• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作別れる理由

藤木瞬、親会社から出向してきた次長、25歳
園田真啓、大手商社の子会社勤務、30歳

その他の収録作品

  • 彼の居る場所(書き下ろし)
  • あとがき
  • 新しい部屋

あらすじ

本社から出向してきた年下の上司・藤木のサポートについた園田。無愛想で社交辞令も言えない彼になぜか懐かれ、ある日、実は一目惚れだったと告白される。人付き合いが希薄で万事にこだわりのない園田は、彼の情熱に押され、東京に帰るまでの期間限定で付き合うことにするが……?

作品情報

作品名
別れる理由
著者
安西リカ 
イラスト
暮田マキネ 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784403525902

マンスリーレビューランキング

37

4.2

(82)

(41)

萌々

(28)

(10)

中立

(0)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
18
得点
347
評価数
82
平均
4.2 / 5
神率
50%

レビュー投稿数18

No Title

東京から赴任してきた藤木くん年下攻め、グイグイいくじゃないですか。恋したら一途!いいですねぇ。こういう攻め大好き。 それに対して人との関係は移ろうものと期待しない園田さんの切ないことよ。執着しないように努めて意識しているのが切ない。藤木くんが東京に戻る時の2人のやり取りはハラハラした。 拘らないようにしていた園田さんに訪れる強い衝動が良かったそれにしても暮田マキネ先生の挿絵も天才〜!!!コミカライズしてほしいぐらいです。すてきだった

0

永遠に見ていられる可愛い二人

可愛い二人でした。
地方の小さい会社に勤務する園田は、本社から出向で来た年下の上司である藤木のサポートを任される。というところから始まるお話で、上司(といっても25歳)とそのサポートという立ち位置から親しくなって、恋愛に発展します。
このお話のキーは、主人公の園田が子供の時、親が転勤族で引っ越しばかりだったために友達ができてもすぐにお別れだったことや両親が離婚したことが、その後の性格形成に大きな影響を及ぼしていた、ということです。
どんなことも受け入れて、その場を和やかにする。「いつもにこにこ、ふんわりやさしく」という藤木の弁がよく表しています。「にこにこ攻撃で相手を無害化する」とも。(羨ましい)
一方で執着を持たない習い性から、告白されて付き合っても相手の方から離れて行くばかりだったり、家に遊びに来る三毛猫をかまって餌をあげたりしても、名前も付けないしそれ以上は近付かなかったり。
そこへ藤木が「それでもいいから」と粘り強くアタックしてデートして恋人関係になって、徐々に園田の気持ちが変化していくのがすごく丁寧に描かれていました。
一番顕著だったのが嵐の夜のエピソードで、ここの場面は本当に大好きで繰り返し読みました。
この時に園田は自分の気持ちの変化に気が付くのですが、それを受け入れたくなくて、いつか東京に帰ることが分かっている藤木と別れるのがつらくて、シャッターをおろすように態度が硬化します。この辺りは本当につらかったですが、前述のように園田の生い立ちや性格等理解できるので、反発は感じず見守るように読んでいきました。

「嫌いな男」「隣の男」に続いて、安西先生の本を読むのは3冊目になるのですが、いずれも本の3分の2が表題作(本編)で、残りの3分の1が主人公を本編と入れ替えての後日談、という構成になってます。たまたま? 毎回?
本書は「彼のいる場所」というお話がそれに当たりますが、あとがきの後ろに「新しい部屋」というSSが付いてました。
後日談の後日談ですが、このSSが良かったです。
この二人はとても可愛くて、永遠に見ていられるなと思いました。

1

激しさはなくても

普段あまり小説は読まないのですが活字読みたい欲に駆られ、ランキング上位にあって気になっていたので手にとった作品でした。

本社から出向してきた年下上司・藤木と、流され上手な園田の恋。
関係の始まりから勢いのままに突っ走る藤木と、それを受け止めながらもどこか他人事な園田の温度差に妙に胸がざわついて、ずっとハラハラしたまま読み進めていました。

