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表題作ふさいで~イエスかノーか半分か番外篇 3~

設楽宗介,33歳,旭テレビプロデューサー
相馬栄,23歳,旭テレビディレクター

その他の収録作品

  • ゆるして(あとがきに代えて)

あらすじ

入社2年目で夕方ニュースのDに配属された栄。性格に難がありすぎて周囲からは煙たがられていたが、Pの設楽はその性格ごと栄の才能を認め、自由にさせてくれていた。デザイン室の睦人と三人、気が向けば深夜の映画と酒を共にする、そんな関係を続けていたある日、平穏な日々を徹底的に壊してしまう事件が起こり…。栄と設楽は、どうしたら11年の空白と喪失を埋められる?大人気シリーズ番外篇第3弾!!

作品情報

作品名
ふさいで~イエスかノーか半分か番外篇 3~
著者
一穂ミチ 
イラスト
竹美家らら 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
シリーズ
イエスかノーか半分か
発売日
ISBN
9784403524714
4.5

(255)

(193)

萌々

(35)

(18)

中立

(1)

趣味じゃない

(8)

レビュー数
31
得点
1160
評価数
255
平均
4.5 / 5
神率
75.7%

レビュー投稿数31

過去

イエスノーシリーズの3カプ目。プロディーサーの設楽と栄のおはなし。
どうして今はこんな関係なのか、過去の奥様の事件、すべてが胸を締め付けられてしんどかったです。前作までがたつきとなっちゃんのほわほわカップルだったせいでこんなにも落差があるのか、一穂ミチ先生おそるべしとなりました。
一穂ミチ先生のnoteに奥様目線の熱海のサンビーチでのはなしがあるので是非読んで欲しいです。何度も読んでいますが読む度に泣いています。

0

相馬栄という人の裏側

番外篇1、2で名和田深くんがテレビ業界に飛び込むほど憧れ、子分として必死に食らいついていた相馬栄が主役でビックリでした。なぜってパワハラ発言当たり前の独裁者のイメージだったから。何となく「悪人」みたいなイメージでした。

そんな栄の新人時代から、ゴーゴーダッシュが終了するまで、そしてそれからのお話…。とても興味深く読みました。

本編でも一穂ミチ先生は「悪人」を作らないなと思っていたのですが(潮父がその例で)、やはり今回もそうでしたね。

栄が何故他人を信用して人に仕事を振らないのか、もちろん性格によるものが大きいのですが、新人時代に仲の良かった奥睦人の存在がとても大きいように思います。信用していた人間に本人は思いやりのつもりだったかもしれないけど、裏切られる。そのつらさを知っているから他人を信じない、そして呪いのようにテレビの仕事を辞めるなと設楽さんに言われたことがきっと本人に自覚は無いけど仕事をする原動力になっていたと思うんです。

ゴーゴーダッシュで体を壊すまで走り続けた栄にはそれだけの過去があり、ワンマンで仕事をしていたことにもちゃんと理由があって、でもそれをちゃんと距離はあっても見守り続けてくれていた存在があったことに正直とてもホットしています。

そして設楽さんという人はほんとにすごい人ですね。相手の言葉や態度だけではなく、仕事ぶりをきちんと正当に公平に評価してくれる、そんな上司が日本中にいたらと思いますが…。栄のことを後輩として可愛がるだけではなく、嫉妬も抱えて見守っていたなんて…。実際にこんな腹の見えない人がいたら怖いと思うんでしょうが(笑)、口の悪い、そして素直になれない栄にはピッタリの御相手です。

この本で設楽さんが栄に言ったセリフで凄くいいなと思ったのがあって、「お前の悪いところなら俺は50個くらいすぐ言えるけど~」のところですが、こんな告白されたらそりゃ白旗あげるに決まってます!(?)いい所も悪いところも含めてちゃんと好きだってすごい告白だなと思ったんですよね。恋愛っていい面だけを見せれる訳では無いから。そんな告白をBL小説で拝めてとても幸せな、満たされた気持ちになりました。

