまったみたいな。
それでもまだ影山は特別だったんだ…てとこが切ないです。正直、私は矢代を幸せにするのは影山であって欲しかった。本気で傷めつけて欲しいときに抱きしめてくる相手なんて、一緒にいるのは苦しすぎる。勝負じゃないけど、分が悪いと思っちゃう。それなら影山のように、何もせずそばにいてくれるだけの相手の方が楽。
久我に言われなければ気付きもしなかったことを矢代に突きつける影山のセリフは、何かしらの感情が乗ってたのかな。矢代にだけ一方的に致命傷を与えていたなら、それもまた切ない話だと思いました。
はぁ〜
一気読みしてため息ですわ。
萌え、感動、切なさやるせなさ、痛み、感嘆、色々な意味でのため息です。
ヤったら組みを追い出されるって分かってたから、絶対ヤらないだろうと思ってたんですよ。
なのに、なのに…ヤっちゃったよぉ。
や、最高だったよ?
百目鬼の全身の愛撫からの挿入ね。矢代が戸惑いを隠せないのが良かった!
欲しいと言ってください、っていう焦らしも良かった!
本当は痛いのが好きなんじゃなくて、痛いのが好きじゃないといけない環境だったって自覚してしまったんでしょうか、矢代は。
これからの矢代が心配だなぁ。だから百目鬼に側にいて守って欲しいけど、それを許さない状況に歯噛みしました。
それとこの巻では、ヤクザ同士の濃い関係も描かれていて萌えさせていただきました。
義理とか盃とかで縛られたヤクザ社会の男同士の関係ってモラルは別として、萌えるなぁ。
男の嫉妬もまた良し。
こんな展開今まで聞いたことがない!!
BL好きの予想をはるかに超える圧巻のベットシーン。
ベットシーンだけで48ページ以上。
ほぼノーカットと思えるほどの長さ。
行為の過程が丹念に描かれているので、2人の絡み合い、影響しあう心情が、繊細に丁寧に切なく浮かび上がってきます。
何度も読み返して2人の心情を深く読み味わうのも良し、一読でショックに打ちのめされて先を急ぐのも良し!!
抗争の中で明らかにされる脇役の過去も驚きでした!