期限付きで付き合うことを決めたときは恋愛感情など抱いていなかった園田ですが、一緒に過ごしていくうち本当に藤木に惹かれていくので、彼の中にある「距離と気持ちの法則」にも変化があるのだろうなと思いきや。
藤木が東京に帰ったらこの関係はおしまいという考えを頑なに変えようとせずすれ違ってしまうことに。

藤木のことをもっと信じてもいいんじゃない…?と思ってしまうくらい、最悪な結末しか考えていないことが悲しくて、胸がギュッと苦しくなりましたが。
ツラい別れとその先に待つ虚しくなるようなやり取りを幼い頃から幾度となく経験した園田にとっては、大切に想っているからこそ失うのがこわくて踏み出せない部分があるのも理解できました。
そんな自分のことを冷静に分析できているというのも切なかったです。

でも最後には自分自身で殻を破って藤木のもとへと向かい、しっかりと心を明かすことができて。
色々なことを諦めてばかりだった彼がはじめて諦めたくないと思ったその恋が、ふたりにとって幸せだと思えるところに着地してくれて本当に良かったです。

静かに流れていた日常を変えた緩やかな恋なので大きな波や激しいドラマみたいなものはありませんが、だからこそそれぞれの心情が際立って強く心を掴まれた作品だったなと思いました。

0

全てにおいてローテンションな人なのには理由がある



期間限定で出向してきた上司と有能な補佐役

東京の親会社から出向してきた藤木(攻め)の補佐に入ることになった園田(受け)は、少しづつ打ち解けてきた頃、
出張で泊まるはずの部屋がツインでなくダブルだったというBLあるあるをきっかけに告白されます。今まで告白されては付き合うというのを繰り返してきた園田は「どうせ年末には東京に帰る」と付き合うことにするのですが‥

大きな事件がある訳ではありませんが、淡々とした毎日の中で、年下らしくぐいぐい来る藤木に絆されていく園田がどういう理由で執着を持たないのか、どう着地するのか、哀しくなったり、応援したくなったりしながらしみじみと読みました。

藤木は25才の男性ですが、一目惚れした好みど真ん中の園田をぐいぐい押して手に入れるさまはかわいいです。

一度懐に入れたら深く付き合う藤木と浅く広く付き合う園田。園田のは本来の気質でなくて、子供の時のトラウマから執着するたちだからこそ執着しないことに執着した結果だと思うと切ない。

幼少期からの転勤生活の連続で友人関係が保てず、両親も離婚し、すっかり拗ねてしまった結果、来るもの拒まず去るもの追わず、
いつもにこにこふんわりやさしく、
ゆるっと流れに任せて生きてきた園田が自分から動いて、藤木の元彼にも流すのではなく言い返して、藤木に甘える姿を見た時には、ちゃんと自分を出せるようになってよかったと思いました。

無理のない遠距離(2時間はそれほど遠くないと思うけど)恋愛をしてほしいですね。
耐えられなくなったら転職して東京行けばいいしね。


2

年下攻め様っていいよね(*´ω`*)

雑誌掲載時よりとても好きで、文庫になるのを楽しみにしてました。
最近、hontoさん限定特典が付くので、hontoさんで購入するつもりでいたら、ちょうどディアプラスさんバレンタインフェアもあった時なので、ラッキー"(ノ*>∀<)ノ

受け様は、流され体質の園田。
園田の会社に東京から出向してきたのが、年下攻め様である藤木。

園田視点ですけど、藤木の園田への”好き”が速攻で伝わってきて、非常ににまにまでした。
出張でダブルの部屋に泊まることになった時の、藤木の動揺っぷりは、たまらないわ~
自分が藤木にとって性的対象だと園田が自覚する場面では、私までドキドキときめいちゃいました♡