1

レベルが違う

設楽×相馬は、全く頭にもよぎらなかったのでかなり驚いた番外編。
しかし一穂先生の魔法の筆の力を以ってすれば、こんなにも素晴らしい仕上がりになるのですね。設楽×相馬……アリです。
名和田と竜起カプの番外編で登場していた相馬に特段思い入れもなかったけど、こうして物語の主人公として彼の視点でストーリーを追うと、こんな展開があるのか…こうくるのか…と相馬に興味が膨らんでいきました。

やっぱりただのBL小説じゃなかった。
奥深いヒューマンドラマを観た気持ちです。
同僚と上司の不思議な3人の関係や、心のトラウマ、相馬の仕事への向き合い方など、私の言葉では言及し尽くせないたくさんの大きなドラマや小さなドラマがありました。


番外編3は一穂先生の作品ではあるけど、プロデューサー相馬によって作り出されたもので、私は彼の才能によって創出された世界にいるんじゃないかと思いました。後半の相馬の報道番組の仕切り…えげつなかった。あまりにも凄すぎてそう錯覚してしまいました。それを可能にしたのは圧巻の筆致と繊細で隙のない描写、そしてその画を動き回る魅力的なキャラクターたち。

相馬というキャラクターを描くのって難しいと思うんですよ。態度も口も悪いし、天才だし、気難しくて一筋縄じゃいかない、そんな人。こんな相馬の側に、スッと入ってくる設楽の存在感と空気感がすごく良い。絶妙な距離感です。
2人は両想いから身体を繋げたわけじゃないけど、それでも良いと思える流れでした。心が荒れていた相馬を救う意味でも、設楽の欲情の意味でも見応えあるシーン。この出来事があったから、11年後の相馬があります。

相馬は腐らずに制作の仕事を見事にこなしていたのは設楽のおかげだったんですね。設楽=テレビ業界にしがみつくことが相馬の身体に染み付いたんだと思います。仕事に忙殺することが相馬の才能を開花させ、そしてテレビ電波を使って遠方の設楽にメッセージを送り続けた。
設楽がどれだけ嬉しかったことでしょうか。彼が本社に戻る大きな原動力になったのかも知れませんね。


設楽の相馬に抱く愛は、フワッと包み込むように優しい印象でした。相馬の危なっかしいところも全部理解して抱きしめてくれるような、大人の愛。相馬の方は、設楽への愛情を明確な言葉で返事しなかったけど、設楽のことを本能的に求めて愛しているのが伝わりました。
ボーイズラブというより、メンズラブといった大人の香り漂う2人のセックスシーンは、情熱的でゾクゾクしました。設楽の畳み掛けるベッド上での愛の告白は、現場にいたら鳥肌&腰砕けすること間違いなし。


2人のその後がとても気になります。
番外編4も楽しみです!

2

いきなり大人な雰囲気でびっくりしましたが

今まではシリーズ通して明るいキャラクター同士のほのぼのBLだったので、今回は大人な雰囲気でびっくり。

今までは脇役として登場していたプロデューサー設楽と栄のお話でした。
あの2人の若かりし頃そんな過去があるとは想像もしてなかったので驚きました。

中盤で2人とも異動させられてしまうのですが、別れのエッチシーンに入っても、2人の関係に戸惑いました。
というか栄が受けなのか!?意外すぎます!

終盤のシーンである事件がきっかけで疎遠になってしまった友人へのインタビュー映像を2人で観るシーンは感動しました。
見せ方の上手い作家さんだなと感心します。

話の雰囲気はだいぶ違いましたが、あいかわらず心理描写が秀逸で先の展開が気になり一気読み。意外な展開が多くて面白かったです。

0

重厚な映画のようで、エンドロールが終わっても席を立てない

イエスノーシリーズ第6作目です。
シリーズ通しての登場人物設楽Pと、第4作目に登場した相馬Pが主役になります。

人気深夜バラエティ番組のPとして自他を犠牲に走り続けた相馬栄は結果、体調を壊し倒れる。病院で目覚めた時傍にいたのはかつて報道にいた頃の上司、設楽宗介だった。11年離れていた彼と相対し、栄は彼が自分の元を去らざるを得なくなった11年前、なにもかもふさいで欲しいと請うた11年前に、思いを馳せる…。