園田の事が大好きで、それを嬉しげに全開で出してくれる藤木が、とても可愛くてよかった(*^^*)
そして、園田が自分から動くことができてよかった。

書き下ろしは、楽しみにしてた藤木視点。
やはりここでも年下攻め様の可愛さににまにま。
園田の嫉妬や甘えも可愛いです。

ただ、元カレの御浜の行動を、自分の為だとわかってるから、なんて、藤木がわかったように思ってるのも、ヤレヤレみたいに受け止めてるものも、コラコラでしたけどね٩(・̆ᗝ・̆)
恋人の目の前でのその言動は、怒って欲しかったところ。
たとえ園田が流したとしても、内心心穏やかな訳ないんだから、そんな気持ちにさせちゃダメじゃん。

と、ムッとしましたけど、なんだよ、結局園田のかわいいと藤木の愛しいが溢れただけじゃん(*´艸`)

安西先生の現代BL(だけじゃないけど)、大好きです。

3

安西先生の現代物最高!

藤木は園田一直線、想いが決壊してからは感情表現が真っ直ぐで大型わんこの様で可愛かったです。
園田は達観した大人という印象でした。でも、内に孤独を抱えていた事を知り切なくなりました。藤木を好きになってるのが伝わるのに、それを抑えようとしてるのがまた哀しくて。印象的だったのが付き合い始めてから初めての一人の休日。園田の語りに淋しさが滲み出ていて涙がでました。
もうダメかと思ったけど、園田が殻を破ってくれて安堵しました。園田を丸ごと愛していて、全てをうけとめられる藤木だからですね。
甘えも見せられるようになった園田が可愛くて、2人が共にいれる事が心底嬉しかったです。
藤木目線も掌編も園田の魅力があふれていて、藤木が翻弄されている様は最高でした。

3

【なんで来てくれたの?ーーー違うな。なんで俺は真啓さんにふられたの?(藤木)】

エロス度★★★

藤木と園田が紡ぐ恋物語♡
暮田マキネ先生の挿絵がマジで神っていて素晴らしい!
さらに藤木による年下からの情熱的で真っ直ぐな想いにきゅんきゅんが止まらなかったり、お試しで付き合うことになった園田の中で藤木の存在が大きくなっていくのが身悶えた!

タイトルと帯が不穏だけどこのまま問題なくお付き合いが続いていくのかと思ったら・・・園田の方に問題があり、自身の経験や人に執着を抱かなかったりするのを拗らせているのが切なかった(´-ω-`)
特に園田が感情的になっているシーンとかがグッときます♡

4

甘〜〜〜い!

普段は紆余曲折を経て寄り添う作品を好んで読むのですが、甘〜〜〜い作品もやっぱりいいなぁと思えるような作品でした。

タイトル通り別れる展開もあるのでその部分は胸がとても痛んだのですが、それ以外の部分はひたすら甘くて甘くて癒されました。

焦ると言葉がつっかえつっかえになる藤木がめちゃめちゃ可愛くて悶えました。
最高に一途な年下攻め。

そして挿絵はマキネ先生!
ひたすら眼福でございました...
どのイラストも最高でした。

安西リカ先生の現代モノ作品、大好きです!

7

残酷な親切に読んでて苦しい

残酷な親切が見てられないです。
ついに!なところで離脱してしまいました。

誰とでもそれなりにな園田に、まあ仕方ないよねと思うものの。そんな境遇ならね…。
なんですが、藤木に対する態度が…。

こんなにも園田を好きなのに。紳士で甘えん坊で見返りを求めずなのに。
まあいいかな?で体を許して、なんて残酷な!もうしっぺ返しというか修羅場というか、いつ来るか怖くて怖くて。

しかもようやく園田が藤木を…ってところで、あんな形で結ばれて。気持ちはちゃんと藤木に通じてるの?大丈夫なの?後で誤解を生まない?とハラハラです。

残酷な八方美人は何も悪くないのはわかってるけど、疑似恋人はな〜。
日を改めて最後まで読んでみます。
こういうハラハラもあるんだなあ。

6

作者買いです

安西リカ先生は勝手に恋愛マスターだと思っています。恋愛の機微を書かせたら間違いなく切なくて、萌を大量生産してくれる作家さまだと思っているのです。今作も年下攻めと知りとても楽しみにしていました。

表題作は雑誌掲載されていたらしいのですが、未読でしたのでじっくりと楽しむことが出来ました。
ゆっくりと進む2人の日常はじっくりと恋が進むところが書かれていて、好みドンピシャでした。

でも途中でなんか2人の関係の進み方が早いような気がして、残りのページ数を数えてしまっていました。まぁ、書き下ろしがあるので当たり前と言えばそうなんですけど…。

表題作の終わりが近づくにしたがって、個人的に園田の性格が嫌になって来てしまい受けザマァな展開にならないかなぁと密かに思ってしまいました。「私って性格悪いのねw」って思ってたんですが、藤木が一途だったので私の願いは叶わず思ったより簡単に丸く収まっていました。

で、書き下ろしに期待したんですが、そこには園田のスペックの高さと田舎の小さな会社だったから彼を捕まえる事が出来たと思ってる藤木がいて、なんか想像したのと違う…と思ってしまう自分がいました。

藤木の元カレが当て馬らしき動きをしてくれるんですが、藤木は前述の通り一途だし元カレは藤木の応援にまわってるんです。思いがけない園田の反応は見られたものの、なんか違うというイメージは払拭されないまま終了してました。

読む人が読んだら凄くハマると思うのですが、私の好みとはちょっと違ってました。この設定でもっと泥くさいお話が読みたかったです。
ちなみに藤木のイメージは表題作のままでいて欲しかったです。

7

切なかったです

ずっと眺めていたくなるような素敵な表紙ですよね。すんごく物語を感じさせる絵だなぁ~~と感激してしまいました。というわけで、マキネ先生の優しいタッチと安西先生の作風のこの上ない好相性が嬉しい一冊。大好物のはずの設定なのに…あぁそれなのに…、、受が頑なに期間限定に拘る前半の展開が辛すぎて、というか受のキャラがはまらなかったんですよね…ちょっと残念。ガチな恋愛感情をやんわりあしらおうとする受けに対して、必死で押せ押せな攻めさんの一途さ健気さが、なんだかいじらしくてぎゅぅっと鳩尾らへんを絞られるようでしたw。最終的には報われるんでいいんですけど、表面的に感じのいい人(大人の対応上級者)の不誠実さがめちゃくちゃ残酷に見えてしまってしんどかったです。今回攻めが好みの年下攻めだったので、余計不憫に見えてしまったのかもしれませんw

とはいえ(?)ラブ的なところとは関係なく受けさんのライフスタイルが羨ましかったです。有能なのにお金やステータスに拘らず、自分の居心地のよさ重視で仕事と生活の場を選んでる余裕が(くすぶっているんじゃなくて、活躍できる場は色々ありそうなのに敢えて活躍しないwっていう)地味なんだけどむしろキラキラに見えました。若いのにきちんと人生の優先順位決められてて羨ましいw。というわけで、そんな今どきの生活者のBLでした!

9

期間限定の恋なのに

今回は親会社の出向社員と出向先の会社員のお話です。

受視点で攻様との出会いから恋人になるまでと
攻視点で東京に戻ってからの続編後日談とSSを収録。

受様の父は転勤が多く小学校の頃は転校を繰り返し
中高からは寮のある一貫校で過ごしたため
家族で過ごすのは母方の祖母宅での夏休みくらいでした。

大学生の時に祖母が亡くなると
祖母宅から通える新卒入社した会社の支社に希望をでして
祖母宅で1人暮らしをする選択をしますが
新卒で就職してから8年間で4度の転職をする事となります。

現在勤務する菅原スチール販売は家族経営の零細企業で
30代の受様はまだまだ若手社員扱いされていてるのですが
1年前に統合された東京本社営業部から出向してくる
社員の補佐を任される事となります。

やって来た社員は25才という年に相応しくない程
堂々として無駄に挑戦的な雰囲気を醸す攻様で
受様には攻様が田舎への出向を左遷と受け止め
げんなりしている事がわかってしまいます。

しかしながら攻様の補佐として関係先に赴いていると
攻様がかなり有能で出向は攻様の将来を見据えての
幹部候補育成だろうと思うようになります。

攻様も1月もすると徐々に打ち解けてきて
少しづつ私的な付き合いもしていくようになるのですが
攻様にとっての受様は好ましい同僚から
恋の相手になっていて!?