という感じの導入で、話は11年前に移ります。2年目で報道のDになった栄さんがPの設楽さんと同い年のデザイナーの奥くんに出会い、映画を観たり呑んだりと気の置けない関係を築いていきます。しかしある事件をきっかけにその心地良い日常は崩れ去ってしまうのです。

ところでシリーズ4作目「横顔と虹彩」は読了済みでしょうか。こちらを単発で読もうとしている方、最低でも4作目はご覧になった方が良いです!栄さんが主役カップルを喰う勢いでキレッキレに大暴れ…活躍しておりますので、また今作の導入にも関わります、出来れば先に読んでおいて頂きたいです。

栄さん設楽さんの性格もそちらを読んで頂ければお分かりだと思いますが軽く紹介すると、栄さんは新人ながらセンス溢れる仕事ぶりと歯に衣着せぬ堂々とした物言いで周囲に敵を作り続ける、なかなかぶっ飛んだ性格をしています。傍若無人で傲慢で恐れ知らず、口が悪く酷い罵り方もするけど理不尽な怒り方はしない(設楽さん曰く「怒る理由は常識的、度を越してるのが表現の仕方」)、一本筋が通った案外まっすぐな性格で、ただの性格の悪い奴ではないのですぐに好感を持てます。現実にいて欲しくはないけど(笑)
設楽さんは、軽くて緩くて親しみやすく、基本好きにやらせて最後の責任だけは取ってくれる、理想の上司のようですが反面冷たく無慈悲なところも見え隠れする…といった敵に回したくないタイプの人ですかね。(初対面の栄さんをして「俺より口悪いっすね」と言わしめた)

そんな二人が11年かけて互いの隙間を埋めていく、紛れもない愛の話なのですが、BLだけに留めておくには勿体ないほどに壮大なストーリーなのです…!放送業界で働く人々の葛藤、裁けない罪を裁いてしまった罪と罰、裏切り、憎悪……。読み終わった後、溜め息が出て、目頭が熱くなって、映画でもないのにそれぞれの場面が映像として頭の中を駆け巡りました。熱海の海辺の美しさが脳に焼き付いてます…行ったことないけど。
シリーズものの番外編であることが勿体ないと思う一方、このイエスノーシリーズのうちの一作で良かったとも思います。
一穂先生の作品の魅力の一つである「セリフ回しも地の文(細かな描写)も一言一句漏れなく萌える」によって、笑いっぱなしきゅんとしっぱなし、切なくなってわくわくしっぱなしで、改めて読書っていいなあと感じました。

それから後半で11年後の退院後、夜ニュースの助っ人に呼ばれた栄さんが一日Pとしてキレッキレになるんですが、この話まじで面白くて最高です。とにかく面白い。シリーズの主人公国江田さんは笑顔の下、心の中で毒を吐きまくりますが、栄さんは毒をそのまま直接吐き捨てます。大先輩たち相手にも。そのやり取りがもうおかしくてたまりませんので是非。

あとはカップリングとしてですが、設楽さんは栄さんの飾らなさ(「おかしくもねえのに笑えるかよ」「思ってもないこと、言えるか」)にどれだけ救われてきたんだろうと、そんなところにどんどん惹かれていったんだろうなと思います。栄さんは栄さんで、自分の作るVを見てきらきら目を輝かせて楽しむ設楽さんの期待に応えるのが楽しくて、つまらないとがっかりされたくなくて、離れてからもずっと設楽さんという存在が心から消えなくて走り続けた。間違いなく、二人とも11年前から両想いだったんですよ…!おっふ尊い…。
濡れ場も一穂先生は相変わらず濃厚です。直接的にドエロいわけではないのに一つ一つの文章や言葉選びやちょっとした描写が濡れ場としめの甘さと濃さを垂れ流してます。設楽さんの包容力と情熱にメロメロです。栄さんのエロカッコ可愛さにイチコロです。ラブラブやーん!

シリーズで一番好きな話とカップリングです。相馬栄にやられました。勿論次作「つないで」も最高ですので是非このカップルにハマってください!

5

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