雑誌掲載されたタイトル作に
攻視点での後日談短編を書き下ろしての文庫化で
期間限定で出向してきた攻様にロックオンされた受様の
恋物語になります♪

攻様と受様の間に特に大きな"何か"があって
攻様が恋に落ちた訳ではなく
日常を共に過ごすうちに徐々に"いいな"と思っていって
恋となった感じなのですが

受様の過去の恋は相手からの告白で始まり
断る理由もないからと付き合ってはみるものの
相手からの別れで終わっていました。

しかも今回は攻様の出向期間は決まっていて
東京に帰っていく=別れる未来が決まっていたことで
受様には攻様がここにいる間だけ=期間限定のお付き合い
だったのです。

受様のトラウマは過去の恋人との関係だけでなく
両親との関係にも深く根ざしていて
攻様の一途すぎる想いがまたそのトラウマを刺激する
というぐるぐるな展開にハラハラさせらました。

そんな受様を追い詰めたくないと見守りつつも
1歩踏み出して欲しいと訴える攻様に
きゅんきゅんさせられました ヾ(≧▽≦)ノ

今回、文庫化で攻視点のお話がついていて
それぞれの想いががっつり見えたのも楽しかったです。

暮田先生のイラストも物語世界にベストマッチで
とても良かったです。

5

最っ高に心に沁みた。。

安西リカ先生と暮田マキネ先生のタッグなんて、読まないわけにはいかないだろう!!!という気持ちで予約し、待ちに待っていたこちらの作品。

本日やっと届き、読み終えたばかりです。

…もう、もう、もう、めっちゃくちゃ良かった。。!!

ドキドキが止まらなかった…

幼い頃から、父親の転勤に伴う数回の転校、両親の離婚など別離を繰り返してきた園田(受)。

一度名前を呼ぶと愛着が湧いてしまうから、呼べない。
そんな園田に対し「引き留めてよ」と縋る藤木(攻)の必死さが胸に迫ってきて、切なくてたまらなかったです。

それから、手違いで出張先でダブルの部屋に泊まることになってしまい、気持ちを抑えきれなくなった藤木が園田に告白し、「キスしてもいいですか」と尋ねるシーン。

なんか、なんか、、!!心臓がドキドキするほどときめいてしまいました。

二人が初めて最後までした時の、園田の「最後までそこで快感を得ることはできなかったが、とてつもない充足感を感じた」って部分。

さりげない一文なんですが、グッときました。そうだよな、って…

BLはファンタジーだから、初めてでも気持ちよくなっちゃうのを当たり前に受け止めてきたけど、まあ普通そうじゃないよな、と。

園田の心情もセックスシーンもリアルに感じられるからこそ切なさで胸が痛んだり、感動でうるうるきたりしました。

「上善は水の如し」をモットーに、流されるままに生きてきた園田。

まさに”流されるまま”に藤木の告白に応え、期限付きで付き合うことになるけれど、
そんな園田が初めて自分から藤木を追いかけ、本音を晒すシーンが素晴らしく印象的だった…

一途な年下攻めって、やっぱりいいですね
。一目惚れして、好きな気持ちが隠せなくなって、懸命に押して…頑張れええええ!と応援したくなる、よき攻めでした◎

なんだろうな…作品自体に決して派手さはないけれど(安西先生もあとがきで”地味な作品”とおっしゃってる…)、心にじんわりじんわり沁みるラブストーリーで、ああ、好きだな…と心から思えました。

7

ゲロ可愛い

先生買い。雑誌掲載時にも可愛いなあと思っていましたが、書き下ろし部分でさらに可愛くなってました。ええなあ。ファンタジー設定一切なし、現代日本リーマンの恋心な貴重なお話、雑誌掲載分160P+書き下ろし60Pほど+あとがき+おまけのお話。ええなあ(2回目)。

地方の中小企業に勤め、祖母の遺してくれた家に一人暮らす園田。ある日会社に、親会社のエライさんが来るからサポートについてと頼まれますが、やってきたのは年下のイケメンで・・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
会社の同僚、受けの家に遊びに来る三毛猫、後半に東京での仕事仲間、攻めの元カレぐらいかな。

++攻め受けについて

攻めさんはイケメンでお仕事出来る方なんだけど、「なんでこんな田舎に俺は派遣されたんだ」と感じ、周りと少し上手くイカなさそうな方。ただ自分から近づこうと思ったら、ずんずん距離を狭めていきそうな印象です。なんだろ、年下だからかな、可愛いんす。

受けさんは年上だし、自分はここで生きていくという肝っ玉座ったかの印象を受ける方。優秀なんですよね、地方のちっこい会社なんですが。(事情は明かされます)祖母から残された思い出のある家で、この後も住み続けるんだと思っているところが、納得いくんですが、その理由に胸がきゅうきゅうイタイでした。

攻め受けとも、ものごっつ好き!というのではないんですけど、二人各々の気持ちへの寄り添い具合というかシンクロする箇所があってですね、読んでいる最中に「ああ、そうなのよー」と頷く気持ちがしたお話でした。良かったわー沁みる。

一番沁みたのは「だんだん慣れる。だんだん忘れる。」「遠いんだよ」っていうところ。遠距離やらかした方は胸イタイかも(´;ω;`)。先生、おでんの大根のように沁み沁みなお話、ほんとに有難うございました。またお話、楽しみにしております。

4

塩と甘さのコントラスト

はぁぁぁ〜…しんどい。
別れること前提の交際を見せつけられる空虚感たるや……2人の交際熱の温度差が切ないストーリーでした。
別れの前提で交際しているので、未来性がなく非常に淡白で渇いた感情の気持ちで交際関係が進んでいきます。それは園田視点での話で、園田に交際を申し込んだ藤木は園田との交際が叶いウキウキ。
彼らの心のすれ違いに胸を詰まらせました。

田舎町の会社で出会った2人の男、藤木と園田の恋愛の物語は、派手さのない落ち着いたテイストですが、心の揺れ動きにガツガツ訴えてくる心理描写映えの作品です。
注目すべきは、先にも言ったように藤木と園田の気持ちの温度差です。
園田に熱烈アプローチして期間限定のお試し交際をもぎ取った藤木の想いを100としたら、園田のそれは10くらい。同じ熱量で交際していない2人のお付き合いがどんなものか想像できますか?
…めっちゃ切ないですよ〜…、特に園田に夢中の藤木の気持ちを考えると。
園田の塩対応にもめげず、最大限の甘い愛で返す藤木の想いがどれほど一方通行なのか…それでも園田のことが大好きで堪らない藤木の一途さが眩しかったです。


園田の物事に執着しないスタンス。これが歯車を狂わせています。
他人との付き合いに深入りもしないし執着もしない園田が藤木の告白を受け入れたのは、藤木の赴任期間1年の時間制限が頭にあったからです。幼少期の育った環境が原因で、人との別れに過敏になっている感は否めなく、どこかドライな印象を受けました。
"いつか"、"今度"…こんな未来時制の言葉を交わしてもどうせ自分のことを忘れてしまうだろうという園田の考えは、過剰反応のような気がしなくもないですが、一種の防衛反応だと思ったら合点がいきます。最初からナイことを考えておけば自分が傷つかなくて済みますもんね。

好きだからこそ別れのときがツラくなるから、別れたいとは何というマイナス思考!
この矛盾した想いは理解できなくもないけど、藤木の想いを蔑ろにしているようで私としてはいただけなかったです。

しかーし、藤木の園田へのアプローチがそれをチャラにしてくれました。萎えた気持ちを萌えに転じさせてくれた藤木のゴン攻めが最高ーーー( ˃̶͈̀∀˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
園田にフラれても諦めない強いハートが激アツでした。
「諦めたらそこで試合終了」
試合終了を回避した藤木に、最大の拍手を送りたいです(*´︶`*)


園田の塩っけは後半部分のエピソードでは鳴りを顰めて随分と甘くマイルドに変化を遂げています。
ようやく恋人同士のイチャイチャが拝め、藤木視点の園田への独占欲が想像通りで楽しいです。
2人の新生活はきっと明るいものになる。そんな期待が素敵な読後感を与えてくれました^ ^

7

身近に感じられる恋の良さ

いやすごい。するするとあっという間に読めてしまうテンポの良さがありながら、日常の中にさり気なく描かれた言葉ひとつで登場人物の感情がしっかりと伝わってくる。
安西先生の現代もの、好きだなあ〜!と改めて思った1作です。
普通の日常と心理描写重視の方はぜひ。

主人公の園田は流し・流されが上手い人だと思うんです。
揉め事は起こさず、巻き込まれず、全てが凪いだ人生になるように過ごしている。
押されたらあえて押し返さずに、さらりと受け流すか受け入れてしまうタイプ。
実に日本人的と言いますか、ある意味園田のような人はどこにでもいるのかもしれませんね。

本社から地方へと出向でやって来た年下上司の藤木と友人のような気安い関係になった末に告白され、少々悩みながらも藤木が東京に帰るまでの期限付きでならと受け入れる園田。
これを曖昧な流され受けと言わずになんと言うのか状態なのですが…流されてみたそこが今まで浴びたことのない激しい感情とストレートな好意に溢れるものばかりだったら?

仕事でも恋愛でも、あえて流されている園田視点のお話に身を任せていると、やがて頑ななほどに何かを避けていて、ラインを越えないようにしている園田の違和感にあれ?となるんです。
ただ人間関係を円滑に、日々の生活を穏やかに過ごすための処世術としてこの性格になったわけではないんだなと読んでいく内に自然と気付くというか。
なぜ園田が開いているようで閉じている人間なのかについてのエピソードも無理がなく、何に対しても真っ直ぐで嘘のない藤木と送る期間限定の恋人生活の中で徐々に変化していく彼の心理描写が非常に繊細かつ上手いです。
これだから安西作品を読むのがやめられないんだなあ。

大事なものを作るのが怖くて閉じこもっていた園田の心のドアをドンドン叩いてくる藤木との組み合わせは、読み終えてみればこれ以上ないほどぴったりと合う寄木細工のよう。
2人の距離の詰め方が心地良かったです。
年下感がありながらも普段はやや強気な藤木が、園田を前にすると余裕がなくなり狼狽える図も、少々心が狭くなってしまう姿も可愛らしくて好きでした。
感情表現がストレートで嫌味がない攻めってなんでこんなに気持ちがいいんだろう?
閉じこもっているのを無理矢理外に出す攻めではなくて、そろそろと受けが出て来るのを待ちながら、いざ一歩踏み出せた時にはそっと手を取って目一杯抱きしめて、歩幅を合わせて隣を歩いてくれる年下攻めだったのも良かったな〜!
書き下ろしの藤木視点のお話と、あとがき後のお話がこれまた最高なんですよ…!
園田の心境の変化をさらに感じられて嬉しくもあり、藤木の園田大好きっぷりが詰まっていて微笑ましくもありで、本編からそのまま流されてやって来たら素敵な愛が育っているではないですか!ものすっっごく萌えた〜…!
2人とも可愛くてにこにこしてしまった。

最高の人生を過ごすために無意識に探していたパズルのピースがカチッとはまった。
そんな1冊だったかなと思います。
身近に感じられる人々の恋愛が読みたかった私にとってはたまらないものがありました。
現代もの、やっぱり良いですね。

5

最高の年下攻めでした!

安西先生の新作、年末からずっと楽しみにしてました!
いやーもう、とにかく最高でした。
年下攻めが好き、現代物が好きな方なら読んで間違い無いと思います!!

受けの園田の心境の変化が丁寧に描かれていて、さすが安西先生!と唸ってしまいました。
上善は水のごとし を座右の銘にし、何度も別れを経験してきた園田が藤木との別れが怖くなって、つい彼に対して酷いことを言ってしまうシーンがもう切なくて切なくて…

藤木はいい年下攻めですね。気持ちが分かりやすて、まっすぐで。
書き下ろしが攻め視点なのですが、藤木の園田に対する気持ちが溢れてて思わずにやにやしてしまいます。拗ね園田がもう可愛すぎて!

2人の距離の詰めかたの描写もすごく素敵で、特に車内BGMのくだりなんかが細かくて個人的にすごく好きでした。

安西先生らしい丁寧な現代物で、本当に萌させていただきました。

あと挿絵が凄く良いです!
私個人的には挿絵はそんなに合ってもなくても、って感じなんですが、今作の挿絵はとにかく可愛くて可愛くて。本文の雰囲気とすごくあっているので、それも合わせて高評価です!

7

「別れる理由」が切ない

藤木×園田


暮田マキネ先生のイラストが、
ストーリーも2人のキャラが生き生きと描かれていて、
安西リカ先生の繊細さもはっきり表現されて、
ますます没頭して読み進めてしまう。


地方のスチール販売会社で働く30歳の園田と、
東京から転勤してきた25歳の上司の藤木。
年下上司との立場、巧みに取り入れて、
2人の間の空気感がなんとも和んで妙味。
さり気なく一緒にいて、あっという間に仲良なって、

ひそやかな様子も直球な藤木だから、
付き合う理由が明快で、
藤木が東京に戻るまでの一年間
期間限定の付き合うことになる2人。
「別れる理由」が簡潔なのに、
その理由に心を喰い荒らされる園田に胸が締め付けられる。
藤木の包み込むような優しさと寛大さ、
穏やかな執着のやさりげない続けられる愛が心地よく、
読後感が非常に良かった。


完全に流されてしまう園田、
藤木への恋愛感情を抱かないまま、
恋人関係に入っていく展開で、

園田、
オフの時のメガネ姿が可愛い。
転校が多かったり、友達や親との別れが続いたことで、
他人に心を開くのが怖いのだろうね。
大切な人をずっと失ってきた経験は切ないもの。
人間関係に不信感を抱く一端が垣間見える。
変わりゆく気持ちに対する恐れが生まれている。
だから、限られた時間の中での恋愛がいい。

園田が住む一軒家が、
三毛猫がいて、藤木も一緒にいることでなんだかほっこりで、
2人がゆるやかで普通な恋人の生活が
エッチも楽しむ日々が安らぎに満ち溢れていて、

関係が進むにつれて
敬語からタメ語への変化や呼び方の変化や、
藤木の穏やかな執着が破壊力抜群で、
園田をじっくり観察し短時間で園田のことを理解する。
そんな藤木の好きな人に対して自然に振る舞うに、
愛情がだんだん芽生え園田。
2つの心の距離が縮まっていく様子が見え隠れして、全部が愛らしい。

突如訪れる別れで傷つけられる藤木・・・、
園田の最後の真の感情が入り混じる瞬間がしみじみ感動する。

心に不安定を負った園田が、藤木に愛されて、
内面が確実に変遷していくのが素敵すぎる。

書き下ろしでは、
純粋な恋人姿勢の
2人の尊さにただただ圧倒される瞬間がいっぱいで安堵感とほっとする。

2人の恋が、
はまさに「上善如水」のような感じがする。
藤木の包容力が水のようにさらさらと流れて、
心地よく無理なく進んでいって、
園田の心と体を優しくを浸透しいく。
お互いを大切に思う気持ちが水のようにじんわりと広がって、
穏やかで深い愛へとつながっている。
清らかな水のように、
普通の幸せを噛みしめていく2人の姿が微笑ましいです。

9

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP